ヘビ探偵と白助手シリーズ
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商店街にておかみさんから頼まれていたおつかいを終え、旅館に帰ろうとした矢先。
向かいから歩いてきた男の歩みが急に私の進行方向に入り慌てて横に逸れたものの肩がぶつかった。
「きゃ!」
思わず声をあげ、ぶつかられた勢いのまま尻餅をつく。頼まれてた荷物は大丈夫かしら、慌てて荷物を確認する。よかった、大丈夫そう。
「ちょっと、どこ見て歩いてるのよ」
きっと睨み付けながら立ち上がるが、私よりも10センチほど身長が高いその男に反省の色はない。いや、むしろこちらを馬鹿にしているような顔すらしている。
「前見て歩いてないのはお前だろ?どうすんだよこの服汚れちまったよお前のせいで、高いんだよこれ」
……当たり屋とか古いんだけど。その手法も。
「どう見ても過失はあんたの方だと思うけど?あんたのせいで尻餅ついた身体は痛いし買ったものだって危うく台無しになるところだったわ。
大体どこが汚れて……ああもう、当たり屋なんて相手するだけくだらない……あんたが謝れとは言わないからもう行かせてもらうわよ、それじゃ」
「おいおい行かせると思う?」
横を通り抜けようとした私の腕を無遠慮に掴まれ進めなくなる。
「……しつこい」
睨み付けるも全く効果はないようで、今度は馬鹿にしたような態度からへらへらと軽薄そうな笑みを浮かべている。
「ごめんごめんさっきのは謝るよ、君が可愛い子だったからつい意地悪しちゃったんだ。お詫びしたいからそこでお茶でもどう?」
初対面の子を可愛いと言う理由で意地悪してもまだ許されるのは小学低学年までであり大の大人がすることじゃない。まあ元々金を取るかそれができなかったらナンパに移行するっていう目論見だっただけなんだろうけど。
もう言葉を交わすのも億劫でなんとか腕を離そうと捩るが、私が女で相手が男だからなのかさっぱりそれは功を成さない。
早く帰らないと皆が心配する。何よりおかみさんが今か今かとこのボトルを待っているのに。
もう大声を出して周囲の気を引き怯ませてしまおうかと息を吸い込んだ、刹那。
「俺の妹に何か」
その声と共に私の腕を掴む男の手を更に掴みあげる。
「いたたたたた!」
当たり屋と私の間に割って入ってきたのは。
「じょ、」
彼の名前を呼ぼうとして、顔だけこちらを振り返ったその口元に当てられた人差し指でああ、と察する。
「……兄さん」
「この男はなんだ」
「当たり屋。いまどきあり得ないでしょう?私お母さんに頼まれたボトル抱えてたのにこの人勢いよくぶつかってきて私尻餅までついたのよ?ボトルは大丈夫だったけどもう腰痛くて最悪よ……」
「……と、言ってるが本当か?当たり屋さん」
「っ、すいませ、腕、離してっ」
「ああ、悪い。妹が心配でね、つい力が入ってしまったようだ」
ぱ、っと助手が手を離すと当たり屋は掴まれた手を怯え震えながら擦っていた。相当な力が入っていたのかしら。だとしたらこの助手、それなりに腕力があるのね。
「それで、何か言うことがあるんじゃないのか?」
「っ当たり屋やってすんません!」
「おい待て」
頭を下げて走り去ろうとする男の腕をすかさず掴み、「それだけじゃないだろ?俺の妹が腰まで痛めてんのに、誠意が足りねえんじゃねえか?」
……なんか逆にこっちが当たり屋みたいになってきてない?当たり屋怯えちゃってるし……こいつにどうさせたいのよ助手、と思いながら彼をみると視線に気付いた助手もこちらを向き目が合う。
……いやにっこり笑わないで。怖い。
ヘビ探偵だったらこの表情で本気なのか本気じゃないのかわかりそうだけどあいにく私はこの男の感情は読めないしそこまで思い入れもないわけで。
「もういいよ兄さん。私早く帰りたい」
片手で荷物を抱え、空いた手で助手の服を引く。
……いや残念そうな顔をしないで。人は玩具じゃないのよ。
「……妹に免じ今回は許すが、次はないぞ。わかったらさっさとどこへでも消えろ」
「はっはい!ほんとっ、すいませんでしたーーー!!!」
……ああいう人間って、逃げ足も速いのはなんなのかしらね。
さて、お礼を言わないと。
「助かったわ。でも、どうしてここに?」
「ヘビ探偵と別行動でこの商店街の人間の依頼に当たっていた。事務所に戻ろうとした矢先、往来で揉めている男女がいるかと思えば知った顔で驚いたよ」
「そういうこと……でも助手に助けられたって、なんだか信じられないわ。ヘビ探偵にしかそういう気遣いできないものだと」
「そこまで薄情じゃないさ」
どうだか……と言いたくて飲み込んだ。どちらにせよ助けられた事実には変わらないし。
「ほんとありがとう。今度旅館に来たときはフルーツ牛乳でもサービスしてあげる。それじゃ」
「待て」
抱えていた荷物が上からさっと持ち上げられる。
あ、と思う間に荷物は助手の腕の中に納められていた。
「ついでだ、送る」
「別にそこまでしなくても」
「腰を痛めたのだろう?」
「……」
腰はもう痛くないけどまあ、断る理由もないか……。
「じゃあ、お願い」
旅館までの道のりは約15分ほど。
実は自転車が旅館にはあるのだがチェーンが外れてしまい、私には直せないから徒歩で出てきたのだ。
助手の実態がいまいちわからない私はその道のり15分が無言のまま終わるんじゃないかと内心辟易したけど、
「ヘビ探偵は過保護なんだよ……。今日は一人で依頼を任してくれたがそれも散々俺が一人でもできると毎日アピールしてようやく初めて任されたからな」
「過保護わかるわ……でも任されてよかったじゃない。私だってずっとおかみさんに出来るって言ってるのに未だに厨房立たせてもらえないのよ?おかみさんどころかヘビ従業員とシェフまで結託して私を厨房にいれないし。助手が羨ましいわ……」
「……何故人間ではなくわざわざ生態からして作業効率の悪いヘビが厨房を担当しているのか疑問だったがそうか、そういうことだったんだな」
「確かに料理は得意じゃないけど、練習もさせてくれないんだもの、そりゃ上達する筈もないじゃない!」
「これはこれはご立腹な様子で」
「当たり前よ!」
……あら。なんだか話していて気楽だわ。
「お互い上が過保護だと困るな」
「ほんとね」
話していて気楽だなんて……考えてみればおかしな話ね。一度すべてを奪われた相手なのに今や憎悪も何もない。あの事件から一年弱であるとはいえ時だけが解決したとも思えないし……。
……なんて。わざわざ思案しなくてもほんとは分かってる。あの事件の首謀者BLACK Doctorは死んだ。こいつはそんな男とは無関係のただのヘビ探偵がそのへんで拾ってきた助手だもの。ヘビ探偵が大切にしている助手だもの。
だから絡まれているところを助けてくれたしこうして自分の時間を割いてなんの得にもならない私を旅館まで送り届けるなんて行動を取る。
あの男なら絶対にしないであろう行動を取るんだもの。
「……どうした、急に無言になって」
「……もし私が料理教えてって言ったら教えてくれる?」
「いいぞ」
だってほら、ためしに言ってみただけなのに即答で快諾した。ただの面倒見のいい人間よこれ?これじゃほんとに兄みたいじゃない。ヘビ探偵、一体どういう教育をしたらこうなるのよ……。
「見返したいんだろう?フルコースを作れるくらいの腕にしてやる」
「ふ、フルコースってずいぶんと大きく出るわね」
「それくらいの気概を持たないと上達はしない」
「……まあ、それもそうね」
「都合のいい日があれば事前に言え。材料はこっちで用意する。連絡先は……グループがあるからそこから個人に飛べるな」
「ええ」
旅館が見えてくる。
「送ってくれてありがとう」
「礼には及ばん。……ところであの遠くにいるのヘビ従業員じゃないか?」
「え?」
見ると旅館の方からヘビ従業員が「従業員ちゃーん!おかえり~!」と大声を出し時折ぴょんぴょん跳ねながらこちらに向かってくるのが見える。
「出迎えとはどこまでも大切にされているじゃないか。さて、迎えが来たなら俺はここで帰らせてもらう」
「あ、ええ。荷物ありがと」
「じゃあな」
踵を返して来た道を戻っていく助手の姿をぼんやり見送る。まだ不思議な感覚がふわふわと残ってる。
……ほんとにわざわざ送られたのね、私。
「従業員ちゃん!おかえり!」
私に追い付いた足元のヘビ従業員と目を合わせてしゃがむ。
「ただいま。わざわざ出てくるなんて迎えを口実にしたサボりかしら?」
「違うよ!おかみさんもシェフも従業員ちゃんが帰ってこないからそわそわして仕事に身が入らなかったんだ。そんなにお客さんがいないからぼくが見てくるって言って出てきたんだよ!サボりじゃないよ、もう!」
「またみんなして過保護なんだから……。
疑って悪かったわね……迎えありがとう、帰りましょ」
「うん!」
立ち上がり旅館へと歩く。ヘビ従業員と足並みを合わせながら。
「……ところでさっき隣にいたのってヘビ探偵の助手?」
「そうよ、送ってくれたの」
「へえ~、今度お礼を言わなきゃ」
「……あ」
「うん?」
「伝えてないことあったっ」
振り返る。助手の姿はすっかり小さい。
……大きく息を吸い込んで。
「兄さーん!」
あ、振り返った。表情までは見えないけど。
「ありがとー!気を付けて帰りなさいよー!」
大きく手を振ってみた。
……助手は軽く手を挙げてまた前を向いた。
反応してくれたことに驚きながら笑いが込み上げる。
「急に大声だすからびっくりしたよ!でも兄さん、ってどういうこと?」
「ふふ、今日の業務が終わったら教えてあげる。さあ、旅館まで競争よ!負けたら今日のフルーツ牛乳奢りね!」
「ええ!?すごくご機嫌だ……、ていうかヘビ相手にそんな無茶だよ!待って従業員ちゃん!」
愉快な気持ちが抑えきれない。大声を出したせい?まあなんでもいいわ。
次の休みにでも料理を教えてもらおうか。そうと決まれば帰ったら早速休みの予定入れて、連絡しよう。お礼の品も考えないと。そんな思考で走り出す。
もちろん、おつかいの荷物はしっかりと抱えて。
兄が出来た日
向かいから歩いてきた男の歩みが急に私の進行方向に入り慌てて横に逸れたものの肩がぶつかった。
「きゃ!」
思わず声をあげ、ぶつかられた勢いのまま尻餅をつく。頼まれてた荷物は大丈夫かしら、慌てて荷物を確認する。よかった、大丈夫そう。
「ちょっと、どこ見て歩いてるのよ」
きっと睨み付けながら立ち上がるが、私よりも10センチほど身長が高いその男に反省の色はない。いや、むしろこちらを馬鹿にしているような顔すらしている。
「前見て歩いてないのはお前だろ?どうすんだよこの服汚れちまったよお前のせいで、高いんだよこれ」
……当たり屋とか古いんだけど。その手法も。
「どう見ても過失はあんたの方だと思うけど?あんたのせいで尻餅ついた身体は痛いし買ったものだって危うく台無しになるところだったわ。
大体どこが汚れて……ああもう、当たり屋なんて相手するだけくだらない……あんたが謝れとは言わないからもう行かせてもらうわよ、それじゃ」
「おいおい行かせると思う?」
横を通り抜けようとした私の腕を無遠慮に掴まれ進めなくなる。
「……しつこい」
睨み付けるも全く効果はないようで、今度は馬鹿にしたような態度からへらへらと軽薄そうな笑みを浮かべている。
「ごめんごめんさっきのは謝るよ、君が可愛い子だったからつい意地悪しちゃったんだ。お詫びしたいからそこでお茶でもどう?」
初対面の子を可愛いと言う理由で意地悪してもまだ許されるのは小学低学年までであり大の大人がすることじゃない。まあ元々金を取るかそれができなかったらナンパに移行するっていう目論見だっただけなんだろうけど。
もう言葉を交わすのも億劫でなんとか腕を離そうと捩るが、私が女で相手が男だからなのかさっぱりそれは功を成さない。
早く帰らないと皆が心配する。何よりおかみさんが今か今かとこのボトルを待っているのに。
もう大声を出して周囲の気を引き怯ませてしまおうかと息を吸い込んだ、刹那。
「俺の妹に何か」
その声と共に私の腕を掴む男の手を更に掴みあげる。
「いたたたたた!」
当たり屋と私の間に割って入ってきたのは。
「じょ、」
彼の名前を呼ぼうとして、顔だけこちらを振り返ったその口元に当てられた人差し指でああ、と察する。
「……兄さん」
「この男はなんだ」
「当たり屋。いまどきあり得ないでしょう?私お母さんに頼まれたボトル抱えてたのにこの人勢いよくぶつかってきて私尻餅までついたのよ?ボトルは大丈夫だったけどもう腰痛くて最悪よ……」
「……と、言ってるが本当か?当たり屋さん」
「っ、すいませ、腕、離してっ」
「ああ、悪い。妹が心配でね、つい力が入ってしまったようだ」
ぱ、っと助手が手を離すと当たり屋は掴まれた手を怯え震えながら擦っていた。相当な力が入っていたのかしら。だとしたらこの助手、それなりに腕力があるのね。
「それで、何か言うことがあるんじゃないのか?」
「っ当たり屋やってすんません!」
「おい待て」
頭を下げて走り去ろうとする男の腕をすかさず掴み、「それだけじゃないだろ?俺の妹が腰まで痛めてんのに、誠意が足りねえんじゃねえか?」
……なんか逆にこっちが当たり屋みたいになってきてない?当たり屋怯えちゃってるし……こいつにどうさせたいのよ助手、と思いながら彼をみると視線に気付いた助手もこちらを向き目が合う。
……いやにっこり笑わないで。怖い。
ヘビ探偵だったらこの表情で本気なのか本気じゃないのかわかりそうだけどあいにく私はこの男の感情は読めないしそこまで思い入れもないわけで。
「もういいよ兄さん。私早く帰りたい」
片手で荷物を抱え、空いた手で助手の服を引く。
……いや残念そうな顔をしないで。人は玩具じゃないのよ。
「……妹に免じ今回は許すが、次はないぞ。わかったらさっさとどこへでも消えろ」
「はっはい!ほんとっ、すいませんでしたーーー!!!」
……ああいう人間って、逃げ足も速いのはなんなのかしらね。
さて、お礼を言わないと。
「助かったわ。でも、どうしてここに?」
「ヘビ探偵と別行動でこの商店街の人間の依頼に当たっていた。事務所に戻ろうとした矢先、往来で揉めている男女がいるかと思えば知った顔で驚いたよ」
「そういうこと……でも助手に助けられたって、なんだか信じられないわ。ヘビ探偵にしかそういう気遣いできないものだと」
「そこまで薄情じゃないさ」
どうだか……と言いたくて飲み込んだ。どちらにせよ助けられた事実には変わらないし。
「ほんとありがとう。今度旅館に来たときはフルーツ牛乳でもサービスしてあげる。それじゃ」
「待て」
抱えていた荷物が上からさっと持ち上げられる。
あ、と思う間に荷物は助手の腕の中に納められていた。
「ついでだ、送る」
「別にそこまでしなくても」
「腰を痛めたのだろう?」
「……」
腰はもう痛くないけどまあ、断る理由もないか……。
「じゃあ、お願い」
旅館までの道のりは約15分ほど。
実は自転車が旅館にはあるのだがチェーンが外れてしまい、私には直せないから徒歩で出てきたのだ。
助手の実態がいまいちわからない私はその道のり15分が無言のまま終わるんじゃないかと内心辟易したけど、
「ヘビ探偵は過保護なんだよ……。今日は一人で依頼を任してくれたがそれも散々俺が一人でもできると毎日アピールしてようやく初めて任されたからな」
「過保護わかるわ……でも任されてよかったじゃない。私だってずっとおかみさんに出来るって言ってるのに未だに厨房立たせてもらえないのよ?おかみさんどころかヘビ従業員とシェフまで結託して私を厨房にいれないし。助手が羨ましいわ……」
「……何故人間ではなくわざわざ生態からして作業効率の悪いヘビが厨房を担当しているのか疑問だったがそうか、そういうことだったんだな」
「確かに料理は得意じゃないけど、練習もさせてくれないんだもの、そりゃ上達する筈もないじゃない!」
「これはこれはご立腹な様子で」
「当たり前よ!」
……あら。なんだか話していて気楽だわ。
「お互い上が過保護だと困るな」
「ほんとね」
話していて気楽だなんて……考えてみればおかしな話ね。一度すべてを奪われた相手なのに今や憎悪も何もない。あの事件から一年弱であるとはいえ時だけが解決したとも思えないし……。
……なんて。わざわざ思案しなくてもほんとは分かってる。あの事件の首謀者BLACK Doctorは死んだ。こいつはそんな男とは無関係のただのヘビ探偵がそのへんで拾ってきた助手だもの。ヘビ探偵が大切にしている助手だもの。
だから絡まれているところを助けてくれたしこうして自分の時間を割いてなんの得にもならない私を旅館まで送り届けるなんて行動を取る。
あの男なら絶対にしないであろう行動を取るんだもの。
「……どうした、急に無言になって」
「……もし私が料理教えてって言ったら教えてくれる?」
「いいぞ」
だってほら、ためしに言ってみただけなのに即答で快諾した。ただの面倒見のいい人間よこれ?これじゃほんとに兄みたいじゃない。ヘビ探偵、一体どういう教育をしたらこうなるのよ……。
「見返したいんだろう?フルコースを作れるくらいの腕にしてやる」
「ふ、フルコースってずいぶんと大きく出るわね」
「それくらいの気概を持たないと上達はしない」
「……まあ、それもそうね」
「都合のいい日があれば事前に言え。材料はこっちで用意する。連絡先は……グループがあるからそこから個人に飛べるな」
「ええ」
旅館が見えてくる。
「送ってくれてありがとう」
「礼には及ばん。……ところであの遠くにいるのヘビ従業員じゃないか?」
「え?」
見ると旅館の方からヘビ従業員が「従業員ちゃーん!おかえり~!」と大声を出し時折ぴょんぴょん跳ねながらこちらに向かってくるのが見える。
「出迎えとはどこまでも大切にされているじゃないか。さて、迎えが来たなら俺はここで帰らせてもらう」
「あ、ええ。荷物ありがと」
「じゃあな」
踵を返して来た道を戻っていく助手の姿をぼんやり見送る。まだ不思議な感覚がふわふわと残ってる。
……ほんとにわざわざ送られたのね、私。
「従業員ちゃん!おかえり!」
私に追い付いた足元のヘビ従業員と目を合わせてしゃがむ。
「ただいま。わざわざ出てくるなんて迎えを口実にしたサボりかしら?」
「違うよ!おかみさんもシェフも従業員ちゃんが帰ってこないからそわそわして仕事に身が入らなかったんだ。そんなにお客さんがいないからぼくが見てくるって言って出てきたんだよ!サボりじゃないよ、もう!」
「またみんなして過保護なんだから……。
疑って悪かったわね……迎えありがとう、帰りましょ」
「うん!」
立ち上がり旅館へと歩く。ヘビ従業員と足並みを合わせながら。
「……ところでさっき隣にいたのってヘビ探偵の助手?」
「そうよ、送ってくれたの」
「へえ~、今度お礼を言わなきゃ」
「……あ」
「うん?」
「伝えてないことあったっ」
振り返る。助手の姿はすっかり小さい。
……大きく息を吸い込んで。
「兄さーん!」
あ、振り返った。表情までは見えないけど。
「ありがとー!気を付けて帰りなさいよー!」
大きく手を振ってみた。
……助手は軽く手を挙げてまた前を向いた。
反応してくれたことに驚きながら笑いが込み上げる。
「急に大声だすからびっくりしたよ!でも兄さん、ってどういうこと?」
「ふふ、今日の業務が終わったら教えてあげる。さあ、旅館まで競争よ!負けたら今日のフルーツ牛乳奢りね!」
「ええ!?すごくご機嫌だ……、ていうかヘビ相手にそんな無茶だよ!待って従業員ちゃん!」
愉快な気持ちが抑えきれない。大声を出したせい?まあなんでもいいわ。
次の休みにでも料理を教えてもらおうか。そうと決まれば帰ったら早速休みの予定入れて、連絡しよう。お礼の品も考えないと。そんな思考で走り出す。
もちろん、おつかいの荷物はしっかりと抱えて。
兄が出来た日