ヘビの命(単発まとめ)
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好感度が最高値尚且つ特定の条件を満たした場合に見ることが出来る。二周目以降解禁イベント。
ヘビ主人公視点ver→人間主人公視点ver→ドクター視点
【ヘビver】
「うわ……」
思わず玄関で立ち尽くす。
何度目を瞑ってからかっぴらいてもどしゃ降りな現実は変わらない。
どうして今日天気予報を見てから家を出てこなかったのか……いや、寝坊した自分が悪いのだ。うん。
さて、どしゃ降りの雨に対して何の対策も持っていない自分に出来ることはひとつ。このままびしょ濡れで帰ることだけ。まあそれはそれで楽しいだろう!
「よし!」
気合いを入れて外に一歩踏み出そうとしたとき。
「まったく、天気予報を見る余裕くらい作ったらどうですか」
「ぶ、ブラックドクター……」
聞き馴染みのある呆れた声がすぐ横上部から聞こえ、ぎぎ……とそちらを見やれば声色通りの顔をしたクラスメイトのブラックドクターが自分を見下ろしていた。
「君の言う通りだね……」
全く持ってその通りなので言い返す言葉もない。
「じゃ、じゃあ大丈夫だと思うけどドクターは走る車とかに濡らされないよう気を付けて帰ってね!また明日!」
せっかく作った覚悟が無くなる前に今度こそと外に踏み出した、
「待ってください」
が、再度彼の声に引き止められる。
「えっと……なにかな?」
「何も用がないのに引き止めませんよ」
手に持った傘を見せびらかすように持ち上げながら。
「一緒に帰りましょう。肩を貸します」
「……え?」
……どうしてこうなった。
どしゃ降りの中傘を差す彼の肩に乗って快適に帰路に着いている。いや全然心は快適じゃないけど。心音がドクターに聞こえてしまうんじゃないかってくらいドキドキ言ってるけど。
「……濡れたいのか?大人しくしていろ」
「ごっ、ごめん」
外面を気にしなくて良くなったので口調が素に戻った彼にそう言われ大人しく彼の肩に落ち着く。いや全然落ち着かないけど!ここだと綺麗な顔面が近すぎるし、声もなんか……こう、響きがすとんと落ちやすいような。くすぐったい気持ちになる。
そもそも好きな人と相合い傘をしてるって状況だけで心がはち切れそうなくらいドキドキしてるのに!
でも彼にとって自分はただのクラスメイトのヘビでしかないわけで、ああでもこういうことをしてくれるくらいには少しくらい心を許してくれていると思っていいのかもしれないけど。
でも、だからこそ余計気になることがある。
もしこの光景を学校の誰かが見ていたら噂されてしまうのではないかって。
「あの……ドクター?」
「なんだ」
「もう少し……傘を下げてもらってもいいですか」
「なぜ」
「そしたらほら、肩に乗る僕が外からあまり見えないかな~~?って……」
「はっきり噂されたくないならそう言えばいいだろう」
「なんだ、分かってるんだ」
話が早い。なら早速……
「くだらないな。人の噂なんて気にする必要がない」
「えっ……いやでも、ドクター好き勝手言われるの好きじゃないでしょ?」
「煩いのは嫌いだがそんなものは放っておけばやがて飽きて止むさ」
「でっ、でもはじめに煩いのは変わらないわけで」
「お前は」
言葉を遮られる。
「俺と噂されるのが嫌なのか」
サファイアブルーの瞳に至近距離で見詰められて息を飲む。惹き込まれるような感覚に眩暈すらしてくるから目を逸らそうとしてるのに、出来なくて。
……どこか彼が不機嫌そうなのは気のせいだろうか。
「そ、んなこと、ないよ。全くない。あっ、でも申し訳なくはあるかな!だってほら、僕ってば凡種のヘビだし?噂だけでも君の恋人にされるのは分不相応?ってやつだよね!あはは、いやーないない!絶対ない!絶対……うん……」
思わず早口で捲し立てたものの僕と彼では雲泥の差があるということに改めて思い知らされる。
眉目秀麗、成績優秀で人望もある彼となんの取り柄もなく悪いことはないがただただ平凡なヘビでしかない僕。釣り合うわけがない。そんなの始めから分かっていたのにな……。やはりそう改めて考えるとこう、落ち込んでしまう。
「……お前は俺が誰にでもこういうことをすると思っているのか?」
「え?……それは思わない、かな」
うん、反芻して考えてみたけどやっぱり全く思わない。何も知らない人間からは眉目秀麗成績優秀という評価に品行方正が付け足されるドクターだけどこうして内面を見せてくれるような相手は僕を含めて数えるほどしかいない。ドクターは必要以上に人に干渉することはしないのだ。好かれていると勘違いをされて馴れ馴れしくされるとか、そういう余計な面倒を引き起こす可能性があるから。
……あー、つまり僕はそういう面倒を起こさないと。そういう判断をされるくらいには僕のことを信頼してくれているということになるのかな。それはなんだか、うん、嬉しい。嬉しいけど……少し複雑だ。だって僕には下心があるから。
「……お前となら噂されてもいいと思った」
「えっ」
「勘違いをするな。そう思えるほど俺はお前を信頼している。それだけのことだ」
「あっ、うん、そうだよねっ!わかってるよ!?」
びっ、びっくりした……。そう、僕の予想通り信頼されていただけ。駄目だ駄目だ、勘違いするな僕。煩悩を振り払おうと慌てて首を振った。
「……ここでいいのか?」
「あっ、もう家に着いたの!?いつの間に……」
僕が濡れないよう玄関を開けて中に入るまでサポートしてくれたドクターを見上げる。
……あっという間だったな。名残惜しかったけどこれ以上負担と迷惑を掛けたくない一心で肩をさっと降りた自分を褒めてやりたい。
「今日はありがとう!ちゃんと今度からはお手数掛けないよう天気予報をみることにします!」
人間が手でやるようにしっぽでびしっ!と敬礼の真似事をする。
「ああ、そうしたまえ」
「ええと、じゃあ……」
また明日。また明日かあ。……まだお話していたいけど、いやいや、最後まで潔くあれ、僕!
「まっ」
「また明日な」
僕の言葉を遮りふっと笑う。
また明日。
……また明日って、君が言うのは、ズルいよ。
今まで僕がまた明日って言っても「ああ」としか返事が無かったのにいざそう君から口に出されるのは、違うよ。
「……っうん!また……また明日!」
舞い上がる心からなんとか言葉を絞り出す。
ドクターはひらりと手を軽く振って来た道を帰っていく。その背が見えなくなるまで見詰めてみたけど振り向いてくれることはなかった。
……でも。
わざわざ通り道でもない僕の家に最後まで送り届けてくれたことと、それから……また明日。彼からのその言葉だけで僕は充分だった。
【人間ver(ヘビverを人間verに変えただけです)】
「うわ……」
思わず玄関で立ち尽くす。
何度目を瞑ってからかっぴらいてもどしゃ降りな現実は変わらない。
どうして今日天気予報を見てから家を出てこなかったのか……いや、寝坊した自分が悪いのだ。うん。
さて、どしゃ降りの雨に対して何の対策も持っていない自分に出来ることはひとつ。このままびしょ濡れで帰ることだけ。まあそれはそれで楽しいだろう!
「よし!」
気合いを入れて外に一歩踏み出そうとしたとき。
「まったく、天気予報を見る余裕くらい作ったらどうですか」
「ぶ、ブラックドクター……」
聞き馴染みのある呆れた声がすぐ横から聞こえ、ぎぎ……とそちらを見やれば声色通りの顔をしたクラスメイトのブラックドクターが自分に目を向けていた。
「仰る通りです……」
全く持ってその通りなので言い返す言葉もない。
「じゃ、じゃあ大丈夫だと思うけどドクターは走る車とかに濡らされないよう気を付けて帰ってね!また明日!」
せっかく作った覚悟が無くなる前に今度こそと外に踏み出した、
「待ってください」
が、再度彼の声に引き止められる。
「えっと……なにかな?」
「何も用がないのに引き止めませんよ」
手に持った傘を見せびらかすように持ち上げながら。
「一緒に帰りましょう。送っていきます」
「……え?」
……どうしてこうなった。
どしゃ降りの中傘を差す彼のすぐ隣を歩く。確か男と女で歩幅って違うよね。じゃあ彼が私に合わせて歩いてくれてるってこと?うわ、マジですか。あまりもの急展開で高鳴る心音がドクターに聞こえてしまうんじゃないかとそわそわしてしまう。
「……濡れたいのか?もっと身体を寄せろ」
「ごっ、ごめん」
外面を気にしなくて良くなったので口調が素に戻った彼にそう言われなるべく離れようとしていた努力をやめる。ああでも……綺麗な顔面が近すぎるし、声もなんか……こう、響きがすとんと落ちやすいような。くすぐったい気持ちになってやっぱりそわそわする。
そもそも好きな人と相合い傘をしてるって状況だけで心がはち切れそうなくらいドキドキしてるのに!
でも彼にとって自分はただのクラスメイトでしかないわけで、ああでもこういうことをしてくれるくらいには少しくらい心を許してくれていると思っていいのかもしれないけど。
でも、だからこそ余計気になることがある。
もしこの光景を学校の誰かが見ていたら噂されてしまうのではないかって。
「あの……ドクター?」
「なんだ」
「もう少し離れても……その、気にしないでくれる?」
「なぜ」
「そしたらほら、少しでもそれっぽく見えなくなるんじゃないかな~~?って……」
「はっきり噂されたくないならそう言えばいいだろう」
「なんだ、分かってるんだ」
話が早い。なら早速……
「くだらないな。人の噂なんて気にする必要がない」
「えっ……いやでも、ドクター好き勝手言われるの好きじゃないでしょ?」
「煩いのは嫌いだがそんなものは放っておけばやがて飽きて止むさ」
「でっ、でもはじめに煩いのは変わらないわけで」
「お前は」
言葉を遮られる。
「俺と噂されるのが嫌なのか」
サファイアブルーの瞳に至近距離で見詰められて息を飲む。惹き込まれるような感覚に眩暈すらしてくるから目を逸らそうとしてるのに、出来なくて。
……どこか彼が不機嫌そうなのは気のせいだろうか。
「そ、んなこと、ないよ。全くない。あっ、でも申し訳なくはあるかな!だってほら、私って平々凡々な何の取り柄もない女だし!?噂だけでも君の恋人にされるのは分不相応?ってやつだからさ!あはは、いやーないない!絶対ない!絶対……うん……」
思わず早口で捲し立てたものの私と彼では雲泥の差があるということに改めて思い知らされる。
眉目秀麗、成績優秀で人望もある彼となんの取り柄もなく悪いことはないがただただ平凡な人間でしかない私。釣り合うわけがない。そんなの始めから分かっていたのにな……。やはりそう改めて考えるとこう、落ち込んでしまう。
「……お前は俺が誰にでもこういうことをすると思っているのか?」
「え?……それは思わない、かな」
うん、反芻して考えてみたけどやっぱり全く思わない。何も知らない人間からは眉目秀麗成績優秀という評価に品行方正が付け足されるドクターだけどこうして内面を見せてくれるような相手は私を含めて数えるほどしかいない。ドクターは必要以上に人に干渉することはしないのだ。好かれていると勘違いをされて馴れ馴れしくされるとか、そういう余計な面倒を引き起こす可能性があるから。
……あー、つまり私はそういう面倒を起こさないと。そういう判断をされるくらいには私のことを信頼してくれているということになるのかな。それはなんだか、うん、嬉しい。嬉しいけど……少し複雑だ。だって私には下心があるから。
「……お前となら噂されてもいいと思った」
「えっ」
「勘違いをするな。そう思えるほど俺はお前を信頼している。それだけのことだ」
「あっ、うん、そうだよねっ!わかってるよ!?」
びっ、びっくりした……。そう、私の予想通り信頼されていただけ。駄目だ駄目だ、勘違いするな私。煩悩を振り払おうと慌てて首を振った。
「……ここでいいのか?」
「あっ、もう家に着いたの!?いつの間に……」
私が濡れないよう玄関を開けて中に入るまでサポートしてくれたドクターに目を向ける。
……あっという間だったな。名残惜しかったけどこれ以上負担と迷惑を掛けたくない一心でさっと玄関を開けて中に入った自分を褒めてやりたい。
「今日はありがとう!ちゃんと今度からはお手数掛けないよう天気予報をみることにします!」
びしっ!と姿勢を正して敬礼をする。
「ああ、そうしたまえ」
「ええと、じゃあ……」
また明日。また明日かあ。……まだお話していたいけど、いやいや、最後まで潔くあれ、私!
「まっ」
「また明日な」
私の言葉を遮りふっと笑う。
また明日。
……また明日って、君が言うのは、ズルいよ。
今まで私がまた明日って言っても「ああ」としか返事が無かったのにいざそう君から口に出されるのは、違うよ。
「……っうん!また……また明日!」
舞い上がる心からなんとか言葉を絞り出す。
ドクターはひらりと手を軽く振って来た道を帰っていく。その背が見えなくなるまで見詰めてみたけど振り向いてくれることはなかった。
……でも。
わざわざ通り道でもない私の家に最後まで送り届けてくれたことと、それから……また明日。彼からのその言葉だけで私は充分だった。
【side:BLACK Doctor】
「クソ……」
ぽつりと吐き捨てる。
『また……また明日!』
嬉しそうなアイツの顔が、声が頭から離れない。
思考を誤魔化すように濡れた道路を乱雑に早足で歩くせいでスラックスが裾からびしょ濡れになっていく感覚が伝わってくる。これではクリーニング行き間違いなしだ。そんな些細ことを考えてはふとアイツの顔が思い浮かんでまた苦悩する。どうして、どうしてあんな奴に俺はこんなに心を乱されなければならない。
この感情がなんなのか分からないほど俺も鈍くない。分かっているからこそ腹立たしいのだ。
始めは玄関で立ち尽くすアイツの横を笑って馬鹿にしながら通り過ぎようと思っていた筈だったのに……アイツを見て話しかけようとする連中を確認した瞬間、衝動的に身体はアイツの元に動いていた。
足を止め振り返る。もう随分とアイツの家から歩いて見えるわけがないのに。……絶対俺の姿が見えなくなるまで見送っているであろうアイツの姿なんて見えるわけが、ないのに。
「――――あ、」
それを見て思わず声を漏らしていた。
ゆっくりと傘を下ろし、閉じる。
雨上がりの空に架かる鮮やかな虹に何故かアイツの姿を重ねてしまった。ころころと表情を変えるアイツに似ていると。
ああ、絆されている。間違いなく。
自然と上がる口角を隠すよう手を当てる。
俺は自分が思っているよりもアイツが好きらしい。
GETスチル:『また明日』
傘を差した振り向き微笑流し目ブラックドクター
ヘビ主人公視点ver→人間主人公視点ver→ドクター視点
【ヘビver】
「うわ……」
思わず玄関で立ち尽くす。
何度目を瞑ってからかっぴらいてもどしゃ降りな現実は変わらない。
どうして今日天気予報を見てから家を出てこなかったのか……いや、寝坊した自分が悪いのだ。うん。
さて、どしゃ降りの雨に対して何の対策も持っていない自分に出来ることはひとつ。このままびしょ濡れで帰ることだけ。まあそれはそれで楽しいだろう!
「よし!」
気合いを入れて外に一歩踏み出そうとしたとき。
「まったく、天気予報を見る余裕くらい作ったらどうですか」
「ぶ、ブラックドクター……」
聞き馴染みのある呆れた声がすぐ横上部から聞こえ、ぎぎ……とそちらを見やれば声色通りの顔をしたクラスメイトのブラックドクターが自分を見下ろしていた。
「君の言う通りだね……」
全く持ってその通りなので言い返す言葉もない。
「じゃ、じゃあ大丈夫だと思うけどドクターは走る車とかに濡らされないよう気を付けて帰ってね!また明日!」
せっかく作った覚悟が無くなる前に今度こそと外に踏み出した、
「待ってください」
が、再度彼の声に引き止められる。
「えっと……なにかな?」
「何も用がないのに引き止めませんよ」
手に持った傘を見せびらかすように持ち上げながら。
「一緒に帰りましょう。肩を貸します」
「……え?」
……どうしてこうなった。
どしゃ降りの中傘を差す彼の肩に乗って快適に帰路に着いている。いや全然心は快適じゃないけど。心音がドクターに聞こえてしまうんじゃないかってくらいドキドキ言ってるけど。
「……濡れたいのか?大人しくしていろ」
「ごっ、ごめん」
外面を気にしなくて良くなったので口調が素に戻った彼にそう言われ大人しく彼の肩に落ち着く。いや全然落ち着かないけど!ここだと綺麗な顔面が近すぎるし、声もなんか……こう、響きがすとんと落ちやすいような。くすぐったい気持ちになる。
そもそも好きな人と相合い傘をしてるって状況だけで心がはち切れそうなくらいドキドキしてるのに!
でも彼にとって自分はただのクラスメイトのヘビでしかないわけで、ああでもこういうことをしてくれるくらいには少しくらい心を許してくれていると思っていいのかもしれないけど。
でも、だからこそ余計気になることがある。
もしこの光景を学校の誰かが見ていたら噂されてしまうのではないかって。
「あの……ドクター?」
「なんだ」
「もう少し……傘を下げてもらってもいいですか」
「なぜ」
「そしたらほら、肩に乗る僕が外からあまり見えないかな~~?って……」
「はっきり噂されたくないならそう言えばいいだろう」
「なんだ、分かってるんだ」
話が早い。なら早速……
「くだらないな。人の噂なんて気にする必要がない」
「えっ……いやでも、ドクター好き勝手言われるの好きじゃないでしょ?」
「煩いのは嫌いだがそんなものは放っておけばやがて飽きて止むさ」
「でっ、でもはじめに煩いのは変わらないわけで」
「お前は」
言葉を遮られる。
「俺と噂されるのが嫌なのか」
サファイアブルーの瞳に至近距離で見詰められて息を飲む。惹き込まれるような感覚に眩暈すらしてくるから目を逸らそうとしてるのに、出来なくて。
……どこか彼が不機嫌そうなのは気のせいだろうか。
「そ、んなこと、ないよ。全くない。あっ、でも申し訳なくはあるかな!だってほら、僕ってば凡種のヘビだし?噂だけでも君の恋人にされるのは分不相応?ってやつだよね!あはは、いやーないない!絶対ない!絶対……うん……」
思わず早口で捲し立てたものの僕と彼では雲泥の差があるということに改めて思い知らされる。
眉目秀麗、成績優秀で人望もある彼となんの取り柄もなく悪いことはないがただただ平凡なヘビでしかない僕。釣り合うわけがない。そんなの始めから分かっていたのにな……。やはりそう改めて考えるとこう、落ち込んでしまう。
「……お前は俺が誰にでもこういうことをすると思っているのか?」
「え?……それは思わない、かな」
うん、反芻して考えてみたけどやっぱり全く思わない。何も知らない人間からは眉目秀麗成績優秀という評価に品行方正が付け足されるドクターだけどこうして内面を見せてくれるような相手は僕を含めて数えるほどしかいない。ドクターは必要以上に人に干渉することはしないのだ。好かれていると勘違いをされて馴れ馴れしくされるとか、そういう余計な面倒を引き起こす可能性があるから。
……あー、つまり僕はそういう面倒を起こさないと。そういう判断をされるくらいには僕のことを信頼してくれているということになるのかな。それはなんだか、うん、嬉しい。嬉しいけど……少し複雑だ。だって僕には下心があるから。
「……お前となら噂されてもいいと思った」
「えっ」
「勘違いをするな。そう思えるほど俺はお前を信頼している。それだけのことだ」
「あっ、うん、そうだよねっ!わかってるよ!?」
びっ、びっくりした……。そう、僕の予想通り信頼されていただけ。駄目だ駄目だ、勘違いするな僕。煩悩を振り払おうと慌てて首を振った。
「……ここでいいのか?」
「あっ、もう家に着いたの!?いつの間に……」
僕が濡れないよう玄関を開けて中に入るまでサポートしてくれたドクターを見上げる。
……あっという間だったな。名残惜しかったけどこれ以上負担と迷惑を掛けたくない一心で肩をさっと降りた自分を褒めてやりたい。
「今日はありがとう!ちゃんと今度からはお手数掛けないよう天気予報をみることにします!」
人間が手でやるようにしっぽでびしっ!と敬礼の真似事をする。
「ああ、そうしたまえ」
「ええと、じゃあ……」
また明日。また明日かあ。……まだお話していたいけど、いやいや、最後まで潔くあれ、僕!
「まっ」
「また明日な」
僕の言葉を遮りふっと笑う。
また明日。
……また明日って、君が言うのは、ズルいよ。
今まで僕がまた明日って言っても「ああ」としか返事が無かったのにいざそう君から口に出されるのは、違うよ。
「……っうん!また……また明日!」
舞い上がる心からなんとか言葉を絞り出す。
ドクターはひらりと手を軽く振って来た道を帰っていく。その背が見えなくなるまで見詰めてみたけど振り向いてくれることはなかった。
……でも。
わざわざ通り道でもない僕の家に最後まで送り届けてくれたことと、それから……また明日。彼からのその言葉だけで僕は充分だった。
【人間ver(ヘビverを人間verに変えただけです)】
「うわ……」
思わず玄関で立ち尽くす。
何度目を瞑ってからかっぴらいてもどしゃ降りな現実は変わらない。
どうして今日天気予報を見てから家を出てこなかったのか……いや、寝坊した自分が悪いのだ。うん。
さて、どしゃ降りの雨に対して何の対策も持っていない自分に出来ることはひとつ。このままびしょ濡れで帰ることだけ。まあそれはそれで楽しいだろう!
「よし!」
気合いを入れて外に一歩踏み出そうとしたとき。
「まったく、天気予報を見る余裕くらい作ったらどうですか」
「ぶ、ブラックドクター……」
聞き馴染みのある呆れた声がすぐ横から聞こえ、ぎぎ……とそちらを見やれば声色通りの顔をしたクラスメイトのブラックドクターが自分に目を向けていた。
「仰る通りです……」
全く持ってその通りなので言い返す言葉もない。
「じゃ、じゃあ大丈夫だと思うけどドクターは走る車とかに濡らされないよう気を付けて帰ってね!また明日!」
せっかく作った覚悟が無くなる前に今度こそと外に踏み出した、
「待ってください」
が、再度彼の声に引き止められる。
「えっと……なにかな?」
「何も用がないのに引き止めませんよ」
手に持った傘を見せびらかすように持ち上げながら。
「一緒に帰りましょう。送っていきます」
「……え?」
……どうしてこうなった。
どしゃ降りの中傘を差す彼のすぐ隣を歩く。確か男と女で歩幅って違うよね。じゃあ彼が私に合わせて歩いてくれてるってこと?うわ、マジですか。あまりもの急展開で高鳴る心音がドクターに聞こえてしまうんじゃないかとそわそわしてしまう。
「……濡れたいのか?もっと身体を寄せろ」
「ごっ、ごめん」
外面を気にしなくて良くなったので口調が素に戻った彼にそう言われなるべく離れようとしていた努力をやめる。ああでも……綺麗な顔面が近すぎるし、声もなんか……こう、響きがすとんと落ちやすいような。くすぐったい気持ちになってやっぱりそわそわする。
そもそも好きな人と相合い傘をしてるって状況だけで心がはち切れそうなくらいドキドキしてるのに!
でも彼にとって自分はただのクラスメイトでしかないわけで、ああでもこういうことをしてくれるくらいには少しくらい心を許してくれていると思っていいのかもしれないけど。
でも、だからこそ余計気になることがある。
もしこの光景を学校の誰かが見ていたら噂されてしまうのではないかって。
「あの……ドクター?」
「なんだ」
「もう少し離れても……その、気にしないでくれる?」
「なぜ」
「そしたらほら、少しでもそれっぽく見えなくなるんじゃないかな~~?って……」
「はっきり噂されたくないならそう言えばいいだろう」
「なんだ、分かってるんだ」
話が早い。なら早速……
「くだらないな。人の噂なんて気にする必要がない」
「えっ……いやでも、ドクター好き勝手言われるの好きじゃないでしょ?」
「煩いのは嫌いだがそんなものは放っておけばやがて飽きて止むさ」
「でっ、でもはじめに煩いのは変わらないわけで」
「お前は」
言葉を遮られる。
「俺と噂されるのが嫌なのか」
サファイアブルーの瞳に至近距離で見詰められて息を飲む。惹き込まれるような感覚に眩暈すらしてくるから目を逸らそうとしてるのに、出来なくて。
……どこか彼が不機嫌そうなのは気のせいだろうか。
「そ、んなこと、ないよ。全くない。あっ、でも申し訳なくはあるかな!だってほら、私って平々凡々な何の取り柄もない女だし!?噂だけでも君の恋人にされるのは分不相応?ってやつだからさ!あはは、いやーないない!絶対ない!絶対……うん……」
思わず早口で捲し立てたものの私と彼では雲泥の差があるということに改めて思い知らされる。
眉目秀麗、成績優秀で人望もある彼となんの取り柄もなく悪いことはないがただただ平凡な人間でしかない私。釣り合うわけがない。そんなの始めから分かっていたのにな……。やはりそう改めて考えるとこう、落ち込んでしまう。
「……お前は俺が誰にでもこういうことをすると思っているのか?」
「え?……それは思わない、かな」
うん、反芻して考えてみたけどやっぱり全く思わない。何も知らない人間からは眉目秀麗成績優秀という評価に品行方正が付け足されるドクターだけどこうして内面を見せてくれるような相手は私を含めて数えるほどしかいない。ドクターは必要以上に人に干渉することはしないのだ。好かれていると勘違いをされて馴れ馴れしくされるとか、そういう余計な面倒を引き起こす可能性があるから。
……あー、つまり私はそういう面倒を起こさないと。そういう判断をされるくらいには私のことを信頼してくれているということになるのかな。それはなんだか、うん、嬉しい。嬉しいけど……少し複雑だ。だって私には下心があるから。
「……お前となら噂されてもいいと思った」
「えっ」
「勘違いをするな。そう思えるほど俺はお前を信頼している。それだけのことだ」
「あっ、うん、そうだよねっ!わかってるよ!?」
びっ、びっくりした……。そう、私の予想通り信頼されていただけ。駄目だ駄目だ、勘違いするな私。煩悩を振り払おうと慌てて首を振った。
「……ここでいいのか?」
「あっ、もう家に着いたの!?いつの間に……」
私が濡れないよう玄関を開けて中に入るまでサポートしてくれたドクターに目を向ける。
……あっという間だったな。名残惜しかったけどこれ以上負担と迷惑を掛けたくない一心でさっと玄関を開けて中に入った自分を褒めてやりたい。
「今日はありがとう!ちゃんと今度からはお手数掛けないよう天気予報をみることにします!」
びしっ!と姿勢を正して敬礼をする。
「ああ、そうしたまえ」
「ええと、じゃあ……」
また明日。また明日かあ。……まだお話していたいけど、いやいや、最後まで潔くあれ、私!
「まっ」
「また明日な」
私の言葉を遮りふっと笑う。
また明日。
……また明日って、君が言うのは、ズルいよ。
今まで私がまた明日って言っても「ああ」としか返事が無かったのにいざそう君から口に出されるのは、違うよ。
「……っうん!また……また明日!」
舞い上がる心からなんとか言葉を絞り出す。
ドクターはひらりと手を軽く振って来た道を帰っていく。その背が見えなくなるまで見詰めてみたけど振り向いてくれることはなかった。
……でも。
わざわざ通り道でもない私の家に最後まで送り届けてくれたことと、それから……また明日。彼からのその言葉だけで私は充分だった。
【side:BLACK Doctor】
「クソ……」
ぽつりと吐き捨てる。
『また……また明日!』
嬉しそうなアイツの顔が、声が頭から離れない。
思考を誤魔化すように濡れた道路を乱雑に早足で歩くせいでスラックスが裾からびしょ濡れになっていく感覚が伝わってくる。これではクリーニング行き間違いなしだ。そんな些細ことを考えてはふとアイツの顔が思い浮かんでまた苦悩する。どうして、どうしてあんな奴に俺はこんなに心を乱されなければならない。
この感情がなんなのか分からないほど俺も鈍くない。分かっているからこそ腹立たしいのだ。
始めは玄関で立ち尽くすアイツの横を笑って馬鹿にしながら通り過ぎようと思っていた筈だったのに……アイツを見て話しかけようとする連中を確認した瞬間、衝動的に身体はアイツの元に動いていた。
足を止め振り返る。もう随分とアイツの家から歩いて見えるわけがないのに。……絶対俺の姿が見えなくなるまで見送っているであろうアイツの姿なんて見えるわけが、ないのに。
「――――あ、」
それを見て思わず声を漏らしていた。
ゆっくりと傘を下ろし、閉じる。
雨上がりの空に架かる鮮やかな虹に何故かアイツの姿を重ねてしまった。ころころと表情を変えるアイツに似ていると。
ああ、絆されている。間違いなく。
自然と上がる口角を隠すよう手を当てる。
俺は自分が思っているよりもアイツが好きらしい。
GETスチル:『また明日』
傘を差した振り向き微笑流し目ブラックドクター