ヘビの命(単発まとめ)
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カチャ、と部屋の外……玄関のドアが開く音に瞼を開く。
ご丁寧にスリッパに履き替えたらしいその足音を隠すことなく軽やかに鳴らし、迷いない足取りの持ち主が僕のいる寝室を開く。
「おはよう、ヘビ探偵クン。今日も美しく可憐だな」
「うげえ」
最悪の目覚めだ。
こいつ、また勝手に事務所に入ってきやがった。
「ねえ、昨日鍵変えたと思ったんだけど僕の記憶違いかな?」
「ああ、いつもよりピッキングに時間がかかったのはそういうことか」
悪びれもせずそう言うドクターに眩暈がする。人間だったら頭を抱えるところだ。
本当なら警察に突きだしてやりたいのに出来ないでいるのは、こいつがもう既に死んだことになってて、尚且つ起こしたことがその警察の手によって揉み消されるからだ。……BLACK Doctorという男の実家は警察にも圧力を掛けられる人間がいるようで。
そりゃそうだ、旅館に出した援助70万をどう見ても20代そこらの刑事の助手やってた男がぽんとだせるわけがない、親から資金提供でも受けていたのだろう。そして今こうしてのこのこ平穏に生きているということは死んだことになっている今もその親から守られているということだろう。いや、本当のことは知らないし知りたくもないけどね。よく見ない?政治家の弱みになる子供は切り捨てるか隠すか、みたいな。自分にとって弱みでしかない子供であるドクターに隠れ蓑を用意し何不自由なく暮らさせているのかも……。
……うん、ドラマや漫画でしかそんな展開知らないし現実にあってたまるか。僕は考えるのをやめた。
「ていうか言いたかったんだけどピッキングするのに朝は人目につくからって夜更けに来るのやめてくれない?僕は7時まで寝てたいんだよ、ねえ今何時かわかってる?」
「4時20分だな」
「早すぎるよね!?来るな、は言っても無駄だからもう言わないけどせめてもう少し僕のこと思って寝かせてくれない!?」
「なら一緒に寝ればいい」
「いやいい布団に入ってこようとしなくていいから!」
「眠いんだろ?」
「誰かさんのせいでもうばっちり目覚めてるよ!」
「そうか、それは残念だ」
くつくつと笑うドクターの顔面を尻尾で叩きつけてやりたいがぐっとこらえる。昨日それをしたら「随分と過激な愛情表現だな」なんてにやりと笑いながら返されて寒気が止まらなかったからだ。顔面を僕に殴られてるくせに口が減らない男だよ。(ちなみに寒気止まらないからやめろ!と言ったら暖めてやろうか?と更に返されて殺意を止めるのが大変だった。)
「さあ、朝食にしようか、材料はもちろん持参している」
「……朝食にしては早すぎるよ」
「ならやはり共に寝るか」
「あーやっぱり食べようかなうん、僕お腹すいた!」
ベッドからそそくさと下りリビングに向かう。
後ろからきたドクターに作るから座って待ってろと言われ、お言葉に甘えてソファーで朝刊の新聞を読むことにした。これが一度や二度目の頃はキッチンに立って欲しくなくて一悶着あったのだが六度目にもなってくるともうどうでもよくなるのだ。慣れって怖い。
新聞を開きながらそっと気付かれないように伺う。……無駄のない動きをしながら調理をするドクターは鼻歌まで歌ってご機嫌だ。
……本当にどうしてこうなったのか……考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
どうもドクターには思い込みが強い節があるのか再会した(というか押し掛けてきた)彼はヘビ、という存在を高貴で美しいものだと、そしてその中でも僕は群を抜いて可憐で美しいと言って毎日付きまとってくるようになった。ストーカーという言葉が可愛く思えるほど大胆に堂々とこいつは住居侵入をするしこのようにごはんも勝手に用意する。ちなみに今作ってる朝食だが恐らくなにか異物混入されている。今までがそうだったからどうせあれも入っている。僕は新設した旅館での名物である飲める天然温泉をおかみさんから特別に提供して貰っていて、それを毎日飲むことによってあらゆる毒性のものへの耐性があるから問題はないけど、もし効いていたら……と思うとぞっとする。
ちなみにそれを飲んでいるから何しても薬は効かない、と伝える気はない。そういう類いが効くかもしれない、と思わせているうちは安全であることが確定しているからだ。
「そんな熱烈に俺を見つめてどうした?」
「またなんか変なものいれてないか見てるだけだよ」
「心外だな、食べられるものしかいれていない」
「変な薬を食べられるものにカウントしないでくれる?」
「はは」
「何も笑うところじゃないんだけど?」
駄目だ相手するだけ疲労する……僕は朝刊に集中することにした。
「どうぞめしあがれ」
ダイニングテーブルに用意された本日の朝食は野菜たっぷりのスープに生野菜サラダ、半熟加減の目玉焼きとベーコンというラインナップだ。主食がないのは僕が好んで食べないことを今まで作ってきたなかで察したからだろう。つまりそう、ラインナップだけでいうと非常に僕好みなのだ、そしてきっと、味付けも。
「……いただきます」
……ほら、おいしい。一昨日よりも、昨日よりも。どんどん味付けが僕好みになっていく。
「気に入ってくれてなによりだ」
僕が黙って夢中に食べていると頬杖をついて僕の一挙一動を逃さず見ているドクターが口角を上げて言う。
「しかし効かないか、今日のは自信があったのだが」
「……」
今の発言はスルーとする。
「ドクターは食べないの?」
ある程度を食べ終わっても未だ飽きもせず僕を見つめ続けるドクターに呆れながら聞いてみた。
「あ?……ああ、調理の過程で満たされたからな、野菜スープのおかわりならまだ残っているが食べるか?」
「ふうん、じゃあ遠慮なくもらおうかな、といいたいところだけど、その前に」
「……なんだ?」
「お話があります」
僕は背筋を正し向かいの席のドクターを見据えると、ドクターも不思議そうな顔をしながら何も言わずに姿勢を正した。
「ちょっとまってね」
椅子から降り、仕事用のデスクの引き出しからとあるものを持ち出してからまた席に戻る。
「これ、ドクターに渡しておくよ」
僕はドクターの前に持ち出してきたものを置いた。
「……いい、のか?」
信じられない、といった顔で僕とそれ……この事務所の合鍵を交互に見る。
「毎日毎日ピッキングされてあんな時間に起こされるのも嫌だし、もしピッキングの様子を近所の人に見られたらめんどくさいことになるし、そもそも来るなって言っても聞かないからもう渡しちゃえと思って昨日わざわざ作ってきたんだよ」
「……」
「どうしたの?君の言う美しく可憐な僕からのプレゼントが気に入らない?」
何も言わずに合鍵に触れるだけのドクターに嫌みったらしく言ってみた。
「……いや、……悪い、言葉が、でてこなくて、だな」
触れるだけだった合鍵を持ち、握り締める。
「……本当にいいのか?」
「君散々僕の事務所不法侵入しといて今さらそれはないんじゃない?」
「それとこれとは訳が違うだろ、これは……同意だ」
「そうだよ、これからは僕の同意の上で堂々と不法侵入できるんだ、よかったね」
「……お前は何もわかってない、俺は、」
「ならこれから教えてよ、愛しい不法侵入者の黒幕クン?」
「……!」
……僕の好きなご飯を探すのにその鋭い洞察力を使わないでもっと他に向ければいいのに、とは思わなかった。そもそも僕が甘んじてこの連日の行為を受け止めているのは他に目を向けさせないためだ。もう何も、誰も傷付けることのないように。
何がどうして彼のなかで僕に粘着することに繋がったのかは不明だし、お前は何もわかってない、と言っていることから恐らく何か思惑があるに違いないが、今こうして僕に夢中になっていることを利用しない手はない。
君が僕を盲愛するならば、更に僕は君に愛を囁こう。
黒幕は黒幕らしく、探偵の僕だけを見ていればいいんだ。
ね、これでおあいこじゃない?
僕はにっこりとドクターに微笑んだ。
参考資料
7月14日誕生花
『カワラナデシコ 可憐、大胆』
『ノウゼンガズラ 名声、名誉』
『バラ 愛、美』
7月14日誕生石
『スリーカラーフルオールライト 多面性』
ご丁寧にスリッパに履き替えたらしいその足音を隠すことなく軽やかに鳴らし、迷いない足取りの持ち主が僕のいる寝室を開く。
「おはよう、ヘビ探偵クン。今日も美しく可憐だな」
「うげえ」
最悪の目覚めだ。
こいつ、また勝手に事務所に入ってきやがった。
「ねえ、昨日鍵変えたと思ったんだけど僕の記憶違いかな?」
「ああ、いつもよりピッキングに時間がかかったのはそういうことか」
悪びれもせずそう言うドクターに眩暈がする。人間だったら頭を抱えるところだ。
本当なら警察に突きだしてやりたいのに出来ないでいるのは、こいつがもう既に死んだことになってて、尚且つ起こしたことがその警察の手によって揉み消されるからだ。……BLACK Doctorという男の実家は警察にも圧力を掛けられる人間がいるようで。
そりゃそうだ、旅館に出した援助70万をどう見ても20代そこらの刑事の助手やってた男がぽんとだせるわけがない、親から資金提供でも受けていたのだろう。そして今こうしてのこのこ平穏に生きているということは死んだことになっている今もその親から守られているということだろう。いや、本当のことは知らないし知りたくもないけどね。よく見ない?政治家の弱みになる子供は切り捨てるか隠すか、みたいな。自分にとって弱みでしかない子供であるドクターに隠れ蓑を用意し何不自由なく暮らさせているのかも……。
……うん、ドラマや漫画でしかそんな展開知らないし現実にあってたまるか。僕は考えるのをやめた。
「ていうか言いたかったんだけどピッキングするのに朝は人目につくからって夜更けに来るのやめてくれない?僕は7時まで寝てたいんだよ、ねえ今何時かわかってる?」
「4時20分だな」
「早すぎるよね!?来るな、は言っても無駄だからもう言わないけどせめてもう少し僕のこと思って寝かせてくれない!?」
「なら一緒に寝ればいい」
「いやいい布団に入ってこようとしなくていいから!」
「眠いんだろ?」
「誰かさんのせいでもうばっちり目覚めてるよ!」
「そうか、それは残念だ」
くつくつと笑うドクターの顔面を尻尾で叩きつけてやりたいがぐっとこらえる。昨日それをしたら「随分と過激な愛情表現だな」なんてにやりと笑いながら返されて寒気が止まらなかったからだ。顔面を僕に殴られてるくせに口が減らない男だよ。(ちなみに寒気止まらないからやめろ!と言ったら暖めてやろうか?と更に返されて殺意を止めるのが大変だった。)
「さあ、朝食にしようか、材料はもちろん持参している」
「……朝食にしては早すぎるよ」
「ならやはり共に寝るか」
「あーやっぱり食べようかなうん、僕お腹すいた!」
ベッドからそそくさと下りリビングに向かう。
後ろからきたドクターに作るから座って待ってろと言われ、お言葉に甘えてソファーで朝刊の新聞を読むことにした。これが一度や二度目の頃はキッチンに立って欲しくなくて一悶着あったのだが六度目にもなってくるともうどうでもよくなるのだ。慣れって怖い。
新聞を開きながらそっと気付かれないように伺う。……無駄のない動きをしながら調理をするドクターは鼻歌まで歌ってご機嫌だ。
……本当にどうしてこうなったのか……考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
どうもドクターには思い込みが強い節があるのか再会した(というか押し掛けてきた)彼はヘビ、という存在を高貴で美しいものだと、そしてその中でも僕は群を抜いて可憐で美しいと言って毎日付きまとってくるようになった。ストーカーという言葉が可愛く思えるほど大胆に堂々とこいつは住居侵入をするしこのようにごはんも勝手に用意する。ちなみに今作ってる朝食だが恐らくなにか異物混入されている。今までがそうだったからどうせあれも入っている。僕は新設した旅館での名物である飲める天然温泉をおかみさんから特別に提供して貰っていて、それを毎日飲むことによってあらゆる毒性のものへの耐性があるから問題はないけど、もし効いていたら……と思うとぞっとする。
ちなみにそれを飲んでいるから何しても薬は効かない、と伝える気はない。そういう類いが効くかもしれない、と思わせているうちは安全であることが確定しているからだ。
「そんな熱烈に俺を見つめてどうした?」
「またなんか変なものいれてないか見てるだけだよ」
「心外だな、食べられるものしかいれていない」
「変な薬を食べられるものにカウントしないでくれる?」
「はは」
「何も笑うところじゃないんだけど?」
駄目だ相手するだけ疲労する……僕は朝刊に集中することにした。
「どうぞめしあがれ」
ダイニングテーブルに用意された本日の朝食は野菜たっぷりのスープに生野菜サラダ、半熟加減の目玉焼きとベーコンというラインナップだ。主食がないのは僕が好んで食べないことを今まで作ってきたなかで察したからだろう。つまりそう、ラインナップだけでいうと非常に僕好みなのだ、そしてきっと、味付けも。
「……いただきます」
……ほら、おいしい。一昨日よりも、昨日よりも。どんどん味付けが僕好みになっていく。
「気に入ってくれてなによりだ」
僕が黙って夢中に食べていると頬杖をついて僕の一挙一動を逃さず見ているドクターが口角を上げて言う。
「しかし効かないか、今日のは自信があったのだが」
「……」
今の発言はスルーとする。
「ドクターは食べないの?」
ある程度を食べ終わっても未だ飽きもせず僕を見つめ続けるドクターに呆れながら聞いてみた。
「あ?……ああ、調理の過程で満たされたからな、野菜スープのおかわりならまだ残っているが食べるか?」
「ふうん、じゃあ遠慮なくもらおうかな、といいたいところだけど、その前に」
「……なんだ?」
「お話があります」
僕は背筋を正し向かいの席のドクターを見据えると、ドクターも不思議そうな顔をしながら何も言わずに姿勢を正した。
「ちょっとまってね」
椅子から降り、仕事用のデスクの引き出しからとあるものを持ち出してからまた席に戻る。
「これ、ドクターに渡しておくよ」
僕はドクターの前に持ち出してきたものを置いた。
「……いい、のか?」
信じられない、といった顔で僕とそれ……この事務所の合鍵を交互に見る。
「毎日毎日ピッキングされてあんな時間に起こされるのも嫌だし、もしピッキングの様子を近所の人に見られたらめんどくさいことになるし、そもそも来るなって言っても聞かないからもう渡しちゃえと思って昨日わざわざ作ってきたんだよ」
「……」
「どうしたの?君の言う美しく可憐な僕からのプレゼントが気に入らない?」
何も言わずに合鍵に触れるだけのドクターに嫌みったらしく言ってみた。
「……いや、……悪い、言葉が、でてこなくて、だな」
触れるだけだった合鍵を持ち、握り締める。
「……本当にいいのか?」
「君散々僕の事務所不法侵入しといて今さらそれはないんじゃない?」
「それとこれとは訳が違うだろ、これは……同意だ」
「そうだよ、これからは僕の同意の上で堂々と不法侵入できるんだ、よかったね」
「……お前は何もわかってない、俺は、」
「ならこれから教えてよ、愛しい不法侵入者の黒幕クン?」
「……!」
……僕の好きなご飯を探すのにその鋭い洞察力を使わないでもっと他に向ければいいのに、とは思わなかった。そもそも僕が甘んじてこの連日の行為を受け止めているのは他に目を向けさせないためだ。もう何も、誰も傷付けることのないように。
何がどうして彼のなかで僕に粘着することに繋がったのかは不明だし、お前は何もわかってない、と言っていることから恐らく何か思惑があるに違いないが、今こうして僕に夢中になっていることを利用しない手はない。
君が僕を盲愛するならば、更に僕は君に愛を囁こう。
黒幕は黒幕らしく、探偵の僕だけを見ていればいいんだ。
ね、これでおあいこじゃない?
僕はにっこりとドクターに微笑んだ。
参考資料
7月14日誕生花
『カワラナデシコ 可憐、大胆』
『ノウゼンガズラ 名声、名誉』
『バラ 愛、美』
7月14日誕生石
『スリーカラーフルオールライト 多面性』