ヘビの命(単発まとめ)
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今日はリボンちゃんの気分転換に付き合う日(愛犬は両親に預けているらしい)。
待ち合わせ場所に早めに向かうともう既に来ていたらしいリボンちゃんがチャラそうな男にナンパされていた。この前もナンパされてたから待たせまいと思って30分早く待ち合わせ場所に来たんだけどな……次はもっともっと早く来なければいけない。そもそも女の子を待たせることが僕の心情に反するっていうのに。
自己反省会は後だ。僕は適当にリボンちゃんをナンパする不届き者を蹴散らした。
「ここのパンケーキめちゃくちゃ美味しいわね……今度は従業員ちゃんと来ましょ……」
目をキラキラさせて美味しそうにふわふわのパンケーキを頬張る彼女は見ていて飽きない。普段の彼女は歳上で自分より背が高い男相手でも物怖じすることなく粛清するようなかっこいい女の子だけど、こうして見るとやっぱりリボンちゃんは年相応の可愛らしい女の子なんだなあって微笑ましくなる。
……そして見てるだけでお腹が満足する……。
イチゴと生クリームがたっぷり乗っかったスフレパンケーキ。
シンプルなおいしさであろうメープルパンケーキ。
食べ方を一歩間違えればすぐに崩れてしまいそうな果物たっぷりパフェ。
そして2杯目の抹茶フラペチーノ。
女の子は甘いものに関しては食欲無限なのだろうか……と不思議に思いながら僕はブレンドやらマウンテンやらこの店ではどのコーヒーが一番美味しいか飲み比べを楽しむ。一見退屈に見えるかもしれないけど僕はこの時間が嫌いじゃないしむしろ好きで、リボンちゃんもそれがよくわかっているから余計な気はお互い使わない。
心地いい時間だ。
「なあ、あの子めっちゃかわいくね?」
「やば、アイドル並みじゃん」
そんな声が後ろから聞こえてくる。さすがに真後ろのテーブル席を振り返る度胸はないがまあ十中八九あの子、はリボンちゃんのことだろう。
「声かけてみる……?」
「え、でもヘビといるじゃんさすがに迷惑だろ」
「ヘビならなおさら気にしなくてもいいだろヘビなんだし」
でたでた。僕は内心でやれやれと呆れる。人間だったら肩を竦ませているところだ。
もうその扱いには慣れっこだから今さらどうも思わないが、そんな離れた位置ではないところで僕の耳にわりと大きい声で聞こえているということは……
「……」
「り、リボンちゃん、女の子がしちゃいけない顔してる……!ほら、食べておちつこ?あーん」
慌てて僕はテーブルに身を乗り出して尾でフォークを取り、食べやすいようなサイズで切り分けてリボンちゃんの口元に運ぶ。
「……ん、落ち着いた、大丈夫」
「そっか、よかったよ」
「なにか言い返してやればいいのに」
納得いかない、と言ったようなリボンちゃんに、そう君が僕を思ってくれるだけで嬉しいから、と微笑みかけた。
「それに言い返したところで既にヘビを見下している人間の心は変わらないよ、……自分の命に関わらない限り」
「……それもそうね」
二杯目のフラペチーノが空になりそうだ。追加注文しようとボタンを押した、瞬間。
「まあヘビを見下すような男に興味はないわ、そんなやつと付き合ったところで絶対そんな男は彼女も下に見てくるって相場が決まってんのよ、そんなやつ始めから願い下げよ身の程弁えてから出直してきなさい」
店全体に届くほどでもないが、あの客には確実に聞こえているであろう旅館で議論をするときに何度も聞いた、力強く凛とした声のトーンでいきなりそう言い出すものだから僕はぽかんとする。
「あらヘビ探偵、一人言よ」
ふふ、と悪戯っぽく笑ったのは一瞬で、ちょうどよくきた店員さんに「レモネードフラペチーノひとつ」となに食わない顔で注文した。
「まったく……落ち着いたって言ったのに」
「納得したとは言ってないわ」
はいお詫び、とフォークで差し出されたパンケーキを頬張る。
「……ありがとう、嬉しかったよ」
「私が勝手にしただけよ」
そろそろ注文したデザートの残りが三分の一くらいの量になった頃、こうしてナンパとか人の視線を引く彼女自身が好きなタイプはどんな人だろうか気になって質問してみた。
「ん~、そうね……やっぱりイケメン高身長で安定した職業についてて高収入で思いやりがある、っていうのは外せないかしら」
絵に描いたような理想像だね、と伝えながらいや、そうじゃないと……と逆の発想が僕のなかに浮かぶ。
「でもリボンちゃんはそれに見合うような努力家で向上心があって、自分の夢にまっすぐ歩いている素敵な女の子だから、僕もそれくらいの相手じゃないとリボンちゃんの相手として認められないなあ」
思ったことをそのまま口に出す。うん、しっくりきたな。
「……冗談なのに真面目に受け取ってまっすぐそう言ってくれるヘビも悪くないと思ってるわよ」
「……え」
三杯目のフラペチーノに刺さるストローを手で弄びながら、彼女にしては珍しくぽつりと聞こえるか聞こえないかの声。僕が人だったら聞き逃していたかもしれないセリフに困惑する。
「いつも早く来すぎているのは貴方が私のためにナンパ男を蹴散らしてくれる姿が見たいからって言ったら、怒る?」
「そ、そんなことで……怒らないよ」
「かっこいいわね、ヘビじゃなければ。……なんて言ってたこともあったわね。でも今は、」
貴方を心からかっこいいと思ってる。ヘビなのにね。
……そんな君の表情、知らないよ。
目の前で頬杖をつきながらはにかむリボンちゃんはきらきら輝いて、眩しくて、すごく可愛くて、なんだか僕の心はふわふわしてきて。
僕はそんな自分の心の模様に堪えきれなくてコーヒーに目を落としながらストローを咥えた。
待ち合わせ場所に早めに向かうともう既に来ていたらしいリボンちゃんがチャラそうな男にナンパされていた。この前もナンパされてたから待たせまいと思って30分早く待ち合わせ場所に来たんだけどな……次はもっともっと早く来なければいけない。そもそも女の子を待たせることが僕の心情に反するっていうのに。
自己反省会は後だ。僕は適当にリボンちゃんをナンパする不届き者を蹴散らした。
「ここのパンケーキめちゃくちゃ美味しいわね……今度は従業員ちゃんと来ましょ……」
目をキラキラさせて美味しそうにふわふわのパンケーキを頬張る彼女は見ていて飽きない。普段の彼女は歳上で自分より背が高い男相手でも物怖じすることなく粛清するようなかっこいい女の子だけど、こうして見るとやっぱりリボンちゃんは年相応の可愛らしい女の子なんだなあって微笑ましくなる。
……そして見てるだけでお腹が満足する……。
イチゴと生クリームがたっぷり乗っかったスフレパンケーキ。
シンプルなおいしさであろうメープルパンケーキ。
食べ方を一歩間違えればすぐに崩れてしまいそうな果物たっぷりパフェ。
そして2杯目の抹茶フラペチーノ。
女の子は甘いものに関しては食欲無限なのだろうか……と不思議に思いながら僕はブレンドやらマウンテンやらこの店ではどのコーヒーが一番美味しいか飲み比べを楽しむ。一見退屈に見えるかもしれないけど僕はこの時間が嫌いじゃないしむしろ好きで、リボンちゃんもそれがよくわかっているから余計な気はお互い使わない。
心地いい時間だ。
「なあ、あの子めっちゃかわいくね?」
「やば、アイドル並みじゃん」
そんな声が後ろから聞こえてくる。さすがに真後ろのテーブル席を振り返る度胸はないがまあ十中八九あの子、はリボンちゃんのことだろう。
「声かけてみる……?」
「え、でもヘビといるじゃんさすがに迷惑だろ」
「ヘビならなおさら気にしなくてもいいだろヘビなんだし」
でたでた。僕は内心でやれやれと呆れる。人間だったら肩を竦ませているところだ。
もうその扱いには慣れっこだから今さらどうも思わないが、そんな離れた位置ではないところで僕の耳にわりと大きい声で聞こえているということは……
「……」
「り、リボンちゃん、女の子がしちゃいけない顔してる……!ほら、食べておちつこ?あーん」
慌てて僕はテーブルに身を乗り出して尾でフォークを取り、食べやすいようなサイズで切り分けてリボンちゃんの口元に運ぶ。
「……ん、落ち着いた、大丈夫」
「そっか、よかったよ」
「なにか言い返してやればいいのに」
納得いかない、と言ったようなリボンちゃんに、そう君が僕を思ってくれるだけで嬉しいから、と微笑みかけた。
「それに言い返したところで既にヘビを見下している人間の心は変わらないよ、……自分の命に関わらない限り」
「……それもそうね」
二杯目のフラペチーノが空になりそうだ。追加注文しようとボタンを押した、瞬間。
「まあヘビを見下すような男に興味はないわ、そんなやつと付き合ったところで絶対そんな男は彼女も下に見てくるって相場が決まってんのよ、そんなやつ始めから願い下げよ身の程弁えてから出直してきなさい」
店全体に届くほどでもないが、あの客には確実に聞こえているであろう旅館で議論をするときに何度も聞いた、力強く凛とした声のトーンでいきなりそう言い出すものだから僕はぽかんとする。
「あらヘビ探偵、一人言よ」
ふふ、と悪戯っぽく笑ったのは一瞬で、ちょうどよくきた店員さんに「レモネードフラペチーノひとつ」となに食わない顔で注文した。
「まったく……落ち着いたって言ったのに」
「納得したとは言ってないわ」
はいお詫び、とフォークで差し出されたパンケーキを頬張る。
「……ありがとう、嬉しかったよ」
「私が勝手にしただけよ」
そろそろ注文したデザートの残りが三分の一くらいの量になった頃、こうしてナンパとか人の視線を引く彼女自身が好きなタイプはどんな人だろうか気になって質問してみた。
「ん~、そうね……やっぱりイケメン高身長で安定した職業についてて高収入で思いやりがある、っていうのは外せないかしら」
絵に描いたような理想像だね、と伝えながらいや、そうじゃないと……と逆の発想が僕のなかに浮かぶ。
「でもリボンちゃんはそれに見合うような努力家で向上心があって、自分の夢にまっすぐ歩いている素敵な女の子だから、僕もそれくらいの相手じゃないとリボンちゃんの相手として認められないなあ」
思ったことをそのまま口に出す。うん、しっくりきたな。
「……冗談なのに真面目に受け取ってまっすぐそう言ってくれるヘビも悪くないと思ってるわよ」
「……え」
三杯目のフラペチーノに刺さるストローを手で弄びながら、彼女にしては珍しくぽつりと聞こえるか聞こえないかの声。僕が人だったら聞き逃していたかもしれないセリフに困惑する。
「いつも早く来すぎているのは貴方が私のためにナンパ男を蹴散らしてくれる姿が見たいからって言ったら、怒る?」
「そ、そんなことで……怒らないよ」
「かっこいいわね、ヘビじゃなければ。……なんて言ってたこともあったわね。でも今は、」
貴方を心からかっこいいと思ってる。ヘビなのにね。
……そんな君の表情、知らないよ。
目の前で頬杖をつきながらはにかむリボンちゃんはきらきら輝いて、眩しくて、すごく可愛くて、なんだか僕の心はふわふわしてきて。
僕はそんな自分の心の模様に堪えきれなくてコーヒーに目を落としながらストローを咥えた。