花言葉は永遠

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「はい、これ」
「何これ、どうしたの」

彼が手に持っていたのは色とりどりの花を纏めた花束。綺麗にラッピングもされているそれは、おそらくちゃんと花屋で選んで買ってきたのだろう。だけど急に何故。

「ね、君はこの花覚えてる?」

どの花の事だろうか。赤 ピンク 黄色 白、と本当に色んな花が纏められている。どれがどういう名前なのかすらも分からない。と、いうか彼と俺との間に花に因んだ思い出は無い筈だ。多分。

手渡された花束を持って花を見詰めたまま訝しげに首を傾げる俺に痺れを切らしたのか、彼が言う。

「花束、嗅いでみてよ」
「……?」

言われるがままに花束に鼻を近付けて匂いを嗅いでみる。何故だろう、すごく懐かしい匂いがする。だけども柔軟剤とか芳香剤とか、香水とか。何処かで嗅いだ事ある、というよりもハッキリとこの花の香り、と分かるような。何処で俺はこの花の香りを嗅いだのだろう。記憶を遡ってみる。数年、十数年。

「……ぁ」

そうだ。俺は。

「わ、泣かないでよ」
「だってこれ、…」

俺は確かにこの花を覚えていた。否、思い出した。この花の種をふたりで庭に植えたんだ。綺麗に咲くと良いね、なんて笑い合いながら。そしてそれは可愛い紫色の花を咲かせて。

花束の奥にあった紫色の花。それを一輪取り出して見る。やっぱりこの花だ。この花をふたりで育てたんだ。でも笑い合っていたのは目の前の彼ではない。

「思い出した?」
「なんで、…」
「俺もね、今日思い出したんだ」
「ずっと、ずっと逢いたかった…」

涙で目の前の彼の姿が滲んでぼやける。一瞬、彼の姿が愛していた人のそれになった気がした。ひとつ前の俺が、愛していた ひとつ前の彼の姿に。

「もう逢ってるじゃん」
「そ、うだけど」
「言ったでしょ、来世も愛し合おうって」

わんわんと声をあげて泣く俺を彼は優しく抱き締めてくれている。確かにふたりで約束したんだ。この花に。来世も、そのまた来世も愛し合おう、と。

「約束は守る男だから、俺」
「…ふふ、うん」

彼ならきっと来世の俺も見付け出してくれる。そして、また彼に俺は恋するんだ。何回でも。何度でも。



fin.
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