地を這う蜘蛛、空を舞う蝶
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今日も今日とて、獲物を捕らえる為に青い葉の間に罠を張り巡らせる。俺の空腹を満たす為のそれを、朝日が昇る前にせっせと無心で。そして罠に引っ掛かった哀れなソイツを喰らうだけの毎日。
ある日の朝、いつもの様に罠に何か掛かっていないかと見に行ったら、見慣れない姿がひとつ。その背にある美しい羽根で空を自由に飛び回るのだろう。
「綺麗」
朝露に濡れてキラキラと輝く罠を眺めて、ソイツはそう微笑んだ。その横顔が何よりも綺麗で。思わず見惚れてしまった。
嗚呼、これが一目惚れというやつか。
俺とアイツとでは生きている世界が違う。俺は地を這い蹲って、アイツは空を舞い踊る。もし、もしもこの罠にアイツが引っ掛かってしまったとしてと、アイツだけは逃がしてあげよう。
ある日の夜だった。いつものように青い葉の間に張り巡らせた罠に、何かが引っ掛かっている。今日の獲物だ、と近付いてみればソレは 美しい羽根を持つアイツで。その羽根を必死に羽ばたかせて、罠から逃れようともがいていた。
この罠は一度引っ掛かってしまえば、もがけばもがく程にまとわりついて、その身の動きを封じていく。逃げられやしない。俺がそう、作り上げたのだから。だけど俺なら罠を解いて逃がしてやれる。今が夜で良かった。この暗闇にこの身を隠せる。
「今すぐ助け「たすけて……」…」
俺の言葉を遮ってソイツはそう言った。何度も、何度も「助けて」と繰り返すその目は、怯えきっていて。俺の姿が見えているのかは分からない。だけど、やはり俺とコイツとは決して結ばれないのだと、俺に分からせるのには充分だった。
どうせ叶わないのならば、その美しい羽根も何もかも 今此処で全てを喰らってしまおうか。いや、だめだ。コイツには空が似合う。だめだ。
罠を解いてやると、ソイツは何も言わずに飛び去っていった。星の様な粉をキラキラと落としながら離れていくその姿さえ美しい。
嗚呼、どうか。生まれ変わったならアイツと同じ世界で生きられますように。
今日も今日とて、俺は獲物を捕らえる為に青い葉の間に罠を張り巡らせる。
fin.
今日も今日とて、獲物を捕らえる為に青い葉の間に罠を張り巡らせる。俺の空腹を満たす為のそれを、朝日が昇る前にせっせと無心で。そして罠に引っ掛かった哀れなソイツを喰らうだけの毎日。
ある日の朝、いつもの様に罠に何か掛かっていないかと見に行ったら、見慣れない姿がひとつ。その背にある美しい羽根で空を自由に飛び回るのだろう。
「綺麗」
朝露に濡れてキラキラと輝く罠を眺めて、ソイツはそう微笑んだ。その横顔が何よりも綺麗で。思わず見惚れてしまった。
嗚呼、これが一目惚れというやつか。
俺とアイツとでは生きている世界が違う。俺は地を這い蹲って、アイツは空を舞い踊る。もし、もしもこの罠にアイツが引っ掛かってしまったとしてと、アイツだけは逃がしてあげよう。
ある日の夜だった。いつものように青い葉の間に張り巡らせた罠に、何かが引っ掛かっている。今日の獲物だ、と近付いてみればソレは 美しい羽根を持つアイツで。その羽根を必死に羽ばたかせて、罠から逃れようともがいていた。
この罠は一度引っ掛かってしまえば、もがけばもがく程にまとわりついて、その身の動きを封じていく。逃げられやしない。俺がそう、作り上げたのだから。だけど俺なら罠を解いて逃がしてやれる。今が夜で良かった。この暗闇にこの身を隠せる。
「今すぐ助け「たすけて……」…」
俺の言葉を遮ってソイツはそう言った。何度も、何度も「助けて」と繰り返すその目は、怯えきっていて。俺の姿が見えているのかは分からない。だけど、やはり俺とコイツとは決して結ばれないのだと、俺に分からせるのには充分だった。
どうせ叶わないのならば、その美しい羽根も何もかも 今此処で全てを喰らってしまおうか。いや、だめだ。コイツには空が似合う。だめだ。
罠を解いてやると、ソイツは何も言わずに飛び去っていった。星の様な粉をキラキラと落としながら離れていくその姿さえ美しい。
嗚呼、どうか。生まれ変わったならアイツと同じ世界で生きられますように。
今日も今日とて、俺は獲物を捕らえる為に青い葉の間に罠を張り巡らせる。
fin.
