Buddy

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ガランガランとけたたましい音を立てて得物である警棒が地面に落ちた。それを拾いに行く暇もなく、振り翳されたナイフを勘を頼りに すんでのところで避ける。そしてそのままバックステップでナイフを持つ男から距離を取る。弾かれた手が少し痺れているが気になる程ではない。

警棒が転がっていった方を横目でチラリと見ると、もう一人の被疑者と対峙している相棒の姿が目に入った。直ぐに目の前の男に視線を戻す。俺の警棒を弾き落とした事で余裕が出たのか、ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべている。

──上等だ。

腰を落として油断無く構える。相手の得物は少し大きめのナイフだ。最早包丁と言ってもいい。素手でやり合うには分が悪い。が、そんな事も言ってられない。

「あれぇ?刑事さん素手で大丈夫?アレ拾いに行くの待ってあげようか?」

随分と分かりやすい挑発かましてくれるじゃん。俺がそんなのに乗るとでも思っているのなら、とんだお花畑な頭している。

「うるせぇな、俺は拾いに行かねぇよ」

姿勢を落として脚のバネを使って一気に距離を詰めに行く。一瞬で肉薄した男のそのナイフを持つ手に掌底を喰らわせる。が、相手もただでは手放さない。逆の手で俺の手首が掴まれ押さえ込まれそうになる。反射的に更に一歩踏み込んで相手の腕に自分の手を這わせる。手首の内側から肘の外側に。蛇が巻き付くような動きに可動域が追い付かずに相手の手が離れたその隙を付いて間合いの外へと離脱する。

「この……っ」

案の定追い掛けてくる手を躱して更に十分な距離を取って、直ぐに相手の方へと駆け出す。勿論、真正面から来る俺に対して相手はナイフを構えて迎え撃とうとする。

「陽!!」
「イチ!!」

彼と俺の互いを呼ぶ声が重なる。そして相手から視線を逸らさないままに真横へ左腕を突き出すと、手に確かに収まる感触。そしてそのまま警棒を握り締めて勢いのままに振り抜いて、相手の持つナイフを叩き落とす。ソイツがナイフが落ちた先を見る暇も与えずに、地面へと組み倒して押さえ込む。

「クソ……っ、クソ!!」
「残念だったなぁ?」

相棒の方はどうかと視線をやると、ほぼ同時刻に彼の方も対峙していたもうひとりを押さえ込んでいた。

「どうでした?俺のアシスト」
「タイミング含めバッチリ。さっすが俺のイチ」

2人で目を合わせた後に、自分の下に居る被疑者たちにぺろ、と舌を出して見せた。俺たちのコンビネーションに敵うわけないだろ、という意味を込めて。


『〇時〇分、被疑者2名両名──確保』

カシャン、と無機質な音が無情に響く。


fin.
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