日曜日

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毎週日曜日、彼は決まって此処に来る。いつも同じ席に着いて俺の事を指名する。そして一頻り語りあった後、満足そうに帰っていく。

彼の話の内容は俺にはよく分からない。何曜日はあの野郎が、とか。別の曜日にはあいつが、とか。ずっと他の男の話ばかりする。その話をしている最中の彼は、少し辛そうに見える。

だから俺は彼の頭を撫でてやる。すると、急に泣き出したりする日もある。そんな時は落ち着くまで俺がずっと隣に居てあげるんだ。


「お前の日曜日をくれよ」

ある日曜日に彼はそんな事を言った。いつもと同じ席で。俺の日曜日は元々彼だけのものだと言ってもいいのに。彼は代わりに何をくれるんだろう。

彼の日曜日も欲しい。いや、日曜日だけじゃない。他の曜日も俺にくれないかな。そうしたら、他の曜日の男どもから彼を守ってやれると思うんだ。彼が泣かないように幸せにしてやれると思うんだ。


彼は一体何処から来てるのか。知りたくなった俺はある日曜日にこっそりと着いていった。彼は歩くのが速い。見失わないようにするのに必死になる。でも彼に見付かってはいけないから、電柱の影とかに隠れながら。

「お前なん、で……」

彼が俺に気付いてしまった。大きな目が更にまん丸になってる。それから直ぐにいつも俺にくれる柔らかい微笑みと、温かい手で俺の頬を撫でてくれた。少し寒かったからすごく気持ちがいい温度。

「こんな所まで着いて来ちまったのか」

だって知りたかったからね。彼のことは全部。日曜日の彼だけじゃなくて。全部の彼を。

「明日、帰すから今日だけ、な」

扉がガチャリと開いて中に連れていかれる。その中は色んなもので溢れ返っていて、ちょっと足の踏み場もないかもしれないくらい。テーブルの上にも。

「あんまり触るなよ」

俺は良い子だから、彼の言う事は聞くよ。それくらいは俺にだって出来る。彼に嫌われたくないからね。

「飯買ってくるよ」

そう言って彼はまた扉から出ていった。残された空間を探索してみたいけど触るなと言われたから、触らない。大人しく彼を待っていよう。でも、やっぱり気になる。

「あ!お前、それはダメだってば!」

戻ってきた彼が俺からソレを奪い取る。大事なものだったのかな。悪いことしちゃったな。謝らなきゃ。

「あァもうほら、飯にすんぞ」

俺の前に出されたご馳走。彼が俺の為に用意してくれたもの。嬉しくて嬉しくて仕方ない。でも食べるのが勿体無いような気もする。持って帰れないかなこれ。

「はは、可愛いなァ」

彼が俺の頭を撫でる。ちょうどいい力加減で。気持ちが良くて眠気すら生まれる。ゴッドハンドってやつかな。誰かが言ってたような気がする。

「お前がいつも此処で待っててくれたらなァ」

そう言う彼の顔は今にも泣きそう。なのに笑ってる。悲しい?嬉しい?どっちなんだろう。でも彼が望むなら俺はここにいるよ。ここで君を待つよ。

俺のこの手じゃ君の涙を拭えない。俺のこの身体じゃ君を抱き締めてあげられない。俺のこの喉じゃ君に優しい言葉をかけてあげられない。

それでも。

君の帰りをここで待っててあげるよ。君が笑えるまでずっと、ずっと傍にいてあげるよ。

だからどうか、泣かないで。


──わんっ




fin.
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