Episode.1
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side.ミヤビ
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"カーム"で討伐対象だった毒蜘蛛を倒して、その証拠として外殻を剥ぎ取った後、さぁ森の出口に向けて出発!ってところまでは確かに周りに木はいっぱいあった。僕がいっぱいなぎ倒しちゃったけど、それでも残った木の幹とか残骸はいっぱいあった。
「ここ何処なんだろね?」
「私も知りませんよ」
隣を歩いている僕より小柄の金髪の子はカグラっていうらしい。オッドアイってやつ?片目ずつ色が違うんだよね。でも右目を縦に切るみたいな傷痕があるから、もしかしたら後天性のものなのかも。
そんなことより。
僕たちはいつの間にか見渡す限りの草原に居たわけよ。で、周りにある目標物みたいなものが、遠くに見える白い四角い建物。綺麗な豆腐みたいに見えてきてちょっと美味しそう。……じゃなくて。
他に何も無いから、取り敢えずアレ目指そうかって歩いてるところってわけ。
「カグラちゃんは何処から来たの?」
「今必要ですか?その話」
「えーっ、せっかくだからお互いの事知っておきたいじゃん?」
「別にこっちはアンタに興味なんかありませんけど」
「だーかーらー!僕はアンタじゃなくてミ・ヤ・ビ!」
ちゃんと名前があるんだから、ちゃんと呼んでよね!って言ったらカグラちゃんからまぁまぁの音量の舌打ちが聴こえてきた。舌打ちってそんなデカい音すんの?
「……聖ゴルド教会ですよ」
「ん?なんて?」
「二度は言いません」
「えぇっ、待って!もう一回!」
「だぁもうっ、一々引っ付くな!鬱陶しい!」
本当はちゃんと聴こえてた。聖ゴルド教会。世界で一番信仰されている宗教の聖地だっていわれてる場所だ。あんまり良い噂は聞かない。人身売買をしてるだとか、人体実験をしてるだとか、邪神を信仰してるだとか。その殆どが根も葉もない噂だけど、火のないところに煙は立たないっていうし。
これ以上は訊かない方が良さそう。
そうこうしてる内に辿り着いた豆腐……じゃないや、真っ白の建物。近くで見ても真っ白い。
「扉が一枚、あるだけですね」
「窓も無いね」
こんな草原のど真ん中に建ってるだけでも不自然なのに、その外壁には大半の建物にあるであろう窓がひとつも見当たらない。あるのはこれまた真っ白な扉がいっこだけ。
「……中入ってみる?」
「そもそも中入れるんですかこれ」
カグラちゃんの疑問はごもっとも。鍵が掛かってたらまず入れない。でも僕が見た感じだとこの扉、鍵穴がない。取手以外はつるんとしていて余計な装飾も何も無い。試しに取手に手を掛けて押してみる。
「……開かないね」
「いや、こういうのは大体引く方でしょ」
「む、分かってたよ?今のはカグラちゃんを試したんだから」
「私の何を試すんですか」
「常識とかそういう……あ!開いた!」
「樹海に入るのに魔導方位磁石持たない人に、常識云々は問われたくないですね。……どうです?中の様子は見えますか?」
少しだけ開けた扉の隙間から中を覗いて見たけど、真っ暗で何も見えない。外の光が差し込んで多少は見えてもおかしくないのに。ならばと、扉を全開にしてみる。それでも中が真っ暗なのには変わりない。不思議。
「ここは鍵をもってないと入れないよぉ?」
何処からか突然聴こえた声。思わずカグラちゃんの顔を見る。けど明らかに違う声だし、カグラちゃんも「違う」と手を振ってる。
「あぁ、君たちもそうなのかぁ。じゃあ渡さないとだねぇ」
気の抜けた声っていうか、すごくのんびりした話し方っていうか。……君たち、というのはもしかしなくても僕とカグラちゃんの事なんだろう。声の出処を捜してみるけど何も見当たらない。え、幽霊とかそういう?
「にーちゃん とーめいのまんまだから、このひとたち ぼくたちのことみえてないよ」
「あれぇ?そっかぁ」
なんだか可愛らしい声がもうひとつ聴こえたと思ったらら、ぽひゅっと可愛い音を立てて黄色いペンギンが僕らの足元に現れた。その頭には小さな緑っぽいペンギンが乗っている。え、可愛い!何この生き物、可愛い!
「なんですかこの妙ちくりんな生き物は」
「あれ、カグラちゃんペンギン知らないの?」
「ペンギンは知ってますよ。ただこの色のは知らないです」
確かに。僕も知ってるペンギンは大体黒かったり灰色だったりでこんな色鮮やかなのは知らない。多分、この子達は魔物の一種なのかな。
「はぁい、これが鍵だよぉ」
僕とカグラちゃん、それぞれの手にぽんと乗せられたのは小さな銀色の鍵。綺麗な緑色の宝石みたいなのが付いてる。カグラちゃんのには少しオレンジっぽい黄色い宝石だ。
「じゃあよろしくねぇ」
「ばいばーい」
ペンギン達はまたぽひゅっと可愛い音を立てて居なくなった。気配も何も感じなくなったから、見えなくなっただけじゃなくて、完全にこの場から居なくなったみたい。
「……通行証みたいなものなんでしょうね。ほら、扉の向こう側がさっきと違ってちゃんとしてますよ」
カグラちゃんが言った通り、さっきまで真っ暗だった建物の中にどこか大きな屋敷の広間みたいな空間が広がっていて、僕より先にカグラちゃんが中に入っていく。
「はひょー……」
外見からは想像つかない程の広さに開いた口が塞がらない。あんな真四角の豆腐だったのに。外からは窓がいっこも無かったのに、中にはちゃんと窓があって、外の草原も見える。不思議ハウスだ。
僕が建物の構造に呆気に取られていると、後ろからドサッと何かが落ちるような音が聴こえた。
「……ん?……カグラちゃん!?」
床に落ちていたのはカグラちゃんだった。あぁそうだ、そうだった。この子は森で毒蜘蛛にやられてたんだった。解毒も怪我の治療もして、すっかり元気そうだったから忘れちゃってた。体力や失った血までは戻らないんだから本当は安静にしてなくちゃいけないのに。そんな初歩的な事を忘れてたなんて。
この建物の中に休ませられそうな部屋はあるかな。
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side.ミヤビ
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"カーム"で討伐対象だった毒蜘蛛を倒して、その証拠として外殻を剥ぎ取った後、さぁ森の出口に向けて出発!ってところまでは確かに周りに木はいっぱいあった。僕がいっぱいなぎ倒しちゃったけど、それでも残った木の幹とか残骸はいっぱいあった。
「ここ何処なんだろね?」
「私も知りませんよ」
隣を歩いている僕より小柄の金髪の子はカグラっていうらしい。オッドアイってやつ?片目ずつ色が違うんだよね。でも右目を縦に切るみたいな傷痕があるから、もしかしたら後天性のものなのかも。
そんなことより。
僕たちはいつの間にか見渡す限りの草原に居たわけよ。で、周りにある目標物みたいなものが、遠くに見える白い四角い建物。綺麗な豆腐みたいに見えてきてちょっと美味しそう。……じゃなくて。
他に何も無いから、取り敢えずアレ目指そうかって歩いてるところってわけ。
「カグラちゃんは何処から来たの?」
「今必要ですか?その話」
「えーっ、せっかくだからお互いの事知っておきたいじゃん?」
「別にこっちはアンタに興味なんかありませんけど」
「だーかーらー!僕はアンタじゃなくてミ・ヤ・ビ!」
ちゃんと名前があるんだから、ちゃんと呼んでよね!って言ったらカグラちゃんからまぁまぁの音量の舌打ちが聴こえてきた。舌打ちってそんなデカい音すんの?
「……聖ゴルド教会ですよ」
「ん?なんて?」
「二度は言いません」
「えぇっ、待って!もう一回!」
「だぁもうっ、一々引っ付くな!鬱陶しい!」
本当はちゃんと聴こえてた。聖ゴルド教会。世界で一番信仰されている宗教の聖地だっていわれてる場所だ。あんまり良い噂は聞かない。人身売買をしてるだとか、人体実験をしてるだとか、邪神を信仰してるだとか。その殆どが根も葉もない噂だけど、火のないところに煙は立たないっていうし。
これ以上は訊かない方が良さそう。
そうこうしてる内に辿り着いた豆腐……じゃないや、真っ白の建物。近くで見ても真っ白い。
「扉が一枚、あるだけですね」
「窓も無いね」
こんな草原のど真ん中に建ってるだけでも不自然なのに、その外壁には大半の建物にあるであろう窓がひとつも見当たらない。あるのはこれまた真っ白な扉がいっこだけ。
「……中入ってみる?」
「そもそも中入れるんですかこれ」
カグラちゃんの疑問はごもっとも。鍵が掛かってたらまず入れない。でも僕が見た感じだとこの扉、鍵穴がない。取手以外はつるんとしていて余計な装飾も何も無い。試しに取手に手を掛けて押してみる。
「……開かないね」
「いや、こういうのは大体引く方でしょ」
「む、分かってたよ?今のはカグラちゃんを試したんだから」
「私の何を試すんですか」
「常識とかそういう……あ!開いた!」
「樹海に入るのに魔導方位磁石持たない人に、常識云々は問われたくないですね。……どうです?中の様子は見えますか?」
少しだけ開けた扉の隙間から中を覗いて見たけど、真っ暗で何も見えない。外の光が差し込んで多少は見えてもおかしくないのに。ならばと、扉を全開にしてみる。それでも中が真っ暗なのには変わりない。不思議。
「ここは鍵をもってないと入れないよぉ?」
何処からか突然聴こえた声。思わずカグラちゃんの顔を見る。けど明らかに違う声だし、カグラちゃんも「違う」と手を振ってる。
「あぁ、君たちもそうなのかぁ。じゃあ渡さないとだねぇ」
気の抜けた声っていうか、すごくのんびりした話し方っていうか。……君たち、というのはもしかしなくても僕とカグラちゃんの事なんだろう。声の出処を捜してみるけど何も見当たらない。え、幽霊とかそういう?
「にーちゃん とーめいのまんまだから、このひとたち ぼくたちのことみえてないよ」
「あれぇ?そっかぁ」
なんだか可愛らしい声がもうひとつ聴こえたと思ったらら、ぽひゅっと可愛い音を立てて黄色いペンギンが僕らの足元に現れた。その頭には小さな緑っぽいペンギンが乗っている。え、可愛い!何この生き物、可愛い!
「なんですかこの妙ちくりんな生き物は」
「あれ、カグラちゃんペンギン知らないの?」
「ペンギンは知ってますよ。ただこの色のは知らないです」
確かに。僕も知ってるペンギンは大体黒かったり灰色だったりでこんな色鮮やかなのは知らない。多分、この子達は魔物の一種なのかな。
「はぁい、これが鍵だよぉ」
僕とカグラちゃん、それぞれの手にぽんと乗せられたのは小さな銀色の鍵。綺麗な緑色の宝石みたいなのが付いてる。カグラちゃんのには少しオレンジっぽい黄色い宝石だ。
「じゃあよろしくねぇ」
「ばいばーい」
ペンギン達はまたぽひゅっと可愛い音を立てて居なくなった。気配も何も感じなくなったから、見えなくなっただけじゃなくて、完全にこの場から居なくなったみたい。
「……通行証みたいなものなんでしょうね。ほら、扉の向こう側がさっきと違ってちゃんとしてますよ」
カグラちゃんが言った通り、さっきまで真っ暗だった建物の中にどこか大きな屋敷の広間みたいな空間が広がっていて、僕より先にカグラちゃんが中に入っていく。
「はひょー……」
外見からは想像つかない程の広さに開いた口が塞がらない。あんな真四角の豆腐だったのに。外からは窓がいっこも無かったのに、中にはちゃんと窓があって、外の草原も見える。不思議ハウスだ。
僕が建物の構造に呆気に取られていると、後ろからドサッと何かが落ちるような音が聴こえた。
「……ん?……カグラちゃん!?」
床に落ちていたのはカグラちゃんだった。あぁそうだ、そうだった。この子は森で毒蜘蛛にやられてたんだった。解毒も怪我の治療もして、すっかり元気そうだったから忘れちゃってた。体力や失った血までは戻らないんだから本当は安静にしてなくちゃいけないのに。そんな初歩的な事を忘れてたなんて。
この建物の中に休ませられそうな部屋はあるかな。
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