Episode.1
side.ミヤビ
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第一回戦のカグラちゃんとレンちゃんの試合は、レンちゃんの勝ち。なんだけど、なんて言うかカグラちゃんは闘いに不慣れな感じがしたんだよね。レンちゃんは逆にすごく慣れてる感じ。圧倒的な力の差みたいなのが出ちゃってたような気がする。
「よし、これでおっけ」
カグラちゃんを貫いていた氷の刃を抜き取って、直ぐにお腹の傷を僕の治癒魔法で治しておしまい。傷は塞げても失った血までは戻せないのが難点。それも出来るようになれたらなぁ、なんて。
「へぇ、治癒魔法か」
話し掛けて来たのはハルちゃん。僕がこれから手合わせする相手。燃えるような真っ赤な瞳。でもどこか冷たい。そんな彼の左頬にはぴっと真横に切傷の痕がある。
「まだまだ効果は弱っちいけどね、怪我なら大体治せるよ」
「成程な。……さっさと始めようか」
カグラちゃんをアオちゃんに任せて、僕は促されるままにさっきレンちゃんとカグラちゃんが闘っていた場所まで移動する。
ハルちゃんも何も武器は持ってないように見える。けれど脚に小さな鞄みたいなものを付けてる。その中に武器を仕舞ってる可能性もある。得意な属性は何だろう。紅いからやっぱ炎なのかな。
ごちゃごちゃ考えてても仕方ない。短期決戦でいこう。
僕が得意なのは風。そよ風から鎌風まで色んな風を操れる。治癒魔法だって風の魔法をちょっと弄ったやつなんだから。で、風魔法の素敵なところは。
「……っ」
魔法自体が目に見えないところなんだよね。魔力を探知出来る能力でも無きゃまず避けられない。現にハルちゃんも、僕が放った風の刃で左肩をすぱっと斬られてるんだから。
「風魔法か、なら……」
一気に距離を詰めてきたハルちゃん。この人脚力ヤバいんじゃ?結構離れてたのにその手が僕の腕を掴む。そしてそのままぐいっと腕を引っ張られ、お腹に衝撃が伝わる。
「っ、ぷ……」
鳩尾を殴られて胃の中のものが出そうになるのを耐えながら、右手に持った扇子を剣のように振り上げてハルちゃんの身体を斬ってやった。
よろけた彼を思い切り蹴り飛ばして、なんとか離れることが出来た。危ない。ハルちゃんに接近戦を挑むのは止めた方がいい。たった一撃貰っただけなのに、もう何十発と喰らったみたいな。そんな重さ。
「……!?」
今さっきまで居た筈のハルちゃんの姿が無い。しまった。見失うだなんて最悪だ。何処からでも大丈夫なように、風で結界を纏っておこうか。多少の衝撃はこれで和らげる。
「っぐ、ぅ……!」
真横からの回し蹴り。咄嗟に腕でガードしても風の結界を集中させても伝わる衝撃の重さだけで分かる。この人、単純にフィジカルがケタ違いだ。化けモンだよこの人。
結局耐えきれなくて吹っ飛ばされた僕を、追撃と言わんばかりに追い掛けてくる。こうなったらこっちも本気でやらなくちゃ。
やらなきゃやられる。
地面についた手を起点に身体を捻ってハルちゃんを蹴り上げて、そのまま扇子を閉じたまま振り抜く。僕が放った鎌風がハルちゃんのお腹を斬り裂いていく。
「は……っ、まだまだ……!」
更にもう一撃。今度は扇子をハルちゃんの身体に突き立てるようにして上から思い切り叩き落とした。
「もっと……!」
確実に、やらないと。
「もう勝負は着いた」
扇子を持った方の腕が誰かに掴まれて動かない。なんで止めるの。今ここでやっておかなくちゃ、やらなきゃやられるんだから。もう片方の手で鎌風を起こして僕の下に居る化けモンを斬り刻む。身体の内側から、確実に。
「恨むなよ」
「──!?」
僕の身体が吹っ飛んだ。なんで?何が起きたの?あぁこいつか。こいつがやったのか。ならこいつもやらなくちゃ。
「ひひっ」
ぜーんぶ壊さなくちゃ。
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