Episode.1
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二階へ向かうと先程の吹き抜けになっていたあの通路に出た。扉が五枚。それぞれに意匠がある。東洋の伝承に出て来る龍、太陽を喰らおうとしている狼、杵と臼で餅をついている兎、太陽を背にした三本足の烏。そして、大鎌を咥えた獅子。これらが何を指しているかは分からない。が、何か意味があって刻まれているのは確かだろう。
それぞれの意匠を眺めていると、紅髪の男が狼の意匠が刻まれた扉から出て来た。
「ハル」
「だから、人違いだって」
そんな筈はない。いくら取り繕おうが"魂の色"は嘘を付かない。コイツは、この紅髪の男はハルだ。
「すッとぼけンなよ」
「嗚呼、お前"も"か」
ざわ、と鳥肌が立つ。こんな瞬時に殺気を放てるものなのか。鋭く研ぎ澄まされたソレは、まるでオレの喉笛に突き付けられた刃のようで、冷や汗が滲む。オレが知る彼はもっと柔らかくて、それこそ太陽のような人間だった筈。こんなにも冷たい目をする人間ではなかった。
「……悪ィ、オレの勘違いだッたようだ。……その、……昔の知り合いによく似てたンだ」
何故オレの事を覚えていないのか。気になる事は山程あるが、これ以上は踏み込むなと本能が警鐘を鳴らしている。
「嗚呼そうだ、お前は?名前」
「……レン」
「レンね、分かった。ところでその頬のタトゥーは何か意味があるの?」
「……さァ、忘れたな」
コイツの意味も、お前は知っている筈なのに。ならばこの男は本当に別人なのか?いや、まさか。オレが魂の色を見間違える筈がない。
「そうだ、お前はペンギンに鍵貰ったか?」
「……ペンギン、……そういや、そンなの居たな」
この屋敷に飛ばされる前に紫色のペンギンにオレは遭遇している。遭遇というよりは発見したという方が近いか。起き上がれずじたばたしていたワケだし。というかソイツにここに飛ばされたんだったか。
鍵、と言えば"ナルム"で拾ったこれの事だろうか。
「それ、この二階の扉のどれかに対応してるよ。俺のもそうだった」
「……成程な」
ということは、あのペンギンはオレたちをこの屋敷に意図的に呼び寄せたことになる。オレは拾っただけだが、この屋敷に居る他三人には鍵を渡し、ここに転送した。だが二階の部屋は全部で五つだ。数が合わない。いや、さっきミヤビが「カグラ」とか言ってたな。ソイツ含めて五人か。
「……一度情報整理をしたい。一階に戻るぞ」
「それもそうだな。こんな訳の分からない状況だ。情報は少しでも多い方が良い」
一階の生活空間──便宜上リビングと呼ぶとしよう。そこでまだヤナセとミヤビは話していた。初対面で何をそんなに話す事があるのか。
「あ、戻ってきた」
「二人にも見てもらいたいから、これもう一回再生するね」
何の話だろうか。ミヤビが薄っぺらい液晶画面の傍で何かを操作すると、画面にザザッと砂嵐が少し流れた後覆面姿の人間が映し出された。
『──ようこそ、"アルフ"へ』
その声は加工されているのか、音声だけでは性別が分からない。一体誰なんだコイツは。コイツがあのペンギンの大元なのか。だとしたら何が目的でオレらをここに集めたのか。
『貴方たちには"鍵玉(ケンギョク)"の回収をお願いします』
鍵玉。聞いた事ない物だな。魔導具の一種か?それを集めてどうするのか。横をちらりと見ると紅髪が腕を組みつつ下唇を触っている。ハルに良く出ていた何かを考えている時の癖だ。
『鍵玉は全部で五つ。それぞれ縁の地に眠っています。全てを回収出来ましたら、貴方たちをこの屋敷から解放しましょう。──それでは良き運命を』
ここまでで映像はぷつりと消えた。この屋敷から出られないのは分かっている。アレはおそらく画面の中に居た奴にしか解けない。
「自由になりたきゃ従えッてか」
「そういう事らしいんだよね。だからさ、皆それぞれ自己紹介しようよ!」
「名前だけ知れりゃ他はどうでもイイ」
「そーんなこと言わずにさぁ!協力するのにそれぞれの闘い方とか知りたいじゃん?」
……それもそうか。近接戦闘が得意なのか、遠隔戦闘が得意なのか。立ち回り方だけでも把握しておけば共闘しやすい。
「なら模擬戦やりましょうよ」
初めて聴く声に振り向くと金髪の男がそこには居た。
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二階へ向かうと先程の吹き抜けになっていたあの通路に出た。扉が五枚。それぞれに意匠がある。東洋の伝承に出て来る龍、太陽を喰らおうとしている狼、杵と臼で餅をついている兎、太陽を背にした三本足の烏。そして、大鎌を咥えた獅子。これらが何を指しているかは分からない。が、何か意味があって刻まれているのは確かだろう。
それぞれの意匠を眺めていると、紅髪の男が狼の意匠が刻まれた扉から出て来た。
「ハル」
「だから、人違いだって」
そんな筈はない。いくら取り繕おうが"魂の色"は嘘を付かない。コイツは、この紅髪の男はハルだ。
「すッとぼけンなよ」
「嗚呼、お前"も"か」
ざわ、と鳥肌が立つ。こんな瞬時に殺気を放てるものなのか。鋭く研ぎ澄まされたソレは、まるでオレの喉笛に突き付けられた刃のようで、冷や汗が滲む。オレが知る彼はもっと柔らかくて、それこそ太陽のような人間だった筈。こんなにも冷たい目をする人間ではなかった。
「……悪ィ、オレの勘違いだッたようだ。……その、……昔の知り合いによく似てたンだ」
何故オレの事を覚えていないのか。気になる事は山程あるが、これ以上は踏み込むなと本能が警鐘を鳴らしている。
「嗚呼そうだ、お前は?名前」
「……レン」
「レンね、分かった。ところでその頬のタトゥーは何か意味があるの?」
「……さァ、忘れたな」
コイツの意味も、お前は知っている筈なのに。ならばこの男は本当に別人なのか?いや、まさか。オレが魂の色を見間違える筈がない。
「そうだ、お前はペンギンに鍵貰ったか?」
「……ペンギン、……そういや、そンなの居たな」
この屋敷に飛ばされる前に紫色のペンギンにオレは遭遇している。遭遇というよりは発見したという方が近いか。起き上がれずじたばたしていたワケだし。というかソイツにここに飛ばされたんだったか。
鍵、と言えば"ナルム"で拾ったこれの事だろうか。
「それ、この二階の扉のどれかに対応してるよ。俺のもそうだった」
「……成程な」
ということは、あのペンギンはオレたちをこの屋敷に意図的に呼び寄せたことになる。オレは拾っただけだが、この屋敷に居る他三人には鍵を渡し、ここに転送した。だが二階の部屋は全部で五つだ。数が合わない。いや、さっきミヤビが「カグラ」とか言ってたな。ソイツ含めて五人か。
「……一度情報整理をしたい。一階に戻るぞ」
「それもそうだな。こんな訳の分からない状況だ。情報は少しでも多い方が良い」
一階の生活空間──便宜上リビングと呼ぶとしよう。そこでまだヤナセとミヤビは話していた。初対面で何をそんなに話す事があるのか。
「あ、戻ってきた」
「二人にも見てもらいたいから、これもう一回再生するね」
何の話だろうか。ミヤビが薄っぺらい液晶画面の傍で何かを操作すると、画面にザザッと砂嵐が少し流れた後覆面姿の人間が映し出された。
『──ようこそ、"アルフ"へ』
その声は加工されているのか、音声だけでは性別が分からない。一体誰なんだコイツは。コイツがあのペンギンの大元なのか。だとしたら何が目的でオレらをここに集めたのか。
『貴方たちには"鍵玉(ケンギョク)"の回収をお願いします』
鍵玉。聞いた事ない物だな。魔導具の一種か?それを集めてどうするのか。横をちらりと見ると紅髪が腕を組みつつ下唇を触っている。ハルに良く出ていた何かを考えている時の癖だ。
『鍵玉は全部で五つ。それぞれ縁の地に眠っています。全てを回収出来ましたら、貴方たちをこの屋敷から解放しましょう。──それでは良き運命を』
ここまでで映像はぷつりと消えた。この屋敷から出られないのは分かっている。アレはおそらく画面の中に居た奴にしか解けない。
「自由になりたきゃ従えッてか」
「そういう事らしいんだよね。だからさ、皆それぞれ自己紹介しようよ!」
「名前だけ知れりゃ他はどうでもイイ」
「そーんなこと言わずにさぁ!協力するのにそれぞれの闘い方とか知りたいじゃん?」
……それもそうか。近接戦闘が得意なのか、遠隔戦闘が得意なのか。立ち回り方だけでも把握しておけば共闘しやすい。
「なら模擬戦やりましょうよ」
初めて聴く声に振り向くと金髪の男がそこには居た。
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