対面から…
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……………
「あ"あー!うるっせぇな!そうだよ!!電話終わってからしばらくたってるからもうすぐ来んじゃねぇの!!」
「は!?!?もう!?ヤバいヤバい!どーすんの桜井!!」
「えっ、えぇ!?どうしましょう!!いっ、今ですか!?えぇ!?!?」
「ハア!?今から来るん!?」
「は!?…イヤ落ち着け花宮真。大丈夫だ。オレは落ち着いてる!!」
大混乱である。
あまりの困惑様に先ほど怒鳴り声をあげた者達も戸惑っている。
と、そんな中、prrrrrrrr…prrrrrrrr…という着信音が鳴り響く。
「…あ"!?…ああ、言ってるそばから電話来たぞ」
「「「「えぇ!?」」」」
皆が驚き固まっているのを横目に、宮地は電話に出る。
「…おー、着いたか?…ああ、じゃあ迎え行くわ。…あ"?ってオイ!!」
そう言って慌てて切れた画面を見る。
「えっ……切れた…んすか?」
「ああ」
「何だって?」
そう高尾と大坪に聞かれると、宮地は苛ついた様な顔で言う。
「場所わかんねぇから案内しろって言ったと思ったら人見つけたからソイツにして貰うッつって切りやがった」
「「「「あー…」」」」
「誰っすかソイツ!?羨ましい!」
「イヤでも、今からここに来るんですよ高尾くん!!どうしましょう!?」
「あー、ヤベェ!とりあえず握手して貰おう」
「サインも頼めますかね!?」
元から空村#名前#を知っていた大坪、木村、今吉、花宮は納得した様に頷き、高尾は羨ましいと叫ぶ。
しかし、桜井の一言に興奮した様に呟き、桜井もテンション高く乗っかる。
「とりあえず迎え行ってくるわ。アイツ一応有名人だし」
そう言って食堂の出入口に向かう宮地。
と、そこでそちらから大きな声が響いた。__火神だ。
「宮地さん!客だけど!…です!!」
「あ"あ!?」
慌てて向かう宮地。
すると、火神の陰に隠れていた人物がひょっこりと顔を出す。
「やっほー、宮」
__空村凪沙だ。
腰まである長いふわふわの髪はそのまま背中に流し、黒のパンツに白いタートルネック。カーキ色のスカジャンと大きめのクラッチバッグという一見ラフな格好だが、スタイルと顔の良さでとても様になっている。
突然現れた芸能人に辺りは騒然とするが、本人は慣れているのか平然と手を振っている。
呑気な空村に駆け寄る宮地。
「オイてめえソラ!芸能人としての自覚はねぇのか!?」
「ハア?もう失礼だなぁ宮は、あるに決まってるでしょ?って言うかこの子、私のこと知らないみたいだし。大丈夫だってば」
宮地が怒鳴りつけるも、そんなこと意に介さないとでも言いたげにつらつらと言葉を並べる空村。
他校のバスケ選手が芸能人と親しげ(?)に話す様子に、周りはもはや阿鼻叫喚である。
そんな周りをよそに、話を続ける二人。
「そういえば先生どこにいんの?突然お邪魔しちゃったからご挨拶したいんだけど…」
「ん?ああ、あっちだ」
そう言って宮地は各校の先生方が集まっているところを指指す。
そちらを見て中谷を見留めた空村は「ありがと」と、呟き向かう。
「中谷先生。ご無沙汰してます。突然お邪魔してしまい申し訳ありません」
「ん?空村か…久しぶりだな。どうしたんだ?」
「はい。宮地に英語のノートを貸していたのですがいまだに返されていなくて…」
「ああ…お前らは相変わらず勉強熱心だな。…しかし、今日じゃなきゃダメだったのか?」
「ええ。春休み明けにテストがありますよね?知り合いに勉強が苦手な子がいまして、今のうちにやらせておこうかと」
「そうか。…お前も大変だな」
「いえ。先生方ほどではありませんよ」
「まあ宮地のせいでこんなことになったのだし、今日は昼休憩が長いからゆっくりしていきなさい」
「はい。お気遣いありがとうございます」
落ち着いた雰囲気で話が終わると、空村が他の先生方に体を向けると「他の先生方も、せっかくの合宿中にお邪魔してしまい申し訳ありません」と、謝罪する。
すると、口々に「イヤ、良い」「気にするな」「勉強熱心なのは良いことです」「礼儀正しいな」「ウチのにも見習わせたいくらいだ」「本当に」と言う。
それに対し、空村は、「ありがとうございます。失礼します」と微笑み、礼をすると宮地のもとへ向かった。
***********************
「ただいま~」
「おう、お帰り。…相変わらず大人への猫かぶりが凄いな…」
「別に猫なんてかぶってないよ。目上の者に敬意を払うのは当然でしょ?」
ゆるーく手を振りながら少しおどけた様にそう言いながら宮地の隣に腰掛ける空村。
空村はそのまま辺りを見渡し訝しげに首を傾げる。
「…ねえ宮。この子達どうしたの?何か震えてるけど」
それを聞いた宮地も不思議そうにそちらに目を向けるが、呆れた様な顔をして言う。
「…オイ、高尾、桜井。どうした」
そこには二人で身を寄せ合い、手を繋ぎ、真っ赤になって震える高尾、桜井がいた。
指摘されたことで、ビクッとした二人だったが、そのあと意を決した様に上擦った声で言う。
「あ、あのッ!空村凪沙さんですよね!?オレ、前からずっと大ファン何です!!もし良かったら握手してくださいッ!!」
「ボ、ボクも!!ドラマ全部見ました!!サインも貰えませんか!?」
見事な狼狽えっぷりである。
しかし、空村はうんうんと頷きながら聞き、「そっか~ありがとう~」と微笑む。
それだけで泣きそうな勢いだったが、空村はまず、高尾の手を取る。
「名前は?」
「へ?……あっ!高尾和成です!」
「ん?あれ?カズナリって言うの?漢字は?」
「えっ…和むに成長の成ですけど…どうかしたんですか?」
憧れの人に名前を聞かれ、舞い上がっていたが、不思議そうに漢字を聞かれて不安そうな顔になる高尾。
その反応に困った様な顔をしながら空村は言う。
「ああ、ごめんなさいね。不安がらせちゃったかな?知り合いにカズナリって名前の人がいてビックリしちゃって…まあ、漢字は違ってたんだけどね」
「あっいえそんな!気にしないでください!!」
「ふふっ、そっか。優しいね」
安心した様な顔をする高尾にそう言われ、優しげな顔でふわりと笑う空村。
その顔に、ぼーっとして真っ赤になる高尾。
しかし、宮地が空村の頭を軽く叩くことで現実に戻る。
「いたッ…ちょっと宮ひどーい」
「何が"ひどーい"だ。さっきから可愛い子ぶりやがって…って言うかオレの後輩をたぶらかすんじゃねえよ殴るぞ」
「たぶらかしてなんかないよ。ファンに優しくしてるだけだしー」
そう言って拗ねた様に口を尖らせる空村と、「気持ち悪い」とでも言いたげな宮地。
そこに、ケラケラと笑い声が響く。
「なんや、相変わらずやなあ姫サン」
「「は?」」
突然の今吉の言葉に声を揃える宮地、空村。
そして、空村は驚いた様に言う。
「えっ…もしかして今君!?」
「ワシだけやないでー」
そう言って花宮を引っ張る今吉。
「えっ…?」
しかし、空村は困惑した様な顔をする。
「あれ?わからん?花宮やで」
「ハア!?花!?嘘!?」
先ほどよりも大きな声で驚く空村。
その反応に知り合いだと聞いていた周りの者も、困惑する。
「えぇ!?ホントに花?何でこんなでかくなってんの?」
そう言って空村は立ち上がり、花宮の近くに寄る。
「お久しぶりです」
「えっマジで花だ!ちょっと立って」
言われた通り立ち上がる。
空村は花宮の横に並ぶと背比べをするように自分の頭の上に手を置くと、宮地と今吉の方を向く。
「ねえ宮、今君。どっちのほうが高い?」
「花宮だな」「花宮やでー」
「えぇ!?嘘ぉ…何かショックー。」
「ナギ先輩が男何だからすぐ伸びるって言ったんじゃないですか」
「えー確かに言ったけどさー…170くらいで止まると思うじゃん。ていうか最後に会ったとき165くらいだったじゃん。何でそんな伸びてる訳?あーショックー」
「だからいつか抜かすって言ったじゃないですか」
「口だけかと思うじゃん!…あ、ってかいくつ?」
「179です。まだ成長期なので伸びてますけど」
「えー私175。さすがに止まったんだけど」
「でもナギ先輩も最後に会った時より伸びてるじゃないですか」
「まあね。高校で5cm伸びた」
「何で170で止まらなかったんですかね?」
「ねー?」
花宮、空村の二人が身長の話で盛り上がっていると今吉から声がかかる。
「ちょいちょいお二人さん、ワシらも話混ぜてーや」
「あ、今吉さんも抜かす予定なんで」
「おお、ワシに喧嘩売るん?ええわ抜かしてみろや。ワシもまだまだ成長期やで」
「おー、いいぞーやれやれー」
「イヤ止めろよ」
「あ、宮。宮はもう止まった?」
「おう。さすがにもう止まったわ」
「宮でかいもんねーいくつ?」
「191」
「おー!私と16も違うんだね~私、自分が背ぇ高いからここまで身長差あるの珍しいなぁ」
と、話をしていると空村が何かに気がついたかの様にハッとする。
「ごめんね!せっかく勇気持って話しかけてくれたのにほったらかしにしちゃって…久しぶりに会ったからちょっとテンション上がっちゃって…」
「全然そんな!」
「気にしないでください!むしろ気を使わせてスイマセン!!」
空村は苦笑しながら今度は桜井の手を取る。
「ううん。今のは私が悪かったから謝らないで?…それより!君のそのジャージ、今君と同じだよね?後輩君?」
「はっはい!桐皇高校一年、桜井良と申します!よろしくお願いします!!」
「うん。一応知ってると思うけど空村凪沙です。よろしくね~あ、そういえばサインだったよね?何に書けば良い?」
「あっえっと、いつもは使わないんですけど、リストバンドがあるのでそれにお願いします!」
「あ!オレも!!リストバンドで!」
「うんいいよ~待っててね」
「「はい!!」」
長い間放置されてた二人だったが、空村と話し、サインを書いて貰う約束も果たされ目が輝く。
「…っと!はい。名前も合ってるよね?」
「わぁ!はい!名前までありがとうございます!!」
「ボク、家宝にします!!」
「ふふっ!ありがとっ!」
と、そこに緊張した様な二人の少女に声をかけられる。
「あのッ!」
「はい?」
「空村凪沙さんですよね!私、相田リコっていいます!」
「桃井さつきです!」
「そうですよ~どうかしましたか?」
相田、桃井の二人は一度顔を見合せ、頷き合いまた正面を見て言う。
「「サイン貰えませんか!?」」
「ふふっ良いですよ?」
二人が言葉と同時に差し出して来たクリップボードを受け取る。
「「ありがとうございます!」」
「いえいえ~あ、二人共おいくつですか?あっ、女性に対して失礼かな?」
「いえそんな!私が高一でリコさんが高二です」
「私達のほうが年下なので敬語じゃなくて大丈夫ですよ~」
「そかそか、ありがと~」
「あとあのッ!化粧水とか何使ってますか!?」
「おっ、化粧水?女の子だからそういうの気になるんだね~…っとはいこれ!先に返すね。ちょっと待ってて」
「「…っ!ありがとうございます!!」」
クリップボードを手渡し、空村は持っていたクラッチバッグからメモ帳を取り出すと、二枚切り、何かを書き込んでいく。
「…うーん。こんなもんかな?…はいこれ。ここに書いてあるヤツは結構良い感じだよ」
「わぁ~ありがとうございます!」
「私の分まですいません…」
「気にしないで~…それより~…」
「「?」」
空村は「ちょっとごめんね?」と言いながら、相田、桃井の髪に両手を伸ばす。
不思議そうな二人は、空村の手から突然ポンッと出てきたピンク色のバラに驚く。
驚く二人の髪に今しがた出したバラを挿す
空村。
「可愛い君達にはバラをあげよう。…なーんて、ただの造花なんだけどね」
「「「「ッ~~~~~!!」」」」
キメ顔で声を低めにして言う空村。
普通の人がやってもイタいだけだが、なまじ顔が良いだけに(芸能人補正と演技力もプラスされて)とても様になっている。はっきり言ってめちゃくちゃカッコ良い。
もろで食らった相田、桃井は耳まで真っ赤になって顔を覆い座り込み、横で見ていた高尾、桜井の二人も机に伏せて手でバンバンと机を叩く。
「ムリ…顔が良い…」
「ズルい…ツラい…」
「今のはズルいですって…」
「カッコ良すぎて死にそう…ムリ…スキ…」
そんな四人の様子を面白そうにケラケラと笑う空村。
「あー面白い!」
「あんまいじめてやんなよ…」
「いじめてないって~」
「今のいつから仕込んでたん?」
「バッグ漁ってた時じゃないですか?」
「お、正解!さすが花~たまたま入ってたんだよね。だからあと一回しか出来ない」
「イヤあと一回はできるんかい!!」
「おー、今君ツッコミ流石」
「本場仕込みだな」
「秀徳二人自由かよ…」
「それな」
********************
そんなことを話しているうちに落ち着いたのか女子二人は元の場所に戻り、高尾達は邪魔になると思ったのか一足先に霧崎の方へ移動していた大坪、木村、若松の方へ向かう。
「そういえば今君に頼みたいことがあるんだよね」
「ん?なんや姫サン?」
「ずっと思ってたんだけど、今吉コイツのこと姫なんて呼んでんの?似合わねぇな」
「うっさいなー柄じゃないのはわかってんだよ。てか呼ばれたい訳じゃないし!」
「ああ、確かに"姫"ってより"女王"って感じだもんなお前」
「ハア?」
「イヤ、ワシもそう思ったんやけど姫のほうが語呂がええやん?」
「もう普通に#名前#って呼べば良いじゃないですか。いつもそう呼んでたのに何意地張ってるんですか」
「別に意地なんて張っとらんし…」
「えー何、今君拗ねてるの?何で?」
「うっわ白々しい!何でやあらへんわ!」
「えー?なんのこと?」
花宮の意地張ってる発言に空村はニヤニヤと笑いながら言う。
「ナギ先輩にやけてますよ」
「わざとだよ」
「たち悪ッ…」
「ん?何か言った花?」
「いえ何も」
「だよね」
「うわ出たソラの恐怖政治…」
「ハア?何?文句あんの宮」
「は?別にねえよ。ってかこんくらいでキレてんじゃねえよ」
「キレてない」
「ハイハイ」
「うざ」
二人のそんなやり取りに今吉、花宮は意外そうな顔をする。
「…珍しいですね。ナギ先輩が誰かと言い合いするの」
「ん?ああ、宮は親友だから」
「親友?このワシを差し置いてか?」
今吉は意地悪げに言う。
「今君は親友になんてなりたくないでしょ」
空村は不思議そうに首を傾げる。
今吉もそれにあっさり「まあな」と答える。
「それに…宮は絶対アタシのこと好きにならないし」
「「ッ!!」」
空村がそう言うと二人は息を飲み、目が細められる。
___空気が、変わった。
「…言い切れるんですか?」
「うん」
「宮地クンはどうなん?」
「あ"?気色悪いこと言ってんじゃねぇよ轢くぞ。大体ソラは自意識過剰なんだよ」
宮地がそう言うと一瞬の間を空けて笑い声が響く。
「あはははは!、凪沙めっちゃ言われとるやん」
「ふふっ、まったく失礼しちゃうわよね」
「ナギ先輩の顔を見て…ふっ、自意識過剰って言えるのすごいですね」
「イヤ、確かに可愛いけどオレのタイプじゃねぇし」
「「「あははははッ!…」」」
「ほら聞いた!?宮こういうこと言うのよ!」
「ふ、ふふっ、タ、タイプじゃないって…ははっ」
「っあかん、ははっ…笑い止まらんわッ…」
「宮地さん逆にどういうのがタイプ何ですか?ふっ、ナギ先輩わりと万人受けする顔だと思うんですけど…」
「それね!アタシどっからどう見ても可愛いのに!」
「ソラはそういうとこがダメ何だろ。「だってホントのことだし」あとオレのタイプはみゆみゆだ」
「"みゆみゆ"誰やねん!!」「"みゆみゆ"誰だよ!!」「出た!宮の"みゆみゆ"!!」
「あ"!?何で知んねぇんだよ殴るぞ!!アイドルだよ!ほらこれ!めちゃくちゃ可愛いだろうが!!」(デジャブ感)
そう言って宮地はみゆみゆと思われる写真を見せてくるが、空村達は笑っていて誰一人として画面を見ていない。
閑話休題
三人の笑いがようやく落ち着き、宮地がみゆみゆについて語り終わった(誰も聞いてない)頃、話が戻る。
「あー笑ったわぁ…そういえば#名前#。ワシに頼みってなんや?」
「あ、そうだ。これまだ一般には公開してないからむやみに言わないで欲しいんだけど、今度映画の主演をやることに決まったの」
「おー、おめでとさん」
「おめでとうございます」
「よかったな」
「うん、ありがと。で、お願い何だけどアタシの役京都弁なのよ。教えて欲しいの」
空村がそう言うも今吉は渋る。
「んーそうは言ってもなぁ…ワシのは京都弁やないんやけど。…とりあえずどんなストーリーか教えてくれへん?」
空村は頷き、答える。
「原作はライトノベルなの」
どこかで椅子のガタッという音が聞こえる。
「アタシの役の京都弁の女の子が主人公で、東京の高校に家の都合で転校してくるとこから物語の始まり。あ、物語の視点はクラスメイトの男の子何だけどね。で、主人公は実は陰陽師で妖怪を退治しているところをその男の子が偶然見ちゃって巻き込まれていく…みたいな感じの話何だけど。」
「ふーん…」
「わりと王道やなぁ…」
「実写化するには珍しいテイストですね。CGとか使うんですか?」
「ええ、そうみたい。人気の作品らしくて、製作費用には余裕があるから結構凝るみたいよ。台本とは別に原作のほうも読んでみたけど中々面白かったわ」
そんなことを話していると声がかかる。
「なあ」
「「「…ッ!」」」
どこからともなく声をかけられ驚く三人。
慌てて声の方を向くと一人の男がいた。
見慣れぬ男に突然声をかけられ、空村は少し訝しげに眉を寄せ、問う。
「えっと…どちら様でしょう?…というかいつからそこに?」
「あんたらが話してる時から。黛千尋。あんたと同じくこの春から大学生になる。よろしく」
「は、はぁ…よろしくお願いします?」
空村は黛のペースに飲まれ戸惑った様に続きを促す。
「あの…?」
「ん?…ああ、ラノベがどうとか聞こえたから来たんだが、あんたの言ってたのって"陰陽娘琴葉の奇妙な日常"だろ?」
「ええ、そうですが…ご存じ何ですか?」
「ああ。原作のファンなんだ。それで…」
黛がそう言ったところで今吉が「あっ!」と声をあげる。
それに驚いた二人は今吉を見る。
「黛クン洛山やん!」
「は?ラクザン?何それ?」
「京都の高校だ。因みに生まれも育ちも京都」
「!」
空村はハッとした顔で黛を見る。
「京都弁、オレが教えるんじゃダメか?」
「えっ…良いんですか?」
「ああ、でも条件があるんだが…」
黛のその一言に訝しげな顔をする空村。
「…何ですか?」
「演じるにあたり、オレにその様子を見せて欲しいんだ」
「「「「………………は?」」」」
空村含め、同じく怪訝そうだった宮地、今吉、花宮の三人も思いもよらない発言に間の抜けた顔をする。
「えっ………何故?」
「言っただろ、原作のファンなんだ。生半可な芝居されて原作を汚されたくはないからな」
空村の動きがピタリと止まる。
それに気づいた三人は「うっわ…」と顔を歪める。
そんな四人の様子に気づいているのかいないのか、黛は依然として真顔を保っている。
「それは…喧嘩を売られてるんですかね?」
ニコリと笑い、頬杖をつき首を傾げながら問う空村。
「イヤ?」
「ハア?」
平然とした顔で言う黛に、眉間にシワを寄せ凄む空村。
「じゃあどういう意味ですか」
「猫かぶってるみたいだったから、素でいいぞ。ていうか素でいい。あと同い年なんだから敬語もなくて良い。」
その場が静寂に包まれる。
一瞬の間のあと、空村ははぁーと深いため息を吐く。
「…別に猫かぶってる訳じゃないわよ。初対面の人には印象が良い様にしてるだけ。その方が色々やり易いから」
「そうか」
「ええ、そうよ」
「…珍しいな、#あだ名2#が初めてあだ名会うヤツに素がバレるの」
「イヤ、普通に聞こえてたぞ。…ていうか芸能人がいるんだから皆多かれ少なかれ聞き耳は立ててるんじゃないか?」
「あ…よかったのか?」
「別にええんとちゃう?」
「ええ。むしろわかっててわざと大きめの声で話してたんでしょうし」
「そうね。ここの子達、聞き耳は立てても写真を撮ったり、SNSで呟いたりする様な節度のない輩はいない様だし」
空村が足を組みながら言ったその言葉に、聞き耳を立てていた者達数名がビクッとする。
そんな周囲の様子に目の前の四人はげんなりとした顔になる。
「…そんなとこまで見とったん?」
「…相変わらず何考えてるかわかんねぇ」
「…オレ、マジで#あだ名2#だけは敵に回したくねぇ…」
「…怖いな」
空村はそれを見てクスクスと笑う。
「ふふっ、ひどいわね黛君まで」
「オレのことも"マユ君"って読んでくれて良いんだぞ?」
黛は少しからかった様な声色で言う。(真顔)
空村は一瞬面食らった様な顔をしたが、すぐに笑う。
「ふっ、ふふふっあはははは!ホントなんなの君!……はぁー笑ったー…ちょっと黛君調子乗ってない?」
空村が大笑いしたあとに続けて言った一言に今度は黛のほうが面食らった顔になる。
が、次の瞬間空村が放った一言に黛や周りの三人はもちろん、聞き耳を立てていた者全員が爆笑する。
「ま、いいんだけど。じゃあ黛君のことは"まゆゆ"って呼ばせて貰うわね」
『『『イヤ、何でだよ!!(やねん!!)』』』
「イヤ何でまゆゆなんだよ!!」
「アイドルか!!」
「マユ君じゃないんかい!!」
「…そうきたか」
ちなみに上から花宮、宮地、今吉、黛の順だ。
空村はそんな周囲の様子は気にも止めず話し続ける。
「ところでまゆゆ」『『『ホントに呼ぶんかい!!』』』
「…ちょっと、話が進まないから黙っててくれない?」
空村の一言に、周一同は水を打ったように静まる。
「で、まゆゆは結局引き受けてくれるの?」
「ああ、あと演技はやっぱり見せて欲しい」
「?何故?」
「オレは原作のファンだが"空村凪沙"のファンでもあるんだ」
「回りくどい」「…」
「「「お前(あんた)が言うのか…(言うんかい…)」」」
「黙って」「「「…」」」
「で?」と言いたげな顔をする空村。
黛は少し迷った様な素振りを見せたあと、ため息をつく。
「…ファンなんだ、空村凪沙の生の演技が見たい」
「ええ、良いわよ。じゃあ…はい」
そう言って空村はスマホを見せる。
「えっ…良いのか?」
「良いわよ。…あ、でもアタシの連絡先を誰かに売ったり見せびらかしたりしたら社会的に死んだと思ってね♡」
「怖…」
「あ、ついでにオレも良いですか?」「ワシもー」
二人はスマホを取り出しながらそう言う。
その様子に不思議そうな黛。
「お前らあんだけ仲良さそうなのに連絡先知らなかったのか?」
「中学卒業した途端スマホ変えられたんよ…」
「新しい連絡先教えられませんでした…」
二人の様子にニヤニヤと笑いながら「あら?そうだったかしら?」と、わざとらしく首を傾げる空村。
「そういえば、まゆゆ大学って東京?」
「ああ、葉星大学だ」「あ、オレも」
「あら?そうなの?」
互いに連絡先を交換しながらの会話だったが、黛、宮地の言葉に空村は顔を上げる。
「どうかしたのか?」
「ああ、知り合いが通っているの。同い年にもいるから会ったら二人共仲良くしてあげてね」
「も?他にもいるのか?というか仲良くしようにも情報が全然だからなりようもないんだが…」
「ええ、他に一つ上と三つ上にもいるんだけど、とりあえず同い年の子の情報だけ教えとくわね」
「おん。そうしてや」
「名前は兵頭十座。見た目はパッと見ヤンキーで死ぬほど人相が悪いけど、根は良い子だから、良かったら話しかけてあげて」
『『『………………は!?!?』』』
黛や周りの聞き耳を立てていた者達は驚き、目を見開く。
しかし、宮地、今吉、花宮の三人は平然とした顔をしていた。
「ナギ先輩の新しい舎弟か何かですか?」
「イヤ、下僕とちゃう?」
「ああ、それもありそうですね」
「どっちも違う!ただの友達よ!人聞きが悪いわね!ていうか他に聞いてる人がいるんだから誤解を招く様なこと言わないでくれる!?」
「「イヤ、もう手遅れですよ(ちゃう?)」」
三人がわちゃわちゃと盛り上がっていると、ようやく我に返った黛に(珍しく)取り乱した様にツッコまれる。
「…イヤイヤイヤ!なんで人気モデルの友達にヤンキーがいるんだよ!?お前ら二人は何の議論をしてるんだ!!ていうかそもそも男だったのかよ!!」
一息に言ったことで肩で息をする黛。
「イヤ、そう言われてもね。アタシにどんな友達がいようとアタシの勝手だし?」
そう首を傾げる空村。
それを見た者達は今度は今吉と花宮を見る。
目で「お前らは?」と問いかけられた二人は口を開く。
「ワシらはほら、中学ん時から凪沙の知り合いの厳ついにぃちゃんら見とったし。今さら舎弟の十人や二十人くらい「多いし舎弟じゃないってば!!」何も思わんわ」
『『『イヤイヤイヤ!!』』』
「そうですね。オレはむしろ、#あだ名1#先輩にヤンキーとはいえ友達がいることに驚きです。まあこれは、宮地にも思ったんですが…」
今吉の爆弾発言に皆は驚くが、当の本人は興味が逸れたのか宮地に質問を投げる。
「せや、宮地は何で驚いてないん?」
「あ"?オレは会ったことあるし」
『『『は?』』』
宮地のその言葉に、今度は今吉、花宮も合わせて驚く。
「えっ、何で宮地さん会ったことあるんですか?」
「休みの日に買い物行ったんだが、#あだ名2#がヤンキー二人と喋ってるの見て絡まれてるのかと思って声かけたから」
「あーそうそう。荷物持ち頼んだだけなのに勘違いされたから十座、あれ以来アタシと出かけるの遠慮する様になったのよ。反省してね、宮」
「だから悪かったって…わびにオレも荷物持ち手伝っただろ」
「まあ、お陰で予定より沢山買い込めたからそこは感謝してるけど…」
二人は周りを置いて話を続ける。
「イヤ、何で二人に増えてんねん!!」
今吉の言葉に二人は顔を見合わせる。
「何でって言われても…もう一人は別の大学だから今は関係ないし」
「どっちもわりと普通だったぞ。見た目はヤンキーだけど」
「そっちは舎弟ですか?」
「だから違う!!」
「え、また友達ですか?本当に珍しいですね」
「花には言われたくないんだけど…さっきからだんまりの花と同じジャージの子達はオトモダチ?」
そう言って空村は先程から一言も発していなかった霧崎の面々をチラリと見る。
花宮も同じ様にそちらを見るがすぐに空村を見て口を開く。
「いえ、アイツらは下僕ですね」
「「「「ってオイ!」」」」
「誰が下僕だ!」「オイ花宮」「ちょっと花宮~」「下僕って言わないでくれる…」
サラッと言った花宮に今まで沈黙を貫いていた霧崎も声をあげる。
その花宮や他の霧崎の反応に空村は一瞬きょとんとしたあと笑う。
「…ふふっ、花がそんなこと言うなんてやっぱり友達なんじゃない」
「ほんま花宮は素直やないなぁ」
二人は顔を見合わせて「ねぇ?」「なぁ?」と言い合う。
自分の先輩二人のそんな様子に、花宮は額に青筋を浮かべながら何かを押し殺す様に言う。
「…人をツンデレみたいに言わないでもらえますか」
「「似た様なもんじゃない(やん?)」」
花宮は大きな舌打ちはして頬杖をついた状態からそっぽを向く。
「何花宮、オレらもう喋って良いの?」
「ああ、好きにしろ」
原の言葉に花宮が雑に答える。
その様子に首を傾げる空村。
「あら、やっぱり花が命令してたの?何で?」
「オレらは嫌われ者なので余計な波風立てない様に黙っててもらったんです。協会から招集されたこの場で面倒事はごめんなので」
「えっ協会?協会ってバスケットボール協会のこと?わざわざ協会が高校生の合宿を考案するの?ていうかそもそも、これはどんな集まりなの?」
花宮の言葉に周囲は「今さら何を!」と湧いたが、空村の疑問により次の瞬間には同じ様に首を捻った。
空村の疑問に対し宮地、今吉は言う。
「"キセキの世代"って知ってるか?」
「知らない。何それ」
「まあ#名前#バスケ興味ないから知らんくてもしゃあないんやけど。…ワシらの二つ下の"十年に一人の逸材"と呼ばれる天才達のことや」
「帝光中っていう超強豪校に同じ年、同じ学年に"十年に一人の逸材"が五人も現れたことから"キセキ"って呼ばれてる。今は高校に上がったことで学校はバラバラだけどな」
「ワシんとこも宮地のとこも後輩にソイツらがいるで」
「ふーん…それで?」
空村はさっさと話せとでも言わんばかりの態度である。
「うるっせぇな!!今説明してんだろうが埋めるぞ!!」
「せっかちやなぁ」
二人はそう言ったあと続ける。
「その"キセキの世代"が無敵を誇ってた中学時代に、アイツらと渡り合ってた五人がいたんだよ。"無冠の五将"とかいう趣味の悪い名前付けられたヤツらがな」
「時代が違ったら天才と言われ、崇められていたんやろーけど"キセキの世代"の前に霞んでしまったんやなぁ」
「ソイツらはキセキと違って中学はバラバラで、学年もオレらの一つ下だけどな」
「ちなみに花宮もその内の一人やで」
「へぇ…」
今吉が付け足した言葉に空村は花宮を見る。
「黛さんのところは後輩にキセキ一人に無冠三人いますよ」
花宮は自分に向けられた視線については言及せずに黛に話を振る。
「オレはアイツらのことを後輩だと思ったことはないし、先輩だと思われたこともない。敬語なんて使われた試しがないしな」
「あー、それわかるわぁ。桜井はともかく青峰がなぁ…」
黛と今吉が脱線しかけたところで続きを促す空村。
「それで?」
「キセキの世代と無冠の五将獲得校での合同合宿。まあ集められた理由はWCで特に活躍した高校ってなってるけどな。目的は日本のバスケ界の向上がどうのって」
「そんなに有名なの?」
「無冠はキセキの影に隠れてるからわからないが、キセキは日本でバスケをしてるヤツはプロでも知ってるな。アイツらマジで規格外だし。無冠も今の中高生、あと大学生辺りには知られてると思う」
「ふーん…なるほどねぇ」
ここまで聞いて空村は納得した様に頷く。
「お上の考えることもたかが知れてるわね」
「あー、やっぱナギ先輩も思いました?」
「ええ。てか花、わかってて来たの?ドM?」
「違 い ま す。顧問が勝手にok出しました」
二人は周りを置いて話す。
そこにまだ何もわかってない宮地や黛が声をあげ、周りの者も同調した様に頷く。
「お前らだけで話してんじゃねぇよ轢くぞ」
「オレらにもわかる様に言ってくれ」
空村は少し面倒そうに話し出す。
「キセキの世代っていうのは名が知れてるんでしょ?無冠の五将も」
「ああ」
「協会はそれを餌にしたのよ。そのうち雑誌の記者かテレビ局辺りが来るわよ。せっかくの合宿なのにインタビューとか大量のカメラとかで練習に集中出来なくて御愁傷様ね」
『『『はあ!?』』』
空村が真顔で淡々と言い放った言葉に周囲は騒然とする。
「んなこと聞いてねぇぞ!!」
「アポなしってことか?」
「あのねぇ…大人は汚いの。プロだったなら練習の妨げになるって問題になるからきちんとアポを取るけど、貴方達は高校生なのよ?問題になりにくいの。訴えれば良いけどわざわざしようと思わないでしょ?そこを協会も狙ったのよ」
「邪魔だって追い返しちゃダメなのか?」
今まで見当たらなかった諏佐が、入り口の方から歩いて来てなに食わぬ顔で今吉の隣に座り弁当を広げながら言う。
そんな諏佐に不思議そうな顔をする皆。
「諏佐どこ行ってたんだ?」
「宮地か。忘れ物したから取りに帰ってたんだ、監督には許可をもらった。それで?」
急に現れたことで注目を浴びた諏佐だったが、空村に聞いた問いで目線が逸れる。
「多分ムリね。協会から教えられて来たのに押し返したら協会の責任になるし」
「ん?………ああ、なるほど。マジでクソだな」
空村の説明に納得した様な諏佐、宮地、黛。
他の者達はわかった者とわからない者が半々くらいだ。
「バスケ協会の責任になるから何だよ。実際そう何だから別に良いだろ!!」
難しい話に訳がわからなくなったのか火神が大声をあげる。
「ふはっ、頭ワリィなぁ火神」
「んだと花宮!!」
花宮の言葉に火神とその周辺の誠凛が殺気立つ。
が、その空気を打ち消す様にパンッという乾いた音が響く。
「ほら花、喧嘩売らない。自分で波風立てない様にって言っといて出来てないのはカッコ悪いわよ」
「…チッ」
「花」
「……スイマセン」
空村の言葉に花宮は周りに聞こえないくらい、それでいて空村にはギリギリ聞こえる小さな声で渋々謝った。
誠凛は、位置が遠く聞こえてはいなかったものの、態度から従ったことが伺えて驚きが隠せていない。___否、誠凛どころかあちこちから「あの花宮が…」「本当に後輩だったのか…」と言った声が聞こえる。___
周囲の反応に、花宮の機嫌は悪くなるばかりである。
「花、あんだけ大口叩いたんだから自分で説明しなさい」
周囲の反応や花宮の機嫌などまるで気にした風もなく空村は言った。
「は!?何でオレが…」
「自分で蒔いた種でしょ?」
「イヤ、元はと言えばナギ先輩が…」「ん?」
「…はぁ、わかりましたよ…」
花宮は諦めた様にため息をつく。
悪童と呼ばれる花宮が空村の意のままになっていることに周囲は依然として驚きに包まれている。
「花宮、人のこと下僕とか言えないじゃん」「だな」「だね」「ああ」「てめぇらまとめて一遍死ね!!」
そんなやり取りを間に挟んで話し出す。
「…お前ら来年何があるのか知らねぇのかよ」
『『『…あ!!』』』『『『…?』』』
『『『東京オリンピック!!』』』『『『ああ!!』』』
「やっとわかったか…」
花宮が疲れた様に言う。
「ん?でも東京オリンピックと何の関係があるんだ?」
「ハア!?ここまで言って何でわかんねぇんだよ。マジで頭ワリィな…ちったぁ頭使えよ」
「んだとコラ!」
火神が代表して抗議したねが他にも何人かわかっていなそうな人物を何人か発見し、花宮は心底意味がわからないといった顔で言う。
「はぁ…皆が皆今の説明でわかる訳じゃないのよ」
「すいません。オレ、頭良いんで頭悪いヤツの考えなんてわかんないんですよね」
『『『あ"あ!?』』』
花宮の嫌みに苛立つ数人。
「だからわざわざ喧嘩売るんじゃないわよ。最後まで説明!!」
「えぇ…もう良くないですか…?」
疲れた様に言ったその言葉に、各所で「良くない!!」と言う声が聞こえる。
「…オレらが訴えたら協会の責任になるのはわかってんだろ」
「?ああ」
「オリンピックの開催地で問題が起きたらその種目はどうなんだよ?」
『『『あ…』』』
「はぁ…何でここまで言わねぇとわかんねぇの?マジで疲れるんだけど。もっとない頭使って必死に考えろよ…」
心底疲れた様に言う。
先程から突っかかっていた火神も、自分の理解力が足りていないことはわかっていたので口をつぐむ。
「お疲れ様やなぁ花宮」
「どうせわかってたんだからアンタが説明しろよ」
恨めしそうに今吉を見る花宮。
「えーワシはほら、あんま関係あらへんし」
「あら、そんなことないわよ?」
「…へ?」
へらへらと笑っていた今吉の笑顔が凍る。
「桐皇高校男子バスケットボール部の主将として自由奔放なキセキの世代の内の一人を率い、中学時代には二年生にして主将に抜擢され、更には無冠の五将、花宮真の先輩である。メディアの格好の的ね。よかったわね、今君?」
「…」
「うっわ、流石ナギ先輩」
空村から笑顔で突きつけられた事実に思わず絶句する今吉。
花宮は自分が苦手な先輩が絶句している姿に空村を拍手で褒め称える。
「…も~ほんまなんなん?ワシには関係あらへん思って久しぶりに花宮の嫌がる顔見に来ただけ「オイ!」やのに…」
「爪が甘かったですね。諦めてください」
「ドンマイ今君」
机に突っ伏しながらの今吉の最低な発言に周りの者達は引く。(空村以外)
今吉と同じ中学の二人はキラキラとした笑顔でサムズアップする。
「はぁ~…二人共ほんまなんなん?ワシに冷た過ぎん?」
「そんなことないわよ」「前からこんなもんですよ」
そんな三人の様子に感心した様に諏佐は言った。
「仲が良いのは知ってたが、今吉が掌で転がされてるとは思わなかったな」
「やっぱり知ってたの?」
「ああ、今吉の部屋に写真集とかがいっぱいあったからファンなのか聞いたら…」
「諏佐!!余計なこと言うなや!!」
諏佐が言おうとした言葉に今吉は諏佐の口を塞ぎキレた様に言う。
珍しく取り乱した様な今吉に桐皇の後輩達は目を見開き、諏佐や花宮、空村は面白がる様にニヤニヤと笑う。
「諏佐さん中々イイ性格してますね」
「今吉ほどじゃないだろう」
「「ああ確かに」」
花宮の言葉に諏佐はサラッと答え、二人は納得した様に頷く。
「そういえば凪沙。…あ、すまん。今吉がそう呼んでたから移った…」
「ん?ああ、別に良いわよ。好きに呼んでくれて。貴方は?」
「そうか?オレは諏佐佳典だ」
「諏佐君?」
「ああ」
そんなやり取りを挟んでから諏佐は続ける。
「表にバイクあったんだがあれって凪沙のか?」
「ええ、アタシのよ」
周囲が驚きに包まれる。
「アンタバイク乗れんのか…身長高くてモデルやっててバイクも乗れるとかスペックどんだけ…」
黛が周囲の思ったことを代表したかの様に言う。
「ソラは誕生日来てすぐに乗りはじめたよな」
「誕生日に間に合う様に免許とったから」
宮地の言葉に驚きつつも、空村のハイスペックさに感心した様に「スゲー!」「カッケー!」などといった声が聞こえる。
周りの反応に面白そうに笑う空村。
___今吉と花宮からのどこか複数そうな、苦し気な表情に気づかないふりをして。
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はい。作者の朔です。
お待たせしましたー(待ってた人いるのか?)
一週間も間空けてしまってすいません。
本当はもう少し早く上げる予定だったのですが、書いていくうちに自分でも思ってもいない方向に話が膨らんでっちゃって…
キャラが勝手に動くってこういうことを言うんですね…
もう一つ謝罪があります。
前回、夢主の視点で物語が進行すると言いましたが完璧に第三者視点で書いてしまってすいません!!
これに関しては楽しみにしてくださっていた方には本当に申し訳ありません!!
当初は夢主の視点で進行する予定だったのですが、こちらの方が夢主の心情なども分かりにくいので考察しながらお楽しみ頂けるかと思い、誠に勝手ながら変更させて頂きました。
また、日本バスケットボール協会や東京オリンピックの話が出て来ましたが、実際の問題についてはわからないので現実とは一切関係がありません!!
協会から脅しの様なことを仄めかしていますが、そういった行為をしてる、またはさせる意図は全くありません。
その点につきましてはご了承下さい。
ハイッ。言い訳終了!!
えー、今回、夢主が出て来ましたが皆さんが疑問に思われていることが沢山あると思います。
夢主の一人称や口調が前半後半で違ったりとか、今吉の夢主の呼び方だったりとか。
まぁ、いろんなところに伏線詰め込んだのでちょっと考察して頂けたらなと。
きちんと回収したり、有耶無耶にしたまんまだったりするので聞きたいことは個人で私までどうぞ。
あと、出てくる人が偏ってますね!!
すいません、設定とか今回の話読んでわかったかと思うんですが私、花宮(及び霧﨑)と宮地、あと森山さんとか氷室が大好きなんです!!
完全な私情ですいません!!
a3では夏、秋箱推し(カンパニー箱推し)です。多分バレてますね!
この小説、私の妄想の塊なんで絶対出てくるの偏ってしまいますしね。
出して欲しいキャラや学校はリクエストしてくださると嬉しいです。
あ、元々面識ある設定だった氷室を設定で書くの忘れてました。足して置きます。
情報がわんさか出てくる上に、だいぶ駆け足で前回以上に読みにくい感じになってしまいましたが、こんな話で良ければこれからもよろしくお願いします。
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