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___東京某所。
WCが終わり、受験生は合否結果も出て落ち着いて春休みになった頃。WC(予選本選含め)で特に活躍した学校を"日本のバスケットボール界の更なる向上"と銘打って、キセキの世代と無冠の五将獲得校、全七校が集められ、一週間に亘る合同合宿が開催された。
そんな合宿の一日目。京都や秋田からも集められた為、集合時間はお昼前。全校が揃い、合宿についての注意点や日程などを改めて説明がちょうど終わり、昼食を食べる為に(着いたばかりなのであらかじめ注文していた弁当)各自食堂に移動しようとしていた所。一本の電話が鳴り響いた。
自然とそこに集まる人達の視線が音がなった方向へ向く。
「あー…すんません…」
そこにはバツの悪そうな顔をしながら目を逸らし、頭をかく宮地(兄)がいた。
ある者は興味を失った様に目を逸らし、ある者は「珍しい」とでも言いたげに瞬いた。
コール音が鳴り響く中。宮地はそのままスマホの画面を見ると眉間にシワを寄せ、自校___秀徳高校___の監督、中谷に目を向け、「出ていいですか?」と聞き、許可を取ろうとする。頷かれたのを確認した宮地は、手で大坪達に謝りながら廊下の端に移動する。
「…なんだよ?今、合宿中なんだけど」
宮地は苛立った様にそう言う。
「……あ"ぁ?……あぁ…ワリィ…まだ返してなかったか?」
苛立った様な態度から一変、申し訳なさそうな顔になる。
「……ああ、イヤ家にはない。オレが持ってる。……合宿中もやるつもりだったからだよ!!なんか文句あんのか!!轢くぞ!!……あ"ぁ?んだよその反応…イヤ引いてんじゃねぇよ」
コロコロと態度が変わりながらも楽しそうに笑う宮地。
その様子を見て、いまだに宮地に目を向けていた者も動き出した。
通話はまだ続いている。
*****************
「…ビックリしたー。珍しいな、宮地さんが電源オフにしておかないの」
「ああ。…と言うより、電話をしている所すら初めて見た気がするのだよ」
「結構仲良さげだったしな」
「ん?そうか?宮地は結構電話してるぞ」
「「大坪さん」」
緑間と高尾は驚いたように振り替える。
「知ってる人っすか?」
「ん?…ああ。多分な。反応がそんな感じだった」
「もしかして…カノジョサンとか?」
高尾がニヤニヤと笑いながらそう言う横で、緑間が「またこいつは…」とでも言いたげな顔で高尾を見る。が、緑間もそれなりに気になってはいる様でチラリと大坪を見やる。
「彼女じゃないぞ」
「な~んだ」
「…」
高尾は残念そうに口を尖らせながら頭の後ろに腕を組み、緑間もまた前を向く。
「でも女だけどな」
「「は!?」」
今まで話に参加していなかった木村が口を開いたと思ったら、いきなり爆弾発言をして後輩二人は驚いて声をあげる。
突然大きな声を出したことによって、またもや注目を集めるが二人は気付かずに木村、大坪に詰め寄る。
「えっ、ちょっ…えぇ!?マジっすか!?」
「宮地さん、親しい女性いたんですか?信じられないのだよ…」
「お、おう。取り敢えず落ち着け、近い」
「緑間、自分は落ち着いてますみたいな顔してるけどラッキーアイテム落としたぞ」
そう言いながら、大坪は緑間の落としたラッキーアイテム"髪の長い日本人形"を拾って手渡す。
「イヤイヤイヤ…何でそんな落ち着いてるんすか!?だってあの宮地さんですよ?刺すとか殺すとか平気で言ってくる宮地さんですよ!?その宮地さんと仲が良いとかどんな女傑ですか!?」
「高尾、失礼なのだよ」
「イヤでも思うだろ!?」
「まあ…そうだな。…余程強かな人でないと宮地さんとは親しくはなれないとは思うのだよ」
「だろ!?」
「お前ら言いたいほうだいだな…」
衝撃の事実に驚いた二人が好きほうだい言っていると大坪が苦笑しながら声をかけてくる。
それで少しは落ち着いたのか、二人が取り乱す発端となった木村に目を向ける。
「それでどういうこと何ですか?っていうかどんな人何ですか?」
「…」
「って言ってもなぁ…」
そう困った様に言いながら大坪に目を向けつつ続ける。
「オレはそこまで仲が良い訳じゃないから良く知らないんだよ。大坪が同じクラスだから、大坪に聞いてくれ。」
「結局オレに投げるのか…まあ良いんだが…」
早々に説明を投げた木村はそれっきり黙りこみ、それを見た大坪ははぁーとため息をつきつつも後輩を見据えた。
それを見た高尾は「なんだかんだ言って面倒見良いんだよな…」と心の片隅で思いつつも続きが気になる為口には出さず、緑間と共に大坪を見つめる。
「…と、その前に」
「へ?」
「は?」
「ん?」
話を聞くのに夢中になっていた高尾、緑間はもちろん。横で聞いていた木村までもが唐突な話の変わり方に不思議そうな声をあげる。
そんな三人の後ろを指差し、大坪は言う。
「皆とっくに食堂行ってるから、飯食い終わったらな」
「「「あ…」」」
話に夢中になっていた三人はそこでようやく、周りから人がいなくなっているのに気が付く。
そんな三人の様子に大坪は少し笑うと一足先に食堂へ向かい、その後を三人は慌てて追う。
*******************
食堂
随分と長い間話し込んでいたらしく、席は殆ど埋まり、中にはもう食べ初めている者もいる。
それを見た三人は申し訳なさそうな顔をしつつ、空いている席を探す。
そこに声がかかる。
「おーい!秀徳サ~ン」
声が聞こえた方向を向くと今吉が手を上げて降っている。
その周辺を見ると長テーブルが二つ並んでいる所に霧﨑第一、桐皇、その隣に宮地も含めた秀徳全員分の空席があった。
霧﨑が隣にいるのを見留め眉をひそめつつも恐らく、席をとっておいてくれたのだろうこともあり、そちらへ向かう。
「おー来た来た。随分と話し込んどったやん」
「ああ、まあな」
「席取っといてくれたんすか?あざーっす」
「ああ、別に気にせんとって」
本当に気にしていない様な素振りに安心しつつも、四人は各々礼を言う。
「ほんま気にせんでええよ。…それよかなんや面白そうな話しとったやん。それ聞かせてや」
「ああ。食べ終わったらで良いか?」
「おん」
「……ところで桐皇サンって霧﨑と仲が良いんですか?」
高尾はそう言いながら霧﨑に目を向けるが、当の本人達は聞こえていたのだろうに素知らぬ顔で食事を続ける。
それを見た今吉はニヤリと笑い、席を一つ挟んだ向こうにいる花宮の肩を組み、無理矢理秀徳側へ顔を向けさせる。
そこで花宮のポーカーフェイスが崩れ、嫌そうな心底めんどくさそうな顔をする。
「何ですか…」
絞り出した様な声でそう言い、それを見た今吉はさらに笑みを深めると改めて秀徳の方を見て言う。
「ワシと花宮同じ中学なんよ」
「へ?…そうなんすか?」
高尾は意外そうな顔をし、他に聞いていた者達(桐皇含め)も同じ様な顔をしつつ、確かめる為に花宮へと顔を向ける。
一斉に顔を向けられたことにより、先ほどからしかめていた顔を更に歪ませた。
それを見留た皆は二人の顔を見比べる。
「……何かめっちゃ嫌そうな顔してますけど…」
「ん?ああ、花宮ツンデレなんよ」「誰がツンデレだ」
「な?」
そう言ってケタケタと笑う今吉と、疲れた様な顔をした花宮。
なるほど、こうやって見ると確かに…。二人を見比べていた者達は皆そう思った。
中でも桐皇の者達は可哀想なものを見る目で花宮を見つめており、その目には嫌悪感は一切ない。
それを見ていた秀徳勢も、だんだんと可哀想になってきて初めの頃の嫌悪感はいつの間にかなくなっていた。
「あー…えっと…何かお疲れ様です」
「ホントにな…」
高尾が慰めると花宮は本当に疲れた様な表情で言った。もはや、高校二年生が漂わせる悲壮感ではない。
その場の空気がなんとなく暗くなった所でその場にそぐわない明るい声が響く。
「緑間っちー!あっちで一緒に食べようッス!」
指差した方を見るとキセキの世代___否、桃井もいる事から黒子もいることが推測される為、帝光中出身者と言うべきなのだろう___が集まっていた。
その場にいた者達の視線が一斉に声の方向に向かう。
それによって声の主、黄瀬が「ヒッ」と声をあげるがその場にいたほとんどの者はこう思っただろう。___黄瀬ナイス!!___と…。
「真ちゃん行ってくれば?」
「イヤ、だが…」
そこで緑間は遠慮した様に先輩達を見やる。
「オレ達は気にせず行ってきて良いぞ」
「ああ。…というか今さら遠慮とかされてもな」
大坪、木村はふざけた様に笑いながら送り出す。
だが、緑間はまだ迷っている様でチラリと高尾を見る。
「行ってこいよ。こういう機会がないと秋田とか京都とか集まれねぇだろ?久しぶり何だし話してこいって」
「せやせや、何なら青峰はワシに許可取らんと桃井引っ張って勝手に行ってしもたし。な?花宮?」
「…そうですね。オレはキセキの世代が嫌いなのでいなくなってくれれば万々歳ですけど」
相棒と他校の先輩達にまで後押しされ、緑間は小さく「失礼します」と呟くと黄瀬の方へ行った。
「…ほんま素直やないなあ花宮」
「別に本心を言ったまでですが」
「…花宮さんて結構いい人?」
「ハア?」
高尾がそう言った途端花宮は嫌そうに顔をしかめた。
「何ふざけたこと抜かしてんだよ。オレがイイヤツな訳ねぇだろ。お前らと一緒にしてんじゃねぇよ。殺すぞ」
「えぇ…何で褒めたのにこんなイヤがられてんのオレ?」
突然早口で捲し立てられたことにより、高尾は若干引きながら笑う。
今吉もケタケタと笑いながら言う。
「花宮他人 に褒められんの嫌いやからなぁ~」
「知った様なこと言ってんじゃねぇよ…」
「ん?」
「何でもありません。」
「コントかよ」
今吉に(勝手に)解説され、また嫌そうな顔をした花宮がボソッと言うが威圧感のある問いかけに無表情に即答する。
それを見た高尾は笑って続ける。
「何か花宮さん意外と普通に高校生って感じですね。何か普段からもっと"悪童"!って感じかと思ってました」
「イヤ、"悪童"って感じって何だよ…」
「何て言うか…こう…もっと性格が悪いイメージ?だったっすね」
「性格は普通に悪いぞ…お前らも知っての通り、ラフプレーも事実だしな」
"悪童 花宮真"のイメージが消え和気あいあいとしていた空気が凍る。
「…あれホントだったんすね…」
「ああ」
「…花宮何でわざわざ空気悪くするん?せっかくイイ感じに持ってけたのに…」
「アンタの思い通りに進んでいってるのと、イイヤツ認定されたのが気に食わなかったんで」
「…気づいとったん?」
「当たり前じゃないですか。さっきからオレのこと積極的にいじりにいってたでしょう。もう少し隠してください。…"先輩"位上手く隠されたらわかりませんけど」
「…せやなぁ…まあ上手すぎんのも考えものやけど」
周りを置いてけぼりに話していた花宮、今吉の二人だったが"先輩"という単語に反応して空気が少ししんみりする。
と、そこで今まで電話をしていた宮地が帰って来た。
「っと、ワリィ待たせた…ってんだよこの空気?」
「あ、宮地さん!」
その場の空気に首を傾げている宮地。
高尾は空気を明るくしようとこれ見よがしに明るい声で宮地を呼ぶ。
「電話何だったんすか?」
「ああ…英語のノート借りてたんだけど帰してなかったかんだよ」
「えっ!宮地さんって授業中ノートとかちゃんととってるイメージでしたけど…」
「あ"あ?授業用じゃねぇよ。むしろ授業用はオレが貸してる」
「へ?ってことは?」
高尾は頭が混乱した様に聞く。
「勉強の仕方とか要点だよ」
「えぇ!?宮地さん勉強教わってたんすか!?女の人に!?」
「うるっせぇな!!ワリィかよ埋めんぞ!!…ってん?女っつたか?オレ」
驚いた高尾が大声をあげると本日何回目かの注目を浴びるが、宮地が怒鳴り声をあげたことにより視線が散る。(面倒なことには関わらないのが吉である。)
が、宮地は自分が言った覚えのない情報に首を傾げる。
それに高尾は「あーそれは…」と大坪、木村に目を向ける。
「先輩達が宮地さんの電話相手に心当たりがあるって…」
そこで宮地は今まで喋らず傍観していた二人に顔を向ける。
「ああ、空村だろ?」
「ああ」
「ってかまだ返してなかったかんだな」
「うるせぇ、オレもさっき気づいたんだよ」
「えっちょっと待ってくださいよ!宮地さん頭良かったですよね?その人そんなに頭良いんですか?いよいよ何者だよ…」
先輩達が和やかに会話する横で、高尾は未だに困惑したような顔で聞く。
「ああ…緑間はそういうのに疎そうだからわからないが高尾は知ってるだろう」
「?何がっすか?」
「うちの学校にモデルがいるって話」
「えっはい。なんか結構有名らしいけど見たことないし名前も知らないんでよく知らないんですけど…ってもしかして…」
「ああ、そいつだよ」
「えぇーーー!?」
だんだん話がおかしくなってきたと思ったら、自分の先輩が有名なモデルと知り合い(しかも結構仲良さげ)だったという事実に高尾の困惑は最高潮に達する。
「うるっせぇな!!オレの知り合いがモデルだったことがそんなに意外かよ、刺すぞ!?だいたいてめえにもモデルの知り合いなんているじゃねぇか!」
「えっイヤでも…えっ!?何か黄瀬は違うっていうか、モデルって感じしなくないっすか!?」
「だからそれと同じ様なモンだよ!!」
「イヤでもその人は頭も良いんすよね!?可愛くて頭も良いとかどんだけだよ!」
「だから何だよ!それは関係ねぇだろ!?」
大声で言い合っていたことにより遠くから、「何か急にディスられたんスけど!?酷いッ!!」「うるせぇ!!」という声が聞こえてきた。
そこで今吉から声がかかる。
「まあまあお二人サン、一旦落ち着こうや」
「ああ、二人共うるさいぞ。すまんな!気にしないでくれ!」
今吉が窘め、大坪が周りに謝罪をする。
二人は落ち着いたのかバツの悪そうな顔をすると、小さく「ワリィ…」「スンマセン…」と言った。
「……落ち着いたか?」
「…ああ、ワリィな二人共…」「スンマセン…」
「イヤ、気にしないで良い」
「おん。…ところでそのモデルってもしかして最近女優業もはじめた空村無くしたいとちゃう?」
「えっ!?空村凪沙!?」
今吉がニヤリと笑って聞いた言葉に高尾は驚き、黙って話を窺っていた桐皇も思わぬ情報に目を見開く。
しかし、その言葉を聞いた秀徳三年生は怪訝そうな顔をする。
「…ああ。そうだが…」
「…オイてめえ何で知ってやがる?」
「…一般公開はしていないと聞いていたが…」
三人のその様子に高尾も怪訝そうな顔に変わる。
が、今吉はニヤニヤとした顔で続ける。
「そう怖い顔せんといてや。宮地クンには言っとらんかったけど、ワシと花宮同じ中学なんよ。で、そん時よくつるんどったんが空村凪沙」
『『『………ハア!?!?』』』
突然の情報にその場の者達の思考が止まり、三十秒ほどの間を開けて声をあげる。
今吉は皆の反応を見て「おもろいなあ」とゲラゲラと笑い、巻き込まれた花宮も嫌そうな顔からニヤニヤとした顔に変わった。
「は!?知り合いかよお前ら、早く言えよ!殴るぞ!!」
「今吉さん達まで知り合いなんすか!?」
「早とちりだったか…すまない」
「悪かったな…」
「えっ主将、モデルと知り合いだったんすか!?」
「そうなんですか!?…ってハッ!ボク何かがスイマセン、スイマセン!!」
「うるせぇ…」
驚いた者達が口々に言うが花宮が呟いた一言で静かになる。
「…で、宮地さん達は何で空村凪沙と仲良いんですか?」
「オレは一、二年時クラスが同じだった。で、大坪は今年。木村はアイツと同じクラスになったことはないが、昼飯食うときはいつも大坪の所で食うから一年時からちょくちょく会ってたな」
「ああ。…と言ってもオレはそんなに仲良くないから一番仲が良いのは宮地だけどな」
「オレはホントに飯食うときしか会わないから全然知らないしな。…そういえば高尾は空村のファンなのか?随分興奮してたが…」
「当たり前じゃないっすか!空村凪沙っすよ!?今をときめく女の子の憧れっすよ!?オレも妹ちゃんから教えてもらって知ったんすけど、今では一家揃って大ファンです!!ちなみに、去年の空村凪沙、初主演ドラマは録画して定期的に見てます!!うちの学校だって知ってたら卒業前にサイン貰いに行ってたのに!!オレは今!!めちゃくちゃ!!悔しい!!です!!」
「お、おう…圧が強いな…」
先輩達が憧れの芸能人と仲が良い理由を聞き絶妙な顔をしていた高尾だったが木村から、ファンかどうかを尋ねられると早口で捲し立てる。
それに圧倒され、唖然とする一同。…否、一人だけ嬉々として高尾に食いつく人物がいた。
「わかります、高尾くん!それって少女漫画が原作で実写化されたヤツですよね!!」
「おう!!」
「ボク、元々原作のファンで実写化とかあまり好きじゃなかったんですけど、CMでたまたま見かけた空村さんがホントにその漫画のヒロインに見えて!!生の人間があそこまで漫画に近付けるんだって感動してから、ネットとかで調べまくって大ファンなんです!!」
「わかる!!!!」
思わぬ所で一年生二人は意気投合したらしく、目を輝かせ、固く手を握りながらあの雑誌がどうの、あのシーンがどうのと熱く語り合っている。
そんな自分達の後輩に若干困惑しつつも、話を続ける先輩達。
「…なんつうかアイツ人気あるんだなっていうのをこういう時に改めて思うよな…」
「その気持ちわかるわぁ」
「今吉」
「今吉と花宮も空村と知り合いだったんだよな?どういう繋がりだ?」
「「そうでした!!」」
「おわッ!…お前ら聞いとったんかい!!」
「…っ、何なんだよお前ら!」
身近に感じている人が人気芸能人なのは知っていたが改めて再確認し、しみじみしている宮地に今吉。
そんな時、思い出した様にに木村が切り出すと、今では語り合っていた二人が自分達の方を向いた為ビクッとする今吉、花宮。
花宮はそのままため息をつくと答える。
「中学が同じ。今吉さんの紹介」
「ワシは三年間同じクラスやった」
二人は簡潔に答えると、それを合図にしたかのように話出す。
「花宮、ワシらが卒業した後会ったか?」
「会ってないです。それどころか電話すら繋がりません」
「ワシもやわ…」
「…あの人絶対スマホ変えましたよね」
「…変えたんやろうなぁ」
「…あの人そういうとこありますよね」
「…そういうとこあるよなぁ」
懐かしむ様に話していたのにいつの間にか、呆れた様な疲れた様な雰囲気に変わる。
哀れむ様に宮地も話し出す。
「…お前らも苦労させられてんだな…」
「!わかってくれますか!?」
「おう」
「別に悪いヤツって訳やないんやけどなぁ…」
「それな」
「そう、それです!普通に尊敬してはいるんですが何て言うかめんどくさいんですよね」
「あー、それだわ。めんどくせぇんだよアイツ」
「わかるわぁ。いちいち回りくどいんよなぁ…」
「もっとストレートに言えよって思う」
「わかる」「わかります」
およそ、人気モデルに対する発言とは思えない言葉に周りは固まるが、大坪、木村の二人は苦笑する。
「お前ら落ち着け」
「ほら、憧れのモデル像が壊されてお前らの後輩が混乱してるぞ」
「そんなん所詮周りがつくった幻想やろ」
「それ」
「勝手なイメージに幻滅されてもって感じですね」
言いたいほうだいである。
と、そこで自称大ファンの二人が我に返って捲し立てる。
「会ったことないんだから夢見たって良いじゃないっすか!っていうか幻滅何てしてません!」
「そ、そうですよ!生意気言ってスイマセン」
「「「あー、ハイハイ」」」
「「むーっ!」」
二人は、憧れの人の知り合いから雑にあしらわれ、むくれる。
ここで今吉は何か思い出したかの様に若松に目を向ける。
「そーいえば、さっきから一言も喋っとらんかったけど若松はどないしたん?」
『『『あっ…』』』
皆の視線が今思い出したかのように若松に向かう。
自分に突き刺さる視線に若松はたじろぐと、きまりが悪そうな顔をして言う。
「あー…なんつうか…そもそも空村凪沙?って誰っすか?」
「「ハア!?」」
若松がそう言ったことで、空村凪沙ファンの二人が驚いて、若松に詰め寄る。
他の者達も驚きつつ呆れる。
「若松さん空村凪沙知らないんですか!?人生の半分は損してますよ!?」
「お、おう。…イヤ半分は言い過ぎだろ…」
「全然言い過ぎ何かじゃないです!ほらこれ!ボクの好きなドラマのオフショット!見てください!可愛くてないですか!?」
「えっ!桜井それ何のヤツ?めっちゃ可愛い!あ!これも見て!雑誌の切り抜き何だけど大人っぽくてヤバくない!?」
「ヤバいですね!これはあのドラマの公式くろったーにあったヤツです!ボク雑誌はあまり見ないので良かったら教えてください!」
「おう!いいぜ!!ドラマの公式かー盲点だっわ。空村凪沙本人のくろったーならフォローしてるんだけどなぁ」
「あ!ボクもフォローしてます!」
初めは若松に詰め寄っていた二人だがすぐに写真の見合いになり、唖然とする若松だったが写真をまじまじと見つめる。
「イヤこれマジで可愛いな…」
「「でしょう!?」」
「うわ、大人気やん」
「オタクのノリ怖ッ…」
「あ"あん?オタクを一緒くたにしてんじゃねえよ殺すぞ!!」
閑話休題
空村#名前#オタクによる若松への布教が成功したところで話が戻る。
「で、結局英語のノートがなんだったん?」
「ん?…ああ、オレの後にも貸すヤツがいるから返せって」
「じゃあ、家にあるんですか?」
高尾がそう聞き、宮地は平然と答える。
「イヤ、今持ってる」
『『『ハア!?』』』
「それじゃあ返せないじゃないですか!」
「一週間先なら返せるが…」
「オレもそう言った」
「じゃあ…」
「でもそれじゃ間に合わないんだと」
「えっ、間に合わない?」
「何でも貸す予定のヤツがとんでもないバカらしく、春休み明けにあるテストがヤバいんだと。で、オレが持ってるノートに基礎から書いてあるからそれをやらせるってた」
「えぇ…じゃあどうするんですか?」
「取りに来させる」
「「……は?」」「「……へ?」」「「……ん?」」
宮地の発言にその場が唖然とする。
その反応に宮地は怪訝な顔をして言った。
「…んだよ?」
「えっ…」
「イヤ…」
「…は?…」
「えっと…」
「つまり…?」
「どういうことだ?」
「あ"あ?どういうもこういうもねぇだろ」
「来るんだよ。今からここに」
『『『…………………ハアーーーーー!?!?!?』』』
「何だよ!!」「うるっせぇな!!」「オイ何か今日うるせぇぞ!!」「静かにできねぇのか!!」
合宿当初から散々注目を浴びていた秀徳だったが、何回も繰り返した挙げ句、桐皇や花宮も加え今日一番の声の大きさだったこともあり、各方面から怒号が響く。
しかし、そんなことは耳に入らないとでも言うように宮地に詰め寄る。
「い、今から来るってどういうことっすか!?!?」
「空村さんがここに来るんですか!?」
「忙しいんじゃないのか?」
「いきなり呼んで迷惑だろう」
「えっ、あの可愛い子マジで来るんすか?」
「仕事とか大丈夫なん?」
「こっちに来れる位何だから大丈夫なんじないんですか?」
「あ"あー!うるっせぇな!そうだよ!!電話終わってからしばらくたってるからもうすぐ来んじゃねぇの!!」
______________________________
はい。作者の朔です。
少し切りが悪いかもしれませんがここまで!ちょっと長めになっちゃったかな?
どうしても、ここまで書きたかったんです。
書き方何ですが、
普通のセリフが「」
電話越しが『』
英語、または外国語が《》
人数が五人以上の場合が『『『』』』
になります。人数が多いことを強調したいのでかっこの数は関係ありません。
今回は第三者視点で書きましたが、次回からは夢主が出てくるので基本は、第三者と夢主の視点で進行します。
読みにくかったりわかりずらかったりしたらすいません。
あと、すっかり忘れていたんですが、プロフィールにある通り、私は関東生まれ関東育ちの生粋の関東人なので関西弁はニュアンスです。不快に思われた方には申し訳ありません…。
また、こちらも注意書きには書き忘れていたんですが、私は演劇もバスケも詳しく知りません。
できるだけ現実に沿う様に調べたり考えたりしていますが、違ったらすいません。
「こうして欲しい」というのは、コメントをくださると有り難いです。変えたくない部分もあるので、すべてを反映させることは難しいですが、できるだけ皆様のお声にお答えできたらと思っております!
ここから先読まなくても大丈夫です
*********
私は、小説や漫画など何か"ストーリー"を読む時は"空気感"や"雰囲気"など、その物語の世界観を大事に読んでいます。
皆さんも、色々な本を読むと思うんです。時代物だったりバトル物だったり、はたまた異世界物だったり。色々あると思うんですね。
で、今私が上げた時代物とかは実際に体験って出来ないじゃないですか。
だから、皆さん想像するんですね。もちろん自分で詳しく調べたりもするかもしれませんけど、結局は歴史を文字で読んで想像するんです。だって昔に戻ること何て出来ないから。
「こういう時代だった(はず)だからここはこうだろう」って。
だけど、たまに出てくる訳です。「ん?」って思うことが。
「こういう時代だった(はず)だからこれはないだろう」とかって。
そういう時、絶妙な気持ちになりませんか?私はなるんです。
「せっかく面白いのに何か違う」って。
でもまあ、仕方ないんです。だって人間ですし。
実際体験した訳でもないのに、その事実通りに何て書けません。そもそも、その歴史が本当に史実かどうかなんて誰にもできませんし。
…何が言いたかったのかっていうと、私は実際にバスケや演劇を体験したことがないので間違ってしまうってことです。
"それっぽい"雰囲気で世界観を崩さない様に書いてるってことです。
まあ、簡単に言うと言い訳ですね。
よく知らないので間違っていても、
「私経験者何ですけどこうですよー」って優しく教えていただけたらなってことです。
あと、小説書き初心者ってことも踏まえてくれたらなーみたいな。
長々と言い訳してすいません。九割五分くらい自分語りでしたし。
ああでも、初めから間違いを覚悟で書いている訳ではないのでそこはご安心ください。
こんな雰囲気小説ですが、これからも読んでいってくださると嬉しいです。
長々とすいません。短く纏めるの苦手なんです。練習します。
WCが終わり、受験生は合否結果も出て落ち着いて春休みになった頃。WC(予選本選含め)で特に活躍した学校を"日本のバスケットボール界の更なる向上"と銘打って、キセキの世代と無冠の五将獲得校、全七校が集められ、一週間に亘る合同合宿が開催された。
そんな合宿の一日目。京都や秋田からも集められた為、集合時間はお昼前。全校が揃い、合宿についての注意点や日程などを改めて説明がちょうど終わり、昼食を食べる為に(着いたばかりなのであらかじめ注文していた弁当)各自食堂に移動しようとしていた所。一本の電話が鳴り響いた。
自然とそこに集まる人達の視線が音がなった方向へ向く。
「あー…すんません…」
そこにはバツの悪そうな顔をしながら目を逸らし、頭をかく宮地(兄)がいた。
ある者は興味を失った様に目を逸らし、ある者は「珍しい」とでも言いたげに瞬いた。
コール音が鳴り響く中。宮地はそのままスマホの画面を見ると眉間にシワを寄せ、自校___秀徳高校___の監督、中谷に目を向け、「出ていいですか?」と聞き、許可を取ろうとする。頷かれたのを確認した宮地は、手で大坪達に謝りながら廊下の端に移動する。
「…なんだよ?今、合宿中なんだけど」
宮地は苛立った様にそう言う。
「……あ"ぁ?……あぁ…ワリィ…まだ返してなかったか?」
苛立った様な態度から一変、申し訳なさそうな顔になる。
「……ああ、イヤ家にはない。オレが持ってる。……合宿中もやるつもりだったからだよ!!なんか文句あんのか!!轢くぞ!!……あ"ぁ?んだよその反応…イヤ引いてんじゃねぇよ」
コロコロと態度が変わりながらも楽しそうに笑う宮地。
その様子を見て、いまだに宮地に目を向けていた者も動き出した。
通話はまだ続いている。
*****************
「…ビックリしたー。珍しいな、宮地さんが電源オフにしておかないの」
「ああ。…と言うより、電話をしている所すら初めて見た気がするのだよ」
「結構仲良さげだったしな」
「ん?そうか?宮地は結構電話してるぞ」
「「大坪さん」」
緑間と高尾は驚いたように振り替える。
「知ってる人っすか?」
「ん?…ああ。多分な。反応がそんな感じだった」
「もしかして…カノジョサンとか?」
高尾がニヤニヤと笑いながらそう言う横で、緑間が「またこいつは…」とでも言いたげな顔で高尾を見る。が、緑間もそれなりに気になってはいる様でチラリと大坪を見やる。
「彼女じゃないぞ」
「な~んだ」
「…」
高尾は残念そうに口を尖らせながら頭の後ろに腕を組み、緑間もまた前を向く。
「でも女だけどな」
「「は!?」」
今まで話に参加していなかった木村が口を開いたと思ったら、いきなり爆弾発言をして後輩二人は驚いて声をあげる。
突然大きな声を出したことによって、またもや注目を集めるが二人は気付かずに木村、大坪に詰め寄る。
「えっ、ちょっ…えぇ!?マジっすか!?」
「宮地さん、親しい女性いたんですか?信じられないのだよ…」
「お、おう。取り敢えず落ち着け、近い」
「緑間、自分は落ち着いてますみたいな顔してるけどラッキーアイテム落としたぞ」
そう言いながら、大坪は緑間の落としたラッキーアイテム"髪の長い日本人形"を拾って手渡す。
「イヤイヤイヤ…何でそんな落ち着いてるんすか!?だってあの宮地さんですよ?刺すとか殺すとか平気で言ってくる宮地さんですよ!?その宮地さんと仲が良いとかどんな女傑ですか!?」
「高尾、失礼なのだよ」
「イヤでも思うだろ!?」
「まあ…そうだな。…余程強かな人でないと宮地さんとは親しくはなれないとは思うのだよ」
「だろ!?」
「お前ら言いたいほうだいだな…」
衝撃の事実に驚いた二人が好きほうだい言っていると大坪が苦笑しながら声をかけてくる。
それで少しは落ち着いたのか、二人が取り乱す発端となった木村に目を向ける。
「それでどういうこと何ですか?っていうかどんな人何ですか?」
「…」
「って言ってもなぁ…」
そう困った様に言いながら大坪に目を向けつつ続ける。
「オレはそこまで仲が良い訳じゃないから良く知らないんだよ。大坪が同じクラスだから、大坪に聞いてくれ。」
「結局オレに投げるのか…まあ良いんだが…」
早々に説明を投げた木村はそれっきり黙りこみ、それを見た大坪ははぁーとため息をつきつつも後輩を見据えた。
それを見た高尾は「なんだかんだ言って面倒見良いんだよな…」と心の片隅で思いつつも続きが気になる為口には出さず、緑間と共に大坪を見つめる。
「…と、その前に」
「へ?」
「は?」
「ん?」
話を聞くのに夢中になっていた高尾、緑間はもちろん。横で聞いていた木村までもが唐突な話の変わり方に不思議そうな声をあげる。
そんな三人の後ろを指差し、大坪は言う。
「皆とっくに食堂行ってるから、飯食い終わったらな」
「「「あ…」」」
話に夢中になっていた三人はそこでようやく、周りから人がいなくなっているのに気が付く。
そんな三人の様子に大坪は少し笑うと一足先に食堂へ向かい、その後を三人は慌てて追う。
*******************
食堂
随分と長い間話し込んでいたらしく、席は殆ど埋まり、中にはもう食べ初めている者もいる。
それを見た三人は申し訳なさそうな顔をしつつ、空いている席を探す。
そこに声がかかる。
「おーい!秀徳サ~ン」
声が聞こえた方向を向くと今吉が手を上げて降っている。
その周辺を見ると長テーブルが二つ並んでいる所に霧﨑第一、桐皇、その隣に宮地も含めた秀徳全員分の空席があった。
霧﨑が隣にいるのを見留め眉をひそめつつも恐らく、席をとっておいてくれたのだろうこともあり、そちらへ向かう。
「おー来た来た。随分と話し込んどったやん」
「ああ、まあな」
「席取っといてくれたんすか?あざーっす」
「ああ、別に気にせんとって」
本当に気にしていない様な素振りに安心しつつも、四人は各々礼を言う。
「ほんま気にせんでええよ。…それよかなんや面白そうな話しとったやん。それ聞かせてや」
「ああ。食べ終わったらで良いか?」
「おん」
「……ところで桐皇サンって霧﨑と仲が良いんですか?」
高尾はそう言いながら霧﨑に目を向けるが、当の本人達は聞こえていたのだろうに素知らぬ顔で食事を続ける。
それを見た今吉はニヤリと笑い、席を一つ挟んだ向こうにいる花宮の肩を組み、無理矢理秀徳側へ顔を向けさせる。
そこで花宮のポーカーフェイスが崩れ、嫌そうな心底めんどくさそうな顔をする。
「何ですか…」
絞り出した様な声でそう言い、それを見た今吉はさらに笑みを深めると改めて秀徳の方を見て言う。
「ワシと花宮同じ中学なんよ」
「へ?…そうなんすか?」
高尾は意外そうな顔をし、他に聞いていた者達(桐皇含め)も同じ様な顔をしつつ、確かめる為に花宮へと顔を向ける。
一斉に顔を向けられたことにより、先ほどからしかめていた顔を更に歪ませた。
それを見留た皆は二人の顔を見比べる。
「……何かめっちゃ嫌そうな顔してますけど…」
「ん?ああ、花宮ツンデレなんよ」「誰がツンデレだ」
「な?」
そう言ってケタケタと笑う今吉と、疲れた様な顔をした花宮。
なるほど、こうやって見ると確かに…。二人を見比べていた者達は皆そう思った。
中でも桐皇の者達は可哀想なものを見る目で花宮を見つめており、その目には嫌悪感は一切ない。
それを見ていた秀徳勢も、だんだんと可哀想になってきて初めの頃の嫌悪感はいつの間にかなくなっていた。
「あー…えっと…何かお疲れ様です」
「ホントにな…」
高尾が慰めると花宮は本当に疲れた様な表情で言った。もはや、高校二年生が漂わせる悲壮感ではない。
その場の空気がなんとなく暗くなった所でその場にそぐわない明るい声が響く。
「緑間っちー!あっちで一緒に食べようッス!」
指差した方を見るとキセキの世代___否、桃井もいる事から黒子もいることが推測される為、帝光中出身者と言うべきなのだろう___が集まっていた。
その場にいた者達の視線が一斉に声の方向に向かう。
それによって声の主、黄瀬が「ヒッ」と声をあげるがその場にいたほとんどの者はこう思っただろう。___黄瀬ナイス!!___と…。
「真ちゃん行ってくれば?」
「イヤ、だが…」
そこで緑間は遠慮した様に先輩達を見やる。
「オレ達は気にせず行ってきて良いぞ」
「ああ。…というか今さら遠慮とかされてもな」
大坪、木村はふざけた様に笑いながら送り出す。
だが、緑間はまだ迷っている様でチラリと高尾を見る。
「行ってこいよ。こういう機会がないと秋田とか京都とか集まれねぇだろ?久しぶり何だし話してこいって」
「せやせや、何なら青峰はワシに許可取らんと桃井引っ張って勝手に行ってしもたし。な?花宮?」
「…そうですね。オレはキセキの世代が嫌いなのでいなくなってくれれば万々歳ですけど」
相棒と他校の先輩達にまで後押しされ、緑間は小さく「失礼します」と呟くと黄瀬の方へ行った。
「…ほんま素直やないなあ花宮」
「別に本心を言ったまでですが」
「…花宮さんて結構いい人?」
「ハア?」
高尾がそう言った途端花宮は嫌そうに顔をしかめた。
「何ふざけたこと抜かしてんだよ。オレがイイヤツな訳ねぇだろ。お前らと一緒にしてんじゃねぇよ。殺すぞ」
「えぇ…何で褒めたのにこんなイヤがられてんのオレ?」
突然早口で捲し立てられたことにより、高尾は若干引きながら笑う。
今吉もケタケタと笑いながら言う。
「花宮
「知った様なこと言ってんじゃねぇよ…」
「ん?」
「何でもありません。」
「コントかよ」
今吉に(勝手に)解説され、また嫌そうな顔をした花宮がボソッと言うが威圧感のある問いかけに無表情に即答する。
それを見た高尾は笑って続ける。
「何か花宮さん意外と普通に高校生って感じですね。何か普段からもっと"悪童"!って感じかと思ってました」
「イヤ、"悪童"って感じって何だよ…」
「何て言うか…こう…もっと性格が悪いイメージ?だったっすね」
「性格は普通に悪いぞ…お前らも知っての通り、ラフプレーも事実だしな」
"悪童 花宮真"のイメージが消え和気あいあいとしていた空気が凍る。
「…あれホントだったんすね…」
「ああ」
「…花宮何でわざわざ空気悪くするん?せっかくイイ感じに持ってけたのに…」
「アンタの思い通りに進んでいってるのと、イイヤツ認定されたのが気に食わなかったんで」
「…気づいとったん?」
「当たり前じゃないですか。さっきからオレのこと積極的にいじりにいってたでしょう。もう少し隠してください。…"先輩"位上手く隠されたらわかりませんけど」
「…せやなぁ…まあ上手すぎんのも考えものやけど」
周りを置いてけぼりに話していた花宮、今吉の二人だったが"先輩"という単語に反応して空気が少ししんみりする。
と、そこで今まで電話をしていた宮地が帰って来た。
「っと、ワリィ待たせた…ってんだよこの空気?」
「あ、宮地さん!」
その場の空気に首を傾げている宮地。
高尾は空気を明るくしようとこれ見よがしに明るい声で宮地を呼ぶ。
「電話何だったんすか?」
「ああ…英語のノート借りてたんだけど帰してなかったかんだよ」
「えっ!宮地さんって授業中ノートとかちゃんととってるイメージでしたけど…」
「あ"あ?授業用じゃねぇよ。むしろ授業用はオレが貸してる」
「へ?ってことは?」
高尾は頭が混乱した様に聞く。
「勉強の仕方とか要点だよ」
「えぇ!?宮地さん勉強教わってたんすか!?女の人に!?」
「うるっせぇな!!ワリィかよ埋めんぞ!!…ってん?女っつたか?オレ」
驚いた高尾が大声をあげると本日何回目かの注目を浴びるが、宮地が怒鳴り声をあげたことにより視線が散る。(面倒なことには関わらないのが吉である。)
が、宮地は自分が言った覚えのない情報に首を傾げる。
それに高尾は「あーそれは…」と大坪、木村に目を向ける。
「先輩達が宮地さんの電話相手に心当たりがあるって…」
そこで宮地は今まで喋らず傍観していた二人に顔を向ける。
「ああ、空村だろ?」
「ああ」
「ってかまだ返してなかったかんだな」
「うるせぇ、オレもさっき気づいたんだよ」
「えっちょっと待ってくださいよ!宮地さん頭良かったですよね?その人そんなに頭良いんですか?いよいよ何者だよ…」
先輩達が和やかに会話する横で、高尾は未だに困惑したような顔で聞く。
「ああ…緑間はそういうのに疎そうだからわからないが高尾は知ってるだろう」
「?何がっすか?」
「うちの学校にモデルがいるって話」
「えっはい。なんか結構有名らしいけど見たことないし名前も知らないんでよく知らないんですけど…ってもしかして…」
「ああ、そいつだよ」
「えぇーーー!?」
だんだん話がおかしくなってきたと思ったら、自分の先輩が有名なモデルと知り合い(しかも結構仲良さげ)だったという事実に高尾の困惑は最高潮に達する。
「うるっせぇな!!オレの知り合いがモデルだったことがそんなに意外かよ、刺すぞ!?だいたいてめえにもモデルの知り合いなんているじゃねぇか!」
「えっイヤでも…えっ!?何か黄瀬は違うっていうか、モデルって感じしなくないっすか!?」
「だからそれと同じ様なモンだよ!!」
「イヤでもその人は頭も良いんすよね!?可愛くて頭も良いとかどんだけだよ!」
「だから何だよ!それは関係ねぇだろ!?」
大声で言い合っていたことにより遠くから、「何か急にディスられたんスけど!?酷いッ!!」「うるせぇ!!」という声が聞こえてきた。
そこで今吉から声がかかる。
「まあまあお二人サン、一旦落ち着こうや」
「ああ、二人共うるさいぞ。すまんな!気にしないでくれ!」
今吉が窘め、大坪が周りに謝罪をする。
二人は落ち着いたのかバツの悪そうな顔をすると、小さく「ワリィ…」「スンマセン…」と言った。
「……落ち着いたか?」
「…ああ、ワリィな二人共…」「スンマセン…」
「イヤ、気にしないで良い」
「おん。…ところでそのモデルってもしかして最近女優業もはじめた空村無くしたいとちゃう?」
「えっ!?空村凪沙!?」
今吉がニヤリと笑って聞いた言葉に高尾は驚き、黙って話を窺っていた桐皇も思わぬ情報に目を見開く。
しかし、その言葉を聞いた秀徳三年生は怪訝そうな顔をする。
「…ああ。そうだが…」
「…オイてめえ何で知ってやがる?」
「…一般公開はしていないと聞いていたが…」
三人のその様子に高尾も怪訝そうな顔に変わる。
が、今吉はニヤニヤとした顔で続ける。
「そう怖い顔せんといてや。宮地クンには言っとらんかったけど、ワシと花宮同じ中学なんよ。で、そん時よくつるんどったんが空村凪沙」
『『『………ハア!?!?』』』
突然の情報にその場の者達の思考が止まり、三十秒ほどの間を開けて声をあげる。
今吉は皆の反応を見て「おもろいなあ」とゲラゲラと笑い、巻き込まれた花宮も嫌そうな顔からニヤニヤとした顔に変わった。
「は!?知り合いかよお前ら、早く言えよ!殴るぞ!!」
「今吉さん達まで知り合いなんすか!?」
「早とちりだったか…すまない」
「悪かったな…」
「えっ主将、モデルと知り合いだったんすか!?」
「そうなんですか!?…ってハッ!ボク何かがスイマセン、スイマセン!!」
「うるせぇ…」
驚いた者達が口々に言うが花宮が呟いた一言で静かになる。
「…で、宮地さん達は何で空村凪沙と仲良いんですか?」
「オレは一、二年時クラスが同じだった。で、大坪は今年。木村はアイツと同じクラスになったことはないが、昼飯食うときはいつも大坪の所で食うから一年時からちょくちょく会ってたな」
「ああ。…と言ってもオレはそんなに仲良くないから一番仲が良いのは宮地だけどな」
「オレはホントに飯食うときしか会わないから全然知らないしな。…そういえば高尾は空村のファンなのか?随分興奮してたが…」
「当たり前じゃないっすか!空村凪沙っすよ!?今をときめく女の子の憧れっすよ!?オレも妹ちゃんから教えてもらって知ったんすけど、今では一家揃って大ファンです!!ちなみに、去年の空村凪沙、初主演ドラマは録画して定期的に見てます!!うちの学校だって知ってたら卒業前にサイン貰いに行ってたのに!!オレは今!!めちゃくちゃ!!悔しい!!です!!」
「お、おう…圧が強いな…」
先輩達が憧れの芸能人と仲が良い理由を聞き絶妙な顔をしていた高尾だったが木村から、ファンかどうかを尋ねられると早口で捲し立てる。
それに圧倒され、唖然とする一同。…否、一人だけ嬉々として高尾に食いつく人物がいた。
「わかります、高尾くん!それって少女漫画が原作で実写化されたヤツですよね!!」
「おう!!」
「ボク、元々原作のファンで実写化とかあまり好きじゃなかったんですけど、CMでたまたま見かけた空村さんがホントにその漫画のヒロインに見えて!!生の人間があそこまで漫画に近付けるんだって感動してから、ネットとかで調べまくって大ファンなんです!!」
「わかる!!!!」
思わぬ所で一年生二人は意気投合したらしく、目を輝かせ、固く手を握りながらあの雑誌がどうの、あのシーンがどうのと熱く語り合っている。
そんな自分達の後輩に若干困惑しつつも、話を続ける先輩達。
「…なんつうかアイツ人気あるんだなっていうのをこういう時に改めて思うよな…」
「その気持ちわかるわぁ」
「今吉」
「今吉と花宮も空村と知り合いだったんだよな?どういう繋がりだ?」
「「そうでした!!」」
「おわッ!…お前ら聞いとったんかい!!」
「…っ、何なんだよお前ら!」
身近に感じている人が人気芸能人なのは知っていたが改めて再確認し、しみじみしている宮地に今吉。
そんな時、思い出した様にに木村が切り出すと、今では語り合っていた二人が自分達の方を向いた為ビクッとする今吉、花宮。
花宮はそのままため息をつくと答える。
「中学が同じ。今吉さんの紹介」
「ワシは三年間同じクラスやった」
二人は簡潔に答えると、それを合図にしたかのように話出す。
「花宮、ワシらが卒業した後会ったか?」
「会ってないです。それどころか電話すら繋がりません」
「ワシもやわ…」
「…あの人絶対スマホ変えましたよね」
「…変えたんやろうなぁ」
「…あの人そういうとこありますよね」
「…そういうとこあるよなぁ」
懐かしむ様に話していたのにいつの間にか、呆れた様な疲れた様な雰囲気に変わる。
哀れむ様に宮地も話し出す。
「…お前らも苦労させられてんだな…」
「!わかってくれますか!?」
「おう」
「別に悪いヤツって訳やないんやけどなぁ…」
「それな」
「そう、それです!普通に尊敬してはいるんですが何て言うかめんどくさいんですよね」
「あー、それだわ。めんどくせぇんだよアイツ」
「わかるわぁ。いちいち回りくどいんよなぁ…」
「もっとストレートに言えよって思う」
「わかる」「わかります」
およそ、人気モデルに対する発言とは思えない言葉に周りは固まるが、大坪、木村の二人は苦笑する。
「お前ら落ち着け」
「ほら、憧れのモデル像が壊されてお前らの後輩が混乱してるぞ」
「そんなん所詮周りがつくった幻想やろ」
「それ」
「勝手なイメージに幻滅されてもって感じですね」
言いたいほうだいである。
と、そこで自称大ファンの二人が我に返って捲し立てる。
「会ったことないんだから夢見たって良いじゃないっすか!っていうか幻滅何てしてません!」
「そ、そうですよ!生意気言ってスイマセン」
「「「あー、ハイハイ」」」
「「むーっ!」」
二人は、憧れの人の知り合いから雑にあしらわれ、むくれる。
ここで今吉は何か思い出したかの様に若松に目を向ける。
「そーいえば、さっきから一言も喋っとらんかったけど若松はどないしたん?」
『『『あっ…』』』
皆の視線が今思い出したかのように若松に向かう。
自分に突き刺さる視線に若松はたじろぐと、きまりが悪そうな顔をして言う。
「あー…なんつうか…そもそも空村凪沙?って誰っすか?」
「「ハア!?」」
若松がそう言ったことで、空村凪沙ファンの二人が驚いて、若松に詰め寄る。
他の者達も驚きつつ呆れる。
「若松さん空村凪沙知らないんですか!?人生の半分は損してますよ!?」
「お、おう。…イヤ半分は言い過ぎだろ…」
「全然言い過ぎ何かじゃないです!ほらこれ!ボクの好きなドラマのオフショット!見てください!可愛くてないですか!?」
「えっ!桜井それ何のヤツ?めっちゃ可愛い!あ!これも見て!雑誌の切り抜き何だけど大人っぽくてヤバくない!?」
「ヤバいですね!これはあのドラマの公式くろったーにあったヤツです!ボク雑誌はあまり見ないので良かったら教えてください!」
「おう!いいぜ!!ドラマの公式かー盲点だっわ。空村凪沙本人のくろったーならフォローしてるんだけどなぁ」
「あ!ボクもフォローしてます!」
初めは若松に詰め寄っていた二人だがすぐに写真の見合いになり、唖然とする若松だったが写真をまじまじと見つめる。
「イヤこれマジで可愛いな…」
「「でしょう!?」」
「うわ、大人気やん」
「オタクのノリ怖ッ…」
「あ"あん?オタクを一緒くたにしてんじゃねえよ殺すぞ!!」
閑話休題
空村#名前#オタクによる若松への布教が成功したところで話が戻る。
「で、結局英語のノートがなんだったん?」
「ん?…ああ、オレの後にも貸すヤツがいるから返せって」
「じゃあ、家にあるんですか?」
高尾がそう聞き、宮地は平然と答える。
「イヤ、今持ってる」
『『『ハア!?』』』
「それじゃあ返せないじゃないですか!」
「一週間先なら返せるが…」
「オレもそう言った」
「じゃあ…」
「でもそれじゃ間に合わないんだと」
「えっ、間に合わない?」
「何でも貸す予定のヤツがとんでもないバカらしく、春休み明けにあるテストがヤバいんだと。で、オレが持ってるノートに基礎から書いてあるからそれをやらせるってた」
「えぇ…じゃあどうするんですか?」
「取りに来させる」
「「……は?」」「「……へ?」」「「……ん?」」
宮地の発言にその場が唖然とする。
その反応に宮地は怪訝な顔をして言った。
「…んだよ?」
「えっ…」
「イヤ…」
「…は?…」
「えっと…」
「つまり…?」
「どういうことだ?」
「あ"あ?どういうもこういうもねぇだろ」
「来るんだよ。今からここに」
『『『…………………ハアーーーーー!?!?!?』』』
「何だよ!!」「うるっせぇな!!」「オイ何か今日うるせぇぞ!!」「静かにできねぇのか!!」
合宿当初から散々注目を浴びていた秀徳だったが、何回も繰り返した挙げ句、桐皇や花宮も加え今日一番の声の大きさだったこともあり、各方面から怒号が響く。
しかし、そんなことは耳に入らないとでも言うように宮地に詰め寄る。
「い、今から来るってどういうことっすか!?!?」
「空村さんがここに来るんですか!?」
「忙しいんじゃないのか?」
「いきなり呼んで迷惑だろう」
「えっ、あの可愛い子マジで来るんすか?」
「仕事とか大丈夫なん?」
「こっちに来れる位何だから大丈夫なんじないんですか?」
「あ"あー!うるっせぇな!そうだよ!!電話終わってからしばらくたってるからもうすぐ来んじゃねぇの!!」
______________________________
はい。作者の朔です。
少し切りが悪いかもしれませんがここまで!ちょっと長めになっちゃったかな?
どうしても、ここまで書きたかったんです。
書き方何ですが、
普通のセリフが「」
電話越しが『』
英語、または外国語が《》
人数が五人以上の場合が『『『』』』
になります。人数が多いことを強調したいのでかっこの数は関係ありません。
今回は第三者視点で書きましたが、次回からは夢主が出てくるので基本は、第三者と夢主の視点で進行します。
読みにくかったりわかりずらかったりしたらすいません。
あと、すっかり忘れていたんですが、プロフィールにある通り、私は関東生まれ関東育ちの生粋の関東人なので関西弁はニュアンスです。不快に思われた方には申し訳ありません…。
また、こちらも注意書きには書き忘れていたんですが、私は演劇もバスケも詳しく知りません。
できるだけ現実に沿う様に調べたり考えたりしていますが、違ったらすいません。
「こうして欲しい」というのは、コメントをくださると有り難いです。変えたくない部分もあるので、すべてを反映させることは難しいですが、できるだけ皆様のお声にお答えできたらと思っております!
ここから先読まなくても大丈夫です
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私は、小説や漫画など何か"ストーリー"を読む時は"空気感"や"雰囲気"など、その物語の世界観を大事に読んでいます。
皆さんも、色々な本を読むと思うんです。時代物だったりバトル物だったり、はたまた異世界物だったり。色々あると思うんですね。
で、今私が上げた時代物とかは実際に体験って出来ないじゃないですか。
だから、皆さん想像するんですね。もちろん自分で詳しく調べたりもするかもしれませんけど、結局は歴史を文字で読んで想像するんです。だって昔に戻ること何て出来ないから。
「こういう時代だった(はず)だからここはこうだろう」って。
だけど、たまに出てくる訳です。「ん?」って思うことが。
「こういう時代だった(はず)だからこれはないだろう」とかって。
そういう時、絶妙な気持ちになりませんか?私はなるんです。
「せっかく面白いのに何か違う」って。
でもまあ、仕方ないんです。だって人間ですし。
実際体験した訳でもないのに、その事実通りに何て書けません。そもそも、その歴史が本当に史実かどうかなんて誰にもできませんし。
…何が言いたかったのかっていうと、私は実際にバスケや演劇を体験したことがないので間違ってしまうってことです。
"それっぽい"雰囲気で世界観を崩さない様に書いてるってことです。
まあ、簡単に言うと言い訳ですね。
よく知らないので間違っていても、
「私経験者何ですけどこうですよー」って優しく教えていただけたらなってことです。
あと、小説書き初心者ってことも踏まえてくれたらなーみたいな。
長々と言い訳してすいません。九割五分くらい自分語りでしたし。
ああでも、初めから間違いを覚悟で書いている訳ではないのでそこはご安心ください。
こんな雰囲気小説ですが、これからも読んでいってくださると嬉しいです。
長々とすいません。短く纏めるの苦手なんです。練習します。