マリオシリーズ小説

「ワルイージ、少し痩せましたか?それに疲れているように見えます。何かあったのですか?」

「ボクもワルイージが心配だよ!」

ロゼッタと黄色いチコは悩みがある様子のワルイージに心配そうに問う。心身ともに弱っていたワルイージは恋人であるロゼッタに会いたくてほうき星の天文台を訪れていた。

「……本当にお前達はなんでもお見通しなんだな……」

ワルイージはロゼッタと黄色いチコに自身の悩みを打ち明ける。ワルイージの悩みとは相棒のワリオ、ライバル視しているルイージ、そしてマリオの三人と自分の間には星に選ばれた者と星に選ばれなかった者という決して超えられない壁が存在し、それは努力ではどうにもならないという事実であった。

「ワルイージ……」

ロゼッタはワルイージの悩みを聞き、彼の努力が報われない事に胸が苦しくなる。そんなロゼッタとワルイージを見た黄色いチコはワルイージに寄り添い、こう言う。

「ワルイージの中に……、星は……、あるよ……」

黄色いチコはワルイージにそう言うと少し寂しそうな顔をし、それとは正反対の明るい笑顔で続けた。

「ママの大切なヒトのワルイージが星に選ばれなかった存在だって事に引け目を感じているのを見てるとボクは悲しくなる……、ワルイージには笑顔でいてほしい……、だからボクはワルイージのために星になります!ワルイージが大好きな薔薇の花の星に!」

黄色いチコはそう言うと赤くまばゆい光をおび、天高く舞い上がったかと思うと今度は思いきり地面に向かって落ち、地面がズンズン震えだし、飛び込んだ穴からまばゆい光の帯がこぼれだし、光の帯は赤い薔薇の花飾りのように綺麗に輝いた。

黄色いチコは「薔薇星雲」に生まれ変わったのです。黄色いチコが生まれ変わった姿、薔薇星雲を見上げながらロゼッタは笑顔でこう言う。

「あなたはワルイージのために薔薇の花の星となったのですね……。私の大切な人のために星になってくれてありがとうございます」

薔薇星雲に生まれ変わった黄色いチコに笑顔でそう言うロゼッタに対し、ワルイージは目の前で何が起こったのか分からずに戸惑う。そんな様子のワルイージに赤いチコ、緑のチコ、青いチコ、そしてロゼッタが順番に言った。

「アタイたちチコは、星になるために 生まれてきたの」

「できれば、大切なヒトの笑顔のために 星になりたい……」

「アイツは、しあわせさ。とてもいい星になれた」

「だからワルイージ……、泣かないで下さい……」

黄色いチコが薔薇星雲に生まれ変わるという目の前の出来事が分からずに戸惑っていたワルイージだったが、赤いチコ、緑のチコ、青いチコ、そしてロゼッタのその言葉を聞き、自分のために薔薇星雲に生まれ変わった黄色いチコの想いを受け止めた。

「ありがとうな……」

ワルイージはそう言うと赤いチコ、緑のチコ、青いチコ、ロゼッタを優しく抱きしめ、ある決意を固めていた。



黄色いチコが薔薇星雲となった日から3ヶ月が経ったその日、ワルイージはロゼッタを誘い、キノコタウンの北から行ける星の降る丘からスターロードを経由していける国、星の国を訪れた。この国は古代ギリシア風のモニュメントや無限に湧き出る泉が幻想的な星達が住む国だ。この日はワルイージのために薔薇星雲に生まれ変わったかつての黄色いチコが夜空に輝いていた。

「あの薔薇星雲はワルイージのために生まれ変わったチコですね」

ロゼッタは立派な薔薇星雲に生まれ変わったかつての黄色いチコの姿を優しい眼差しで見守る。

「そうだな。しっかしまぁ本当に立派な薔薇星雲になっちまってオレ様としても鼻が高いぜ」

「ふふ、そうですね」

ワルイージとロゼッタは薔薇星雲に生まれ変わったかつての黄色いチコの立派になった姿を眺めながら笑い合った。それから少ししてワルイージが真剣な眼差しでロゼッタの瞳を見つめ、こう言う。

「オレはチコ達が立派な星に生まれ変わるその日まで寂しくないように笑顔で見送るっていうお前の使命、とても立派だと思うぜ。それで……、これからはその使命をオレもお前と一緒に分かち合いたいと思ってる。要するにだな……、チコ達のパパになりたいんだ」

「ワルイージ……、それって……!」

ワルイージは驚いた表情のロゼッタを見つめ、リングケースを開き、リングケースが開かれると飛び出す絵本のように赤い薔薇の花が咲き、赤い薔薇の花の中央にセットされた薔薇星雲をイメージした指輪が飛び出した。

「ロゼッタ……、オレと結婚して下さい」

「ワルイージ……!!……はい、喜んでお受けします」

ロゼッタはワルイージのプロポーズに嬉しさのあまり涙を零す。ワルイージはそんなロゼッタを優しく見つめ、涙を拭い、ロゼッタの左手の薬指に薔薇星雲をイメージしたエンゲージリング、即ち婚約指輪をはめる。

「この指輪、ワルイージのために薔薇星雲に生まれ変わったチコみたいですね、とても綺麗です……」

「だろ?オレの想いと薔薇星雲に生まれ変わったチコの想いの両方がその指輪に込められてるんだ、大事にしてくれよ」

ワルイージはそう言い、ロゼッタの頭を優しく撫でた。

「はい……、ワルイージの想いと薔薇星雲に生まれ変わったチコの想いが籠ったこの指輪……、大事にしますね。それから……、改めてこれからもよろしくお願いします」

「ああ……、これからもよろしくな、ロゼッタ」

二人はそう言うとゆっくりと顔を近づけ、口付けを交わした。これからの二人が歩む道はワルイージのために薔薇星雲に生まれ変わったかつての黄色いチコが優しく見守ってくれていることだろう───


END
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