マリオシリーズ小説

ほうき星の魔女、ロゼッタの元で大勢の仲間達と幸せに暮らしていたふたごの星の子チコ、マリとルー。声も姿も瓜二つで見分けがつかないほど似ている二人だけどマリはきまぐれで前向き、ルーはひかえめで内気と性格は全く違っており、そんな凸凹デコボコな二人はとても仲良しでスキマがないほどくっついていた。しかしある日突然、マリが星になってしまいマリとルーは離れ離れになってしまったのであった。
星の子チコは誰かの役に立つために星になる』とほうき星の魔女、ロゼッタは言った。しかし、マリはわけもなく星になってしまったのであった。マリとの突然の別れにショックを受けるルーに対し、ほうき星の魔女、ロゼッタはこう言ったのである。

あの子マリはもうそこにはいないわ。巡りの外に言ってしまったのね。星くずは、新しい星の子チコ達の命になる。彼女のために、祈りましょう。彼女はいつか、この巡りに帰ってくるかもしれない。それは、明日かもしれないし、百年後、一万年後かもしれない」

ほうき星の魔女、ロゼッタのあまりにも残酷な言葉にルーは耳を塞いでわんわんと泣いたのだった。

マリが星になってから百年の月日が経ったが、ルーはいつまでも星になる事はなかった。それはルー自身がマリに会うまでは星になる事なくこのままでいたいと思ったからである。そんなルーは星になれない役立たずはイヤだと星船を作り、ほうき星の魔女、ロゼッタの元を離れて星船を操り、星々を巡る旅に出ることにしたのである。いつかこの巡りの中でマリに会えると信じてルーは数百年を生きたのだった。

しかしどこにもマリの姿はなく、ルーと共に旅立った仲間達は次々と星になって千年の月日が経ち、ルーは思った。

「気まぐれなマリは、わたしの事を忘れて巡りの外で星うさぎと遊んでいるに違いない。わたしは、マリの事を忘れられない苦しい気持ちでもう千年も生きている。これからも、これからも、千年も二千年もあの子に会えない寂しさで、身を焦がすのだ。そう星の子チコのままで……!わたしも星になりたい。この狂おしい寂しさを、星になって消し去りたい。もし、巡りを超えてあの子と会えるなら今すぐわたしは星になりたい。星になる事こそ、救いなのだ……!!」

千年を生きたルーは大きくなった体をゆすって星になろうと暴れ続けたけれど星にはなれなかった。暴れ続けて疲れてしまったルー。そんなルーの側に現れたほうき星の魔女、ロゼッタがルーに語りかけてきた。

「あなたが星になっても巡りの輪を超えることはできないわ。それが、巡りに生きるものの、残酷な理。けれどきっと彼女は輪の外で、あなたを思っている。この巡りにいる限り、あの子はあなたを目指すでしょう。例え巡りの外にいても、あなたの座標は分かるはず。同じ星くずを持つふたご星ツインスターなのだから」

「羅針盤や望遠鏡もなく、座標を測るのは難しい。けれど、大切なヒトと再び会えると信じること。あの子が迷わないように心の灯台に祈りの火を灯し続ける事はあなたには、できるはず」

ほうき星の魔女、ロゼッタのその心強い言葉を聞いたルーの胸の内に流れる星くず達があの日を思い出すように力強く光を放ち始めた。その力強い光はマリと二人でいたあの頃のようであった。
ロゼッタの言葉に励まされたルーは再び星船で旅を続け、今ではたくさんのチコ達の親方であり、船長としての頼もしさと堂々とした風格を持っており、内気なルーではなく、胸に祈りの火を灯し星の世界を股にかける大船乗りのルーバとなったのである。マリとの再会を信じて星々を旅するルーバの心の支えとなっているのがほうき星の魔女、ロゼッタがルーバに捧げたこの詩だった。

『この星が平らなら二人出逢えてなかった
お互いを遠ざけるように走っていた
スピードを緩めずに 今はどんなに離れても
巡る奇跡の途中にまた向かい合うのだろう』



*   *   *



今ではルーバとなったルーの片割れ、マリは何度も生と死を繰り返す気の遠くなる程の長い長い旅の中で時の流れも空間もとっくの昔に壊れてしまい、記憶はメチャクチャで夢のようにフワフワしている。

「一つ前はハチミツにおぼれて……その一つ前は、オリの中にいた気がする……その一つ前は……忘れちゃった。ま、いいか」

マリは目の前にある赤い惑星に立ち寄り、住人達にあいさつをした。

「やあ、ごきげんよう。この星はいつ、ぼん!ってなるの?見たところ、そろそろじゃないかな。ちょっと、長生きしすぎだよね」

マリの言葉は赤い惑星の住人達には通じておらず、マリを見るなり逃げ去っていってしまった。でもこれもマリにとってはいつもの事なのである。マリは逃げていく赤い惑星の住人達にさよならのあいさつをする。

「その日が来るまで、ごきげんよう。君達が良き星くずになれますように」

赤い惑星を去り、宙を仰ぐマリ。そこに見えるのは桃色のほうき星。マリは桃色のほうき星に近づいて彼に語りかけた。

「ごきげんよう。お急ぎの様子だね。人生長いようで短いからね。生き急ぐのは、大事なことさ」

マリに対し、桃色のほうき星はこう返す。

「チビの癖に一丁前に人生を解くのかよ。お前は、ダレなんだ?どこから来た?」

桃色のほうき星の質問にマリはウンザリした顔で答える。

「そのどれも覚えてないよ。ダレ、とか。ドコ、とか。そんなに、大事な事なのかな?」

「………………………」

マリのあきれた返事に桃色のほうき星は危うく恒星ほしにぶつかりそうになってしまった。そんな桃色のほうき星に対し、マリは続ける。

「何度も、何度も、繰り返すうちに覚える事が無意味だって分かったんだ。安心してね、君の事もすぐ忘れるよ。すぐにこの世界からバイバイするから」

「お前……救いようがないほどヘンな星トリックスターだな。早くママの所へ帰りな」

マリの言葉に呆れ返ってしまった桃色のほうき星はこう言い捨ててその場から遠ざかっていった。

「ママ……?それ、なんだっけ?懐かしい言葉だけど、思い出せないや。ま、いいか」



*   *   *



次にマリが目覚めたのは星々が生まれる前にビッグバンがはじまる光のない真っ暗な世界、そこに命はまだない。
ここは真っ暗で何もない所だったけどマリは退屈ではなかった。だってただ次の目覚めを待つだけ、間もなく星くずになるのだから。そんな中でマリは独りごちる。

「星くずになって、無条件に、無価値になるのさ。星の子チコは大切なヒトの役に立つ時に星になれるって言ってたのにね。あれ?ダレが言ってたんだっけ?ま、いいか」

光のない真っ暗な世界はマリにとっていい事もあった。星の光は何もなく、あるのは絶望的な暗闇だけ。邪魔な光のない、深い闇がマリは好きだった。そんな暗い深い闇の中、ほのかな紫の光をマリは見つける。

「あそこにルーがいる。ここからでもあの子が見える。何度繰り返してもわたしは片割れに会いに行く。あの子と会うために何度も、何度も星くずになってやる。無意味なら自分で意味を作ればいい。それこそが、わたしの救いなの。人生、楽しまなきゃ」

マリはそう言うとまた星くずになり、ほのかな光が消え、闇の静けさだけが残ったのだった。その闇の静けさの中、ほうき星の魔女、ロゼッタがルーバに捧げた詩の言葉の続きのフレーズが小さく響きわたっていく───

『澱みなく流れてく河に浮かべた木の葉で
海を目指して雲になって雨で降ろう
遠い君の近くで落ちた種を育てよう
違う場所で君が気付いてくれるといいんだけど』



*   *   *



その夜、ほうき星の天文台にいるほうき星の魔女、ロゼッタは新しい星がもうすぐ生まれてくるという強い予感を感じていた。いつもならば大勢の星の子チコ達を誘ってキッチンで祝いのしたくをするのだが、今回はロフトに上がって一人その時を待つ事にしたのである。
ほうき星の天文台の中でもロフトはほうき星の魔女、ロゼッタにとって特別な場所なのだ。なぜかと言うと、星空の草原には夜風の涼やかな音だけが聞こえ、はじめて望遠鏡を覗いたあの丘を思い出せて心穏やかに観測ができるからだ。
ほうき星の魔女、ロゼッタが空を仰ぐと二筋の光が現れた。小さな望遠鏡でそれらを覗き見ると、矢のように走る青い光とそれを懸命に追いかける紫の光、二つの光が付かず離れず遊んでいるように見えたのである。

「………………!!」

その二つの光は気が遠くなるほどの長い長い年月を経てやっとの事で巡り会えたマリとルーであった。ほうき星の魔女、ロゼッタは付かず離れず遊んでいる青い光と紫の光を望遠鏡で覗きながら更に詩の続きのフレーズを口ずさんだ。

『この星が絶え間なく回り続けているから
小さく開けた窓の外 景色を変え
私の愛した花 そっと芽生える季節で
巡る奇跡のその果て また向かい合うのだろう
向かい合うのだろう』

付かず離れず遊んでいた青い光と紫の光はほうき星の魔女、ロゼッタの詩に答えるかのように交わり、手を繋いでダンスを踊るように楽しげにクルクルと周り出し、目が眩むほどの輝きを放って二つの太陽になったのだ。
ふたごの恒星ほしはお互いを周ってあたたかい陽をロフトに注ぎ、すっかり青空になったここにもワルツが聞こえてくるかのような美しさに包まれていく。

「新たな星よ、ごきげんよう。そして……おかえりなさい」

ほうき星の魔女、ロゼッタは決して諦めない強い心で互いを求め、巡る奇跡の果てにまた巡り会って立派な大連星バイナリスターとなり、決して離れないように引き合って公転運動をしているマリとルーを見つめ、詩の最後のフレーズを口ずさんだ。

『くるるまわるくるくると くるくるきみのまわりを』

この日以来、ロフトには太陽の慈しみの光が注がれ、草原ではワルツに合わせて楽しげに風が踊っているという───



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