マリオシリーズ小説
久しぶりにルイージに会いにキノコ王国に遊びに来たデイジー姫。ここ最近ルイージの元気がない事を彼の双子の兄、マリオから聞いたデイジー姫はルイージの元気を取り戻すために半ば強引にルイージをデートに連れ出したのだ。ちなみにデイジー姫はサラサ・ランドの姫という身分を隠すために私服に変装済みである。デートの行き先はキノコ王国にあるゴロツキタウンのゴロツキ駅からリッチリッチエクスプレスに乗った先にある実業家、映画スター等のお金持ちがたくさん住んでいる街、ピカリーヒルズだ。ちなみにルイージとデイジー姫はゴロツキタウンの地下二階にあるピカリーヒルズ行きの土管経由で来ている。
そろそろお昼時という事で、この街のピカリー神殿の前にある噴水の前に座ってゴロツキタウンに住んでいるキノピオ族の女性、ナンシーに作ってもらった特製のスパゲティを二人で食べようとしたその瞬間、二人の存在に気付いたキノピオ族の女性がルイージに声をかけてきた。
「あなたどこかで見た事があると思ったら……いつぞやのルイージさんのコスプレをしてホンモノを気取りながらホンモノに馴れ馴れしくしていたニセモノね!!ルイージさんのマネをして注目をあびたいのが見え見えよ!!」
「キミはあの時の……」
ルイージに対して一方的に捲し立てるように怒りの感情を向けている彼女はキノピオ族の女性で名はキノビアという。彼女はかつてゴロツキタウンのお悩みセンターで『ルイージさんに会いたい』という依頼を彼の双子の兄、マリオに叶えてもらった事があるのだ。問題はマリオがやった依頼の解決方法であり、その方法はと言うと、エムブレームLのバッジを自らにつけてルイージに成りきってみせるというものであった。元々マリオは熱狂的なルイージファンと思われる彼女がこんなコスプレに騙されるわけがないと駄目元でこの方法を試したのだが、マリオの想像に反してエムブレームLのバッジを使ったマリオのルイージコスプレにあっさりと騙されたのである。それで終わればよかったものの、その場に本物のルイージが登場し、ルイージのコスプレをしたマリオに話しかけた事で彼女はその場に現れた本物のルイージを「ルイージさんのコスプレをしたニセモノの癖にホンモノのルイージさんに馴れ馴れしい」と罵倒して一蹴し、その事でルイージの心が深く傷ついた出来事があったのだ。最近ルイージの元気がないのはこの一件が大きく関わっている。彼の元気がない理由はこの件のみではないのだが、それは今はひとまず置いておこう。
「あの時みたいにまた私を騙そうったってそうはいかないわよ!!いくらルイージさんのミドリのウワギがステキだからってマネなんて許せない!私は絶対絶対ホンモノのルイージさんとニセモノを間違えたりしないんだから!!」
以前エムブレームLを使ったマリオのルイージのコスプレにすっかり騙され、目の前にいる本物のルイージをニセモノ呼ばわりしてあの時と同じように罵倒するキノビア。そんなキノビアの怒りの感情にルイージはすっかり脅えてしまい、デイジー姫の後ろに隠れてしまった。一連の流れを黙って見ていたデイジー姫はこれ以上のルイージに向けられる罵倒に耐えられず、キノビアをキッと睨み、彼女に平手打ちをお見舞いした。
「いったぁーい!!何するのよあなた!!」
「あなたが訳の分からない事を言っているからよ!!彼がルイージのニセモノですって?彼は正真正銘のホンモノのルイージよ!馬鹿なことを言うのも大概にしなさい!!」
「違う!違うわ!!私知っているもの!あなたの後ろに隠れているのは確かにルイージさんのコスプレをしたニセモノだわ!!私が知っているホンモノのルイージさんは背が低くて、ちょっぴり太めのぽっちゃりボディだもの!!あなたの後ろに隠れているのはホンモノのルイージさんじゃないわ!!」
本物のルイージは背が低くてちょっぴり太めのぽっちゃりボディと主張するキノビア。彼女が主張している特徴はルイージというよりは彼の双子の兄、マリオのそれである。それはそうだろう。だって彼女は以前、エムブレームLのバッジを使ったマリオのルイージコスプレにあっさりと騙されたのだからマリオの体型をルイージのそれだと思い込むのも無理はないのだ。
「……え?背が低くて、ちょっぴり太めのぽっちゃりボディ?それってまるでマリオの特徴じゃない」
「マリオ?マリオって一体誰よ!」
「マリオは彼、ルイージの双子のお兄さんよ。まさかあなた、ルイージファンを名乗っておきながらルイージの兄弟の存在を知らなかったの?」
「マリオ?聞いた事もないわ、そんな名前」
ルイージの双子の兄でキノコ王国の住民なら知らない人はまずいないであろう存在のスーパーヒーロー、マリオの名を聞いた事がないと言い切るキノビア。そんなキノビアの姿に彼女と口論をしていたデイジー姫とキノビアに脅えてデイジー姫の後ろに隠れていたルイージはポカーンと開いた口が塞がらなくなってしまった。
「まさかキノコ王国に住んでいながら兄さんの名前を知らない人がいるなんて……」
「ええ、ビックリしたわ……」
ルイージとデイジー姫はキノコ王国のスーパーヒーローたるマリオの名前を知らない存在がいるという事に驚きを隠せず、キノビアの世間知らずっぷりと常識のなさに心底呆れてしまった。
「教えなさい!!ルイージさんの双子のお兄さんのマリオが誰なのかを!!」
キノビアはルイージとデイジー姫から送られる憐憫の視線に全く気付かずに更に怒りがヒートアップしていく。このまま彼女を放置するのも何なのでルイージとデイジー姫はマリオをこの場に連れてくる事にした。
「……じゃあ今から兄さんを連れてくるからキミはここで待っててね」
「……分かったわ」
ルイージとデイジー姫はマリオを連れてくるために噴水のすぐそばにある土管を潜ってマリオの家からマリオをピカリーヒルズに連れてきた事でいよいよマリオとキノビアの対面の瞬間だ。
「やあ、ボクはルイージの双子の兄、マリオだよ」
マリオは少し狼狽えた様子でキノビアに挨拶をする。それは無理もないだろう、何しろ彼女はかつて自分がエムブレームLのバッジを使ってルイージに成りきって騙した存在なのだから……
「あなたがマリオ……さん……」
キノビアはマリオを見つめ、少し戸惑う。何しろ彼女の目の前にいるマリオは背が低くてちょっぴり太めの体型とまさにキノビアが主張していたルイージの特徴そのままだったからだ。
「兄さん、エムブレームLのバッジを使ってよ」
「マリオが彼女の目の前でエムブレームLのバッジを使えばさすがに彼女も本物のルイージをニセモノ呼ばわり出来ないはずだわ」
「……事情がよく分からないけれど……分かったよ」
ルイージとデイジー姫に言われるままマリオはキノビアの目の前でエムブレームLのバッジを使って緑の帽子、緑の上着、青いオーバーオールとまさにルイージに成りきった姿となる。マリオがエムブレームLのバッジを使って姿を変化させる様子を見たキノビアは同様を隠せない。
「……!!!!!あなたのその姿……前に見た事があるわ……という事は……前に私がホンモノだと言い切ったあなたが……ルイージさんのニセモノ……だった……の……?」
「だから最初からそう言ってるじゃないの!」
「あ……あ……あああ……」
キノビアはルイージ、デイジー姫、そしてマリオの目の前でがっくりと項垂れ、正真正銘の本物のルイージに対して言った暴言を思い出していた。
『ハッ!な……なによあなた!!さては ルイージさんの コスプレね!』
『キィー!!なによ コイツ!!ルイージさんになれなれしいのよ!コスプレなんかで ホンモノを気どって私たちのジャマするんじゃないわよ!!』
「わ……わたし……私……ホンモノのルイージさんを見抜けなかった上にルイージさんに酷い言葉をぶつけてしまった……こんな……こんな私はルイージさんのファン失格だわ……」
ルイージの大ファンを自称していながら本物のルイージを見抜けず、それだけでなく本物のルイージを偽物呼ばわりして罵倒したキノビア。彼女が前に言っていた「「バッジ」かなにかでルイージさんのコスプレする人がいるらしいのよ!いくらルイージさんのミドリのうわぎがステキだからってマネなんて許せない!私はそんな人が現れても絶対絶対間違えたりしないんだから!」という発言はものの見事に彼女へのブーメランとなって帰ってきたのである。
「ルイージさん……ごめんなさい……ごめんなさい……!!わたし……私……とんでもない事を言ってしまったわ……!!」
キノビアはルイージに土下座をしてひたすらに謝った。先程までのルイージに対する怒りの感情はすっかり鳴りを潜め、心の底からルイージに対して謝罪を続けている。ルイージはそんな彼女にそっと手を差し伸べた。
「……ルイージさん?」
「キミの謝罪は受け取ったよ。キミはこれ以上自分を攻めなくてもいい」
「だ……だって……私はルイージさんのファンを自称しておきながらホンモノを見抜けなかった。それだけじゃない、ホンモノのルイージさんを傷つける酷い言葉をたくさん言ってしまった。そんな私がルイージさんの許しをもらうわけにはいかないわ……」
ルイージをたくさん傷つけてしまった自分がルイージに許しをもらうわけにはいかないと自分を攻め続けるキノビア。ルイージは差し伸べた手で彼女の手を握りしめた。
「確かにあの時は悪い夢かと思うくらいにショックだったけど……今のキミはあの時の事を反省しているじゃないか。だからいいんだよ、ボクはもう気にしていないからあの時の事は水に流して忘れよう」
ルイージは笑顔でキノビアに向けてそう言った。さんざん酷い事を言って傷つけた張本人の自分をすぐに許してくれたルイージの心の広さに彼女は歓喜する。
「ルイージさん……ルイージさん!!こんな失礼な私を許してくれるなんてなんて優しい方なの!!ますます好きになっちゃう〜!!」
「あはは……」
正真正銘の本物のルイージに手を差し伸べられただけでなく、自分の失礼な振る舞いを許してくれたという事実にキノビアは嬉しい気持ちでいっぱいである。
「ルイージさん!」
「何だい?」
「私……これからもルイージさんのファンでいていいですか?」
「もちろんだよ!!」
こうしてルイージはキノビアが自分のファンを続ける事を受け入れたのであった。
「ふぅ、これで一件落着ね」
「ありがとうデイジー。キミのおかげで問題が解決できたよ」
「ふふ、どういたしまして」
仲睦まじい雰囲気を作り出しているルイージとデイジー姫。キノビアはルイージと仲良さそうにしているデイジー姫に興味津々の様子で彼女に声をかける。
「あ、あの!」
「なぁに?」
「デイジーさん……ですよね?私、あなたのファンになってもいいですか?」
なんとキノビアはデイジー姫に興味を持ち、デイジー姫のファンになりたいというのだ。果たしてデイジー姫の答えは……
「ええ、もちろんいいわよ!」
「本当ですか!ありがとうございます!!今日からルイージさんとデイジーさんの仲を応援しますね!!」
「それってつまりルイージと私の恋路を応援してくれるって事?ありがとう、嬉しいわ」
キノビアは今日からルイージとデイジー姫の仲を応援する事に決めたようだ。デイジー姫とキノビアの会話を聞いていたルイージはデイジー姫が自分に好意を抱いていると知り、思わず胸がドキドキしてしまう。ルイージが最近元気がなかったもう一つの理由、ワッフル王国のエクレア姫への失恋の傷はデイジー姫の存在によってこれから少しずつだが着実に癒されていくのである。
「ボクには事情は全く分からなかったけど、丸く収まってよかったよかった!!」
この発言の主はエムブレームLのバッジでルイージのコスプレをしたまま放置されていたマリオ、そう今回のルイージのニセモノ騒動の元凶同然の彼である。
「『丸く収まってよかった?』一体どの口がそれを言うんだい?兄さん」
「元はと言えばマリオがエムブレームLのバッジでルイージのコスプレをして依頼を解決しようとしたのが全ての原因じゃない」
ルイージとデイジー姫はジト目でマリオを見つめ、マリオに恨みの感情を向けている。
「ふ……二人とも何だか目がコワイなぁ……」
マリオはジト目で睨んでくるルイージとデイジー姫に恐怖を覚え、思わず後ずさりしてしまう。そんなマリオの目の前に怒り顔のデイジー姫が立ちはだかる。
「マリオ……」
「な、何だい?デイジー」
「覚悟しなさーい!!」
「あ〜れ〜!!」
デイジー姫はマリオに平手打ちをし、その平手打ちの勢いでマリオは水平線の彼方へと吹き飛んでしまった。普段はスーパーヒーローなマリオだけれど、今回の件では思うところのある行動をした罰が彼に当たったのでしたとさ。
END
そろそろお昼時という事で、この街のピカリー神殿の前にある噴水の前に座ってゴロツキタウンに住んでいるキノピオ族の女性、ナンシーに作ってもらった特製のスパゲティを二人で食べようとしたその瞬間、二人の存在に気付いたキノピオ族の女性がルイージに声をかけてきた。
「あなたどこかで見た事があると思ったら……いつぞやのルイージさんのコスプレをしてホンモノを気取りながらホンモノに馴れ馴れしくしていたニセモノね!!ルイージさんのマネをして注目をあびたいのが見え見えよ!!」
「キミはあの時の……」
ルイージに対して一方的に捲し立てるように怒りの感情を向けている彼女はキノピオ族の女性で名はキノビアという。彼女はかつてゴロツキタウンのお悩みセンターで『ルイージさんに会いたい』という依頼を彼の双子の兄、マリオに叶えてもらった事があるのだ。問題はマリオがやった依頼の解決方法であり、その方法はと言うと、エムブレームLのバッジを自らにつけてルイージに成りきってみせるというものであった。元々マリオは熱狂的なルイージファンと思われる彼女がこんなコスプレに騙されるわけがないと駄目元でこの方法を試したのだが、マリオの想像に反してエムブレームLのバッジを使ったマリオのルイージコスプレにあっさりと騙されたのである。それで終わればよかったものの、その場に本物のルイージが登場し、ルイージのコスプレをしたマリオに話しかけた事で彼女はその場に現れた本物のルイージを「ルイージさんのコスプレをしたニセモノの癖にホンモノのルイージさんに馴れ馴れしい」と罵倒して一蹴し、その事でルイージの心が深く傷ついた出来事があったのだ。最近ルイージの元気がないのはこの一件が大きく関わっている。彼の元気がない理由はこの件のみではないのだが、それは今はひとまず置いておこう。
「あの時みたいにまた私を騙そうったってそうはいかないわよ!!いくらルイージさんのミドリのウワギがステキだからってマネなんて許せない!私は絶対絶対ホンモノのルイージさんとニセモノを間違えたりしないんだから!!」
以前エムブレームLを使ったマリオのルイージのコスプレにすっかり騙され、目の前にいる本物のルイージをニセモノ呼ばわりしてあの時と同じように罵倒するキノビア。そんなキノビアの怒りの感情にルイージはすっかり脅えてしまい、デイジー姫の後ろに隠れてしまった。一連の流れを黙って見ていたデイジー姫はこれ以上のルイージに向けられる罵倒に耐えられず、キノビアをキッと睨み、彼女に平手打ちをお見舞いした。
「いったぁーい!!何するのよあなた!!」
「あなたが訳の分からない事を言っているからよ!!彼がルイージのニセモノですって?彼は正真正銘のホンモノのルイージよ!馬鹿なことを言うのも大概にしなさい!!」
「違う!違うわ!!私知っているもの!あなたの後ろに隠れているのは確かにルイージさんのコスプレをしたニセモノだわ!!私が知っているホンモノのルイージさんは背が低くて、ちょっぴり太めのぽっちゃりボディだもの!!あなたの後ろに隠れているのはホンモノのルイージさんじゃないわ!!」
本物のルイージは背が低くてちょっぴり太めのぽっちゃりボディと主張するキノビア。彼女が主張している特徴はルイージというよりは彼の双子の兄、マリオのそれである。それはそうだろう。だって彼女は以前、エムブレームLのバッジを使ったマリオのルイージコスプレにあっさりと騙されたのだからマリオの体型をルイージのそれだと思い込むのも無理はないのだ。
「……え?背が低くて、ちょっぴり太めのぽっちゃりボディ?それってまるでマリオの特徴じゃない」
「マリオ?マリオって一体誰よ!」
「マリオは彼、ルイージの双子のお兄さんよ。まさかあなた、ルイージファンを名乗っておきながらルイージの兄弟の存在を知らなかったの?」
「マリオ?聞いた事もないわ、そんな名前」
ルイージの双子の兄でキノコ王国の住民なら知らない人はまずいないであろう存在のスーパーヒーロー、マリオの名を聞いた事がないと言い切るキノビア。そんなキノビアの姿に彼女と口論をしていたデイジー姫とキノビアに脅えてデイジー姫の後ろに隠れていたルイージはポカーンと開いた口が塞がらなくなってしまった。
「まさかキノコ王国に住んでいながら兄さんの名前を知らない人がいるなんて……」
「ええ、ビックリしたわ……」
ルイージとデイジー姫はキノコ王国のスーパーヒーローたるマリオの名前を知らない存在がいるという事に驚きを隠せず、キノビアの世間知らずっぷりと常識のなさに心底呆れてしまった。
「教えなさい!!ルイージさんの双子のお兄さんのマリオが誰なのかを!!」
キノビアはルイージとデイジー姫から送られる憐憫の視線に全く気付かずに更に怒りがヒートアップしていく。このまま彼女を放置するのも何なのでルイージとデイジー姫はマリオをこの場に連れてくる事にした。
「……じゃあ今から兄さんを連れてくるからキミはここで待っててね」
「……分かったわ」
ルイージとデイジー姫はマリオを連れてくるために噴水のすぐそばにある土管を潜ってマリオの家からマリオをピカリーヒルズに連れてきた事でいよいよマリオとキノビアの対面の瞬間だ。
「やあ、ボクはルイージの双子の兄、マリオだよ」
マリオは少し狼狽えた様子でキノビアに挨拶をする。それは無理もないだろう、何しろ彼女はかつて自分がエムブレームLのバッジを使ってルイージに成りきって騙した存在なのだから……
「あなたがマリオ……さん……」
キノビアはマリオを見つめ、少し戸惑う。何しろ彼女の目の前にいるマリオは背が低くてちょっぴり太めの体型とまさにキノビアが主張していたルイージの特徴そのままだったからだ。
「兄さん、エムブレームLのバッジを使ってよ」
「マリオが彼女の目の前でエムブレームLのバッジを使えばさすがに彼女も本物のルイージをニセモノ呼ばわり出来ないはずだわ」
「……事情がよく分からないけれど……分かったよ」
ルイージとデイジー姫に言われるままマリオはキノビアの目の前でエムブレームLのバッジを使って緑の帽子、緑の上着、青いオーバーオールとまさにルイージに成りきった姿となる。マリオがエムブレームLのバッジを使って姿を変化させる様子を見たキノビアは同様を隠せない。
「……!!!!!あなたのその姿……前に見た事があるわ……という事は……前に私がホンモノだと言い切ったあなたが……ルイージさんのニセモノ……だった……の……?」
「だから最初からそう言ってるじゃないの!」
「あ……あ……あああ……」
キノビアはルイージ、デイジー姫、そしてマリオの目の前でがっくりと項垂れ、正真正銘の本物のルイージに対して言った暴言を思い出していた。
『ハッ!な……なによあなた!!さては ルイージさんの コスプレね!』
『キィー!!なによ コイツ!!ルイージさんになれなれしいのよ!コスプレなんかで ホンモノを気どって私たちのジャマするんじゃないわよ!!』
「わ……わたし……私……ホンモノのルイージさんを見抜けなかった上にルイージさんに酷い言葉をぶつけてしまった……こんな……こんな私はルイージさんのファン失格だわ……」
ルイージの大ファンを自称していながら本物のルイージを見抜けず、それだけでなく本物のルイージを偽物呼ばわりして罵倒したキノビア。彼女が前に言っていた「「バッジ」かなにかでルイージさんのコスプレする人がいるらしいのよ!いくらルイージさんのミドリのうわぎがステキだからってマネなんて許せない!私はそんな人が現れても絶対絶対間違えたりしないんだから!」という発言はものの見事に彼女へのブーメランとなって帰ってきたのである。
「ルイージさん……ごめんなさい……ごめんなさい……!!わたし……私……とんでもない事を言ってしまったわ……!!」
キノビアはルイージに土下座をしてひたすらに謝った。先程までのルイージに対する怒りの感情はすっかり鳴りを潜め、心の底からルイージに対して謝罪を続けている。ルイージはそんな彼女にそっと手を差し伸べた。
「……ルイージさん?」
「キミの謝罪は受け取ったよ。キミはこれ以上自分を攻めなくてもいい」
「だ……だって……私はルイージさんのファンを自称しておきながらホンモノを見抜けなかった。それだけじゃない、ホンモノのルイージさんを傷つける酷い言葉をたくさん言ってしまった。そんな私がルイージさんの許しをもらうわけにはいかないわ……」
ルイージをたくさん傷つけてしまった自分がルイージに許しをもらうわけにはいかないと自分を攻め続けるキノビア。ルイージは差し伸べた手で彼女の手を握りしめた。
「確かにあの時は悪い夢かと思うくらいにショックだったけど……今のキミはあの時の事を反省しているじゃないか。だからいいんだよ、ボクはもう気にしていないからあの時の事は水に流して忘れよう」
ルイージは笑顔でキノビアに向けてそう言った。さんざん酷い事を言って傷つけた張本人の自分をすぐに許してくれたルイージの心の広さに彼女は歓喜する。
「ルイージさん……ルイージさん!!こんな失礼な私を許してくれるなんてなんて優しい方なの!!ますます好きになっちゃう〜!!」
「あはは……」
正真正銘の本物のルイージに手を差し伸べられただけでなく、自分の失礼な振る舞いを許してくれたという事実にキノビアは嬉しい気持ちでいっぱいである。
「ルイージさん!」
「何だい?」
「私……これからもルイージさんのファンでいていいですか?」
「もちろんだよ!!」
こうしてルイージはキノビアが自分のファンを続ける事を受け入れたのであった。
「ふぅ、これで一件落着ね」
「ありがとうデイジー。キミのおかげで問題が解決できたよ」
「ふふ、どういたしまして」
仲睦まじい雰囲気を作り出しているルイージとデイジー姫。キノビアはルイージと仲良さそうにしているデイジー姫に興味津々の様子で彼女に声をかける。
「あ、あの!」
「なぁに?」
「デイジーさん……ですよね?私、あなたのファンになってもいいですか?」
なんとキノビアはデイジー姫に興味を持ち、デイジー姫のファンになりたいというのだ。果たしてデイジー姫の答えは……
「ええ、もちろんいいわよ!」
「本当ですか!ありがとうございます!!今日からルイージさんとデイジーさんの仲を応援しますね!!」
「それってつまりルイージと私の恋路を応援してくれるって事?ありがとう、嬉しいわ」
キノビアは今日からルイージとデイジー姫の仲を応援する事に決めたようだ。デイジー姫とキノビアの会話を聞いていたルイージはデイジー姫が自分に好意を抱いていると知り、思わず胸がドキドキしてしまう。ルイージが最近元気がなかったもう一つの理由、ワッフル王国のエクレア姫への失恋の傷はデイジー姫の存在によってこれから少しずつだが着実に癒されていくのである。
「ボクには事情は全く分からなかったけど、丸く収まってよかったよかった!!」
この発言の主はエムブレームLのバッジでルイージのコスプレをしたまま放置されていたマリオ、そう今回のルイージのニセモノ騒動の元凶同然の彼である。
「『丸く収まってよかった?』一体どの口がそれを言うんだい?兄さん」
「元はと言えばマリオがエムブレームLのバッジでルイージのコスプレをして依頼を解決しようとしたのが全ての原因じゃない」
ルイージとデイジー姫はジト目でマリオを見つめ、マリオに恨みの感情を向けている。
「ふ……二人とも何だか目がコワイなぁ……」
マリオはジト目で睨んでくるルイージとデイジー姫に恐怖を覚え、思わず後ずさりしてしまう。そんなマリオの目の前に怒り顔のデイジー姫が立ちはだかる。
「マリオ……」
「な、何だい?デイジー」
「覚悟しなさーい!!」
「あ〜れ〜!!」
デイジー姫はマリオに平手打ちをし、その平手打ちの勢いでマリオは水平線の彼方へと吹き飛んでしまった。普段はスーパーヒーローなマリオだけれど、今回の件では思うところのある行動をした罰が彼に当たったのでしたとさ。
END