ファイアーエムブレム小説
クルト王子を暗殺した反逆者として汚名を着せられたグランベル王国の公子、聖騎士シグルド。彼は自らの無実を証明するため、ユグドラル大陸最高戦力たるグランベル正規兵に最後の戦いを仕掛ける。シグルドは父バイロンから聖剣ティルフィングを継承し、バイロンとシグルド親子に汚名を着せた政敵、ドズル公爵家当主のランゴバルド卿とフリージ公爵家当主の宰相レプトールに勝利を果たす。その後、シグルドの無実を知っていたというヴェルトマー公爵家当主のアルヴィスの側近、アイーダの手筈のもとにシグルド軍は念願だったバーハラ王都への凱旋を果たした。
バーハラ王都郊外にてアルヴィス率いるヴェルトマー軍がシグルド軍を迎え入れた。シグルドは主君のグランベル王アズムールにこれまでの戦いの真実を伝えようとしたが、グランベル王アズムールは病気で動く事が出来ず、彼の側近のアルヴィスが全ての代理を引き受けると言い出す。シグルドは後でグランベル王アズムールに直接お詫びを申し上げようとしてそのまま凱旋式は何事もなく終わるはずだったのだが、ここでアルヴィスの態度が急変した。
アルヴィスは最初からドズル公爵家当主のランゴバルド卿とフリージ公爵家当主の宰相レプトールを倒したシグルドがこのバーハラ王都郊外に現れるのを狙っていたのだ。シグルドは態度が急変したアルヴィスに問い返したが、ここで彼にとってさらに残酷な事実が降りかかる。
「私は王女ディアドラの夫として、貴公を討伐せねばならぬ。シグルドよ、悪く思うなよ」
「王女ディアドラ!?……それは……」
ヴェルトマー公爵家当主のアルヴィスと愛し合っているというグランベルの王女、その正体は行方不明になっていたシグルドの妻、ディアドラだったのだ。アルヴィスはディアドラをシグルドと引き合わせるが、シグルドとディアドラが自らを差し置いて互いに魅入るように言葉を交わす光景にディアドラをこれ以上シグルドに逢わせる事を危険と察し、従者に命じてディアドラをバーハラ城内に戻す。そしてシグルド軍の公開処刑をヴェルトマー全軍に告げたのである。
* * *
ヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える降り注ぐ隕石を落とす炎魔法『メティオ』による殲滅戦が始まり、王都バーハラ郊外は戦渦に包まれていく。炎魔法『メティオ』によって放たれた火球の中でシグルドと共に反逆者の汚名を着せられながらも懸命に戦う一組の夫婦、アーダンとアイラがいた。夫のアーダンは剣、槍、斧、弓と巧みに武器を使い分けて妻のアイラと背中を合わせてシグルド軍の皆をジェネラルとして自らの鎧で守り、妻のアイラはソードマスター、いわゆる剣を極めし者として持っている全ての剣が壊れ果てるまで夫のアーダンと背中を合わせて彼とともに前衛に立ち、仲間としてともに戦ってきたシグルド軍の皆を業火の中から逃がすために時間を稼ぎながら戦っている。……が、二人の体力はそろそろ限界のようだ。
「アーダン……ここまでだな」
「そうだな。ふうっ、皆を守って疲れちまったぜ」
ヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える炎魔法『メティオ』による大量に放たれる火球に包まれながら自分達の最期を察し、背中合わせの体勢のまま満面の笑みで互いを見つめている。
「アイラ、最期に一ついいか?」
「どうした?聞いてやる」
アーダンは最期に妻のアイラに伝えたい事があるようだ。アイラはアーダンの顔を見つめながら彼の言葉を聞いている。
「こんな俺と結婚してくれてありがとうな」
「……!!な、何を言っているんだ!!」
アーダンの真剣な声と感謝の言葉にアイラの顔は真っ赤に染まっていく。
「アイラはイザーク王国の王女で聖戦士の血も引いていて他に言い寄ってくる男もたくさんいただろうに、その中から聖戦士の血も引いてない鈍臭い俺を選んでくれたんだ。こんなに嬉しい事はねぇよ」
「アーダンは我が流星剣を耐える事が出来た唯一の男だ。私にとってこれ以上に価値のある男はいない」
アーダンとアイラがはじめて出会ったのはシグルドがヴェルダン王国の第一王子ガンドルフにさらわれたユングヴィ公女のエーディンを救出するためにヴェルダン王国に足を踏み入れた事がきっかけだ。ヴェルダン王国第二王子キンボイスにイザーク王国の第一王子シャナンを人質に取られている事でやむを得ず彼が治めるジェノア城の守りについていたアイラ。アイラには何か理由があって戦っていると察したシグルドは彼女を殺さずにジェノア城を制圧すると全軍に伝え、その際に誰かが囮になってアイラをジェノア城から遠ざける作戦を立てたのだ。その作戦のカギとなるアイラをおびき寄せるための囮役として抜擢されたのが『固い、強い、おそい』の三つを兼ね備えているアーダンであり、アーダンは持ち前の守備力でアイラの流星剣を見事に耐え抜いてみせた。その隙にシグルドはジェノア城を制圧し、キンボイスに人質に取られていたイザーク王国の第一王子シャナンの救出に成功した事でアイラはシャナンを保護してくれたシグルドへの恩に報いるためにシグルド軍への仲間入りを果たしたのである。
それからアイラは自身の流星剣を耐え抜いてみせたアーダンを気に入り、都度都度アーダンと手合わせをするのが楽しみになっていた。そうしてアーダンと手合わせはもちろんの事、戦闘でも共に背中を合わせて戦っていく中でアイラがアーダンに抱く気持ちは興味から戦友、戦友から親愛、親愛から恋愛感情へと変化していく。アイラがアーダンに抱くその気持ちはアーダンも同様にアイラに対して抱くようになっていった。そんな二人が恋人同士となるのに時間はかからなかった。
二人が結婚して夫婦になり双子の男女を授かり、双子の男女の父親となったアーダンは家族のために頑張らねばと決意を新たにするのであったが、その矢先に起こったのが今現在シグルド軍の指揮官のシグルドをはじめとする仲間達がヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える炎魔法『メティオ』によって放たれた火球の海に包まれて苦しむ惨たらしい光景である。一人でも多くの仲間達をこの火球の海から逃がすために戦ったアーダンとアイラは産まれた子供達の成長をこれからも見ていきたいという願いを叶えられず、志半ばで逝く事になってしまった。
「アーダン、私からも最期に一ついいか?」
「ああ、いいぜ」
アイラはアーダンと背中合わせの体勢を解除し、体の全てでアーダンと向かい合って言葉を発した。
「イザーク王国の王女、アイラはシアルフィ公国の重騎士アーダンを大陸一、愛している」
火球の海に包まれていくアイラの最期の言葉はアーダンへの愛の告白だった。愛しい夫に向ける愛を告白した直後、アイラは炎魔法『メティオ』による火球が直撃し、焼死してしまう。
「アイラ……最期に嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか」
誰よりも愛しい妻、アイラの美しい最期の姿をこの目にしかと焼きつけたアーダン。アイラに炎魔法『メティオ』による火球が直撃してから僅か数秒後、アーダンも炎魔法『メティオ』による火球が直撃し、焼死してしまった。
互いに見つめ合いながら炎に焼かれて最期を遂げた一組の夫婦、アーダンとアイラ。彼らの無念は後に二人が残した愛しき双子、スカサハとラクチェが晴らす事になるのだが、それはまだ先の未来の出来事である───
END
バーハラ王都郊外にてアルヴィス率いるヴェルトマー軍がシグルド軍を迎え入れた。シグルドは主君のグランベル王アズムールにこれまでの戦いの真実を伝えようとしたが、グランベル王アズムールは病気で動く事が出来ず、彼の側近のアルヴィスが全ての代理を引き受けると言い出す。シグルドは後でグランベル王アズムールに直接お詫びを申し上げようとしてそのまま凱旋式は何事もなく終わるはずだったのだが、ここでアルヴィスの態度が急変した。
アルヴィスは最初からドズル公爵家当主のランゴバルド卿とフリージ公爵家当主の宰相レプトールを倒したシグルドがこのバーハラ王都郊外に現れるのを狙っていたのだ。シグルドは態度が急変したアルヴィスに問い返したが、ここで彼にとってさらに残酷な事実が降りかかる。
「私は王女ディアドラの夫として、貴公を討伐せねばならぬ。シグルドよ、悪く思うなよ」
「王女ディアドラ!?……それは……」
ヴェルトマー公爵家当主のアルヴィスと愛し合っているというグランベルの王女、その正体は行方不明になっていたシグルドの妻、ディアドラだったのだ。アルヴィスはディアドラをシグルドと引き合わせるが、シグルドとディアドラが自らを差し置いて互いに魅入るように言葉を交わす光景にディアドラをこれ以上シグルドに逢わせる事を危険と察し、従者に命じてディアドラをバーハラ城内に戻す。そしてシグルド軍の公開処刑をヴェルトマー全軍に告げたのである。
* * *
ヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える降り注ぐ隕石を落とす炎魔法『メティオ』による殲滅戦が始まり、王都バーハラ郊外は戦渦に包まれていく。炎魔法『メティオ』によって放たれた火球の中でシグルドと共に反逆者の汚名を着せられながらも懸命に戦う一組の夫婦、アーダンとアイラがいた。夫のアーダンは剣、槍、斧、弓と巧みに武器を使い分けて妻のアイラと背中を合わせてシグルド軍の皆をジェネラルとして自らの鎧で守り、妻のアイラはソードマスター、いわゆる剣を極めし者として持っている全ての剣が壊れ果てるまで夫のアーダンと背中を合わせて彼とともに前衛に立ち、仲間としてともに戦ってきたシグルド軍の皆を業火の中から逃がすために時間を稼ぎながら戦っている。……が、二人の体力はそろそろ限界のようだ。
「アーダン……ここまでだな」
「そうだな。ふうっ、皆を守って疲れちまったぜ」
ヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える炎魔法『メティオ』による大量に放たれる火球に包まれながら自分達の最期を察し、背中合わせの体勢のまま満面の笑みで互いを見つめている。
「アイラ、最期に一ついいか?」
「どうした?聞いてやる」
アーダンは最期に妻のアイラに伝えたい事があるようだ。アイラはアーダンの顔を見つめながら彼の言葉を聞いている。
「こんな俺と結婚してくれてありがとうな」
「……!!な、何を言っているんだ!!」
アーダンの真剣な声と感謝の言葉にアイラの顔は真っ赤に染まっていく。
「アイラはイザーク王国の王女で聖戦士の血も引いていて他に言い寄ってくる男もたくさんいただろうに、その中から聖戦士の血も引いてない鈍臭い俺を選んでくれたんだ。こんなに嬉しい事はねぇよ」
「アーダンは我が流星剣を耐える事が出来た唯一の男だ。私にとってこれ以上に価値のある男はいない」
アーダンとアイラがはじめて出会ったのはシグルドがヴェルダン王国の第一王子ガンドルフにさらわれたユングヴィ公女のエーディンを救出するためにヴェルダン王国に足を踏み入れた事がきっかけだ。ヴェルダン王国第二王子キンボイスにイザーク王国の第一王子シャナンを人質に取られている事でやむを得ず彼が治めるジェノア城の守りについていたアイラ。アイラには何か理由があって戦っていると察したシグルドは彼女を殺さずにジェノア城を制圧すると全軍に伝え、その際に誰かが囮になってアイラをジェノア城から遠ざける作戦を立てたのだ。その作戦のカギとなるアイラをおびき寄せるための囮役として抜擢されたのが『固い、強い、おそい』の三つを兼ね備えているアーダンであり、アーダンは持ち前の守備力でアイラの流星剣を見事に耐え抜いてみせた。その隙にシグルドはジェノア城を制圧し、キンボイスに人質に取られていたイザーク王国の第一王子シャナンの救出に成功した事でアイラはシャナンを保護してくれたシグルドへの恩に報いるためにシグルド軍への仲間入りを果たしたのである。
それからアイラは自身の流星剣を耐え抜いてみせたアーダンを気に入り、都度都度アーダンと手合わせをするのが楽しみになっていた。そうしてアーダンと手合わせはもちろんの事、戦闘でも共に背中を合わせて戦っていく中でアイラがアーダンに抱く気持ちは興味から戦友、戦友から親愛、親愛から恋愛感情へと変化していく。アイラがアーダンに抱くその気持ちはアーダンも同様にアイラに対して抱くようになっていった。そんな二人が恋人同士となるのに時間はかからなかった。
二人が結婚して夫婦になり双子の男女を授かり、双子の男女の父親となったアーダンは家族のために頑張らねばと決意を新たにするのであったが、その矢先に起こったのが今現在シグルド軍の指揮官のシグルドをはじめとする仲間達がヴェルトマー軍のファイアーマージ達が唱える炎魔法『メティオ』によって放たれた火球の海に包まれて苦しむ惨たらしい光景である。一人でも多くの仲間達をこの火球の海から逃がすために戦ったアーダンとアイラは産まれた子供達の成長をこれからも見ていきたいという願いを叶えられず、志半ばで逝く事になってしまった。
「アーダン、私からも最期に一ついいか?」
「ああ、いいぜ」
アイラはアーダンと背中合わせの体勢を解除し、体の全てでアーダンと向かい合って言葉を発した。
「イザーク王国の王女、アイラはシアルフィ公国の重騎士アーダンを大陸一、愛している」
火球の海に包まれていくアイラの最期の言葉はアーダンへの愛の告白だった。愛しい夫に向ける愛を告白した直後、アイラは炎魔法『メティオ』による火球が直撃し、焼死してしまう。
「アイラ……最期に嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか」
誰よりも愛しい妻、アイラの美しい最期の姿をこの目にしかと焼きつけたアーダン。アイラに炎魔法『メティオ』による火球が直撃してから僅か数秒後、アーダンも炎魔法『メティオ』による火球が直撃し、焼死してしまった。
互いに見つめ合いながら炎に焼かれて最期を遂げた一組の夫婦、アーダンとアイラ。彼らの無念は後に二人が残した愛しき双子、スカサハとラクチェが晴らす事になるのだが、それはまだ先の未来の出来事である───
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