MOTHERシリーズ

金鉱の町ハロウィーン。この町一番のお金持ちのローズマリー家はハロウィーン町がゴールドラッシュで沸きに沸いた時の、一番良質の鉱脈を掘り当てた人の家系である。その人はハロウィーン町の初代町長を務め、以後ローズマリーさんのお父さんの代までは、歴代の町長をローズマリー家が世襲していた。しかし、ローズマリー家の長女、つまり『ローズマリーさんの奥さんが最初に産んだ女の子』は人の子とは思えない姿かたちをして産まれてきた。ローズマリー家現当主、つまり人の子とは思えない姿かたちをした長女のお父さんはひと目につかない山奥に別荘を建て、更に人の子とは思えない姿かたちをした長女が決して家の外に踏み込む事のないようにその別荘に迷路のような地下室を作り、彼女の一生を地下に閉じ込めたのだ。



別荘の地下に閉じ込められ、外の世界に出る事が許されないローズマリー家長女の唯一の楽しみは別荘の一番奥の部屋でグランドピアノを弾く事だけだった。地下深くに閉じ込められ、両親から名前すらも与えられる事のなかった名も無きローズマリー家長女は愛に飢え、必死に愛を求めていた。その想いがローズマリー家長女の肉体の前世、1990年代初めに田舎町マザーズデイに黒雲のような影が落ちた事をきっかけに行方不明となった女性、マリアの記憶を呼び起こさせ、マリアが作曲した愛を込めた8つの音のフレーズから構成される子守唄、エイトメロディーズをグランドピアノで奏でたのだ。このエイトメロディーズはローズマリー家長女の一番のお気に入りの曲となり、山奥の別荘の地下深くにあるグランドピアノからエイトメロディーズのメロディーが奏でられ続けたという───



ローズマリー家長女がエイトメロディーズの旋律を覚えた数年後、彼女は病で亡くなり、その短い生涯を閉じる事となる。彼女が亡くなって誰もいなくなったはずの山奥の別荘の地下深くにあるグランドピアノが奏でる音が聞こえてくるのだ。演奏者がいないはずのグランドピアノがひとりでに鍵盤が動き、エイトメロディーズの8つの音の中から1つの音を切り取ったメロディーを奏でるのは果たして彼女の怨念によるものなのか、何か別の理由があるのか、真相は闇の中に包まれたままだ。



そして時は流れ、ローズマリー家長女の肉体の前世、マリアのひ孫で田舎町マザーズデイの町外れに住む少年、ニンテンがこの別荘の地下深くにあるひとりでに鍵盤が動くグランドピアノの演奏を聞いた事でメロディーを覚え、後にそのメロディーは8つ全て完成され、完成されたエイトメロディーズの子守唄が宇宙人の侵略から地球を救うのだが、それは少し未来の物語である───



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