CLAMP作品小説
『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行がチェスの国ことインフィニティに滞在している間、次元の魔女こと壱原侑子は日本国白鷺城の姫巫女、知世姫からある願いを受けていた。
『貴方は日本国白鷺城の姫巫女で黒鋼の主の知世姫ね』
「はい。次元の魔女さんに私の願いを叶えてほしいのです」
知世姫は鏡のように水面に姿や物が映って見える現象、いわゆる水鏡で次元の魔女、壱原侑子と通信しているのだ。
『貴方が私に叶えてほしい願いはなに?』
「私の…叶えてほしい願いは……」
侑子の問いに対し、知世姫は一言一言丁寧に自分自身の願いを説明する。知世姫が侑子に叶えてほしい願いは、異世界を巡る旅をしている『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行がセレス国でのアシュラ王との過酷な戦いの後の次の移動先を怪我を治療して安心して休める場所にしてほしいという事だ。
『成る程、つまり貴方の願いは旅の一行の行く世界を黒鋼の故郷の日本国に固定してほしいという事ね』
「はい、そういう事になりますわ」
『けれど、次元移動の次の行き先を固定するには必然的に対価が大きくなるわ。貴方が渡せる一番価値あるもので見合うかどうか』
自分の願いを叶えるためには次元の魔女の力をもってしても対価が大きなものになってしまうと言われた知世姫だが、知世姫は動じる事なく真っ直ぐに侑子を水鏡越しに見つめ、言った。
「どうか教えてください。私に渡せるものならば何でもお渡しします」
『本当に構わないのね?その対価を渡して貴方が国と民を禍から守る事ができなくなったとしても』
「それは一体どういう事ですの?」
侑子の意味深な発言に知世姫は目を見開き、侑子はそんな知世姫の様子に構う事なく知世姫が自分の願いを叶えるために渡すべき対価の名を明らかにしようとしている。
『貴方が願いのために渡すべき対価、それは『夢見の力』よ』
「夢見の……力……」
『夢で先の未来を視る事が出来る『夢見の力』。貴方は月読としてその『夢見の力』で日本国に起こる禍を予知し、国と民を守ってきた。その力があったからこそ貴方と貴方の姉上が治める日本国が今まで安定していたと言ってもいいわ』
知世姫の願いを叶えるために彼女が渡せるもので一番見合う対価、それは彼女を月読たらしめる夢で先を視る事が出来る能力、『夢見の力』。つまり知世姫が願いのために『夢見の力』を侑子に対価として差し出してしまえば知世姫は国と民を禍から守る事ができなくなり、月読という立場を退任しなければならなくなる可能性も大いにあるのだ。
『貴方が持つ『夢見の力』は決して貴方だけのものではないわ。貴方が夢で先を視る事で日本国に起こる禍から守られてきた民全てのものよ。それを対価に差し出せばもう貴方は日本国に起こる禍を予知できなくなり、その事で民が死んでしまう事も後の未来に確実に起こり得るわ』
侑子は日本国白鷺城の姫巫女という立場にある知世姫が叶えたい願いのために日本国と日本国に住む民全てを犠牲にしてでも構わないのかと厳しい眼差しと言葉で問うた。
「………………」
侑子の厳しい問いに知世姫は少しの間悩み、無言になってしまうが頭の中に頼りになる兄のようでもあり、手のかかる弟のようでもあり、『月読』としての自分ではなく、『知世』という一人の人間として接して仕えてくれる唯一無二の臣下の姿を浮かべながら慈愛の笑みで答えた。
「確かに私の願いはこの国の民達から見れば物凄く愚かで罪深い願いですわ。ですが、黒鋼は私にとって誰よりも大切で特別なかけがえのない臣下です。誰が死のうが生きようが構ってられるかと言っていた黒鋼がやっと愛する存在 を見つけ、その存在を守り抜きたいと心から願い、真の強さを理解した事は私にとって何よりも喜ばしい事ですの。だからこそ何としてでも彼を死なせるわけにはいきません。私の大切な臣下の黒鋼と黒鋼が愛するセレス国の魔術師さんとその仲間達……彼らが行く末の幸せを私は心から願います。私の幸せは、私の大切な人と大切な人の愛する人が幸せでいてくださる事ですから」
日本国白鷺城の姫巫女という立場にある知世姫が国と民を犠牲にしてでも『夢見の力』を対価として支払って叶えたい願いは、大切な臣下の黒鋼と彼が愛するもののセレス国の魔術師とその仲間達が幸せでいてほしいと心からの想いにこそあったのだ。
『貴方の願いを叶えたい心の強さ、確かに聞き入れたわ』
侑子は国と民を犠牲にしてでも大切な臣下の黒鋼と彼が愛する存在 のセレス国の魔術師とその仲間達の行く末が幸せでいられるように自分の願いを叶えたいという知世姫の心の強さを認めた。
『けれど、貴方が渡せる一番価値あるものの『夢見の力』でも貴方の願いに見合うかどうかは分からないわ』
知世姫が叶えたい異世界を巡る旅をしている『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行のセレス国の次の次元移動先を日本国に固定するという願いは知世姫が渡せる一番価値のあるものの『夢見の力』でも見合うかどうかは分からない。つまり『夢見の力』を対価として渡しても確実に知世姫の願いが叶う保証は他に同じ願いを侑子に願い、対価を渡す者が他に表れない限りないのである。要するに知世姫がこの掛けに失敗してしまえば、彼女は日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を次元の魔女にただで渡すだけという事になってしまう。
『貴方の願いが叶う確率は二分の一、それでも掛けてみる?』
「……はい」
知世姫は確実に自分の願いが叶う保証のない掛けに日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を対価として侑子に渡す事を決意した。
『分かったわ、旅の一行がセレス国を移動するまで夢見の力は貴方のもののままに。貴方の対価は彼らの移動が終わってから貰うわ』
「はい、ありがとうございます」
『では失礼』
知世姫が侑子に願いのための対価を支払う事を約束した事で知世姫と侑子の通信は終了し、侑子の姿は水鏡から消えていく。侑子の姿が水鏡から完全に消えた後、知世姫は神に懺悔の祈りを始めた。
「私は自分勝手な理由で私を月読たらしめる力……『夢見の力』を失いました。もう私には夢で先を視る力はありません。それ故に後にこの国に起こる禍を予知する事ができなくなり、その事で悲しむ民も怒る民も命を落とす民もたくさん現れ、その報いを受ける日がやってくる事でしょう。けれど……それでも……私は私が大切に想う人とその人が愛する存在 の幸せを心から願わずにはいられないのです……。神様、こんな愚かな私をどうかお許しください」
知世姫は『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行がセレス国でのアシュラ王との過酷な戦いの後の次の移動先を怪我を治療して安心して休める場所、日本国にしてほしいという自分自身の願いのために決して知世姫本人だけのものではない、知世姫が夢で先を視る事で日本国に起こる禍から守られてきた民全てのものである日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を対価として侑子に渡して失うという、日本国に住む全ての民達からしたら民全員よりも知世姫にとって一臣下でしかない黒鋼とその仲間達を優先したも同然の愚行を行ったのである。知世姫の行動は一人の人間としてみれば他者の幸せを心から願う素晴らしい行いだが、知世姫は日本国白鷺城の姫巫女で月読の冠名を持つ存在。決して一人の人間として見てもらえる立場ではないのだ。
だが、臣下の黒鋼に真の強さを知ってほしい、彼が心から愛する存在 を見つけてほしいという知世姫の願いの強さは彼女の中で日本国の民全員よりも優先されてしまい、一臣下でしかない黒鋼とその仲間達の行く末が幸せになってほしいと願うばかりに日本国の民全員のものである『夢見の力』を対価として侑子に渡してしまった。知世姫のこの愚行同然の行いにより、彼女は後の未来に日本国の民達からの怒りによって罰を受ける事になるだろう。だが、それでも彼女は祈り続けるのだ。自分の大切な人と大切な人の愛する人が幸せでいてほしいという彼女自身の幸せのために……。
END
『貴方は日本国白鷺城の姫巫女で黒鋼の主の知世姫ね』
「はい。次元の魔女さんに私の願いを叶えてほしいのです」
知世姫は鏡のように水面に姿や物が映って見える現象、いわゆる水鏡で次元の魔女、壱原侑子と通信しているのだ。
『貴方が私に叶えてほしい願いはなに?』
「私の…叶えてほしい願いは……」
侑子の問いに対し、知世姫は一言一言丁寧に自分自身の願いを説明する。知世姫が侑子に叶えてほしい願いは、異世界を巡る旅をしている『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行がセレス国でのアシュラ王との過酷な戦いの後の次の移動先を怪我を治療して安心して休める場所にしてほしいという事だ。
『成る程、つまり貴方の願いは旅の一行の行く世界を黒鋼の故郷の日本国に固定してほしいという事ね』
「はい、そういう事になりますわ」
『けれど、次元移動の次の行き先を固定するには必然的に対価が大きくなるわ。貴方が渡せる一番価値あるもので見合うかどうか』
自分の願いを叶えるためには次元の魔女の力をもってしても対価が大きなものになってしまうと言われた知世姫だが、知世姫は動じる事なく真っ直ぐに侑子を水鏡越しに見つめ、言った。
「どうか教えてください。私に渡せるものならば何でもお渡しします」
『本当に構わないのね?その対価を渡して貴方が国と民を禍から守る事ができなくなったとしても』
「それは一体どういう事ですの?」
侑子の意味深な発言に知世姫は目を見開き、侑子はそんな知世姫の様子に構う事なく知世姫が自分の願いを叶えるために渡すべき対価の名を明らかにしようとしている。
『貴方が願いのために渡すべき対価、それは『夢見の力』よ』
「夢見の……力……」
『夢で先の未来を視る事が出来る『夢見の力』。貴方は月読としてその『夢見の力』で日本国に起こる禍を予知し、国と民を守ってきた。その力があったからこそ貴方と貴方の姉上が治める日本国が今まで安定していたと言ってもいいわ』
知世姫の願いを叶えるために彼女が渡せるもので一番見合う対価、それは彼女を月読たらしめる夢で先を視る事が出来る能力、『夢見の力』。つまり知世姫が願いのために『夢見の力』を侑子に対価として差し出してしまえば知世姫は国と民を禍から守る事ができなくなり、月読という立場を退任しなければならなくなる可能性も大いにあるのだ。
『貴方が持つ『夢見の力』は決して貴方だけのものではないわ。貴方が夢で先を視る事で日本国に起こる禍から守られてきた民全てのものよ。それを対価に差し出せばもう貴方は日本国に起こる禍を予知できなくなり、その事で民が死んでしまう事も後の未来に確実に起こり得るわ』
侑子は日本国白鷺城の姫巫女という立場にある知世姫が叶えたい願いのために日本国と日本国に住む民全てを犠牲にしてでも構わないのかと厳しい眼差しと言葉で問うた。
「………………」
侑子の厳しい問いに知世姫は少しの間悩み、無言になってしまうが頭の中に頼りになる兄のようでもあり、手のかかる弟のようでもあり、『月読』としての自分ではなく、『知世』という一人の人間として接して仕えてくれる唯一無二の臣下の姿を浮かべながら慈愛の笑みで答えた。
「確かに私の願いはこの国の民達から見れば物凄く愚かで罪深い願いですわ。ですが、黒鋼は私にとって誰よりも大切で特別なかけがえのない臣下です。誰が死のうが生きようが構ってられるかと言っていた黒鋼がやっと愛する
日本国白鷺城の姫巫女という立場にある知世姫が国と民を犠牲にしてでも『夢見の力』を対価として支払って叶えたい願いは、大切な臣下の黒鋼と彼が愛するもののセレス国の魔術師とその仲間達が幸せでいてほしいと心からの想いにこそあったのだ。
『貴方の願いを叶えたい心の強さ、確かに聞き入れたわ』
侑子は国と民を犠牲にしてでも大切な臣下の黒鋼と彼が愛する
『けれど、貴方が渡せる一番価値あるものの『夢見の力』でも貴方の願いに見合うかどうかは分からないわ』
知世姫が叶えたい異世界を巡る旅をしている『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行のセレス国の次の次元移動先を日本国に固定するという願いは知世姫が渡せる一番価値のあるものの『夢見の力』でも見合うかどうかは分からない。つまり『夢見の力』を対価として渡しても確実に知世姫の願いが叶う保証は他に同じ願いを侑子に願い、対価を渡す者が他に表れない限りないのである。要するに知世姫がこの掛けに失敗してしまえば、彼女は日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を次元の魔女にただで渡すだけという事になってしまう。
『貴方の願いが叶う確率は二分の一、それでも掛けてみる?』
「……はい」
知世姫は確実に自分の願いが叶う保証のない掛けに日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を対価として侑子に渡す事を決意した。
『分かったわ、旅の一行がセレス国を移動するまで夢見の力は貴方のもののままに。貴方の対価は彼らの移動が終わってから貰うわ』
「はい、ありがとうございます」
『では失礼』
知世姫が侑子に願いのための対価を支払う事を約束した事で知世姫と侑子の通信は終了し、侑子の姿は水鏡から消えていく。侑子の姿が水鏡から完全に消えた後、知世姫は神に懺悔の祈りを始めた。
「私は自分勝手な理由で私を月読たらしめる力……『夢見の力』を失いました。もう私には夢で先を視る力はありません。それ故に後にこの国に起こる禍を予知する事ができなくなり、その事で悲しむ民も怒る民も命を落とす民もたくさん現れ、その報いを受ける日がやってくる事でしょう。けれど……それでも……私は私が大切に想う人とその人が愛する
知世姫は『小狼』、サクラ姫、黒鋼、ファイ、モコナの一行がセレス国でのアシュラ王との過酷な戦いの後の次の移動先を怪我を治療して安心して休める場所、日本国にしてほしいという自分自身の願いのために決して知世姫本人だけのものではない、知世姫が夢で先を視る事で日本国に起こる禍から守られてきた民全てのものである日本国の国防に必要不可欠な『夢見の力』を対価として侑子に渡して失うという、日本国に住む全ての民達からしたら民全員よりも知世姫にとって一臣下でしかない黒鋼とその仲間達を優先したも同然の愚行を行ったのである。知世姫の行動は一人の人間としてみれば他者の幸せを心から願う素晴らしい行いだが、知世姫は日本国白鷺城の姫巫女で月読の冠名を持つ存在。決して一人の人間として見てもらえる立場ではないのだ。
だが、臣下の黒鋼に真の強さを知ってほしい、彼が心から愛する
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