CLAMP作品小説

ここは日本国の領地の一つ、諏訪地方。その諏訪地方の領主の息子、鋼丸は諏訪領主の父と諏訪姫の母に守られ、穏やかに暮らしている。


そんな日々の中、鋼丸は諏訪姫の母と一緒に入浴し、母子の時間を過ごしている。母と一緒に湯船に浸かる鋼丸はある事を母に訴えた。

「母上は父上が好きか?」

「もちろんです」

「俺の事も、好きか?」

「はい」

「じゃあ父上と俺、どっちが好きだ?」

鋼丸はそう言い、真剣な眼差しで母に訴える。諏訪姫は鋼丸の訴えに驚き、目を見開く。諏訪姫は少し考えてから答える。

「……さて、困りましたねぇ」



*   *   *



鋼丸と諏訪姫が湯船から上がって鋼丸が就寝した後は諏訪領主と諏訪姫の夫婦の会話の時間だ。諏訪姫は入浴中に鋼丸に言われた事を諏訪領主に伝える。諏訪領主は鋼丸の発言内容に驚き、息子に奥方を取られまいとムキになって妻に問うた。

「で、どっちって答えたんだ?」

諏訪姫はそんな夫のヤキモチを愛しく思い、微笑む。

「ふふっ、貴方まで大人げない」

「男はな、惚れた女子(おなご)が現れるまで母親に恋をするものなんだ」

「………………」

諏訪姫は諏訪領主が発した『恋』という単語に耳を傾け、わずかの間をおいてから諏訪領主の顔をまっすぐに見つめてある事を話し始める。

「恋……ですか。私は成長した鋼丸が運命のひとと寄り添っている姿を夢で視ました」

「何だと!?」

諏訪姫は夢で先の未来を見る事が出来る夢見の力の持ち主である。その諏訪姫が鋼丸の運命の相手を夢で視たというのだ。当然諏訪領主は驚きを隠せない。うずうずした気持ちで妻に問う。

「我が息子、鋼丸の運命の相手は……どんな人だったんだ?」

「……この日本国には存在しない月のような金の髪と宝石のような蒼い瞳の方で、慈愛に満ちた優しさ、見返りを求めない強い心、白鷺城の姫君をも凌駕する霊力を持ち合わせているようでしたわ」

「日本国には存在しない金の髪と蒼い瞳……異国人という事か?」

「異国人……正確に言うならば異世界人ですね。鋼丸とその方は次元を超えた出会いをし、後に過酷な困難が待っていると視えました」

「……そうか」

諏訪領主は息子の鋼丸と鋼丸の運命のひとに過酷な困難が待っていると聞き、うずうずした気持ちは鳴りを潜め、渋い顔になってしまう。

「その困難は俺達に手助けできる事なのか?」

「……分かりません。ですが、きっと鋼丸とその方ならば力を合わせて乗り越えていけると信じています。鋼丸もその方も強い信念の持ち主ですから」

「……そうだな」

鋼丸と鋼丸の運命のひとの間に待ち受けるであろう過酷な困難を想像して渋い顔になっていた諏訪領主だったが、諏訪姫の鋼丸と鋼丸の運命のひとを信じるという言葉に僅かな希望を見出し、鋼丸と鋼丸の運命のひとの未来を諏訪姫と共に祈った。

「「……どうか、鋼丸と鋼丸の運命のひとの未来に幸多からんことを」」



END
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