CLAMP作品小説
天照の勅命により、諏訪国領主となった黒鋼と諏訪国を守る結界を張る巫覡となったかつてファイの名を名乗っていた魔術師、ユゥイ。二人が諏訪国を守る領主と巫覡になってからというもの、かつては滅んだとまでいわれた諏訪国は元日本国最強の忍で現諏訪国領主の黒鋼の武力と日本国の月読で白鷺城の姫巫女の知世姫をも凌駕する霊力を持つユゥイが作る結界の守護により驚異とも言える速さで平定し、着実に復興へと向かっている……が今年は天候不良が続いた事で収穫は不調、更にはよくない病も流行りだしている。この状況をこのままにしておけば、ようやく戻ってきてくれた諏訪国の民達が飢饉や病に苦しむ事になってしまう。領主の黒鋼が民達の現在の状況を確かめるために領地視察に出ている中、屋敷に残された巫覡ユゥイはある行動に出たのだ。
「ユゥイ様!髪を売るなんて本気ですか!?」
「うん、本気だよ。これくらいの事、諏訪の民達が苦しむのに比べたらなんてことはないよ」
「ですが……せっかくの背中を覆うほどの美しい金の髪ですのに……」
「髪はまたすぐに伸びてくる。だけど収穫が不調でよくない病も流行っているこの状況を早くなんとかしないとせっかく戻ってきてくれた諏訪の民達が苦しむ事になる、そんな事は絶対に嫌なんだ。裕美ちゃん、どうか分かってほしい」
諏訪国の巫覡、ユゥイはそう言って侍女の裕美に訴える。ユゥイのその真剣な訴えに裕美はユゥイの提案を聞き入れた。
「分かりました。ユゥイ様の髪をお切りいたします」
こうしてユゥイは諏訪国の民達の食糧、薬を買うために背中を覆うほどの長い金髪を切り、売りに出したのである。
それから数日後、領地視察から戻ってきた黒鋼はサクラ姫の羽根を探すために旅していた時と同じくらいにすっかり短くなったユゥイの髪を見て目を丸くする。
「お前……髪、どうしたんだ」
「髪……売りに出したんだ。オレが思っていた以上に破格の金額で高く売れたんだ。これなら民達が食べるお米もお野菜も種籾も野菜や果物の苗木も病に効く薬も買えるよー!」
日本国はもちろんの事、近隣諸国にも存在しない金の髪は諏訪の民達の来年の米や野菜等の食糧、種籾に野菜や果物の苗木も病に効く薬も全て買える程に非常に高額で売れたのだ。これで来年の収穫と流行り病に対する備えは安心だ。しかし、短くなってしまったユゥイの髪を見て黒鋼は罪悪感にかられてしまう。
「すまねぇな。俺の力量不足のせいで背中を覆うほどのお前の綺麗な髪を失わせちまった……」
「黒様まで裕美ちゃんと同じ事言ってる〜。髪はすぐ伸びてくるから大丈夫だよぅ」
「だけどな……」
「黒様……オレはね、君が産まれたこの諏訪の国にある全てが愛おしくてたまらないんだ。だから諏訪の国と諏訪に住む民達を守る事が出来るならオレはなんだってする。だからオレが諏訪の民達を守るためにした事で黒様が責任を感じる必要はないんだよ」
ユゥイは領主として力量不足だと自分を責めている黒鋼を優しく抱きしめながらそう言い、更に続ける。
「それにね、オレ達は夫婦でしょう?夫婦っていうのは喜びも苦しみも分かち合って支え合うものなんだよね?だから黒様……悩みを一人で抱え込まないで。黒様の悩みをオレにも分かち合わせてよ」
愛情たっぷりのユゥイの抱擁で罪悪感にかられていた黒鋼は温かくなっていき、諏訪国領主としての重圧から何もかも一人で解決しなければならないと思い込んでいた焦りが解けていく。
「……姫の羽根を探すために旅をしていた時は心から人に頼るという事をしなかったお前がそんな事を言うようになるとはな、本当にお前も変わったもんだ」
「オレがここまで変われたのは小狼君とサクラちゃんとモコナと諏訪の民達と……君がいたからだよ。皆がオレという存在を必要としてくれたから」
「……そうかよ」
「そうだよ。オレは黒様と……黒様とオレが守る諏訪の国のみんなと生きて幸せになりたい」
ユゥイは心からの満面の笑みでそう言い、黒鋼を更にぎゅうっと抱きしめる。そんなユゥイの気持ちに答えるかのようにユゥイを抱きしめかえし、ユゥイの唇に自身の唇を重ねた。
それから一年後、諏訪国ではユゥイの金の髪を売ったお金で買った種籾から育った稲穂、野菜や果物の苗木はよく育ってたくさんの実りをもたらし、病に効く薬によって流行り病に苦しんでいた民の体調もすっかりよくなり、更に黒鋼とユゥイは二人の赤子を諏訪の若君として、家族として迎え入れる事となるのである。
まさにユゥイの金色の美しい長い髪は金色の美しき実りとなって諏訪国にさらなる実りをもたらしたのであった───
END
「ユゥイ様!髪を売るなんて本気ですか!?」
「うん、本気だよ。これくらいの事、諏訪の民達が苦しむのに比べたらなんてことはないよ」
「ですが……せっかくの背中を覆うほどの美しい金の髪ですのに……」
「髪はまたすぐに伸びてくる。だけど収穫が不調でよくない病も流行っているこの状況を早くなんとかしないとせっかく戻ってきてくれた諏訪の民達が苦しむ事になる、そんな事は絶対に嫌なんだ。裕美ちゃん、どうか分かってほしい」
諏訪国の巫覡、ユゥイはそう言って侍女の裕美に訴える。ユゥイのその真剣な訴えに裕美はユゥイの提案を聞き入れた。
「分かりました。ユゥイ様の髪をお切りいたします」
こうしてユゥイは諏訪国の民達の食糧、薬を買うために背中を覆うほどの長い金髪を切り、売りに出したのである。
それから数日後、領地視察から戻ってきた黒鋼はサクラ姫の羽根を探すために旅していた時と同じくらいにすっかり短くなったユゥイの髪を見て目を丸くする。
「お前……髪、どうしたんだ」
「髪……売りに出したんだ。オレが思っていた以上に破格の金額で高く売れたんだ。これなら民達が食べるお米もお野菜も種籾も野菜や果物の苗木も病に効く薬も買えるよー!」
日本国はもちろんの事、近隣諸国にも存在しない金の髪は諏訪の民達の来年の米や野菜等の食糧、種籾に野菜や果物の苗木も病に効く薬も全て買える程に非常に高額で売れたのだ。これで来年の収穫と流行り病に対する備えは安心だ。しかし、短くなってしまったユゥイの髪を見て黒鋼は罪悪感にかられてしまう。
「すまねぇな。俺の力量不足のせいで背中を覆うほどのお前の綺麗な髪を失わせちまった……」
「黒様まで裕美ちゃんと同じ事言ってる〜。髪はすぐ伸びてくるから大丈夫だよぅ」
「だけどな……」
「黒様……オレはね、君が産まれたこの諏訪の国にある全てが愛おしくてたまらないんだ。だから諏訪の国と諏訪に住む民達を守る事が出来るならオレはなんだってする。だからオレが諏訪の民達を守るためにした事で黒様が責任を感じる必要はないんだよ」
ユゥイは領主として力量不足だと自分を責めている黒鋼を優しく抱きしめながらそう言い、更に続ける。
「それにね、オレ達は夫婦でしょう?夫婦っていうのは喜びも苦しみも分かち合って支え合うものなんだよね?だから黒様……悩みを一人で抱え込まないで。黒様の悩みをオレにも分かち合わせてよ」
愛情たっぷりのユゥイの抱擁で罪悪感にかられていた黒鋼は温かくなっていき、諏訪国領主としての重圧から何もかも一人で解決しなければならないと思い込んでいた焦りが解けていく。
「……姫の羽根を探すために旅をしていた時は心から人に頼るという事をしなかったお前がそんな事を言うようになるとはな、本当にお前も変わったもんだ」
「オレがここまで変われたのは小狼君とサクラちゃんとモコナと諏訪の民達と……君がいたからだよ。皆がオレという存在を必要としてくれたから」
「……そうかよ」
「そうだよ。オレは黒様と……黒様とオレが守る諏訪の国のみんなと生きて幸せになりたい」
ユゥイは心からの満面の笑みでそう言い、黒鋼を更にぎゅうっと抱きしめる。そんなユゥイの気持ちに答えるかのようにユゥイを抱きしめかえし、ユゥイの唇に自身の唇を重ねた。
それから一年後、諏訪国ではユゥイの金の髪を売ったお金で買った種籾から育った稲穂、野菜や果物の苗木はよく育ってたくさんの実りをもたらし、病に効く薬によって流行り病に苦しんでいた民の体調もすっかりよくなり、更に黒鋼とユゥイは二人の赤子を諏訪の若君として、家族として迎え入れる事となるのである。
まさにユゥイの金色の美しい長い髪は金色の美しき実りとなって諏訪国にさらなる実りをもたらしたのであった───
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