CLAMP作品小説

鬼怒川温泉の檜風呂に落ちて檜風呂を壊してしまった小狼、黒鋼、ファイ、モコナの一行。女将のカルディナに弁償しろと言われるがこの世界に着いたばかりでこの世界のお金を持ってるはずもない彼らは働いて返す事となったのである。

そんな日々を送っている中、三人と一モコナは旅館の部屋で朝食をとっている。メニューは白米、味噌汁、鮭塩焼き、だし巻き卵という定番和食だ。

「じゃあ、いただきまーす♪」

「「「いただきます」」」

モコナが食事を始める際の挨拶をし、それに続くように小狼、黒鋼、ファイが同じ挨拶をすると三人と一モコナは食事に箸を伸ばし、食べ始める。

「この国のご飯、本当に美味しいねー」

ファイは心からの思いを口にして満足そうに食事をしているが黒鋼が箸で混ぜている物を見た瞬間、顔が引きつって体が固まってしまう。

「く、黒様……それって君が以前オレに食べさせようとしたあの……」

「ああ、納豆だ」

黒鋼が箸で混ぜているのは煮る、蒸すなどして柔らかくした大豆を納豆菌によって発酵させた発酵食品、納豆である。すっぱいものが苦手なファイはこの納豆がどうしても好きになれないのだが、黒鋼とモコナにとっては大好物であり、小狼にとっても特に苦手な食べ物ではなく普通に食べる事が出来るので黒鋼、モコナ、小狼はオプションに納豆をつけたのである。

「いいか?前にも言ったが『すっぱい』からって全部腐ってるわけじゃねぇ」

黒鋼はファイを見詰めながら以前もファイに対して言った台詞を言うと箸で混ぜた納豆をファイの口の前に運び、食べさせようとする。

「ちょ、ちょっと黒様!前にも言ったでしょう!!これはほんとに無理ー!!近づけないでー、無理だってば!無理無理無理無理ー!!」

ファイは泣きながら自身の口の前にある納豆を全力で拒否した。黒鋼はそんなファイの反応に臆することなく語り始める。

「納豆はな、たんぱく質と鉄分、食物繊維が豊富な健康食品なんだぞ。日本国の奴らも好んで食ってるんだ」

「それは分かった、分かったよぅ……ってナッティって日本国の人達も好んで食べているものなの?」

黒鋼の口から『日本国』という単語が出た事でファイは冷静になって黒鋼の話を聞き始めた。ちなみにナッティというのは以前ファイが黒鋼に納豆を食べさせられた時に納豆に対して勝手につけたあだ名である。

「ああ、だから俺の国の食い物をお前に知ってほしかった。お前は将来日本国に住むことになるんだからな」

「く、黒様……もしかしてそれって……」

黒鋼の言葉を聞いたファイの顔と耳が一気に赤く染まっていく。そんなファイを真っ直ぐに見つめながら黒鋼は続けた。

「皆まで言わせるな、お前は俺の生涯の伴侶だ。俺の伴侶が俺の国に住むのは当たり前の事だろうが」

皆まで言わせるなと言いながらもファイに言いたい事の全てを伝えた黒鋼の顔と耳がファイと同様に真っ赤に染まりきっている。

「黒様……オレ、君の国に行ってもいいの?」

「当たり前だ。これは他でもない俺の願いだからな」

「黒様……オレ、黒様にそんな風に想われて本当に……本当に嬉しい。だから……黒様の好きなナッティ……ううん、納豆を好きになろう、好きになりたいって思う。大好きな黒様の好きな物を全部好きになりたいから」

「そうか、俺もお前の好む物を好めるようになるように善処する。俺の生涯の伴侶のお前の好む物を全て好きになりたいからな」

「黒様……」

黒鋼とファイは見つめ合って完全に二人の世界を作り出している。すでに朝食を食べ終えた小狼とモコナは二人の世界に入ってしまっている黒鋼とファイを嬉しそうに見つめている。

「納豆一つでこんなにラブラブな空気を作り出せちゃう黒鋼とファイは本当にとーっても仲良しなの〜♡♡♡」

「ああ、本当に仲が良くて微笑ましいな」



END
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