CLAMP作品小説
旅の仲間の小狼、サクラ姫、モコナとはぐれて沙羅ノ国に落とされ、そこから更に夜魔ノ国へと移動されられた黒鋼とファイ。彼らは今、夜魔ノ国軍で夜叉王配下の傭兵として城下町の借家で暮らしている。旅の仲間達とはぐれたまま夜魔ノ国で暮らしはじめてから三ヶ月の時が経ったが、未だにはぐれた仲間達の行方は分からないままである。
それはさておき、小狼、サクラ姫、モコナとはぐれて三ヶ月もの時が経過したとあってファイの髪は随分と伸びてきていた。
「おい」
「なぁ……に?」
「お前、髪伸びたな」
「そ……うか……な?」
黒鋼の声掛けにゆっくりとした返答を返すファイ。言語翻訳機能を持つモコナとはぐれてしまったためにお互いの言葉が通じなくなった事で夜魔ノ国の言葉を理解出来ないファイは黒鋼に対して片言でしか話せないのだ。黒鋼が問題なく夜魔ノ国の言葉が話せているのは夜魔ノ国の言語が黒鋼の故郷である日本国と同じだからである。
「切ってやろうか」
「いい……の?」
「おう」
「じゃ……あ……おね……がい……しま……す……」
ファイの伸びた髪を切る事にした黒鋼は部屋にある引き出しから和鋏を取り出し、和鋏でファイの伸びた髪を切り始めた。黒鋼に髪を切ってもらっているファイはある事を思い出している。
(黒様に髪を切ってもらうこの感覚……アシュラ王に髪を切ってもらっていた時と同じだな……)
セレス国にいた時、アシュラ王に伸びた髪を切ってもらった事を頭に思い浮かべるファイ。今はそのアシュラ王から逃げているファイだが、ファイは決してアシュラ王を嫌っているわけではない。アシュラ王との忘れられない大切な思い出は確かに存在しているのだ。
「終わったぞ」
「ありがと……う」
ファイの髪の散髪が終わり、ファイの髪は以前のようなショートカットに戻った。
「くろ……さま……?」
「どうした?」
「髪……捨て……ない……の?」
ファイは不思議そうな顔で黒鋼の行動を見つめている。黒鋼は切ったファイの髪を自分の御守袋に入れているのだ。
「ああ、これは俺の御守袋に入れるからな」
「お……まも……りぶく……ろ……?」
「御守袋ってのはな、自らの守護を願うためのものを入れるための袋だ。今の俺にとってお前の髪がそれなんだよ」
「しゅ……ごを……?」
「ああ、幸福になるためにな」
「………………」
黒鋼の『幸福になるために』という言葉を聞いた瞬間、ファイの顔は一気に真っ青になってしまう。
「だ……だめ……だよ」
「あぁ?」
「オ……レの髪……なん……て……持っ……てたら……くろ……さま……が……不幸……に……なっ……ちゃ……う……」
ファイは自分の髪なんて持っていたら幸福になるどころか不幸になってしまうと主張し、黒鋼に切った自分の髪を御守袋に入れるのを止めさせようとする。
「うるせぇ!」
「くろ……さま……?」
真っ青な顔で自分の髪なんか持っていたら不幸になってしまうと主張するファイを黒鋼は半ば強引に抱きしめた。
「お前が何を抱えているのかは分からねぇが、そんな風に自分で自分を侮辱するのは俺が許さねぇ。お前はもう俺にとって仲間なんだよ、その仲間を守るためなら俺はなんだってやってやる。お前の髪を御守にしたのは俺がお前を苦しめている全てのものから守ってやるっていう決意表明でもあるんだからな」
黒鋼は顔と耳を赤くしながらファイを苦しめるどんな事からも絶対に守るという揺るぎない決意を固める。夜魔ノ国の言葉が分からないファイは黒鋼が言った事の全てを理解出来たわけではないが、黒鋼の抱擁からその優しい気持ちを感じ取り、せめて今だけでもと黒鋼の胸の中にその体を委ねるのだった。
「くろ……さま……」
「例え何があろうと……お前の事は俺が守る。必ずな」
END
それはさておき、小狼、サクラ姫、モコナとはぐれて三ヶ月もの時が経過したとあってファイの髪は随分と伸びてきていた。
「おい」
「なぁ……に?」
「お前、髪伸びたな」
「そ……うか……な?」
黒鋼の声掛けにゆっくりとした返答を返すファイ。言語翻訳機能を持つモコナとはぐれてしまったためにお互いの言葉が通じなくなった事で夜魔ノ国の言葉を理解出来ないファイは黒鋼に対して片言でしか話せないのだ。黒鋼が問題なく夜魔ノ国の言葉が話せているのは夜魔ノ国の言語が黒鋼の故郷である日本国と同じだからである。
「切ってやろうか」
「いい……の?」
「おう」
「じゃ……あ……おね……がい……しま……す……」
ファイの伸びた髪を切る事にした黒鋼は部屋にある引き出しから和鋏を取り出し、和鋏でファイの伸びた髪を切り始めた。黒鋼に髪を切ってもらっているファイはある事を思い出している。
(黒様に髪を切ってもらうこの感覚……アシュラ王に髪を切ってもらっていた時と同じだな……)
セレス国にいた時、アシュラ王に伸びた髪を切ってもらった事を頭に思い浮かべるファイ。今はそのアシュラ王から逃げているファイだが、ファイは決してアシュラ王を嫌っているわけではない。アシュラ王との忘れられない大切な思い出は確かに存在しているのだ。
「終わったぞ」
「ありがと……う」
ファイの髪の散髪が終わり、ファイの髪は以前のようなショートカットに戻った。
「くろ……さま……?」
「どうした?」
「髪……捨て……ない……の?」
ファイは不思議そうな顔で黒鋼の行動を見つめている。黒鋼は切ったファイの髪を自分の御守袋に入れているのだ。
「ああ、これは俺の御守袋に入れるからな」
「お……まも……りぶく……ろ……?」
「御守袋ってのはな、自らの守護を願うためのものを入れるための袋だ。今の俺にとってお前の髪がそれなんだよ」
「しゅ……ごを……?」
「ああ、幸福になるためにな」
「………………」
黒鋼の『幸福になるために』という言葉を聞いた瞬間、ファイの顔は一気に真っ青になってしまう。
「だ……だめ……だよ」
「あぁ?」
「オ……レの髪……なん……て……持っ……てたら……くろ……さま……が……不幸……に……なっ……ちゃ……う……」
ファイは自分の髪なんて持っていたら幸福になるどころか不幸になってしまうと主張し、黒鋼に切った自分の髪を御守袋に入れるのを止めさせようとする。
「うるせぇ!」
「くろ……さま……?」
真っ青な顔で自分の髪なんか持っていたら不幸になってしまうと主張するファイを黒鋼は半ば強引に抱きしめた。
「お前が何を抱えているのかは分からねぇが、そんな風に自分で自分を侮辱するのは俺が許さねぇ。お前はもう俺にとって仲間なんだよ、その仲間を守るためなら俺はなんだってやってやる。お前の髪を御守にしたのは俺がお前を苦しめている全てのものから守ってやるっていう決意表明でもあるんだからな」
黒鋼は顔と耳を赤くしながらファイを苦しめるどんな事からも絶対に守るという揺るぎない決意を固める。夜魔ノ国の言葉が分からないファイは黒鋼が言った事の全てを理解出来たわけではないが、黒鋼の抱擁からその優しい気持ちを感じ取り、せめて今だけでもと黒鋼の胸の中にその体を委ねるのだった。
「くろ……さま……」
「例え何があろうと……お前の事は俺が守る。必ずな」
END
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