CLAMP作品小説
小狼の「ひとつの世界に留まらない」という対価の旅を続けている小狼、黒鋼、ファイ、モコナの一行。彼らが今いる国は黒鋼の故郷、日本国の諏訪の地の遥かに未来の国である。その地での生活に馴染んだ一行は今日も今日とてファイが作った朝食を食べるところである。今日の朝食のメニューは白米、味噌汁、焼き鮭、卵焼き、きゅうりの浅漬という王道の和食だ。
「今日の味噌汁の味噌はねー、オレが大豆から仕込んだんだよ」
「味噌そのものから貴方が一から作ったのか。それは楽しみだ」
「ファイが一から作った味噌で作った味噌汁……きっと美味しいね!」
小狼とモコナは料理上手のファイが大豆から仕込んだ味噌を使った味噌汁の味に期待大の様子だ。黒鋼は口にこそ出さないものの、小狼とモコナ同様にファイが一から作った味噌で作った味噌汁に期待しているというのが顔に表れている。
「では、いただきます」
「「「いただきます」」」
皆でいただきますの挨拶を口にし、小狼とモコナと黒鋼は早速と言わんばかりに味噌汁に箸を動かし、飲み始めた。
「美味しいっ!!凄く美味しいよファイ!!」
「ああ、とても美味い。おれが今までに食べてきた味噌汁の中で一番美味い味噌汁だ」
「そう?よかったー!」
小狼とモコナはファイが大豆から仕込んだ味噌で作った味噌汁の味にご満悦のようでそんな二人の満足そうな顔を見てファイは安心する……が、黒鋼は味噌汁を口にした瞬間、涙を流したのだ。
「あれ?黒鋼ー、どうしたの!?」
「貴方が涙を流すなんて……一体どうしたんだ?」
一度目の旅が始まった時から今の今まで涙を見せた事がなかった黒鋼が涙を流す姿に小狼とモコナは驚きを隠せない様子だ。
「黒様、そんなに泣くほどオレが作った味噌汁が不味かったの……?」
ファイは黒鋼が泣く姿に自分が作った味噌汁が不味かったのかと感じて泣きそうな表情になり、不味い味噌汁を作ってしまってごめんなさいと黒鋼に謝罪の言葉をかけようとする。
「黒様、ごめんなさ……」
「……母上の味だ」
「え?」
「え?ええ?ファイが作った味噌汁が母上の味って……どういう事なの黒鋼ー!!」
ファイが作った味噌汁を母上の味だと言った黒鋼にファイ、モコナ、小狼の目線が集まっていく。
「俺がまだ小さかった頃、母上が作ってくれた味噌汁と同じ味がした。味噌だけじゃない、具がたくさん入っているのも同じだ」
「オレの作った味噌汁が黒様のお母様が作った味噌汁の味と同じ……?」
「そうだ。もう二度と食べられないと思っていた母上の思い出の味だ。それを再びこうして味わえるとは思わなかった」
黒鋼が涙を流した理由、それはファイが作った味噌汁が黒鋼の母親が作ってくれた思い出の味噌汁と同じ味がしたからだ。
「ユゥイ」
「えっ、えっ?いきなり何なの黒様?」
いきなり真名で呼ばれたファイはあたふたしている。
「この国に来たばかりの夜……お前は言ったな。『オレを黒様のお嫁さんにしてほしい』と」
「う、うん。言った……よ」
この国に来たばかりの夜に黒鋼に言った『オレを黒様のお嫁さんにしてほしい』と言う願いを小狼とモコナがいる前で言われてファイの顔は真っ赤に染まっていく。
「俺の認識ではとっくの昔からお前は俺の嫁だが……今改めて言う。俺はお前の作った味噌汁を毎日飲みたい。俺の伴侶になれ」
「!!」
小狼とモコナが目の前にいる状態での黒鋼からのプロポーズにファイの心臓の鼓動は皆に聞こえるんじゃないかと思うほどの速さでドキドキと高鳴っていく。
「どうなんだ、返事は?」
「そ……そんなの『はい』に決まってるじゃないか……」
ファイは消え入りそうな声で黒鋼のプロポーズを受け入れ、名実ともにファイは黒鋼の伴侶になった。
「ファイ、おめでとーう!!本当に黒鋼の奥さんになっちゃったね♡」
「互いを心から想い合う貴方達がこうなる事をおれもサクラもずっと望んでいた。貴方達の幸せを心から祝福する」
ファイが黒鋼のプロポーズを受け入れた事を小狼とモコナは心から祝福し、喜んでくれている。そんな彼らにファイは幸せそうな満面の笑みを見せた。
「えへへ……小狼君もモコナもありがとう。次に玖楼国に行った時にサクラちゃんにこの事を伝えなきゃだね」
「ああ、サクラもとても喜ぶだろう」
「うん!サクラ、すごくすごく喜ぶよ!!」
ファイが名実ともに黒鋼の伴侶になった事実をサクラはきっと小狼とモコナが言うように喜んでくれる事だろう。
「それはそれとして……オレが大豆から仕込んだ味噌で作った味噌汁が黒様のお母様が作った味噌汁と全く同じ味って事はさ、オレも小狼君もモコナもこの味噌汁を通じて黒様の家庭の味を味わっているって事になるね」
「ああ、そうなるな。おれも貴方の母上が作った味を知れて嬉しく思っている」
「モコナも!モコナも黒鋼のお母さんが作ってくれた味噌汁の味を知れてとっても嬉しいの♪」
ファイと小狼とモコナはファイが作った味噌汁を通じて黒鋼の母親の味を知り、黒鋼の事を更に知る事が出来て嬉しい気持ちでいっぱいである。そんな彼らの眼差しを受けた黒鋼は照れ臭そうに笑った。
「……そうかよ」
「ふふっ、黒様ってば赤くなって可愛い」
照れ臭そうに笑う黒鋼をファイはもちろんの事、小狼とモコナも優しい眼差しで見つめている。そうして温かい雰囲気の中、皆で朝食を食べる家族同然の一行であった───
END
「今日の味噌汁の味噌はねー、オレが大豆から仕込んだんだよ」
「味噌そのものから貴方が一から作ったのか。それは楽しみだ」
「ファイが一から作った味噌で作った味噌汁……きっと美味しいね!」
小狼とモコナは料理上手のファイが大豆から仕込んだ味噌を使った味噌汁の味に期待大の様子だ。黒鋼は口にこそ出さないものの、小狼とモコナ同様にファイが一から作った味噌で作った味噌汁に期待しているというのが顔に表れている。
「では、いただきます」
「「「いただきます」」」
皆でいただきますの挨拶を口にし、小狼とモコナと黒鋼は早速と言わんばかりに味噌汁に箸を動かし、飲み始めた。
「美味しいっ!!凄く美味しいよファイ!!」
「ああ、とても美味い。おれが今までに食べてきた味噌汁の中で一番美味い味噌汁だ」
「そう?よかったー!」
小狼とモコナはファイが大豆から仕込んだ味噌で作った味噌汁の味にご満悦のようでそんな二人の満足そうな顔を見てファイは安心する……が、黒鋼は味噌汁を口にした瞬間、涙を流したのだ。
「あれ?黒鋼ー、どうしたの!?」
「貴方が涙を流すなんて……一体どうしたんだ?」
一度目の旅が始まった時から今の今まで涙を見せた事がなかった黒鋼が涙を流す姿に小狼とモコナは驚きを隠せない様子だ。
「黒様、そんなに泣くほどオレが作った味噌汁が不味かったの……?」
ファイは黒鋼が泣く姿に自分が作った味噌汁が不味かったのかと感じて泣きそうな表情になり、不味い味噌汁を作ってしまってごめんなさいと黒鋼に謝罪の言葉をかけようとする。
「黒様、ごめんなさ……」
「……母上の味だ」
「え?」
「え?ええ?ファイが作った味噌汁が母上の味って……どういう事なの黒鋼ー!!」
ファイが作った味噌汁を母上の味だと言った黒鋼にファイ、モコナ、小狼の目線が集まっていく。
「俺がまだ小さかった頃、母上が作ってくれた味噌汁と同じ味がした。味噌だけじゃない、具がたくさん入っているのも同じだ」
「オレの作った味噌汁が黒様のお母様が作った味噌汁の味と同じ……?」
「そうだ。もう二度と食べられないと思っていた母上の思い出の味だ。それを再びこうして味わえるとは思わなかった」
黒鋼が涙を流した理由、それはファイが作った味噌汁が黒鋼の母親が作ってくれた思い出の味噌汁と同じ味がしたからだ。
「ユゥイ」
「えっ、えっ?いきなり何なの黒様?」
いきなり真名で呼ばれたファイはあたふたしている。
「この国に来たばかりの夜……お前は言ったな。『オレを黒様のお嫁さんにしてほしい』と」
「う、うん。言った……よ」
この国に来たばかりの夜に黒鋼に言った『オレを黒様のお嫁さんにしてほしい』と言う願いを小狼とモコナがいる前で言われてファイの顔は真っ赤に染まっていく。
「俺の認識ではとっくの昔からお前は俺の嫁だが……今改めて言う。俺はお前の作った味噌汁を毎日飲みたい。俺の伴侶になれ」
「!!」
小狼とモコナが目の前にいる状態での黒鋼からのプロポーズにファイの心臓の鼓動は皆に聞こえるんじゃないかと思うほどの速さでドキドキと高鳴っていく。
「どうなんだ、返事は?」
「そ……そんなの『はい』に決まってるじゃないか……」
ファイは消え入りそうな声で黒鋼のプロポーズを受け入れ、名実ともにファイは黒鋼の伴侶になった。
「ファイ、おめでとーう!!本当に黒鋼の奥さんになっちゃったね♡」
「互いを心から想い合う貴方達がこうなる事をおれもサクラもずっと望んでいた。貴方達の幸せを心から祝福する」
ファイが黒鋼のプロポーズを受け入れた事を小狼とモコナは心から祝福し、喜んでくれている。そんな彼らにファイは幸せそうな満面の笑みを見せた。
「えへへ……小狼君もモコナもありがとう。次に玖楼国に行った時にサクラちゃんにこの事を伝えなきゃだね」
「ああ、サクラもとても喜ぶだろう」
「うん!サクラ、すごくすごく喜ぶよ!!」
ファイが名実ともに黒鋼の伴侶になった事実をサクラはきっと小狼とモコナが言うように喜んでくれる事だろう。
「それはそれとして……オレが大豆から仕込んだ味噌で作った味噌汁が黒様のお母様が作った味噌汁と全く同じ味って事はさ、オレも小狼君もモコナもこの味噌汁を通じて黒様の家庭の味を味わっているって事になるね」
「ああ、そうなるな。おれも貴方の母上が作った味を知れて嬉しく思っている」
「モコナも!モコナも黒鋼のお母さんが作ってくれた味噌汁の味を知れてとっても嬉しいの♪」
ファイと小狼とモコナはファイが作った味噌汁を通じて黒鋼の母親の味を知り、黒鋼の事を更に知る事が出来て嬉しい気持ちでいっぱいである。そんな彼らの眼差しを受けた黒鋼は照れ臭そうに笑った。
「……そうかよ」
「ふふっ、黒様ってば赤くなって可愛い」
照れ臭そうに笑う黒鋼をファイはもちろんの事、小狼とモコナも優しい眼差しで見つめている。そうして温かい雰囲気の中、皆で朝食を食べる家族同然の一行であった───
END
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