ちびまる子ちゃん小説

静岡県清水市に住むちびだからちび丸、そして女の子だから子をつけて『ちびまる子ちゃん』というあだ名で呼ばれている女の子、さくらももこは入江小学校に通う小学三年生である。今日はせっかくの子供の日だというのにも関わらず、どこへも連れて行ってもらえないまる子は仕方がないから近所の空地に遊びに行き、その近所の空地でまる子と同じ入江小学校の小学五年生でカメラマンを夢見る少年の武田洋ことヒロシ君と出会う。まる子とヒロシ君は出会ってすぐに意気投合し、ヒロシ君が部屋として使っている物置小屋に招待してもらったまる子はヒロシ君の夢がたくさん詰まった物置小屋の空間に感動し、自分も漫画家になりたいという夢を打ち明け、ヒロシ君は「好きな事を捨てちまうのが大人になるって事なら、俺は子供のままでいい」、まる子は「もし絵を描くのをやめなきゃ大人にしてやらないよって言われたら、あたしも大人になんなくていいよ」と互いに言い、自分達はいつまでも好きな事を捨てずに夢を持っていようと誓い合い、二人の子供の日の記念としてまる子はヒロシ君に写真を撮ってもらったのだった。

二人で夢を誓い合った子供の日から数日後、ヒロシ君が子供の日にまる子を撮った写真を焼き増しし、焼き増しした写真をまる子に手渡した。その写真の中のまる子は普段のおっちょこちょいでマヌケでズボラなまる子とは想像もつかないような無邪気な天使のようであり、まる子はその写真の出来栄えにすっかり大興奮だ。

「凄いよヒロシ君!!あたしがこんなに美人に撮れるなんて!!」

「写真ってのは撮る側の気持ちと、撮られる側の気持ちの両方が写るって言うからな。この写真には俺とまる子の子供の日の約束が込められてるんだろ」

「まる子とヒロシ君の子供の日の約束が込められてる……かぁ。そう聞くとますますこの写真が愛おしく感じるねぇ〜!まる子、この写真を漫画家という夢のための願掛けにするね!!」

「まる子がそう言ってくれるなんて……撮ったかいがあったな。オレもまる子を撮ったこの写真をカメラマンという夢のための願掛けにするよ」

「ヒロシ君もまる子を撮ったこの写真を夢のための願掛けにしてくれるの?」

「ああ。この写真は漫画家というまる子の夢とカメラマンという俺の夢を繋ぐ誓いの証だ!」

「ヒロシ君……」

まる子は自分の事を撮ったこの写真をまる子の漫画家への夢とヒロシ君のカメラマンへの夢を繋ぐ誓いの証とまで言ってくれたヒロシ君の態度に心の中が温かくなっていくのを感じている。まる子はその心の温かさを感じたまま、今の自分だからこそ伝えられるヒロシ君への想いを口にする。

「ねぇヒロシ君。ヒロシ君のお兄さんは絵を描くのが好きだったんだよね」

「あ、ああ」

ヒロシ君のお兄さんは医者になるために懸命に勉強しているが、それはヒロシ君のお父さんが交通事故で亡くなってしまった事がきっかけで変わってしまったからであり、元々は絵を描くのが好きで絵描きを目指していたのだ。ヒロシ君は絵描きになりたいというかつての兄の夢を知っているからこそ、急に大人になってしまった今の兄の姿を悲しく思っているのである。

「だったらさ、あたしがヒロシ君のお兄さんが捨ててしまった夢を背負うよ」

「まる子?」

「あたしもヒロシ君のお兄さんと同じで絵を描くのが好きだからさ、ヒロシ君のお兄さんが捨ててしまった夢を背負う存在としてこれ以上の存在はないと思うよ?だから、だからね、ヒロシ君……」

「まる子、いったい何を……」

「以前はヒロシ君のお兄さんの絵をヒロシ君の物置小屋に飾っていたのと同じように……これからはまる子が描いた絵をヒロシ君の物置小屋に飾らせてよ」

「!!」

「ヒロシ君はお兄さんが急に大人になって絵描きの夢を捨ててしまった事を悲しく思ってるよね?だからヒロシ君が悲しくないようにまる子がヒロシ君のお兄さんのかわりになって自分の夢と一緒にヒロシ君のお兄さんの夢を一緒に追うよ!」

「まる子……!!」

自分の兄が捨ててしまった絵描きの夢を自分の夢と一緒に追うとまで言ってくれたまる子の大きな気持ちにヒロシ君の心に喜びの気持ちが溢れてくる。この喜びの気持ちの大きさに兄が絵描きの夢を捨ててしまった悲しみがかき消けされていくかのようにヒロシ君の心が浄化されていく。

「な……なんてね。まる子なんかがヒロシ君のお兄さんのかわりになりたいだなんてちょっとでしゃばりすぎたかな……なんて。アハハ……アハアハ……」

まる子は自分がしてしまった大胆発言に我に返って恥ずかしくなってしまうが、ヒロシ君はまる子の小さくなってしまった声をかき消すように自分のなかに次々と溢れていく嬉しい気持ちを声に出した。

「でしゃばりすぎだとか、そんな事決してない!!まる子の気持ち、すげー嬉しい……!!」

「ヒロシ君……まる子、ヒロシ君のお兄さんの夢を背負っていいの?」

「当たり前だろ。兄ちゃん自身が否定した兄ちゃんの夢を肯定してくれるってだけでも嬉しいのに、兄ちゃんの夢を背負ってくれるなんてこれ以上に嬉しい事はないぜ。まる子、ありがとな」

「えへへ……」

ヒロシ君にお礼を言われたまる子もまたヒロシ君と同様に心の中に嬉しい気持ちが込み上げてきて、お互いに気持ちが蒸発しているのがこれでもかというくらいに伝わってくるようだ。

「まる子は漫画家とヒロシ君のお兄さんがなりたかったイラストレーターに、ヒロシ君はカメラマンになるためにこれから一緒に頑張っていこうね!!」

「まる子が一緒にいてくれるなら心強いな。これからよろしくな、まる子!!」

「うん!」



子供の日に運命的な出会いをしたまる子とヒロシ君。二人は中学生になっても、高校生になっても、大学生になっても、そして大人になっても、子供の日に互いに誓った夢を捨てずに持ち続け、その強い想いと夢を叶えるための類稀なる努力が実を結び、まる子は漫画家の夢とヒロシ君のお兄さんの夢だったイラストレーターの夢を同時に叶え、ヒロシ君は戦闘や紛争の行われている地域で戦争による被害、戦争の被害者などを取材する戦場カメラマンになるのだが、それはまだまだ先の未来の出来事である───



END
5/6ページ
スキ