ちびまる子ちゃん小説
静岡県清水市に住むちびだからちび丸、そして女の子だから子をつけて『ちびまる子ちゃん』というあだ名で呼ばれている女の子、さくらももこは入江小学校に通う小学三年生である。今は楽しい楽しい夏休みの真っ最中なのに加え、今日の八月十五日は三年四組のクラスメイト達と海に行くというビックイベントがあるのだ。まる子はこのビッグイベントが楽しみなあまり昨日の夜あまり寝る事ができず、今日も今日とて寝坊してしまったのである。寝坊してしまったまる子は親友の穂波たまえことたまちゃんとの待ち合わせ時間に遅れてしまうのであった。
「たまちゃん、ごめんね。私が寝坊したせいで遅れちゃって……」
「ううん、いいの。実を言うと私もちょっと寝坊しちゃったの」
いつも寝坊助なまる子とは違い、普段は寝坊をしないたまちゃんであるが、そんな真面目なたまちゃんも今日のビッグイベントが楽しみすぎて昨日の夜あまり寝る事ができず、寝坊してしまったようである。
「いい天気だねぇ、まるちゃん」
「ほんとだねぇ、絶好の海水浴日和だよ」
まる子とたまちゃんは絶好の海水浴日和の晴れ模様にますますビッグイベントが楽しみになっている。だが、たまちゃんが嬉しそうなのはどうやらそれだけではない様子だ。
「たまちゃん、なんか嬉しそうだねぇ。何かいい事あったの?」
「分かっちゃった?私ね、新しい水着買ってもらったの」
「新しい水着!?いいなぁー、あたしはいつものださいスクール水着だよ。本当はビキニで海辺を散歩したかったんだけどね」
まる子は今日の海水浴で着たいからと父ヒロシと母すみれにビキニ買ってとおねだりしたのだが、父ヒロシに「お前のそんな姿誰も見たくないぞ」と言われて買ってもらえなかったのである。
「ビ……ビキニ……」
たまちゃんはビキニを着て海辺を散歩したかったと言うまる子の発言に顔に縦線を入れて引き気味になってしまった。たまちゃんもまる子の両親と同様にまる子のビキニ姿なんて誰も見たくないと思っているようである。
そんなこんなで会話をしながら通学路を歩いているうちに集合場所の入江小学校が見えてきた。
「まるちゃん、学校が見えてきたよ!!」
「ほんとだ、走ろうたまちゃん!」
集合場所の入江小学校に走って向かうまる子とたまちゃん。入江小学校の校庭には既にクラスメイト達がほぼ全員到着しており、大遅刻をしてしまったまる子とたまちゃんである。
「おっきたな。二十世紀最後の遅刻ものっ!!」
まる子とたまちゃんに嫌なあだ名をつけてきたのは浜崎憲孝ことはまじである。
「ごめんごめん。あっ、先生」
「おはようございます」
まる子とたまちゃんははまじの嫌なあだ名をスルーし、三年四組担任の戸川先生に挨拶をした。
「さくらさん、穂波さん、おはようございます。冨田君がまだなのでもう少し待ちましょう」
冨田君というのは冨田太郎ことブー太郎の事である。ブー太郎はまる子とたまちゃんが到着してから十五分後に到着と大遅刻し、これでやっとクラスメイト全員が揃った。
「みんな、遅れてごめんブー!!」
「冨田君、ズバリ!!あなたは二十世紀最後の痴れ者さくらさんより劣っているでしょう!!」
ブー太郎の大遅刻を説教するのは三年四組の学級委員長、丸尾スエオこと丸尾君である。
「冨田君、ズバリ!!あなたはこの大遅刻の責任をどうとるおつもりですか!?」
「ご、ごめんよブー」
「丸尾君、そのくらいでいいでしょう」
「先生、まさか甘やかすおつもりでは!?」
「まっ、いいではありませんか。では、出発しますよ」
戸川先生が丸尾君の説教を止め、いよいよ海水浴場へ出発だ。海水浴場へは電車で清水から静岡までガタンゴトンと揺られながら向かう。そうしているうちに静岡駅へ到着し、戸川先生が点呼をとって全員が揃っている事を確認してから皆で歩いて海水浴場へと向かっていく。静岡駅から五分くらい歩き、海水浴場へ到着した。この海水浴場は三保半島の内海にあり、波は比較的穏やかで対岸には清水港が存在しているのだ。
「では、今日一日楽しく遊びましょう!!」
「みんなぁーっ!!水着に着替えて海に突入だぁー!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
海を目の前にして楽しみに胸をときめかせて落ち着かない様子の三年四組の生徒達は直ぐ様更衣室で水着に着替え、全員で青い海へと突入する。そうしてクラスメイト達は皆思いのままに海で力一杯泳いだり、水鉄砲で遊んだり、砂浜で鬼ごっこをしたり、砂山崩しをしたり、砂浜で宝探しをしたり、ビーチバレーをしたり、ビーチコーミングをしたり、砂のアート作りをしたり、砂のお城を作ったり、砂埋めをしたり、海上騎馬戦をしたり、肌を焼いたり、スイカ割りをしたりして海ならではの遊びを思う存分満喫している。そんな中、花輪和彦こと花輪クンがひときわ目を引く桃色の貝殻を発見し、花輪クンのその様子に気付いたまる子は花輪クンの元へと駆け寄っていく。
「花輪クン、その綺麗な貝殻は何?」
「これかい?さっき見つけた貝殻だよベイビー。この桃色の貝殻、なんだかこの浜に伝わる人魚の伝説の貝殻に似ていたからつい拾ってしまったのさ」
「なーに?人魚の伝説って!?」
まる子は人魚の伝説と聞いて興味津々の様子である。好奇心に満ちたまる子の表情に圧倒された花輪クンはこの浜に伝わる人魚伝説について話し始めた。
「昔、この海には人魚がいたんだ。その人魚は、この浜辺に住む若者に恋をしたんだ。しかし、所詮結ばれぬ人魚と人間と恋。人魚は、彼との恋を忘れぬために自分の耳飾りの貝に恋の記憶を閉じ込めてどこかに隠したというわけさ」
「へぇー、そう聞くとなんだか本当に人魚の恋を秘めた貝殻に思えてきちゃったよ」
「さくら!花輪クン!」
人魚の恋を秘めているかもしれない桃色の貝殻を見ているまる子と花輪クンに声をかけてきたのはブー太郎である。どうやらブー太郎も人魚の恋に興味津々の様子だ。
「あっ、ブー太郎。あんたも人魚の伝説に興味があるの?」
「富田君、君もなかなかロマンチストだねセニョール。君にもこの貝殻を見せてあげるよ」
花輪クンはそう言うとブー太郎の両手に桃色の貝殻を添える。その瞬間、ブー太郎の体中が急激に真っ赤に染まっていく。
「ブ、ブ、ブ、ブ、ブ、ブヒ〜!!」
ブー太郎は自分の両手に添えられた桃色の貝殻を見て大興奮し、まるで本物の豚のような声を大きく張り上げた。
「どうしたの!?ブー太郎!!」
「なんだか様子が変だよセニョール」
まる子と花輪クンは桃色の貝殻を手にした途端に様子が変わったブー太郎を心配し声を掛けるが、当のブー太郎は二人の声が全く聞こえていない。
「に、人魚の恋はおいらのものだーっ!!」
ブー太郎は突然叫び、桃色の貝殻を握りしめて物凄い勢いで走り去っていってしまった。
「あっ、待ちたまえ!!富田君!!」
「花輪クン、ブー太郎を追いかけよう!!」
桃色の貝殻を握りしめて走り去ってしまったブー太郎を追いかけるまる子と花輪クン。ブー太郎は全力で走ったが、マラソン大会十位入賞の肩書を持つまる子と全成績オール五で当然体育の成績も五の花輪クンの脚力にかなうはずもなく、あっさりと追いつかれてしまった。
「ブー太郎、追いついたよ!!」
「さ、さくら……」
「ブー太郎、花輪クンに貝殻を返してよ」
まる子はブー太郎に桃色の貝殻を花輪クンに返してと問い詰めるが、桃色の貝殻に完全に魅入られてしまったブー太郎は意地でも桃色の貝殻を返す気はないようだ。
「人魚の恋はおいらがもらうんだブー!!」
ブー太郎はそう叫ぶと海の中に入水してしまう。ブー太郎が海の中に入水したその瞬間、突然三階建ての建物が完全に水没してしまうくらいの大津波が襲いかかってきた。
「う、うわぁ!!大津波だぁ〜!!」
「な、なんという事だい!!」
「きゃー!!」
「ズバリ!!大ピンチでしょう!!」
「やべぇ……マジでやべぇぞコレは……!!」
突然の大津波にまる子、花輪クン、たまちゃん、丸尾君、はまじはもちろんの事、戸川先生と他のクラスメイト達や他の海水浴客も大パニック状態に陥ってしまった。そんな中、ライフセーバーが大きな声で避難を呼びかける。
「皆さん!!津波が届かない高いところへ早く逃げてください!!」
海水浴客はライフセーバーの指示に従い、直ぐ様海水浴場から離れて避難を始める。まる子をはじめとする三年四組のクラスメイト達も戸川先生の指示に従って海水浴場から離れていく……が、ブー太郎だけは海の中に入水したままだ。
「おい!!ブー太郎!!いつまで海の中にいるんだ!!早く逃げないと津波に飲まれちまうぞ!!」
はまじはブー太郎に向かって必死で声を荒げるが、ブー太郎は全く聞く耳を持たず、海の中を泳いでいく。まるで今のブー太郎は目の前の大津波が目に入っていないようだ。
「人魚に会いたいブー!!」
人魚に心を魅入られてしまったブー太郎は何としても人魚に出会うために必死で大津波が襲う海の中を泳いでいき、ついにブー太郎が大津波に飲まれてしまいそうになるその瞬間、ブー太郎が持っていた桃色の貝殻が大きな光を放ち、大津波は嘘のように掻き消えて海は元の穏やかな波に戻っていく。
「えっ!?津波が……消えた!?」
「い、一体何が起こったんだい!?」
「まるであの光が大津波を飲み込んじゃったみたいだった……」
「ズバリ!!摩訶不思議な出来事でしょう!!」
「こ、こんな事ってあるのかよ!?」
ブー太郎が大津波に飲まれてしまいそうになる瞬間に大きな光が大津波を掻き消してブー太郎を救うという奇想天外な出来事にまる子、花輪クン、たまちゃん、丸尾君、はまじは驚きを隠せない。
「はっ!!おいらは一体……」
人魚に心を魅入られていたブー太郎は大津波が大きな光によって掻き消えると同時に正気に戻り、海から上がってきた。
「ブー太郎!!何やってんだ!!心配したんだぞ!!」
「は、はまじ!!ごめんブー!!」
ブー太郎が大津波に飲まれて死んでしまうんじゃないかと気が気じゃなかったはまじは直ぐ様ブー太郎に駆け寄った。
「富田君!!先生とライフセーバーさんの指示を無視しては駄目ですよ!!」
丸尾君は学級委員長としての責任感で危険な行動をしたブー太郎に説教する。丸尾君もはまじ同様にブー太郎が死んでしまうんじゃないかと気が気じゃなかったのだ。
「みんな……みんな……今日は本当にすまなかったブー……ごめんなさいブー……」
ブー太郎は泣きながら今日の大遅刻の事と戸川先生とライフセーバーの指示を無視してしまった事を戸川先生とクラスメイト達に謝罪した。ブー太郎のその様子を見て花輪クンはある事に気づく。
「富田君、君が持っていた桃色の貝殻はどうしたんだい?」
「桃色の貝殻?それならここにあるブー……ってあれ?ないブー!!」
ブー太郎は手に持っていた桃色の貝殻を必死になって探すが、桃色の貝殻は嘘のようにブー太郎の手の中からすっかり消えてしまっていたのであった。
「桃色の貝殻が消えたのって大津波を掻き消しちゃったあの光と関係してるのかも」
感性が豊かなまる子は桃色の貝殻が消えた事と大津波が掻き消えた事が関連していると確信している様子だ。
「きっと桃色の貝殻から放たれたあの光が大津波からブー太郎を守ってくれたんだよ!!人魚の耳飾りの貝に守ってもらえるなんて……もしかしたらブー太郎は人魚が恋した若者の生まれ変わりなのかもしれないねっ」
「お、おいらが……人魚が恋した若者の生まれ変わり……?ブヒョ〜〜ッ!!」
ブー太郎はまる子が言ったブー太郎は人魚が恋した若者の生まれ変わりかもしれないという言葉に大興奮し、大量の鼻血を出して倒れてしまう。朝は大遅刻、桃色の貝殻に魅入られる、大津波に飲まれそうになる、大興奮して鼻血を出すと今日一日大騒がせなブー太郎であったとさ。
果たしてブー太郎は本当に人魚が恋した若者の生まれ変わりだったのか?それは人魚だけが知っている秘められた永遠の秘密である……
END
「たまちゃん、ごめんね。私が寝坊したせいで遅れちゃって……」
「ううん、いいの。実を言うと私もちょっと寝坊しちゃったの」
いつも寝坊助なまる子とは違い、普段は寝坊をしないたまちゃんであるが、そんな真面目なたまちゃんも今日のビッグイベントが楽しみすぎて昨日の夜あまり寝る事ができず、寝坊してしまったようである。
「いい天気だねぇ、まるちゃん」
「ほんとだねぇ、絶好の海水浴日和だよ」
まる子とたまちゃんは絶好の海水浴日和の晴れ模様にますますビッグイベントが楽しみになっている。だが、たまちゃんが嬉しそうなのはどうやらそれだけではない様子だ。
「たまちゃん、なんか嬉しそうだねぇ。何かいい事あったの?」
「分かっちゃった?私ね、新しい水着買ってもらったの」
「新しい水着!?いいなぁー、あたしはいつものださいスクール水着だよ。本当はビキニで海辺を散歩したかったんだけどね」
まる子は今日の海水浴で着たいからと父ヒロシと母すみれにビキニ買ってとおねだりしたのだが、父ヒロシに「お前のそんな姿誰も見たくないぞ」と言われて買ってもらえなかったのである。
「ビ……ビキニ……」
たまちゃんはビキニを着て海辺を散歩したかったと言うまる子の発言に顔に縦線を入れて引き気味になってしまった。たまちゃんもまる子の両親と同様にまる子のビキニ姿なんて誰も見たくないと思っているようである。
そんなこんなで会話をしながら通学路を歩いているうちに集合場所の入江小学校が見えてきた。
「まるちゃん、学校が見えてきたよ!!」
「ほんとだ、走ろうたまちゃん!」
集合場所の入江小学校に走って向かうまる子とたまちゃん。入江小学校の校庭には既にクラスメイト達がほぼ全員到着しており、大遅刻をしてしまったまる子とたまちゃんである。
「おっきたな。二十世紀最後の遅刻ものっ!!」
まる子とたまちゃんに嫌なあだ名をつけてきたのは浜崎憲孝ことはまじである。
「ごめんごめん。あっ、先生」
「おはようございます」
まる子とたまちゃんははまじの嫌なあだ名をスルーし、三年四組担任の戸川先生に挨拶をした。
「さくらさん、穂波さん、おはようございます。冨田君がまだなのでもう少し待ちましょう」
冨田君というのは冨田太郎ことブー太郎の事である。ブー太郎はまる子とたまちゃんが到着してから十五分後に到着と大遅刻し、これでやっとクラスメイト全員が揃った。
「みんな、遅れてごめんブー!!」
「冨田君、ズバリ!!あなたは二十世紀最後の痴れ者さくらさんより劣っているでしょう!!」
ブー太郎の大遅刻を説教するのは三年四組の学級委員長、丸尾スエオこと丸尾君である。
「冨田君、ズバリ!!あなたはこの大遅刻の責任をどうとるおつもりですか!?」
「ご、ごめんよブー」
「丸尾君、そのくらいでいいでしょう」
「先生、まさか甘やかすおつもりでは!?」
「まっ、いいではありませんか。では、出発しますよ」
戸川先生が丸尾君の説教を止め、いよいよ海水浴場へ出発だ。海水浴場へは電車で清水から静岡までガタンゴトンと揺られながら向かう。そうしているうちに静岡駅へ到着し、戸川先生が点呼をとって全員が揃っている事を確認してから皆で歩いて海水浴場へと向かっていく。静岡駅から五分くらい歩き、海水浴場へ到着した。この海水浴場は三保半島の内海にあり、波は比較的穏やかで対岸には清水港が存在しているのだ。
「では、今日一日楽しく遊びましょう!!」
「みんなぁーっ!!水着に着替えて海に突入だぁー!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
海を目の前にして楽しみに胸をときめかせて落ち着かない様子の三年四組の生徒達は直ぐ様更衣室で水着に着替え、全員で青い海へと突入する。そうしてクラスメイト達は皆思いのままに海で力一杯泳いだり、水鉄砲で遊んだり、砂浜で鬼ごっこをしたり、砂山崩しをしたり、砂浜で宝探しをしたり、ビーチバレーをしたり、ビーチコーミングをしたり、砂のアート作りをしたり、砂のお城を作ったり、砂埋めをしたり、海上騎馬戦をしたり、肌を焼いたり、スイカ割りをしたりして海ならではの遊びを思う存分満喫している。そんな中、花輪和彦こと花輪クンがひときわ目を引く桃色の貝殻を発見し、花輪クンのその様子に気付いたまる子は花輪クンの元へと駆け寄っていく。
「花輪クン、その綺麗な貝殻は何?」
「これかい?さっき見つけた貝殻だよベイビー。この桃色の貝殻、なんだかこの浜に伝わる人魚の伝説の貝殻に似ていたからつい拾ってしまったのさ」
「なーに?人魚の伝説って!?」
まる子は人魚の伝説と聞いて興味津々の様子である。好奇心に満ちたまる子の表情に圧倒された花輪クンはこの浜に伝わる人魚伝説について話し始めた。
「昔、この海には人魚がいたんだ。その人魚は、この浜辺に住む若者に恋をしたんだ。しかし、所詮結ばれぬ人魚と人間と恋。人魚は、彼との恋を忘れぬために自分の耳飾りの貝に恋の記憶を閉じ込めてどこかに隠したというわけさ」
「へぇー、そう聞くとなんだか本当に人魚の恋を秘めた貝殻に思えてきちゃったよ」
「さくら!花輪クン!」
人魚の恋を秘めているかもしれない桃色の貝殻を見ているまる子と花輪クンに声をかけてきたのはブー太郎である。どうやらブー太郎も人魚の恋に興味津々の様子だ。
「あっ、ブー太郎。あんたも人魚の伝説に興味があるの?」
「富田君、君もなかなかロマンチストだねセニョール。君にもこの貝殻を見せてあげるよ」
花輪クンはそう言うとブー太郎の両手に桃色の貝殻を添える。その瞬間、ブー太郎の体中が急激に真っ赤に染まっていく。
「ブ、ブ、ブ、ブ、ブ、ブヒ〜!!」
ブー太郎は自分の両手に添えられた桃色の貝殻を見て大興奮し、まるで本物の豚のような声を大きく張り上げた。
「どうしたの!?ブー太郎!!」
「なんだか様子が変だよセニョール」
まる子と花輪クンは桃色の貝殻を手にした途端に様子が変わったブー太郎を心配し声を掛けるが、当のブー太郎は二人の声が全く聞こえていない。
「に、人魚の恋はおいらのものだーっ!!」
ブー太郎は突然叫び、桃色の貝殻を握りしめて物凄い勢いで走り去っていってしまった。
「あっ、待ちたまえ!!富田君!!」
「花輪クン、ブー太郎を追いかけよう!!」
桃色の貝殻を握りしめて走り去ってしまったブー太郎を追いかけるまる子と花輪クン。ブー太郎は全力で走ったが、マラソン大会十位入賞の肩書を持つまる子と全成績オール五で当然体育の成績も五の花輪クンの脚力にかなうはずもなく、あっさりと追いつかれてしまった。
「ブー太郎、追いついたよ!!」
「さ、さくら……」
「ブー太郎、花輪クンに貝殻を返してよ」
まる子はブー太郎に桃色の貝殻を花輪クンに返してと問い詰めるが、桃色の貝殻に完全に魅入られてしまったブー太郎は意地でも桃色の貝殻を返す気はないようだ。
「人魚の恋はおいらがもらうんだブー!!」
ブー太郎はそう叫ぶと海の中に入水してしまう。ブー太郎が海の中に入水したその瞬間、突然三階建ての建物が完全に水没してしまうくらいの大津波が襲いかかってきた。
「う、うわぁ!!大津波だぁ〜!!」
「な、なんという事だい!!」
「きゃー!!」
「ズバリ!!大ピンチでしょう!!」
「やべぇ……マジでやべぇぞコレは……!!」
突然の大津波にまる子、花輪クン、たまちゃん、丸尾君、はまじはもちろんの事、戸川先生と他のクラスメイト達や他の海水浴客も大パニック状態に陥ってしまった。そんな中、ライフセーバーが大きな声で避難を呼びかける。
「皆さん!!津波が届かない高いところへ早く逃げてください!!」
海水浴客はライフセーバーの指示に従い、直ぐ様海水浴場から離れて避難を始める。まる子をはじめとする三年四組のクラスメイト達も戸川先生の指示に従って海水浴場から離れていく……が、ブー太郎だけは海の中に入水したままだ。
「おい!!ブー太郎!!いつまで海の中にいるんだ!!早く逃げないと津波に飲まれちまうぞ!!」
はまじはブー太郎に向かって必死で声を荒げるが、ブー太郎は全く聞く耳を持たず、海の中を泳いでいく。まるで今のブー太郎は目の前の大津波が目に入っていないようだ。
「人魚に会いたいブー!!」
人魚に心を魅入られてしまったブー太郎は何としても人魚に出会うために必死で大津波が襲う海の中を泳いでいき、ついにブー太郎が大津波に飲まれてしまいそうになるその瞬間、ブー太郎が持っていた桃色の貝殻が大きな光を放ち、大津波は嘘のように掻き消えて海は元の穏やかな波に戻っていく。
「えっ!?津波が……消えた!?」
「い、一体何が起こったんだい!?」
「まるであの光が大津波を飲み込んじゃったみたいだった……」
「ズバリ!!摩訶不思議な出来事でしょう!!」
「こ、こんな事ってあるのかよ!?」
ブー太郎が大津波に飲まれてしまいそうになる瞬間に大きな光が大津波を掻き消してブー太郎を救うという奇想天外な出来事にまる子、花輪クン、たまちゃん、丸尾君、はまじは驚きを隠せない。
「はっ!!おいらは一体……」
人魚に心を魅入られていたブー太郎は大津波が大きな光によって掻き消えると同時に正気に戻り、海から上がってきた。
「ブー太郎!!何やってんだ!!心配したんだぞ!!」
「は、はまじ!!ごめんブー!!」
ブー太郎が大津波に飲まれて死んでしまうんじゃないかと気が気じゃなかったはまじは直ぐ様ブー太郎に駆け寄った。
「富田君!!先生とライフセーバーさんの指示を無視しては駄目ですよ!!」
丸尾君は学級委員長としての責任感で危険な行動をしたブー太郎に説教する。丸尾君もはまじ同様にブー太郎が死んでしまうんじゃないかと気が気じゃなかったのだ。
「みんな……みんな……今日は本当にすまなかったブー……ごめんなさいブー……」
ブー太郎は泣きながら今日の大遅刻の事と戸川先生とライフセーバーの指示を無視してしまった事を戸川先生とクラスメイト達に謝罪した。ブー太郎のその様子を見て花輪クンはある事に気づく。
「富田君、君が持っていた桃色の貝殻はどうしたんだい?」
「桃色の貝殻?それならここにあるブー……ってあれ?ないブー!!」
ブー太郎は手に持っていた桃色の貝殻を必死になって探すが、桃色の貝殻は嘘のようにブー太郎の手の中からすっかり消えてしまっていたのであった。
「桃色の貝殻が消えたのって大津波を掻き消しちゃったあの光と関係してるのかも」
感性が豊かなまる子は桃色の貝殻が消えた事と大津波が掻き消えた事が関連していると確信している様子だ。
「きっと桃色の貝殻から放たれたあの光が大津波からブー太郎を守ってくれたんだよ!!人魚の耳飾りの貝に守ってもらえるなんて……もしかしたらブー太郎は人魚が恋した若者の生まれ変わりなのかもしれないねっ」
「お、おいらが……人魚が恋した若者の生まれ変わり……?ブヒョ〜〜ッ!!」
ブー太郎はまる子が言ったブー太郎は人魚が恋した若者の生まれ変わりかもしれないという言葉に大興奮し、大量の鼻血を出して倒れてしまう。朝は大遅刻、桃色の貝殻に魅入られる、大津波に飲まれそうになる、大興奮して鼻血を出すと今日一日大騒がせなブー太郎であったとさ。
果たしてブー太郎は本当に人魚が恋した若者の生まれ変わりだったのか?それは人魚だけが知っている秘められた永遠の秘密である……
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