ちびまる子ちゃん小説
海水浴は大好きだけど、夏休みの貴重な時間を割いてまで皆と競争するために海で泳いで苦しむなんて絶対イヤ、イヤッと言いたいかのように地元の海水浴場で行われる中学校の全校生徒が海で泳いで競争する『オープンウォータースイミング大会』が嫌で仕方ないがあまりにどれだけ面白い事があっても思いっきり笑えずにひきつり笑いになってしまう今日この頃のまる子である。
『オープンウォータースイミング大会』が気がかりなあまりに夏休みなのにも関わらず憂鬱な日々を送っていたまる子だが、明日いよいよ『オープンウォータースイミング』が行われるため、まる子は非常に元気がなく、顔つきもどんよりとしている。
「イヤだ……イヤだ……でも、明日の今頃はもうオープンウォータースイミング大会終わって楽になってるだろうな……。あああ……二十四時間知らんぷりしてワープしてしまいたい……」
「何言ってんのまる子。十番以内になって賞状もらってきてよ」
まる子の母、すみれは憂鬱なまる子を更に憂鬱にさせる言葉をかけてくる。
「小学三年生のマラソン大会の前日の時みたいな事言うんじゃないよ、嫌な親だねぇ」
「あの時はせっかく十位になったのに賞状がもらえなかったんだから今度こそはあんたに賞状を貰ってきてほしいのよ」
「あの時賞状をもらえなかったのはオイルショックの紙不足で七位までしか賞状がなかったからだよ。それをまる子のせいにされても困るよぉ」
まる子とすみれが話しているのはまる子が小学三年生の時のマラソン大会の事である。まる子が小学三年生だった昭和四十九年の世の中はオイルショックという大変な事態にあり、石油の急激な値段の上昇で経済は混乱し、特に紙の値段が著しく高くなり、世間では紙不足が心配されていた時代だったのである。それが原因となり、紙の節約のためという理由で昭和四十九年度のマラソン大会で賞状が貰えるのは一位から七位の生徒までとなり、全学年の八位、九位、十位の生徒は賞状が貰えなかったのだ。それ故にまる子は本来ならば賞状が貰えたにも関わらず賞状が貰えずに終わり、更にそれに追い打ちをかけるかのように風邪でダウンしてしまって楽しみにしていたお雛祭りもあっさりと過ぎ去ってしまったという苦い思い出があるのだ。
「それにあの時はマラソンで今回は水泳だよ。まる子そんなに早く泳げないよ」
「あんたは小学生の時は二十五メートルも泳げなかったけど、中学生になってからは長い距離を泳げるようになったじゃない。十分に賞状を狙えるわよ」
「プレッシャーかけないでよぉ……。母なら娘をあんまり苦しめないでー……」
小学三年生の時のマラソン大会で十位になった経験もあり、マラソンは意外と速いまる子だが、中学生になってからは水泳も意外と速く泳げるようになったのだ。だからこそマラソン大会はもちろんの事、水泳大会の日が近づいた時もすみれはやたらとまる子の珍しい活躍ぶりに期待し、今している会話のように「賞状を貰ってきなさい」等と物凄いプレッシャーをかけてくるのである。すみれのその期待が唯でさえマラソン大会や水泳大会が近づくと憂鬱になるまる子を更に苦悩させているのであるが、すみれはそんな事知る由もないのであった。
そしていよいよ当日の朝がやってきた。まる子はすみれに頭が痛いと言うが当然すみれがまる子の嘘を信じてくれるわけもなく、まる子の最後の抵抗はあっさりと流されてしまうのであった。そうして中学校に行き、貸切バスで中学校から地元の海水浴場に移動し、スクール水着に着替えたらいよいよ『オープンウォータースイミング大会』の始まりである。今日は天気もよく、まさに『オープンウォータースイミング大会』日和だ。これが海水浴のために遊びに来ているのならばどれだけ嬉しい事だろうとまる子はもちろんの事、生徒達も思っているに違いない。
「一年生女子は今から『オープンウォータースイミング大会』をしますのでスタート位置の砂浜に集合しなさい」
体育教師が拡声器を使ったアナウンスで生徒に指示を送る。まる子をはじめとする一年生女子達がスタート位置の砂浜に集まっていく。一年生女子が全員スタート位置の砂浜に集まったのを確認した体育教師はルールを説明し始めた。
「奥にあるブイに向かって真っ直ぐに泳ぎ、奥のブイまで辿り着いたらこの砂浜に戻ってくるんだ。理解できたな?」
『はいっ!!』
「では、位置についてー、ヨーイ、ドンッ!!」
体育教師のスタート合図の掛け声によって一年生女子達は一斉に海の中に入って泳ぎ始めた。そんな中、まる子は走って入水する他の生徒達をよそにゆっくりと入水し、平泳ぎで海水に慣れていく。
(最初は体力を温存するためにラクに泳がないとねぇ〜)
まる子は後半の体力を残しておくために最初はゆっくりと平泳ぎで泳いでいく作戦のようだ。そうして平泳ぎで泳いでいるまる子の前には以前まる子の上履きに画鋲を入れるといういじめ行為を行いながらも謝らなかった隣のクラスの意地悪女が泳いでいる。ちなみに言っておくがまる子はその上履きを履く前に画鋲を入れられている事に気が付き、足の裏を怪我する事は回避できた。が、心が深く傷ついた事には変わりがない。
(あっ、前にいるのはあたしの上履きに画鋲を入れたのに謝らなかったいけ好かない女だ。よーし、抜いてやるっ)
前にいるのが意地悪女という事で心に火がついたまる子は泳ぎ方を平泳ぎからクロールに切り替え、自慢の六ビートキックで泳いで前にいる隣のクラスの意地悪女を勢いよく抜き去っていく。普段はまるっきり根性がないまる子だが、個人的な恨みが絡むと思いがけない力を発揮できるのである。
隣のクラスの意地悪女を勢いよく抜き去ったまる子は順調に泳いで順位を着実に伸ばしていく。そうして奥のブイまで辿り着き、ゴールの砂浜を目指していく。
(あああ、しんどい……もうダメ……)
海はプールよりも冷たく、波も強い。故に海で泳ぐという事はプールで泳ぐよりも疲れるものである。海の冷たい水と上半身に打ちつける波の勢いによりまる子の体力は限界に近づいていく。
「ももこちゃん、頑張れ!!このままゴールすれば七位になれるぞー!!」
(先生!!)
体力の限界が近づいてきたまる子だが、体育教師が掛けてくれたこのままゴールできれば七位になれるという声援がきっかけで火事場の馬鹿力が発動する。その勢いのままにゴールし、見事に七位入賞を果たしたのであった。
「まるちゃん、七位おめでとう!!」
「やったぁー!!あたしゃやり遂げたよー!!らりほ〜!!」
まる子は七位入賞を成し遂げた事で昨日までの憂鬱ぶりが嘘のように晴れやかな顔で喜びを全身で体現している。そんなまる子の事をまる子の友人達は心から祝福したのであった。
そうしてその喜びのままに満面の笑みで家に帰宅するまる子。すみれはまる子の七位入賞を心から喜び、まる子の頑張りを称えてまる子の大好物のプリンをふんだんに使ったフルーツプリンパフェを作ってくれたのである。すみれが心を込めて作ってくれたフルーツプリンパフェはまる子が今までの十三年の人生で食べたデザートの中で一番美味しいデザートだった。
七位入賞の賞状も無事に貰えたまる子は十位になれたのに賞状が貰えなかったという小学三年生のマラソン大会の苦い思い出のリベンジを果たす事に成功し、かつての自分を救済する事もできた。清々しい気持ちでいっぱいのまる子の楽しい夏休みはこれから始まるのである───
END
『オープンウォータースイミング大会』が気がかりなあまりに夏休みなのにも関わらず憂鬱な日々を送っていたまる子だが、明日いよいよ『オープンウォータースイミング』が行われるため、まる子は非常に元気がなく、顔つきもどんよりとしている。
「イヤだ……イヤだ……でも、明日の今頃はもうオープンウォータースイミング大会終わって楽になってるだろうな……。あああ……二十四時間知らんぷりしてワープしてしまいたい……」
「何言ってんのまる子。十番以内になって賞状もらってきてよ」
まる子の母、すみれは憂鬱なまる子を更に憂鬱にさせる言葉をかけてくる。
「小学三年生のマラソン大会の前日の時みたいな事言うんじゃないよ、嫌な親だねぇ」
「あの時はせっかく十位になったのに賞状がもらえなかったんだから今度こそはあんたに賞状を貰ってきてほしいのよ」
「あの時賞状をもらえなかったのはオイルショックの紙不足で七位までしか賞状がなかったからだよ。それをまる子のせいにされても困るよぉ」
まる子とすみれが話しているのはまる子が小学三年生の時のマラソン大会の事である。まる子が小学三年生だった昭和四十九年の世の中はオイルショックという大変な事態にあり、石油の急激な値段の上昇で経済は混乱し、特に紙の値段が著しく高くなり、世間では紙不足が心配されていた時代だったのである。それが原因となり、紙の節約のためという理由で昭和四十九年度のマラソン大会で賞状が貰えるのは一位から七位の生徒までとなり、全学年の八位、九位、十位の生徒は賞状が貰えなかったのだ。それ故にまる子は本来ならば賞状が貰えたにも関わらず賞状が貰えずに終わり、更にそれに追い打ちをかけるかのように風邪でダウンしてしまって楽しみにしていたお雛祭りもあっさりと過ぎ去ってしまったという苦い思い出があるのだ。
「それにあの時はマラソンで今回は水泳だよ。まる子そんなに早く泳げないよ」
「あんたは小学生の時は二十五メートルも泳げなかったけど、中学生になってからは長い距離を泳げるようになったじゃない。十分に賞状を狙えるわよ」
「プレッシャーかけないでよぉ……。母なら娘をあんまり苦しめないでー……」
小学三年生の時のマラソン大会で十位になった経験もあり、マラソンは意外と速いまる子だが、中学生になってからは水泳も意外と速く泳げるようになったのだ。だからこそマラソン大会はもちろんの事、水泳大会の日が近づいた時もすみれはやたらとまる子の珍しい活躍ぶりに期待し、今している会話のように「賞状を貰ってきなさい」等と物凄いプレッシャーをかけてくるのである。すみれのその期待が唯でさえマラソン大会や水泳大会が近づくと憂鬱になるまる子を更に苦悩させているのであるが、すみれはそんな事知る由もないのであった。
そしていよいよ当日の朝がやってきた。まる子はすみれに頭が痛いと言うが当然すみれがまる子の嘘を信じてくれるわけもなく、まる子の最後の抵抗はあっさりと流されてしまうのであった。そうして中学校に行き、貸切バスで中学校から地元の海水浴場に移動し、スクール水着に着替えたらいよいよ『オープンウォータースイミング大会』の始まりである。今日は天気もよく、まさに『オープンウォータースイミング大会』日和だ。これが海水浴のために遊びに来ているのならばどれだけ嬉しい事だろうとまる子はもちろんの事、生徒達も思っているに違いない。
「一年生女子は今から『オープンウォータースイミング大会』をしますのでスタート位置の砂浜に集合しなさい」
体育教師が拡声器を使ったアナウンスで生徒に指示を送る。まる子をはじめとする一年生女子達がスタート位置の砂浜に集まっていく。一年生女子が全員スタート位置の砂浜に集まったのを確認した体育教師はルールを説明し始めた。
「奥にあるブイに向かって真っ直ぐに泳ぎ、奥のブイまで辿り着いたらこの砂浜に戻ってくるんだ。理解できたな?」
『はいっ!!』
「では、位置についてー、ヨーイ、ドンッ!!」
体育教師のスタート合図の掛け声によって一年生女子達は一斉に海の中に入って泳ぎ始めた。そんな中、まる子は走って入水する他の生徒達をよそにゆっくりと入水し、平泳ぎで海水に慣れていく。
(最初は体力を温存するためにラクに泳がないとねぇ〜)
まる子は後半の体力を残しておくために最初はゆっくりと平泳ぎで泳いでいく作戦のようだ。そうして平泳ぎで泳いでいるまる子の前には以前まる子の上履きに画鋲を入れるといういじめ行為を行いながらも謝らなかった隣のクラスの意地悪女が泳いでいる。ちなみに言っておくがまる子はその上履きを履く前に画鋲を入れられている事に気が付き、足の裏を怪我する事は回避できた。が、心が深く傷ついた事には変わりがない。
(あっ、前にいるのはあたしの上履きに画鋲を入れたのに謝らなかったいけ好かない女だ。よーし、抜いてやるっ)
前にいるのが意地悪女という事で心に火がついたまる子は泳ぎ方を平泳ぎからクロールに切り替え、自慢の六ビートキックで泳いで前にいる隣のクラスの意地悪女を勢いよく抜き去っていく。普段はまるっきり根性がないまる子だが、個人的な恨みが絡むと思いがけない力を発揮できるのである。
隣のクラスの意地悪女を勢いよく抜き去ったまる子は順調に泳いで順位を着実に伸ばしていく。そうして奥のブイまで辿り着き、ゴールの砂浜を目指していく。
(あああ、しんどい……もうダメ……)
海はプールよりも冷たく、波も強い。故に海で泳ぐという事はプールで泳ぐよりも疲れるものである。海の冷たい水と上半身に打ちつける波の勢いによりまる子の体力は限界に近づいていく。
「ももこちゃん、頑張れ!!このままゴールすれば七位になれるぞー!!」
(先生!!)
体力の限界が近づいてきたまる子だが、体育教師が掛けてくれたこのままゴールできれば七位になれるという声援がきっかけで火事場の馬鹿力が発動する。その勢いのままにゴールし、見事に七位入賞を果たしたのであった。
「まるちゃん、七位おめでとう!!」
「やったぁー!!あたしゃやり遂げたよー!!らりほ〜!!」
まる子は七位入賞を成し遂げた事で昨日までの憂鬱ぶりが嘘のように晴れやかな顔で喜びを全身で体現している。そんなまる子の事をまる子の友人達は心から祝福したのであった。
そうしてその喜びのままに満面の笑みで家に帰宅するまる子。すみれはまる子の七位入賞を心から喜び、まる子の頑張りを称えてまる子の大好物のプリンをふんだんに使ったフルーツプリンパフェを作ってくれたのである。すみれが心を込めて作ってくれたフルーツプリンパフェはまる子が今までの十三年の人生で食べたデザートの中で一番美味しいデザートだった。
七位入賞の賞状も無事に貰えたまる子は十位になれたのに賞状が貰えなかったという小学三年生のマラソン大会の苦い思い出のリベンジを果たす事に成功し、かつての自分を救済する事もできた。清々しい気持ちでいっぱいのまる子の楽しい夏休みはこれから始まるのである───
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