忌み子と自殺趣味
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事務所に戻り、応接室に向かうとちょこんと座る可愛らしい金髪の女性。樋口さんと云うようだ。
それに対し、対応する谷崎くん、ナオミちゃん、太宰さん、国木田さん、敦くん、そして私。
とても、居辛そうだ…。
「……あの。」
そう、樋口さんが口を開く。
書類に目を通していた谷崎くんが口を開いた。
「えーと、調査のご依頼だとか。それで……。」
「美しい。」
目にも止まらぬ速さで樋口さんの手を握る太宰さん。
「睡蓮の花のごとき果敢なくそして可憐なお嬢さんだ。」
そう云って彼女を見つめる太宰さん。
私にはそんな事云ったことなかった筈だ。
胸になにか違和感を覚えるが、気のせいだろう。
でも、太宰さんがここまでするとは珍しい気が。
そう思い、もう片方の手の方に視線を移すと太宰さんの手は彼女の上着のポケットの近くにあり、何かを入れたように見えた。
ああ、なんとなく分かった。
「へっ!?」
そして、樋口さんが驚いた様に太宰さんを見る。
そして、キラキラモードの太宰さんはこう続けた。
「どうか私と、“心中”していただけないだろ――」
スパァァンッ!
云いかけた太宰さんを国木田さんは持っていたモノで殴った。
「なななな」
困惑している彼女。
まぁ、いきなりあんな事言われたら誰だってこうなるだろうな…。
ならないのは、慣れている探偵社の面々かうずまきの給仕さんぐらいだろう。
「あ、済みません。忘れてください。」
谷崎くんがそのように告げた。
太宰さんは国木田さんにズルズルと引き摺られていった。
その際、「心中ー、ちょっとだけでいいからー。」と言っていたが、ちょっとだけする心中とはどのようなものなのか。
樋口さんはチラリと太宰さんを見て言葉を再度出した。
「依頼と云うのはですね。我が社のビルヂングの裏手に…最近善からぬ輩が屯(タムロ)している様なんです。」
頂きますといい、カップに手を伸ばす彼女。
案外普通に再開したので彼女も変人慣れしているのかもしれないな。
「善からぬ輩ッていうと?」
「分かりません。ですが、襤褸(ボロ)をまとって日陰を歩き、聞きなれない異国語を話す者もいるとか。」
「そいつは密輸業者だろう?」
そう云いながら国木田さんが戻ってきた。
太宰さんがどうなったのかは聞かないようにしよう…。
「軍警がいくら取り締まっても船蟲のように涌いてくる。港湾都市の宿業だな。」
「ええ、無法の輩だとという証拠さえあれば、軍警に、掛け合えます。ですから、」
『現場を張って証拠を掴め…って事ですね。』
国木田さんは少し考える様子を見せ、敦くんの方を向いた。
「小僧、お前が行け。」
「へ!?」
「ただ見張るだけだ。それに、密輸業者は無法者だが大抵は逃げ足だけが取り得の無害な連中――初仕事には丁度良い。」
「でっでも。」
いきなり仕事を任せられるんだ。そりゃ腰も引けるだろう。
『谷崎くん、一緒に行って上げたらどうです?』
「あら、兄様が行くならナオミも随いて行きますわぁ。」
えっと云う風に敦くんが谷崎くんたちの方を見る。
樋口さんは、そこまで驚いていないようだ。
ここまで慣れているのも凄いな。
「では、準備をするンでしばらく待っててもらえますか?」
「はい。」
そう云いながら、私達は部屋から出た。
緊張した面持ちで準備をする敦くん。
そんな彼に国木田さんが寄って行った。
そう云えば、太宰さんは何処に消えたのだろう。
「おい小僧。不運かつ不幸なお前の短い人生に些か同情が無いでもない。故に。この街で生き残るコツを一つだけ教えてやる。」
そういって、国木田さんは手帳から写真を取り出した。
「こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。」
ああ、その事か。言っておかなければならないだろう。
「この人は――?」
「マフィアだよ。」
そう云いながらにゅっと太宰さんが現れた。
そこに倒れていたのか…。
「尤も、他に呼びようがないからそう呼んでるだけだけどね。」
『港を縄張りにする凶悪なポート・マフィアの狗。名前は芥川ですね。』
「そうだ。マフィア自体が黒社会の暗部のさらに陰のような危険な連中だが、その男は探偵社でも手に負えん。」
「何故――危険なのですか?」
「そいつが“能力者”だからだ。殺戮に特化した頗(スコブ)る残忍な能力で、軍警でも手に負えん。」
彼に一度遭ったことがあるが、能力をうまく使い逃げることしか出来なかった。
無理に戦いたくなかったのが大きいが。
「俺や薙澄沙でも――奴と戦うのは御免だ。」
そう国木田さんが云い私は頷く。
敦くんの顔が少し恐怖に染まったように見えた。
『大丈夫ですよ。よっぽどなことがなければ遭いません。』
チラリと太宰さんを見るが彼は知らん顔だ。
樋口さんのポケットに入れた盗聴器であろうものは何を示しているのか。
「そう…ですか。」
『樋口さん、待ってるんじゃないですか?初仕事、頑張ってくださいね。』
浮かない顔の敦くんは「はい…。」と云うと谷崎くんに呼ばれお辞儀をして初仕事に向かった。
何も起こらなければいいが。
「俺たちの仕事に戻るぞ。」
『そうですね。』
デスクに戻り、パソコンを立ち上げる。
入社試験の報告書を作らねば。
そう思っていると太宰さんが近づいてきた。
『どうしたんですか?』
「いやー、なんにも。」
『そうですか。』
思い当たる節が無いわけでもない。
きっと、盗聴器の事であろう。
聞こうかと思ったが太宰さんは私の元を離れキャスター付きの大きめの椅子に横たわるようにし何か音楽を聴くためヘッドホンをつけており、大きな声で聞けるような距離でもなかった。
そのうち、国木田さんは掃除機を出して掃除を始めた。
ウィーンという機械音が社内に響く。
「一人では〜心中は〜できない〜二人では〜できる〜すごい〜。」
と、太宰さんがそんな歌を歌い始めたが頭は大丈夫なのだろうか。不安になる。
「オイ邪魔だ。除け。」
掃除機をガシガシと当てるが太宰さんは手をひらひらと振り知らん顔をしている。
「全く、何故こんな奴が探偵社に。我が理想にはこんな……。」
ぐぬぬと悔しそうにしている国木田さん。
遂には太宰さんの付けているヘッドホンを乱暴に外し怒鳴り始めてしまった。
太宰さんは五月蝿そうに耳を塞いでいる。
「おい太宰!仕事は如何した!」
そんな怒鳴り声も気にせず国木田さんが取り上げたヘッドホンをパッと取りまた付け直す太宰さんはニッコリと笑った。
「天の啓示待ち。」
そして、不意に私の方に顔を向けニコッと笑った。
天の啓示とは、一体何なのだろうか。
分からないが、こっちに視線を送り続ける太宰さんに思い切り嫌そうな顔を返しておいた。
仕事も落ち着き、机の上を片付けていると太宰さんが急に動き出した。
どうしたのだろう。
「薙澄沙ちゃん来て!」
『はい!?』
手を引っ張られバランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえ、とりあえずついて行こうと走る。
『何ですか!一体!』
「いいから!」
探偵社の外へ向かい走る。如何したというのか。
「これ。」
そういってヘッドフォンとその先についてる機器を渡される。
走りながらなのでうまく聞けないがヘッドホンの向こうから谷崎くんの声が聞こえてきた。
「『細雪』」
異能を使うような事態。
「敦くん、奥に避難するンだ。こいつはボクが――殺す!」
そう、はっきりと聞こえた。
殺さなければならない状況。
彼の状態からして、ナオミちゃんが危ない状況なのだろう。
そして聞こえる銃声…。
『急ぎましょう!』
「うん。」
何処にいるのかは分からないが仕方ない。きっと、そう奥には行っていない。マフィアの使いそうな小道。そんなのは少ししか思い当たらない。
『太宰さん。別れて探した方がいいのではないでしょうか。』
「いや、そうしない方がいい。嫌な予感がする。」
『大丈夫です。私は、異能者です。昨日みたいなことはしません。』
「…わかった。見つけたらすぐ連絡ね。」
『はい。』
そういって私達は二手に分かれて探すことになった。
3人を早く見つけなければ。
手遅れになる気がする。
見つけた。
髪をあげているがきっと樋口さんだろう。
そして、黒服の男。どれだけ運が悪いんだ…。あいつは…芥川だ。
彼の服の周りを狗の様なものが廻っている。
近くには、倒れているナオミちゃんに谷崎くん。
間に合わなかったか。
電話をかけ、太宰さんに場所を伝える。
すぐ行くから動くなと云われたが無視して動く。
「そして僕(ヤツガレ)約束は守る。」
やばい。
そう思って隠れていた場所から出る。
が、
「ぎっゃぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁあぁ―――!」
断末魔の様に叫ぶ敦くんの声。
間に合わなかった。
彼の右脚を喰いちぎった。
『創壊再![創]!!』
手を地面に押し付け地面を岩の棘をつくる。
ドガガガガという音を立てながら、芥川に向かって一直線に行った。
が、矢張り狗に喰われてしまう。
『くっそ。敦くん!!』
「貴様も探偵社…、暫くぶりに見たな。」
狗がまた近づく、異能を使い足元に塔を作ることでなんとか避けたが、その塔の土台すら喰う狗。
どれだけ悪食なのか。
バランスを崩した塔から飛び降り芥川に攻撃を仕掛ける。だが、それは樋口さんに阻まれ叶わなかった。
いつの間にか、目の前には狗が迫っておりやばいと思った時には遅かった。
胴の部分を噛まれ、そのまま壁に叩きつけられた。
昨日治したはずの場所もやられかなり痛い。
『――ッ創壊再…[再]…。』
そう云い傷口を塞ぐ。
これで、出血多量で死ぬ事は無い。
「ほう…傷口を治せるのか…。」
『治せるよ。』
傷口が無いとはいえ矢張り全身痛い。立ち上がれるような力もない。
身体に鞭を打ち立ち上がる。
覚束無い足元。
矢張り、挑むべきではなかったと思う。
瞬間、脚に走る痛み。
胴、そして手にも痛みが走る。
気付かなかった。
樋口さんが銃を構えていたことなど。
気付かなかった。
立ち上がることすら厳しすぎて銃声が響いたことを。
痛みに耐えかねてまた倒れる。
『創…壊再…![再]…!』
どうにか回復はするが、立てそうにない。
意識はあるのに、歯痒い…。
それに対し、対応する谷崎くん、ナオミちゃん、太宰さん、国木田さん、敦くん、そして私。
とても、居辛そうだ…。
「……あの。」
そう、樋口さんが口を開く。
書類に目を通していた谷崎くんが口を開いた。
「えーと、調査のご依頼だとか。それで……。」
「美しい。」
目にも止まらぬ速さで樋口さんの手を握る太宰さん。
「睡蓮の花のごとき果敢なくそして可憐なお嬢さんだ。」
そう云って彼女を見つめる太宰さん。
私にはそんな事云ったことなかった筈だ。
胸になにか違和感を覚えるが、気のせいだろう。
でも、太宰さんがここまでするとは珍しい気が。
そう思い、もう片方の手の方に視線を移すと太宰さんの手は彼女の上着のポケットの近くにあり、何かを入れたように見えた。
ああ、なんとなく分かった。
「へっ!?」
そして、樋口さんが驚いた様に太宰さんを見る。
そして、キラキラモードの太宰さんはこう続けた。
「どうか私と、“心中”していただけないだろ――」
スパァァンッ!
云いかけた太宰さんを国木田さんは持っていたモノで殴った。
「なななな」
困惑している彼女。
まぁ、いきなりあんな事言われたら誰だってこうなるだろうな…。
ならないのは、慣れている探偵社の面々かうずまきの給仕さんぐらいだろう。
「あ、済みません。忘れてください。」
谷崎くんがそのように告げた。
太宰さんは国木田さんにズルズルと引き摺られていった。
その際、「心中ー、ちょっとだけでいいからー。」と言っていたが、ちょっとだけする心中とはどのようなものなのか。
樋口さんはチラリと太宰さんを見て言葉を再度出した。
「依頼と云うのはですね。我が社のビルヂングの裏手に…最近善からぬ輩が屯(タムロ)している様なんです。」
頂きますといい、カップに手を伸ばす彼女。
案外普通に再開したので彼女も変人慣れしているのかもしれないな。
「善からぬ輩ッていうと?」
「分かりません。ですが、襤褸(ボロ)をまとって日陰を歩き、聞きなれない異国語を話す者もいるとか。」
「そいつは密輸業者だろう?」
そう云いながら国木田さんが戻ってきた。
太宰さんがどうなったのかは聞かないようにしよう…。
「軍警がいくら取り締まっても船蟲のように涌いてくる。港湾都市の宿業だな。」
「ええ、無法の輩だとという証拠さえあれば、軍警に、掛け合えます。ですから、」
『現場を張って証拠を掴め…って事ですね。』
国木田さんは少し考える様子を見せ、敦くんの方を向いた。
「小僧、お前が行け。」
「へ!?」
「ただ見張るだけだ。それに、密輸業者は無法者だが大抵は逃げ足だけが取り得の無害な連中――初仕事には丁度良い。」
「でっでも。」
いきなり仕事を任せられるんだ。そりゃ腰も引けるだろう。
『谷崎くん、一緒に行って上げたらどうです?』
「あら、兄様が行くならナオミも随いて行きますわぁ。」
えっと云う風に敦くんが谷崎くんたちの方を見る。
樋口さんは、そこまで驚いていないようだ。
ここまで慣れているのも凄いな。
「では、準備をするンでしばらく待っててもらえますか?」
「はい。」
そう云いながら、私達は部屋から出た。
緊張した面持ちで準備をする敦くん。
そんな彼に国木田さんが寄って行った。
そう云えば、太宰さんは何処に消えたのだろう。
「おい小僧。不運かつ不幸なお前の短い人生に些か同情が無いでもない。故に。この街で生き残るコツを一つだけ教えてやる。」
そういって、国木田さんは手帳から写真を取り出した。
「こいつには遭うな。遭ったら逃げろ。」
ああ、その事か。言っておかなければならないだろう。
「この人は――?」
「マフィアだよ。」
そう云いながらにゅっと太宰さんが現れた。
そこに倒れていたのか…。
「尤も、他に呼びようがないからそう呼んでるだけだけどね。」
『港を縄張りにする凶悪なポート・マフィアの狗。名前は芥川ですね。』
「そうだ。マフィア自体が黒社会の暗部のさらに陰のような危険な連中だが、その男は探偵社でも手に負えん。」
「何故――危険なのですか?」
「そいつが“能力者”だからだ。殺戮に特化した頗(スコブ)る残忍な能力で、軍警でも手に負えん。」
彼に一度遭ったことがあるが、能力をうまく使い逃げることしか出来なかった。
無理に戦いたくなかったのが大きいが。
「俺や薙澄沙でも――奴と戦うのは御免だ。」
そう国木田さんが云い私は頷く。
敦くんの顔が少し恐怖に染まったように見えた。
『大丈夫ですよ。よっぽどなことがなければ遭いません。』
チラリと太宰さんを見るが彼は知らん顔だ。
樋口さんのポケットに入れた盗聴器であろうものは何を示しているのか。
「そう…ですか。」
『樋口さん、待ってるんじゃないですか?初仕事、頑張ってくださいね。』
浮かない顔の敦くんは「はい…。」と云うと谷崎くんに呼ばれお辞儀をして初仕事に向かった。
何も起こらなければいいが。
「俺たちの仕事に戻るぞ。」
『そうですね。』
デスクに戻り、パソコンを立ち上げる。
入社試験の報告書を作らねば。
そう思っていると太宰さんが近づいてきた。
『どうしたんですか?』
「いやー、なんにも。」
『そうですか。』
思い当たる節が無いわけでもない。
きっと、盗聴器の事であろう。
聞こうかと思ったが太宰さんは私の元を離れキャスター付きの大きめの椅子に横たわるようにし何か音楽を聴くためヘッドホンをつけており、大きな声で聞けるような距離でもなかった。
そのうち、国木田さんは掃除機を出して掃除を始めた。
ウィーンという機械音が社内に響く。
「一人では〜心中は〜できない〜二人では〜できる〜すごい〜。」
と、太宰さんがそんな歌を歌い始めたが頭は大丈夫なのだろうか。不安になる。
「オイ邪魔だ。除け。」
掃除機をガシガシと当てるが太宰さんは手をひらひらと振り知らん顔をしている。
「全く、何故こんな奴が探偵社に。我が理想にはこんな……。」
ぐぬぬと悔しそうにしている国木田さん。
遂には太宰さんの付けているヘッドホンを乱暴に外し怒鳴り始めてしまった。
太宰さんは五月蝿そうに耳を塞いでいる。
「おい太宰!仕事は如何した!」
そんな怒鳴り声も気にせず国木田さんが取り上げたヘッドホンをパッと取りまた付け直す太宰さんはニッコリと笑った。
「天の啓示待ち。」
そして、不意に私の方に顔を向けニコッと笑った。
天の啓示とは、一体何なのだろうか。
分からないが、こっちに視線を送り続ける太宰さんに思い切り嫌そうな顔を返しておいた。
仕事も落ち着き、机の上を片付けていると太宰さんが急に動き出した。
どうしたのだろう。
「薙澄沙ちゃん来て!」
『はい!?』
手を引っ張られバランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえ、とりあえずついて行こうと走る。
『何ですか!一体!』
「いいから!」
探偵社の外へ向かい走る。如何したというのか。
「これ。」
そういってヘッドフォンとその先についてる機器を渡される。
走りながらなのでうまく聞けないがヘッドホンの向こうから谷崎くんの声が聞こえてきた。
「『細雪』」
異能を使うような事態。
「敦くん、奥に避難するンだ。こいつはボクが――殺す!」
そう、はっきりと聞こえた。
殺さなければならない状況。
彼の状態からして、ナオミちゃんが危ない状況なのだろう。
そして聞こえる銃声…。
『急ぎましょう!』
「うん。」
何処にいるのかは分からないが仕方ない。きっと、そう奥には行っていない。マフィアの使いそうな小道。そんなのは少ししか思い当たらない。
『太宰さん。別れて探した方がいいのではないでしょうか。』
「いや、そうしない方がいい。嫌な予感がする。」
『大丈夫です。私は、異能者です。昨日みたいなことはしません。』
「…わかった。見つけたらすぐ連絡ね。」
『はい。』
そういって私達は二手に分かれて探すことになった。
3人を早く見つけなければ。
手遅れになる気がする。
見つけた。
髪をあげているがきっと樋口さんだろう。
そして、黒服の男。どれだけ運が悪いんだ…。あいつは…芥川だ。
彼の服の周りを狗の様なものが廻っている。
近くには、倒れているナオミちゃんに谷崎くん。
間に合わなかったか。
電話をかけ、太宰さんに場所を伝える。
すぐ行くから動くなと云われたが無視して動く。
「そして僕(ヤツガレ)約束は守る。」
やばい。
そう思って隠れていた場所から出る。
が、
「ぎっゃぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁあぁ―――!」
断末魔の様に叫ぶ敦くんの声。
間に合わなかった。
彼の右脚を喰いちぎった。
『創壊再![創]!!』
手を地面に押し付け地面を岩の棘をつくる。
ドガガガガという音を立てながら、芥川に向かって一直線に行った。
が、矢張り狗に喰われてしまう。
『くっそ。敦くん!!』
「貴様も探偵社…、暫くぶりに見たな。」
狗がまた近づく、異能を使い足元に塔を作ることでなんとか避けたが、その塔の土台すら喰う狗。
どれだけ悪食なのか。
バランスを崩した塔から飛び降り芥川に攻撃を仕掛ける。だが、それは樋口さんに阻まれ叶わなかった。
いつの間にか、目の前には狗が迫っておりやばいと思った時には遅かった。
胴の部分を噛まれ、そのまま壁に叩きつけられた。
昨日治したはずの場所もやられかなり痛い。
『――ッ創壊再…[再]…。』
そう云い傷口を塞ぐ。
これで、出血多量で死ぬ事は無い。
「ほう…傷口を治せるのか…。」
『治せるよ。』
傷口が無いとはいえ矢張り全身痛い。立ち上がれるような力もない。
身体に鞭を打ち立ち上がる。
覚束無い足元。
矢張り、挑むべきではなかったと思う。
瞬間、脚に走る痛み。
胴、そして手にも痛みが走る。
気付かなかった。
樋口さんが銃を構えていたことなど。
気付かなかった。
立ち上がることすら厳しすぎて銃声が響いたことを。
痛みに耐えかねてまた倒れる。
『創…壊再…![再]…!』
どうにか回復はするが、立てそうにない。
意識はあるのに、歯痒い…。
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