忌み子と自殺趣味
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調査員六人全員が籤を持っている。
この籤の一番小さい人が爆弾魔をやる事になるのだろう。
「では、私から開くよ。」
そう告げて太宰さんが自分の籤を開いて見せた。
その数字は、
【3】と【4】
「ありゃ。」
「日頃の悪行が祟ったな。それでは、俺の番だな。」
そういって、国木田さんが籤を開いて見せた。
彼の数字は【7】と【8】
「太宰に勝った。俺は今回はもうそれだけで満足だ。」
「乱心した国木田君が爆弾抱えて泣きわめくところ、見たかったのになあ」
『太宰さん…。縁起のないことを云わないでくださいよ。』
「はーい。」
そして、それぞれの籤を開いていく。
与謝野女医【27】【28】
賢治くん【33】【34】
私は何だろう。
自分の籤を開けると、そこには【9】【10】と示されていた。
まぁ、変な役回りはこないだろう…。
今まで開けた中では賢治くんが一番強かったことになる。
まあ、彼に勝てる人などめったにいないと思うが…。
そんなことを考えていたら、太宰さんが口を開いた。
「籤を開く前にひとつ聞いてくれたまえ谷崎君。」
「何でしょう?」
「この調子では私が最下位に間違いないだろう。これも日頃の放埒(ホウラツ)のツケかもしれないね。だからここは腹を括って、人生に絶望して爆弾を抱え皆と一緒に楽しく自殺する男の筋書きを考えることにするよ。それで――一つ頼みがあるのだが。」
「頼み?」
「爆弾魔と云えば立てこもり。立てこもりと云えば人質だ。できるだけ、可憐で抵抗力がなく、外見からして『おお人質っぽい』と思えるような人材が欲しい。そこで――君の妹君を人質役に抜擢したい。お願いできないだろうか。」
谷崎くんは、傍らに控えているナオミちゃんを見た。
彼女は、驚くでも当惑でもなく、頬に手を当てて一言、「私でよろしければ。」と、云った。
普段のナオミちゃんであればもっと違うことを言っていたと思うのだが…。
……、これは。
ちらりと太宰さんをみると彼はうっすらと笑っていた。
ああ、そういう事か。
『谷崎くん。籤開いてみて。』
「真逆!谷崎!」
彼が開いた籤には
【1】【2】
この二つの数字が記されていた。
「な――。」
「おやおや。これは僥倖。」
太宰さんはにっこりと微笑み続けた。
「籤の神様とは悪戯なことをされるものだ。真逆私より小さい数字をここで引かせてくれるとは――谷崎君、ついてないねえ。」
ニヤニヤと笑い続ける太宰さんを見て信じられないというような表情をする谷崎くん。
まあ、めったに当たることはないであろう数字を引いたのだから仕方ない。
太宰さんは、してやったりという顔をしていた。
「こンな事が――。」
彼はまだ信じられないという表情をしていた。
そして、やっと気づいたようにナオミちゃんを見た。
彼女は、潤んだ瞳で彼を見つめ。
「だってぇ……、人質になって……兄様に拘束されたり脅されたり、したかったんですもの。」
流石はナオミちゃん。
彼女はブレなかったようだ。
こうして、入社試験のの内容も決まり、探偵社の夜は更けていく。
「なンでこんな損な役回りばっか…。」
『頑張ってください…。』
そんな会話をしながら事務所のフロアに戻ると乱歩さんの机には駄菓子の袋と型抜きと肉まんの敷紙、それに、“爆弾魔として立てこもるならどこが適切か”が書かれた探偵事務フロアの落書きが書いてあった。
乱歩さんなりの激励なのだと思う。
谷崎くんは、何とも情けない表情でそれを眺めていた。
だが、流石は乱歩さん。
彼がこれを書いた時はきっと籤引きはまだされていなかったはずだ。
明日の主張も入社試験が起こることを予測し、責任回避のために狙ってねじ込んだのだと思う。
『超推理』は侮れない。
ただ、本当に恐ろしいのは乱歩さんは異能者ではない。
そういう事実だ。
彼は、自分を異能者だと思っているだけなのだ。
社長から聞いた時にとても驚いた記憶がある。
ただ、その誤解はどこから生まれたのか。
それを知るものは私を含めほとんどの調査員が知らないだろう。
『それでは。私はこれで。』
「遅くまでお疲れ様。」
『はい。明日、頑張りましょうね。』
「うん。」
『さようなら。』
「さよなら。」
まとめてあった荷物を持ち、私は探偵社をあとにした。
自分の歩く音が響く夜道。
頑張って隠しているのだろうが、隠れていない気配と足音が私の後ろを付けてくる。
人気のないところに入り後ろについてきてる人に声をかける。
『もう、出てきたらどうです?』
「…。」
彼女は、昼間に太宰さんと会った女性だった。
付けてきていることは分かっていたが、真逆包丁を持っているなんてな。
『太宰さんには、なにかしたのですか?』
「……さい。」
『え?』
「五月蝿いわよ!なに!?私と治さんの間に割って入って!この泥棒猫!」
泥棒猫なんて初めて言われた。
直に言われるとなんとも言えない気分になるのだなと思った。今度から覚えておこう。
「でもね、きめたの。貴女を殺せばあの人は私を見てくれるって。」
『…。』
「だからね、あの人には私の愛をあげたの。でも、貴女はいらないから。」
『貴女の恋愛観。私は狂ってると思うのですが。』
「狂ってなんかない!」
ヒステリックに叫ぶ彼女。
ああ、こんなに病んで…。こんなに苦しんで…。辛かっただろうなと思う。
だけど。
「貴女を殺せば私たちは幸せになれるの!だから!お願い!!死んで!」
彼女は、間違っている。
この籤の一番小さい人が爆弾魔をやる事になるのだろう。
「では、私から開くよ。」
そう告げて太宰さんが自分の籤を開いて見せた。
その数字は、
【3】と【4】
「ありゃ。」
「日頃の悪行が祟ったな。それでは、俺の番だな。」
そういって、国木田さんが籤を開いて見せた。
彼の数字は【7】と【8】
「太宰に勝った。俺は今回はもうそれだけで満足だ。」
「乱心した国木田君が爆弾抱えて泣きわめくところ、見たかったのになあ」
『太宰さん…。縁起のないことを云わないでくださいよ。』
「はーい。」
そして、それぞれの籤を開いていく。
与謝野女医【27】【28】
賢治くん【33】【34】
私は何だろう。
自分の籤を開けると、そこには【9】【10】と示されていた。
まぁ、変な役回りはこないだろう…。
今まで開けた中では賢治くんが一番強かったことになる。
まあ、彼に勝てる人などめったにいないと思うが…。
そんなことを考えていたら、太宰さんが口を開いた。
「籤を開く前にひとつ聞いてくれたまえ谷崎君。」
「何でしょう?」
「この調子では私が最下位に間違いないだろう。これも日頃の放埒(ホウラツ)のツケかもしれないね。だからここは腹を括って、人生に絶望して爆弾を抱え皆と一緒に楽しく自殺する男の筋書きを考えることにするよ。それで――一つ頼みがあるのだが。」
「頼み?」
「爆弾魔と云えば立てこもり。立てこもりと云えば人質だ。できるだけ、可憐で抵抗力がなく、外見からして『おお人質っぽい』と思えるような人材が欲しい。そこで――君の妹君を人質役に抜擢したい。お願いできないだろうか。」
谷崎くんは、傍らに控えているナオミちゃんを見た。
彼女は、驚くでも当惑でもなく、頬に手を当てて一言、「私でよろしければ。」と、云った。
普段のナオミちゃんであればもっと違うことを言っていたと思うのだが…。
……、これは。
ちらりと太宰さんをみると彼はうっすらと笑っていた。
ああ、そういう事か。
『谷崎くん。籤開いてみて。』
「真逆!谷崎!」
彼が開いた籤には
【1】【2】
この二つの数字が記されていた。
「な――。」
「おやおや。これは僥倖。」
太宰さんはにっこりと微笑み続けた。
「籤の神様とは悪戯なことをされるものだ。真逆私より小さい数字をここで引かせてくれるとは――谷崎君、ついてないねえ。」
ニヤニヤと笑い続ける太宰さんを見て信じられないというような表情をする谷崎くん。
まあ、めったに当たることはないであろう数字を引いたのだから仕方ない。
太宰さんは、してやったりという顔をしていた。
「こンな事が――。」
彼はまだ信じられないという表情をしていた。
そして、やっと気づいたようにナオミちゃんを見た。
彼女は、潤んだ瞳で彼を見つめ。
「だってぇ……、人質になって……兄様に拘束されたり脅されたり、したかったんですもの。」
流石はナオミちゃん。
彼女はブレなかったようだ。
こうして、入社試験のの内容も決まり、探偵社の夜は更けていく。
「なンでこんな損な役回りばっか…。」
『頑張ってください…。』
そんな会話をしながら事務所のフロアに戻ると乱歩さんの机には駄菓子の袋と型抜きと肉まんの敷紙、それに、“爆弾魔として立てこもるならどこが適切か”が書かれた探偵事務フロアの落書きが書いてあった。
乱歩さんなりの激励なのだと思う。
谷崎くんは、何とも情けない表情でそれを眺めていた。
だが、流石は乱歩さん。
彼がこれを書いた時はきっと籤引きはまだされていなかったはずだ。
明日の主張も入社試験が起こることを予測し、責任回避のために狙ってねじ込んだのだと思う。
『超推理』は侮れない。
ただ、本当に恐ろしいのは乱歩さんは異能者ではない。
そういう事実だ。
彼は、自分を異能者だと思っているだけなのだ。
社長から聞いた時にとても驚いた記憶がある。
ただ、その誤解はどこから生まれたのか。
それを知るものは私を含めほとんどの調査員が知らないだろう。
『それでは。私はこれで。』
「遅くまでお疲れ様。」
『はい。明日、頑張りましょうね。』
「うん。」
『さようなら。』
「さよなら。」
まとめてあった荷物を持ち、私は探偵社をあとにした。
自分の歩く音が響く夜道。
頑張って隠しているのだろうが、隠れていない気配と足音が私の後ろを付けてくる。
人気のないところに入り後ろについてきてる人に声をかける。
『もう、出てきたらどうです?』
「…。」
彼女は、昼間に太宰さんと会った女性だった。
付けてきていることは分かっていたが、真逆包丁を持っているなんてな。
『太宰さんには、なにかしたのですか?』
「……さい。」
『え?』
「五月蝿いわよ!なに!?私と治さんの間に割って入って!この泥棒猫!」
泥棒猫なんて初めて言われた。
直に言われるとなんとも言えない気分になるのだなと思った。今度から覚えておこう。
「でもね、きめたの。貴女を殺せばあの人は私を見てくれるって。」
『…。』
「だからね、あの人には私の愛をあげたの。でも、貴女はいらないから。」
『貴女の恋愛観。私は狂ってると思うのですが。』
「狂ってなんかない!」
ヒステリックに叫ぶ彼女。
ああ、こんなに病んで…。こんなに苦しんで…。辛かっただろうなと思う。
だけど。
「貴女を殺せば私たちは幸せになれるの!だから!お願い!!死んで!」
彼女は、間違っている。