忌み子と自殺趣味
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「故に、だ。今回の太宰は、必ずや自分にだけは面倒が掛からぬよう策をめぐらせているはずなのだ。頭だけは回る奴だからな。具体的にはお前は今回も何もせずに入社試験の仕事を人に押し付ける心算だろう!」
「うむむ、善い感じに被害者意識が根付いてきたねえ国木田君。」
「誰のせいだ!」
太宰さんのせいだろう…。
太宰さんはうんうん頷いてから、でもねえ、と云った。
「国木田君の心配も判るし、実際出来る限りにおいて面倒と手間をひらひら回避してきた私だけれど、今回の状況では責任を人に押しつけるのは難しいよ。だって会議だもの。皆から出てくる意見が、必ずしも私に都合のいい提案とは限らない。」
「そうか?俺は逆だと思うがな。」
国木田さんは、腕を組んで云った。
「現に会議は、【狂言騒動】という案が妥当だと固まりつつある。これは要するにわ狂言を実行する一人が兎に角貧乏籤を引くだけで済む案だ。そしてこの会議の時間と場所、面子の選定はそもそもお前が行った。お前はこの面子からして【狂言騒動】が妥当な案に落ち着くと最初から予測していたのではないかんそして最終的な案の決定を待って、自分ではない誰か一人に全ての作業をおっかぶせる算段を立てているのではないか?」
なかなかすごい推理だ。
太宰さんなら、やるだろう。
というか、できるだろう。
太宰さんだもの。
「今日はやたら国木田君に褒められるなぁ。」
太宰さんは、不敵に微笑む。
『国木田さんは、多分褒めてないと思いますよ?』
「えー。そうかなぁ…。」
しゅんとしてしまったけれど、ほっておくとしよう。
すぐに立ち直るのはわかっている。
「まぁ、褒めてる褒めてないはいいとして。国木田君は最初からそれを警戒していた訳だね。それじゃあ国木田君の案を訊こうか。」
そう、太宰さんが国木田さんに告げるとこう口を開いた。
「太宰が貧乏籤を引け――とは流石に云わん。だがせめて、公平な選定を要求する。」
その通りだろうな。
国木田さんが云うこともわかる。
「誰かが大変な役を負い、誰が楽をしようが、一切の不正なく誰もが納得できる形の役割選定を。」
「成る程。説得力ある言葉だね。」
太宰さんが会議室の皆を見回しふと云った。
「谷崎君、どう思う?」
「え、ボクですか?ええと、えっとですね。」
いきなり振られた谷崎くんは狼狽している。
ちらりと国木田さんをみてこういった。
「い……善いンじゃないでしょうか?新人の試験が楽でないのは今に始まった話ではないですし、今更役割の押し付け合いを始めても仕方ありませんし。」
まあ、それもそうだろう。
谷崎くんの時も大変だった記憶がある。
彼は黒歴史として記憶に封をしてあるそうなので深く言うことはやめておこう。
「じゃあ、こうしよう。」
太宰さんは、閃いたとでも云うようにポンと手をひとつ叩き云った。
「谷崎くんに、役割の選び方を一任しようじゃないか。阿弥陀籤か、花札か、まあ兎に角人選に偏りが出ない方法で。それで面倒を負う人を決めるのだよ。国木田君、それなら文句ないだろう?」
国木田さんが谷崎くんを睨む。
公平に作れよという事なのだろうか。
今日はこの二人のアイコンタクトが多い気がする。
気のせいだろうか…。
「では……。」
谷崎くんは考え込むようにそう云った。
「では、籤(クジ)なんてどうでしょう。数字の入った籤を引いて数字の小さい人から順に、面倒な役を割り振られるというのは。」
ふむ、と云う太宰さんを横目に国木田さんは眉を寄せて、不十分だ、といった。
「この男の手癖の悪さを知らんか?こいつは恐ろしく指先が器用で、針金ひとつで銀行の金庫を破ってみせる。籤の偽装・すり替えなど朝飯前だろう。」
「うふふ、今日は国木田君にいっぱい褒められて嬉しい。」
『嬉しいような内容ではないですよね。内容では。』
「笑うな気色悪い。」
国木田さんとのダブルアタックで太宰さんはズーンと暗い雰囲気を出した。
褒められていいような内容ではなかったはずだ。
「そ…それではこうしましょう。」
云いにくそうに谷崎くんが口を開いた。
「この古新聞を使いましょう。二ヶ月前の古新聞ですから、これなら似たものを用意したり、書き換えたりの偽装が難しいンじゃないでしょうか。」
「成る程ねェ。」
与謝野女医が古新聞を引き寄せ云った。
「まァそれなら、どんな奇術師でもイカサマはできんだろうね。でも、具体的にはどうやるンだい?」
谷崎くんは、少し考えこう答えた。
「日付と頁(ペ-ジ)のところを一緒に切って畳みます。ご覧の通り、新聞の頁には同じ数字はふたつとありません。この新聞の場合は――1から40までですね。二ヶ月前の新聞なんてそうそう落ちてませんから、日付ごと籤にすれば、古新聞の回収業者を呼びつけでもしない限り同じ籤は作れません。」
太宰さんはにこやかに頷いた。
「急拵えにしてはちゃんとした不正解対策じゃあないか。どうだい国木田君、これで絶対に大丈夫でしょう?」
「お前に限って云えば、絶対に大丈夫などという文句ほど不安になる言葉はない。だがまあ、このあたりが妥協案とするしかないだろうな。」
確かに、これ以上の案はないだろう。
今の現状においては。
「じゃあボクが籤を作りましょう。」
そういった谷崎くんに籤作りを任せする事のない他の皆は、【狂言騒動】の具体的な内容について意見を出し合うことになった。
「うむむ、善い感じに被害者意識が根付いてきたねえ国木田君。」
「誰のせいだ!」
太宰さんのせいだろう…。
太宰さんはうんうん頷いてから、でもねえ、と云った。
「国木田君の心配も判るし、実際出来る限りにおいて面倒と手間をひらひら回避してきた私だけれど、今回の状況では責任を人に押しつけるのは難しいよ。だって会議だもの。皆から出てくる意見が、必ずしも私に都合のいい提案とは限らない。」
「そうか?俺は逆だと思うがな。」
国木田さんは、腕を組んで云った。
「現に会議は、【狂言騒動】という案が妥当だと固まりつつある。これは要するにわ狂言を実行する一人が兎に角貧乏籤を引くだけで済む案だ。そしてこの会議の時間と場所、面子の選定はそもそもお前が行った。お前はこの面子からして【狂言騒動】が妥当な案に落ち着くと最初から予測していたのではないかんそして最終的な案の決定を待って、自分ではない誰か一人に全ての作業をおっかぶせる算段を立てているのではないか?」
なかなかすごい推理だ。
太宰さんなら、やるだろう。
というか、できるだろう。
太宰さんだもの。
「今日はやたら国木田君に褒められるなぁ。」
太宰さんは、不敵に微笑む。
『国木田さんは、多分褒めてないと思いますよ?』
「えー。そうかなぁ…。」
しゅんとしてしまったけれど、ほっておくとしよう。
すぐに立ち直るのはわかっている。
「まぁ、褒めてる褒めてないはいいとして。国木田君は最初からそれを警戒していた訳だね。それじゃあ国木田君の案を訊こうか。」
そう、太宰さんが国木田さんに告げるとこう口を開いた。
「太宰が貧乏籤を引け――とは流石に云わん。だがせめて、公平な選定を要求する。」
その通りだろうな。
国木田さんが云うこともわかる。
「誰かが大変な役を負い、誰が楽をしようが、一切の不正なく誰もが納得できる形の役割選定を。」
「成る程。説得力ある言葉だね。」
太宰さんが会議室の皆を見回しふと云った。
「谷崎君、どう思う?」
「え、ボクですか?ええと、えっとですね。」
いきなり振られた谷崎くんは狼狽している。
ちらりと国木田さんをみてこういった。
「い……善いンじゃないでしょうか?新人の試験が楽でないのは今に始まった話ではないですし、今更役割の押し付け合いを始めても仕方ありませんし。」
まあ、それもそうだろう。
谷崎くんの時も大変だった記憶がある。
彼は黒歴史として記憶に封をしてあるそうなので深く言うことはやめておこう。
「じゃあ、こうしよう。」
太宰さんは、閃いたとでも云うようにポンと手をひとつ叩き云った。
「谷崎くんに、役割の選び方を一任しようじゃないか。阿弥陀籤か、花札か、まあ兎に角人選に偏りが出ない方法で。それで面倒を負う人を決めるのだよ。国木田君、それなら文句ないだろう?」
国木田さんが谷崎くんを睨む。
公平に作れよという事なのだろうか。
今日はこの二人のアイコンタクトが多い気がする。
気のせいだろうか…。
「では……。」
谷崎くんは考え込むようにそう云った。
「では、籤(クジ)なんてどうでしょう。数字の入った籤を引いて数字の小さい人から順に、面倒な役を割り振られるというのは。」
ふむ、と云う太宰さんを横目に国木田さんは眉を寄せて、不十分だ、といった。
「この男の手癖の悪さを知らんか?こいつは恐ろしく指先が器用で、針金ひとつで銀行の金庫を破ってみせる。籤の偽装・すり替えなど朝飯前だろう。」
「うふふ、今日は国木田君にいっぱい褒められて嬉しい。」
『嬉しいような内容ではないですよね。内容では。』
「笑うな気色悪い。」
国木田さんとのダブルアタックで太宰さんはズーンと暗い雰囲気を出した。
褒められていいような内容ではなかったはずだ。
「そ…それではこうしましょう。」
云いにくそうに谷崎くんが口を開いた。
「この古新聞を使いましょう。二ヶ月前の古新聞ですから、これなら似たものを用意したり、書き換えたりの偽装が難しいンじゃないでしょうか。」
「成る程ねェ。」
与謝野女医が古新聞を引き寄せ云った。
「まァそれなら、どんな奇術師でもイカサマはできんだろうね。でも、具体的にはどうやるンだい?」
谷崎くんは、少し考えこう答えた。
「日付と頁(ペ-ジ)のところを一緒に切って畳みます。ご覧の通り、新聞の頁には同じ数字はふたつとありません。この新聞の場合は――1から40までですね。二ヶ月前の新聞なんてそうそう落ちてませんから、日付ごと籤にすれば、古新聞の回収業者を呼びつけでもしない限り同じ籤は作れません。」
太宰さんはにこやかに頷いた。
「急拵えにしてはちゃんとした不正解対策じゃあないか。どうだい国木田君、これで絶対に大丈夫でしょう?」
「お前に限って云えば、絶対に大丈夫などという文句ほど不安になる言葉はない。だがまあ、このあたりが妥協案とするしかないだろうな。」
確かに、これ以上の案はないだろう。
今の現状においては。
「じゃあボクが籤を作りましょう。」
そういった谷崎くんに籤作りを任せする事のない他の皆は、【狂言騒動】の具体的な内容について意見を出し合うことになった。