忌み子と自殺趣味

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皆がポカンとして叫ぶ迄、そんなに大差はなかった。

その為、周囲にはかなりの絶叫が響いただろう。


「どういう事だ!?」

「だから、どうもこうも。うちの、社員にするんだよ。」

『一応、区の指定災害猛獣ですよね!?彼!』

「うん、そうだね。」

「そんな奴をうちに置いておいていいのか!?」

『普通、常識的に考えてもっと違う対策を云いますよね!?』

薙澄沙、コイツに常識が通じると思ってるのかい?」

『そうでした!通じませんでしたね!』

「え、ちょっと、薙澄沙ちゃんひどくない?」

『通常運転です。』

「ククッさすが太宰。面白い事考えるねェ。」

『面白くないですよね!乱歩さん!大変なことですよ!!』

「えー、良いんじゃない?ねぇ。」

「はい!僕は賛成ですよ!」

『賢治くんまで…。』


さすが、変人の集まりとも云われる『武装探偵社』。考え方がぶっ飛んでる。

私もここで働いて長いけど、このノリにはなかなか慣れないものがある。
常識に関して、頼りになるのは国木田さんぐらいなのかもしれない。
ただ、彼は天然な部分もあるが…。


「…ン?ああ、そうだった。薙澄沙、アンタ。今日は金曜だよ?大丈夫なのかい?」

『え、ああ。はい、事前にマスターには連絡を入れてあります。今日は遅れるって。』

「そう。それなら良かった。」

「あれ、薙澄沙ちゃん何か用事があるの?」

「まだ、お前は知らなかったか。」

『来られちゃ困りますからね。まだ云ってなかったんです。』

「え、何それ。私だけ仲間はずれ?」

『まぁ、そういう所です。』

「酷い!何時もだけど!」

『まぁ、此処まで隠し通したんで満足です。流石に、云いますよ。』

「?」

『私、実は。毎週金曜にバーで歌わせてもらってるんです。』


おや、太宰さんのポカンとした顔。
珍しい…。

携帯を取り出し写真を収める。
珍しいものが撮れた。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


本日2度目の絶叫は太宰さんだけの声だったが、これもまた、よく響いたことだろう。


「ああ、今日は金曜だったか。」

『はい。』

「酒を奢ってもらう場所が決まったね。」


ああ、皆バーに来るのか。
それなら、気合いを入れて歌わなきゃ。


薙澄沙、送っていこう。荷物は、社に有るのか?」

『あ、お願いします。荷物は、向こうのロッカーに入れてあるので、このまま向かってもらえたら大丈夫です。』

「あぁ、それなら直接行くか。」

薙澄沙の歌、久々に聞くなぁ。楽しみ!」

『確かに、乱歩さんの前では久しぶりに歌いますね。頑張ります。』


暫く気にしていなかったが、太宰さんの方に目を移すとあからさまに落ちこんでいる。
そりゃもう、ズーンっていう音がつくぐらいには。


『太宰さん、行かないんですか?』

「行くよ。行くけどさぁ…。」

『…なにか1曲、リクエスト聞きますから。ピアノの方が弾けないようでしたら、アカペラになりますけど…。』

「! 本当?」

『えぇ、まぁ。私が知っていればの話ですけど。』

「うふふ、それなら歌って貰いたい曲があるんだよね。」

『分かりましたから、早く行かないと置いていかれますよ?』

「はーい。」


そんな話をしていると、国木田さんが車をこちらまで回してきてくれたようだ。
すっと、後部座席に乗り込むと、隣に乱歩さんがやってきた。
助手席には太宰さんが乗り込み、私たちの後ろの列には賢治くんと与謝野女医が乗っていた。
そして、もう1人敦くんが国木田さんによって運び込まれた。

車を発進させて、バーの方に向かい始めた。


『社の車を使ったんですね。』

「まぁ、後の事を考えるとな。」

「そういえばさ、この少年連れてきちゃったけど。誰の家にしばらく置いとくの?」

「…それは、太宰だろう。」

「えー、私?」

『まぁ、社員にするって言い出したのは太宰さんですからね。』

「えー。」

「だから、俺は反対だ。犬猫を拾うかのように軽く言いおって!」


彼は起きる気配がない。あまり、異能を使うことに慣れていなかったのだろう。


「…というか、社長に会わせるならこの格好はまずいですよ。」

『それもそうですよね…。』

「面接にスーツは基本だしねェ。」

「へ?住居提供の他に、スーツ迄私が買うの?やだよ。お金ないよ。」

「云うと思ったよ。」


お金が無いのに、これからバーに行くのは大丈夫なのだろうか…。

「はい、はーい!ここで、天才の僕から革命的発案(ナイスアイディア)!!」


隣で乱歩さんが手をびしっと上げた。
革命的発案…どんな発案なのだろう。


「皆で分担して、ばらばらに衣類を買ってきて着せる。というのは?」

「なにそれ面白そう。さすが乱歩さん。」

『太宰さん、顔を輝かせないでください…。』

「おい、結局割り勘ではないか!」

「ペットの世話の末路は大抵こんな感じだよ。諦めな。」

「誰がどれを買ってこればいいんですかねー。」

「くじだねそういう時は!」

『…ていうか、一先ず彼を太宰さんの部屋に運ぶべきですよね。』


バーにいる間、ここに乗せておくわけにはいかないだろう。


「…それもそうだな。おい、太宰。」

「あ、寮に置いてもらえばいいんだよ。」


ぽんと、手を叩き名案と言うようにね?と云って首を傾げる。
まぁ、それもそうだが。


『大家さん寝てると思いますよ。』

「大丈夫。僕から言っておくから。」


ニコニコと太宰さんが続ける。
…確かに、大家さんと太宰さんは仲がいいけど許されるのだろうか。


「…いや、太宰の部屋にしておけ。大家さんに迷惑をかけるのは悪い。」

「えー。」

「えー、じゃない。一旦、寮に向かうぞ。」


そう言って、寮に向かった。


寮についたため、敦くんを太宰さんの部屋に運ぶ。
布団を敷いてもらい敦くんを寝かせる。


『散らかってますね。』

「こーら、そこ言わないの。」

『生活感があっていいって事ですよ。』


私の部屋からはあまり生活感は感じられないらしい。乱歩さんが言っていた。
生活感の出し方はよく分からない。まぁ、出した所で何も無いわけだが。


「それならいいんだけどね。」

『はい。』

「そろそろ行くぞ。薙澄沙も急がないと。」

『ああ、確かに。』


ふっと時間を見ると、少し遅くなってしまった。
遅れるとは連絡を入れてあるが少し遅過ぎかもしれない。

走って車へ向かい乗り込む。

そしてそのまま、バーに向かってもらった。
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