忌み子と自殺趣味
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「ひ、人食い虎だ。僕を食いに来たんだ。」
『落ち着いて、敦くん。』
彼は相当怯えている。
一先ず落ち着かせるべきだ。
「彼女の言う通りだ。座りたまえよ、敦君。虎はあんな処からは来ない。」
「ど、どうして、判るんです!」
パタン。
そう音を立てて本を閉じた太宰さん。
始まる。
今からが、勝負だ。
「そもそも変なんだよ、敦君。経営が傾いたからって、養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。」
本を閉じた格好で太宰さんは続ける。
「いや、そもそも、経営が傾いたんなら、一人二人追放したところでどうにもならない。半分ぐらい減らして、他所の施設に移すのが筋だ。」
「太宰さん。何を、云って――。」
彼がさっと、太宰さんに視線を移した時だった。
彼は食い入るように月を見つめた。
それはもう、怖いぐらいに。
「君が街に来たのが、2週間前。虎が街に現れたのも2週間前。」
そう言うと、太宰さんはストッと、コンテナから舞い降り月を見つめた。
「君が鶴見川べりにいたのが4日前。同じ場所で虎が目撃されたのも、4日前。国木田君が云っていただろう?『武装探偵社』は、異能の力を持つ輩の寄り合いだと…。巷間にはね、知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。」
彼は、太宰さんが話している間、月から目をそらさない。
そして、呻き声を出し始めている。
太宰さんは、敦くんの方を向くとこう続けた。
「その力で成功する者もいれば――、力を制御できず身を滅ぼす者もいる。」
私は後者であった。
一定の力以上を出すと、制御できなくなる。
破壊の限りを尽くし、街なんて、一晩あれば焼け野原にだってできた。
「大方、施設の人は虎の正体を知っていたが、君には教えなかったのだろう。」
見ていないうちに彼は一気に姿を変えていた。
太宰さんが彼を睨むと同時に私は臨戦態勢に入った。
「君だけが、解っていなかったのだよ。」
完全に、虎の形態になった敦くん。
白い毛並みが綺麗な、立派な。
虎だ。
「君も、『異能の者』だ。現身に飢獣を降ろす。月下の能力者。」
そろそろだ。
『創壊生![創]!!』
太宰さんの前に何かあった時のためにガード用の壁を創る。
「オオオオオ!!!」
虎となった敦くんが雄叫びをあげ太宰さんに襲いかかる。
が、太宰さんはうまく避けてくれたようだ。壁を壊し、虎は横に突っ込んでいったが、太宰さんの姿がある。
ドォン
と、派手な音を上げた。
が、土埃の隙間から彼と目が合った。
これは、くる。
「グォオオオオオ!!!」
彼が突っ込み、大量の荷物が崩れる。
一撃でこれ程崩すとは…。
「こりゃ、凄い力だ。人の首ぐらい、簡単に圧し折れる。」
『そんなのんきな事言ってないで、体勢整えてください!創壊生![創]!』
太宰さんの足元を高くして彼の跳躍の助けをする。
その足場へ、強烈なパンチが入りドッ!と音がした。
スピードを殺し、止まるため太宰さんは後ろへズザザザザと勢いに任せブレーキをかける。
が、
運の尽きとでも云うように、壁が太宰さんを止めた。
やばいかもしれない。
「おっと…。」
『太宰さん!創壊生![創]!』
太宰さんに向かっていく虎である敦くんを止めるため、傷をつけない程度に、障害物を創るが無駄なようだ。
「大丈夫だよ、薙澄沙ちゃん。任せたまえ。」
『ですが!』
タンッ
と、敦くんが太宰さんめがけ飛ぶ。
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くは無いが。」
やばい。
もう…!
『だざ――!』
「君では私を殺せない。」
そうだった、彼は。
ふっと姿を元に戻し始める敦くん。
「私の能力は――、あらゆる他の能力を触れただけで無効化する。」
『人間失格』。
これが、彼の異能だった。
映像がぶれるように、敦くんが元の姿に戻っていく。
ボスッと、彼を受け止めた太宰さん。
良かった…生きてる。
「……。」
『?』
「男と抱き合う趣味はない。」
そう言って、ぱっと気を失っている彼を離す処、鬼だと思う。
『ちょっと太宰さん!』
彼を急いで受け止め、ゆっくりと寝かせる。
「女性なら別にいいんだけどね。」
『そんなことを言っている場合ではないです!!』
「えー…。」
こんな茶番を繰り広げていたら、倉庫の外で待機していたのであろう、国木田さんの声が聞こえていた。
「おい、太宰、薙澄沙!」
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ。」
そう云って、寝かせている敦くんを指さす太宰さん。
走ってこちらに向かってきた国木田さんは驚いたような表情を見せた。
「! その小僧…。じゃあ、そいつが。」
「うん。虎の能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね。」
「全く――、次から事前に説明しろ。」
面倒くさそうに後頭部に手をやる国木田さん。一体、どうしたのであろうか。
『?何があったんですか?』
「これだ。」
そう言って見せられたのは
“十五番街の西倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ”
と、綺麗な字で書かれたメモ。
茶漬けをおごった時に書いたものであると推測できる。
「こういう事だ。肝が冷えたぞ。」
そこまで言うと、国木田さんは後ろを向きこう言った。
「おかげで、非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。」
中に入ってきたのは、見慣れたメンバー。
彼らが来てくれていたのか。
宮沢賢治くん。
与謝野晶子女医(センセイ)。
江戸川乱歩さん。
「なンだ。怪我人はなしかい?つまんないねェ。」
『怪我人はないほうがいいですよ…。』
「はっはっはっ、中々できるようになったじゃないか太宰。まぁ、僕には及ばないけどね!」
あぁ、乱歩さんが今日も可愛い。
「でも、そのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
そう言って、賢治くんは敦くんを指さす。
まぁ、そうだろうね。
軍警に身柄を渡しても、彼は何も言うことができない。
「どうする太宰? 一応、区の指定災害猛獣だぞ。」
「うふふ、実はもう決めてある。」
『決めてあるんですか?』
「嗚呼。」
太宰さんは、彼をチラリと見ると目を閉じてからニコッと笑い、こう言った。
「うちの、社員にする。」
「「「「『はああああああああ!?』」」」」
『落ち着いて、敦くん。』
彼は相当怯えている。
一先ず落ち着かせるべきだ。
「彼女の言う通りだ。座りたまえよ、敦君。虎はあんな処からは来ない。」
「ど、どうして、判るんです!」
パタン。
そう音を立てて本を閉じた太宰さん。
始まる。
今からが、勝負だ。
「そもそも変なんだよ、敦君。経営が傾いたからって、養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。」
本を閉じた格好で太宰さんは続ける。
「いや、そもそも、経営が傾いたんなら、一人二人追放したところでどうにもならない。半分ぐらい減らして、他所の施設に移すのが筋だ。」
「太宰さん。何を、云って――。」
彼がさっと、太宰さんに視線を移した時だった。
彼は食い入るように月を見つめた。
それはもう、怖いぐらいに。
「君が街に来たのが、2週間前。虎が街に現れたのも2週間前。」
そう言うと、太宰さんはストッと、コンテナから舞い降り月を見つめた。
「君が鶴見川べりにいたのが4日前。同じ場所で虎が目撃されたのも、4日前。国木田君が云っていただろう?『武装探偵社』は、異能の力を持つ輩の寄り合いだと…。巷間にはね、知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。」
彼は、太宰さんが話している間、月から目をそらさない。
そして、呻き声を出し始めている。
太宰さんは、敦くんの方を向くとこう続けた。
「その力で成功する者もいれば――、力を制御できず身を滅ぼす者もいる。」
私は後者であった。
一定の力以上を出すと、制御できなくなる。
破壊の限りを尽くし、街なんて、一晩あれば焼け野原にだってできた。
「大方、施設の人は虎の正体を知っていたが、君には教えなかったのだろう。」
見ていないうちに彼は一気に姿を変えていた。
太宰さんが彼を睨むと同時に私は臨戦態勢に入った。
「君だけが、解っていなかったのだよ。」
完全に、虎の形態になった敦くん。
白い毛並みが綺麗な、立派な。
虎だ。
「君も、『異能の者』だ。現身に飢獣を降ろす。月下の能力者。」
そろそろだ。
『創壊生![創]!!』
太宰さんの前に何かあった時のためにガード用の壁を創る。
「オオオオオ!!!」
虎となった敦くんが雄叫びをあげ太宰さんに襲いかかる。
が、太宰さんはうまく避けてくれたようだ。壁を壊し、虎は横に突っ込んでいったが、太宰さんの姿がある。
ドォン
と、派手な音を上げた。
が、土埃の隙間から彼と目が合った。
これは、くる。
「グォオオオオオ!!!」
彼が突っ込み、大量の荷物が崩れる。
一撃でこれ程崩すとは…。
「こりゃ、凄い力だ。人の首ぐらい、簡単に圧し折れる。」
『そんなのんきな事言ってないで、体勢整えてください!創壊生![創]!』
太宰さんの足元を高くして彼の跳躍の助けをする。
その足場へ、強烈なパンチが入りドッ!と音がした。
スピードを殺し、止まるため太宰さんは後ろへズザザザザと勢いに任せブレーキをかける。
が、
運の尽きとでも云うように、壁が太宰さんを止めた。
やばいかもしれない。
「おっと…。」
『太宰さん!創壊生![創]!』
太宰さんに向かっていく虎である敦くんを止めるため、傷をつけない程度に、障害物を創るが無駄なようだ。
「大丈夫だよ、薙澄沙ちゃん。任せたまえ。」
『ですが!』
タンッ
と、敦くんが太宰さんめがけ飛ぶ。
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くは無いが。」
やばい。
もう…!
『だざ――!』
「君では私を殺せない。」
そうだった、彼は。
ふっと姿を元に戻し始める敦くん。
「私の能力は――、あらゆる他の能力を触れただけで無効化する。」
『人間失格』。
これが、彼の異能だった。
映像がぶれるように、敦くんが元の姿に戻っていく。
ボスッと、彼を受け止めた太宰さん。
良かった…生きてる。
「……。」
『?』
「男と抱き合う趣味はない。」
そう言って、ぱっと気を失っている彼を離す処、鬼だと思う。
『ちょっと太宰さん!』
彼を急いで受け止め、ゆっくりと寝かせる。
「女性なら別にいいんだけどね。」
『そんなことを言っている場合ではないです!!』
「えー…。」
こんな茶番を繰り広げていたら、倉庫の外で待機していたのであろう、国木田さんの声が聞こえていた。
「おい、太宰、薙澄沙!」
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ。」
そう云って、寝かせている敦くんを指さす太宰さん。
走ってこちらに向かってきた国木田さんは驚いたような表情を見せた。
「! その小僧…。じゃあ、そいつが。」
「うん。虎の能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね。」
「全く――、次から事前に説明しろ。」
面倒くさそうに後頭部に手をやる国木田さん。一体、どうしたのであろうか。
『?何があったんですか?』
「これだ。」
そう言って見せられたのは
“十五番街の西倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ”
と、綺麗な字で書かれたメモ。
茶漬けをおごった時に書いたものであると推測できる。
「こういう事だ。肝が冷えたぞ。」
そこまで言うと、国木田さんは後ろを向きこう言った。
「おかげで、非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。」
中に入ってきたのは、見慣れたメンバー。
彼らが来てくれていたのか。
宮沢賢治くん。
与謝野晶子女医(センセイ)。
江戸川乱歩さん。
「なンだ。怪我人はなしかい?つまんないねェ。」
『怪我人はないほうがいいですよ…。』
「はっはっはっ、中々できるようになったじゃないか太宰。まぁ、僕には及ばないけどね!」
あぁ、乱歩さんが今日も可愛い。
「でも、そのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」
そう言って、賢治くんは敦くんを指さす。
まぁ、そうだろうね。
軍警に身柄を渡しても、彼は何も言うことができない。
「どうする太宰? 一応、区の指定災害猛獣だぞ。」
「うふふ、実はもう決めてある。」
『決めてあるんですか?』
「嗚呼。」
太宰さんは、彼をチラリと見ると目を閉じてからニコッと笑い、こう言った。
「うちの、社員にする。」
「「「「『はああああああああ!?』」」」」