コードギアス(短編)
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酔いどれ上司の話。
「もう、ロイドさんってば飲み過ぎですよ」
「あははぁ〜……ごめんごめぇん……」
お相手の事情で婚約を解消され、傷心中であろうロイドさんのために急遽企画された飲み会。
正直異性に全く興味のなさそうなロイドさんのことだから、ショックなのはお相手の家にある旧世代ナイトメアの機体が手に入らなくなったことなのだろうけれど。
そんな飲み会もたけなわ、セシルさんは弱いうえに酒癖が悪いものだからスザクくんが介護する羽目になっているし、そうなるともちろんロイドさんの世話は私に任されるわけで。
「ほーら、しっかりして下さいよ」
「うぅ…………」
ロイドさんは私の肩に頭を預けると、ぼうっとした顔でゆっくりまばたきをした。ここまで酔っているところは、流石に見たことがない。普段からふわふわした喋り方だから、ほろ酔いになってもせいぜい頬が赤くなるくらいしか違いがなかったのに、どうやらロイドさんは酔いすぎると逆に寡黙になるタイプらしい。
「大丈夫ですか?」
「うん……」
「歩けますか? 無理ならタクシー呼びましょうか」
「ううん、だいじょうぶ、だよぉ〜」
そう言いながら立ち上がろうとするものの、足元がおぼつかないようでよろめいてしまう。私は慌てて彼の身体を支えた。スザクくんに助けてもらおうと思って視線を送ったけれど、向こうは向こうで今にも寝そうなセシルさんを抱えるのに精一杯らしい。
「スザクくん、お代は私が立て替えておくからセシルさんをお願い。ほら、ロイドさんは私につかまって」
「えへへぇ〜ありがとぉ〜……」
彼は嬉しそうに笑うと、私の腕にしがみついた。支払いを済ませて外に出ると、辺りはすっかり人気もなくなっていた。夜風が火照った肌に心地良い。
「さむいねぇ……」
「もう冬ですもんね」
今にも寝てしまいそうなのか、ロイドさんは消え入りそうな声でそう呟く。
「ここで寝ちゃダメですよ」
「…………」
「ロイドさん、聞いてます?」
「あのねぇ」
私に掴まってふらふらと歩いていた彼が突然立ち止まる。
「……結婚とか、本当はどうでもよかったんだよねぇ」
そしてこちらを見上げると、へらりと笑ってみせた。いつものように無邪気な笑みではなく、どこか寂しそうな表情。
「今回の婚約だってさ、あの子は爵位を得られるし、僕はガニメデを手に入れられるから、それでいいかなぁって思ってたんだけど……」
「けど……?」
「結婚って、愛し合う二人がするものでしょお?」
柄でもない、まるで子供みたいな質問だった。ロイドさんは相変わらずへらへら笑っている。
「君みたいな人が隣にいるのも、悪くないかなあって」
一瞬、思考が停止した。ロイドさんは研究以外のことは興味がないと思っていた。それが彼の底なしの孤独に触れてしまったような気がして、どう返事していいかわからなくなってしまった。
「……ロイドさん」
「なぁに?」
「また明日、話しましょうね」
彼の寂しげな目は、いつしか普段通りのおどけた表情に変わっている。
「あははぁ、ごめんねぇ」
ロイドさんはまた私に寄りかかって歩き出す。その足取りはまだ頼りなかった。