第五章:メレッド
『私が代わるわ。大丈夫、そのまま意識を遠くに――』
耳元ではなくもっと近くで、その声はアディンの身体中に響いた。
声に合わせて、すうっと力が抜けていく。
目の前の状況から目を離したら、このまま意識を失ってしまうという焦りも、『大丈夫』という妙な安心感に蓋をされ、身を委ねる。
ひどく体が疲れた日にベッドに横たわった時のような、体の浮く感覚。
視界があたたかな白一色になった。
「……」
『アディン』は再び目を開くと、ゆっくり一呼吸して周りを見渡す。
それからテフィラーの傷口に視線を戻すと、ぼそっと短い唄のような、旋律を口ずさんだ。
すると、拡散して散り散りに放たれていた魔法がひとつの塊へと収束し、みるみる魔力の流れができあがる。
アディンの肩から魔力を送り続けていたシャルヘヴェットは、この明確な魔法の流れの変化に違和感を覚え、顔を見上げた。
「あなたは、月の王……」
その言葉に、『アディン』はちらりと目を向ける。
なにも言わなかったが、返答のように僅かに目を細めた。
『アディン』はそのまま魔法を的確に編み上げると、丁寧に、しなやかに、その傷を修復した。
テフィラーはしばらく黙って流れてくる魔法の感覚に集中していたが、やがて体の痛みを感じなくなっていることに気がついた。
触れられていた手がゆっくりと離れ、テフィラーはむしろ軽くなったのではとさえ思える体を起こす。
「な、治ったの……!?」
驚いた様子で、テフィラーは自身の腹と背を覗いた。
服には血がべったりとついていたが、傷も痛みもさっぱりなくなっていた。『アディン』はそれを見てよかった、と笑顔になる。
「信じられない……」
呆気にとられた表情でテフィラーがアディンの方を見やると、『アディン』はその場で電池が切れたかのようにぱたりと倒れた。
耳元ではなくもっと近くで、その声はアディンの身体中に響いた。
声に合わせて、すうっと力が抜けていく。
目の前の状況から目を離したら、このまま意識を失ってしまうという焦りも、『大丈夫』という妙な安心感に蓋をされ、身を委ねる。
ひどく体が疲れた日にベッドに横たわった時のような、体の浮く感覚。
視界があたたかな白一色になった。
「……」
『アディン』は再び目を開くと、ゆっくり一呼吸して周りを見渡す。
それからテフィラーの傷口に視線を戻すと、ぼそっと短い唄のような、旋律を口ずさんだ。
すると、拡散して散り散りに放たれていた魔法がひとつの塊へと収束し、みるみる魔力の流れができあがる。
アディンの肩から魔力を送り続けていたシャルヘヴェットは、この明確な魔法の流れの変化に違和感を覚え、顔を見上げた。
「あなたは、月の王……」
その言葉に、『アディン』はちらりと目を向ける。
なにも言わなかったが、返答のように僅かに目を細めた。
『アディン』はそのまま魔法を的確に編み上げると、丁寧に、しなやかに、その傷を修復した。
テフィラーはしばらく黙って流れてくる魔法の感覚に集中していたが、やがて体の痛みを感じなくなっていることに気がついた。
触れられていた手がゆっくりと離れ、テフィラーはむしろ軽くなったのではとさえ思える体を起こす。
「な、治ったの……!?」
驚いた様子で、テフィラーは自身の腹と背を覗いた。
服には血がべったりとついていたが、傷も痛みもさっぱりなくなっていた。『アディン』はそれを見てよかった、と笑顔になる。
「信じられない……」
呆気にとられた表情でテフィラーがアディンの方を見やると、『アディン』はその場で電池が切れたかのようにぱたりと倒れた。
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