第四章:医する魔法
「それでですね……」
紅茶を数口含んだ頃、話すことをまとめたメモを片手に、シャルへヴェットは本題を切り出す。
「アディンに協力してもらいたいことなのですが、まず、これは完全に個人的な要件でして」
シャルヘヴェットが話切る前に、テフィラーが立ち上がる。
「部外者は下がっていた方が良さそうね。気になったお店があったから、私は市場でも見てくるわ」
「あ、待ってください。わざわざ来ていただいたのに……」
「気を遣わないで大丈夫よ」
流れるように部屋を後にするテフィラーに、シャルヘヴェットは少し苦い顔をする。
「……アディン、あなたがテフィラーと一緒に行動している理由って」
「えっ。僕一人だと危なっかしいって、その、心配してくれてるみたい」
「そう、ですか」
何か言いたげだが、残りの紅茶を流し込んだシャルへヴェットは、次に従者の二人に目を向けた。
「それで、ここから先の話は俺とアディン、二人だけで進めさせていただきたいんです」
その言葉と表情から察して、勘のいいカナフが表情を曇らせる。
「もっ、もしかして、私たち……シャルへヴェット様の成そうとしている計画に、頭数として入れられていないです?」
「……は!?ちょっと待ってください!俺はシャルへヴェット様の命令には、絶対に逆らわないとは思ってるすけど。でも、俺はシャルへヴェット様について行くつもりで……」
「二人には、ここまで協力していただいて本当に感謝しています。ですが――」
シャルへヴェットはしばし俯き沈黙した後、ゆっくりと顔を上げた。
「どこかで、線引きが必要だと思っていて」
重たい口ぶりで、説明を続ける。
「決して安全な場所に行くわけでもないですし、そもそもが紫眼 の問題なんです。イェソド教会とは関係のないことをしようとしています。二人は祓い師・従者の肩書きで俺についてきてくれているでしょう。ですから、このことには巻き込みたくないんです」
「そ、そうかもですけど!紫眼 には関係なくても、シャルへヴェット様のお側でお力になりたいって思うのは、わがままですか……!」
「そうっすよ!多分、いやすごく、残った方が仕事の都合上いいってこともわかるんすけどっ」
二人の否定し切らずとも必死な抵抗に、ただの上下関係にはない、敬慕の念を感じる。
躊躇うシャルへヴェットの返答に、同行を懇願する二人は息を呑んだ。
「俺は……二人を守り切れる自信はありません……。もう、嫌なんです。慕ってくれている部下が、俺と行動したことによって命の危険に晒されるのは」
聞いてすぐ、二人は過去のカナフの出来事を言っているのだと理解した。
任務中に崖から足を滑らせて大怪我をし、さらには記憶喪失になってしまった、痛ましい事故。
「お、お言葉っすけど、俺は足を引っ張るような真似絶対しねぇっす!ちゃんと、実力不足を感じたらその時点で引きます。約束しますから!」
カナフも大きく何度も頷く。
「わ、私も二度もシャルへヴェット様に同じような思いをさせるようなことはしませんっ!だから、お願いします!」
深く頭を下げる二人に、シャルへヴェットが何と返そうかと考えあぐねいている時だった。
「無能を痛感しておいて、まだ足を引っ張ろうとしてるの?」
声のした方に皆の視線が一斉に移る。
そこには、音もなく扉を開けて立つ、ツェルの姿があった。
紅茶を数口含んだ頃、話すことをまとめたメモを片手に、シャルへヴェットは本題を切り出す。
「アディンに協力してもらいたいことなのですが、まず、これは完全に個人的な要件でして」
シャルヘヴェットが話切る前に、テフィラーが立ち上がる。
「部外者は下がっていた方が良さそうね。気になったお店があったから、私は市場でも見てくるわ」
「あ、待ってください。わざわざ来ていただいたのに……」
「気を遣わないで大丈夫よ」
流れるように部屋を後にするテフィラーに、シャルヘヴェットは少し苦い顔をする。
「……アディン、あなたがテフィラーと一緒に行動している理由って」
「えっ。僕一人だと危なっかしいって、その、心配してくれてるみたい」
「そう、ですか」
何か言いたげだが、残りの紅茶を流し込んだシャルへヴェットは、次に従者の二人に目を向けた。
「それで、ここから先の話は俺とアディン、二人だけで進めさせていただきたいんです」
その言葉と表情から察して、勘のいいカナフが表情を曇らせる。
「もっ、もしかして、私たち……シャルへヴェット様の成そうとしている計画に、頭数として入れられていないです?」
「……は!?ちょっと待ってください!俺はシャルへヴェット様の命令には、絶対に逆らわないとは思ってるすけど。でも、俺はシャルへヴェット様について行くつもりで……」
「二人には、ここまで協力していただいて本当に感謝しています。ですが――」
シャルへヴェットはしばし俯き沈黙した後、ゆっくりと顔を上げた。
「どこかで、線引きが必要だと思っていて」
重たい口ぶりで、説明を続ける。
「決して安全な場所に行くわけでもないですし、そもそもが
「そ、そうかもですけど!
「そうっすよ!多分、いやすごく、残った方が仕事の都合上いいってこともわかるんすけどっ」
二人の否定し切らずとも必死な抵抗に、ただの上下関係にはない、敬慕の念を感じる。
躊躇うシャルへヴェットの返答に、同行を懇願する二人は息を呑んだ。
「俺は……二人を守り切れる自信はありません……。もう、嫌なんです。慕ってくれている部下が、俺と行動したことによって命の危険に晒されるのは」
聞いてすぐ、二人は過去のカナフの出来事を言っているのだと理解した。
任務中に崖から足を滑らせて大怪我をし、さらには記憶喪失になってしまった、痛ましい事故。
「お、お言葉っすけど、俺は足を引っ張るような真似絶対しねぇっす!ちゃんと、実力不足を感じたらその時点で引きます。約束しますから!」
カナフも大きく何度も頷く。
「わ、私も二度もシャルへヴェット様に同じような思いをさせるようなことはしませんっ!だから、お願いします!」
深く頭を下げる二人に、シャルへヴェットが何と返そうかと考えあぐねいている時だった。
「無能を痛感しておいて、まだ足を引っ張ろうとしてるの?」
声のした方に皆の視線が一斉に移る。
そこには、音もなく扉を開けて立つ、ツェルの姿があった。