第二章:紫眼の目的
籠いっぱいの薬草をさっさと洗うと、茎と葉を仕分けしながら日干し網で吊るす。
診療所に帰ってきてから、テフィラーには暖炉の前で暖まっていてもらうと、アディンはひとり作業に打ち込みながら、胸の中で今後について考えた。
はっきり言ってしまえば面倒事に首を突っ込みたくはないのだが、両親と、夢のことが気にかかる。
今更、両親と会ってなにかしたいというわけではないのだが、紫眼 の話も知った今、全くの無関心というのも貫けない。
「アディン」テフィラーの声に、アディンはすかさず振り向いた。
「あれっ、暖炉消えちゃった?」
「いえ、よければなにか手伝おうかと思って」
「ゆっくりしてていいのに」
それでもテフィラーは手伝いたいと言うので、葉でいっぱいになった網を、広げて吊るす作業を頼む。黙々と手を動かしながら、気の利いた話のひとつでもできないか頭の中をかき混ぜる。
「さっきは――」テフィラーが口火を切った。
「ごめんなさい、急にあんなこと言って」
「えっ、心配してくれたんだよね。謝らないでよ」
「……あなたが、人を簡単に信用しすぎな気がして」
否定できないアディンに、テフィラーはぽつりぽつりと言葉を選ぶように続ける。
「あなたが本当に信頼していたら、申し訳ないのだけれど……その、怪しすぎない?」
へ、とアディンは視線をずらすテフィラーとは反対に、彼女に顔を向けると目をまん丸にした。
「シャルの話のこと?」
テフィラーは、網をかけるのに伸ばした腕をピタリと止めたかと思うと、勢いよく振り向いた。
「ぜ……全部よ!」
「えっ」
「あなたが紫眼 というのはレフアーさんも話すとおり真実でしょうけど、例えばそれを利用するために、あの襲ってきた女もグルで、シャルヘヴェットたちと引き合わされた可能性もあるわ。
彼の話はどこまで本当か確認できないような内容だし、唯一信じられるのは彼の肩書きだけだけでしょう。あなた、なにか秘密でも共有させられたりしなかった?」
鋭い一言に、アディンはうっかり「した」と言いそうになって咳払いした。月の王の件だ。
いやしかし、シャルヘヴェットらが騙してきている可能性など、全く考えてなかった。
「あ、怪しいかな……。僕には真剣に話してるように見えて」
「……。仮に本当だったとしても、あなたを利用しようとしているじゃない」
利用しようと……。
たしかに、紫眼 の長に話をつけるには、月の王の力が必要なのは間違いなさそうだ。ただ強制させられてはいない。
断られたら別の方法をと言っていたが、居所を知られた今、月の王とは全く別の方法を一から探すのも現実的ではない。
多少手を荒くしてでも、目の前の力を使いたいはずだ。
茎と葉を刻んでいた刃の手を止め、深呼吸をする。
協力するか否かを悩んでいたが、もっと根本的なところを疑っていなかった自分が、少し恐ろしくなってしまった。
診療所に帰ってきてから、テフィラーには暖炉の前で暖まっていてもらうと、アディンはひとり作業に打ち込みながら、胸の中で今後について考えた。
はっきり言ってしまえば面倒事に首を突っ込みたくはないのだが、両親と、夢のことが気にかかる。
今更、両親と会ってなにかしたいというわけではないのだが、
「アディン」テフィラーの声に、アディンはすかさず振り向いた。
「あれっ、暖炉消えちゃった?」
「いえ、よければなにか手伝おうかと思って」
「ゆっくりしてていいのに」
それでもテフィラーは手伝いたいと言うので、葉でいっぱいになった網を、広げて吊るす作業を頼む。黙々と手を動かしながら、気の利いた話のひとつでもできないか頭の中をかき混ぜる。
「さっきは――」テフィラーが口火を切った。
「ごめんなさい、急にあんなこと言って」
「えっ、心配してくれたんだよね。謝らないでよ」
「……あなたが、人を簡単に信用しすぎな気がして」
否定できないアディンに、テフィラーはぽつりぽつりと言葉を選ぶように続ける。
「あなたが本当に信頼していたら、申し訳ないのだけれど……その、怪しすぎない?」
へ、とアディンは視線をずらすテフィラーとは反対に、彼女に顔を向けると目をまん丸にした。
「シャルの話のこと?」
テフィラーは、網をかけるのに伸ばした腕をピタリと止めたかと思うと、勢いよく振り向いた。
「ぜ……全部よ!」
「えっ」
「あなたが
彼の話はどこまで本当か確認できないような内容だし、唯一信じられるのは彼の肩書きだけだけでしょう。あなた、なにか秘密でも共有させられたりしなかった?」
鋭い一言に、アディンはうっかり「した」と言いそうになって咳払いした。月の王の件だ。
いやしかし、シャルヘヴェットらが騙してきている可能性など、全く考えてなかった。
「あ、怪しいかな……。僕には真剣に話してるように見えて」
「……。仮に本当だったとしても、あなたを利用しようとしているじゃない」
利用しようと……。
たしかに、
断られたら別の方法をと言っていたが、居所を知られた今、月の王とは全く別の方法を一から探すのも現実的ではない。
多少手を荒くしてでも、目の前の力を使いたいはずだ。
茎と葉を刻んでいた刃の手を止め、深呼吸をする。
協力するか否かを悩んでいたが、もっと根本的なところを疑っていなかった自分が、少し恐ろしくなってしまった。