第一話
こうしてハルキとリュウはこっそり手紙を交換しあった。ハルキは胸ポケットに
リュウは処方箋の紙袋の一番下に入れて、作戦を立てていった。そして、とうとう
行日がやってきたのである。
いつもの通り、リュウが往診に来る。その時は必ずエタンとシュウが立ち会うのだが、荷物確認は行わない。それを良い事に、リュウはあるものを持ってきていた。いつも通り診察をする振りをして、ハルキにこっそりそれを渡す。
「良くなっているか」
「ええ、なってますね。元々…」
リュウは白衣を翻して立ち上がった。
「病気ではなかったようなので」
その言葉と共に、リュウは銃の引き金を引いた。エタンに向けてだ。しかし、銃弾は銀色の刃に跳ね返された。
「シュウ!」
ハルキは強く叫んだ。そして、金の柄に青い青いサファイアが埋まった剣で、斬撃を下す。シュウは受け止めたが、視界の端に銃先が見えた。
「シュウは殺さないで!」
刹那、ハルキの声に、銃先は下に下り、そして鋭い音を立てた。シュウはがくんと膝を折り、床に倒れこむ。近くに落ちた剣を部屋の隅まで蹴飛ばした。
「シュウ…ごめんね」
ぎゅ、と手を握り、視線をエタンに移そうとする。しかし、もうそこには沢山の兵が集まっていた。
「怖気づくなよ、ハルキ!」
リュウは鋭く声をかけた。ハルキは剣を強く握り締めた。先ほどのシュウへの攻撃は、リュウが援護しなければ出来なかった。数週間は剣術を習ったが、うまく出来るかはわからない。
「ジュンはこんな時のためにって剣術を教えたんだ。あいつの剣の腕はピカイチだから、そいつに教えてもらったお前は自信を持て!」
「…はい!」
リュウの言葉はハルキの士気を高めた。心なしか自信も出てきたようだ。ハルキは脳裏にジュンとの練習を思い出しながら、兵に向かってかけ出した。
「すごいねぇ、ものの五分で全て片付けてしまうなんて」
肩を竦めてエタンは言った。
「まだ片付けは終わっていない!」
ハルキはエタンに向かって斬撃を繰り出す。が、当たらない。そして、リュウの援護の銃撃すら避けられる。
((こいつ…強いっ!!))
それでもハルキは剣を振るった。負けるわけにはいかなかった。だが、その剣をいとも簡単に地面に叩き落とし、後ろから首元に腕を回される。必死でもがくが、離れるわけもなかった。エタンは袖からナイフを出し、
「ちょっと我侭がすぎるぞ」
と言いながら首元に押し当てた。
「…は、なせ…っ」
「嫌だ。おい、そこの医者。撃てるなら撃ってみろ!そうしたらこいつが死ぬぞ!」
リュウは銃を構えていたが、引き金は引けなかった。
「さあ、撃ってみろ!!」
手が動かない。
「ふふふ、撃てないんだろう!こいつは俺のものだ!誰にも渡さない!!」
「……の…のだって……?」
「はぁ?」
「俺が、誰のものだって?」
エタンも、リュウも、体中が冷えていくのを感じた。
「俺は俺のものだ、誰にも渡すものか!お前にもだ…!」
「な、何を!」
エタンはハルキの首を切り裂いた。血がポタポタと床に垂れる。
「お前だけは許さない」
エタンは腕を離してハルキから離れようとする。ハルキは落ちた剣を拾い上げて力を込めた。そして、青黒く光る目でエタンを強く睨みつけた。途端にエタンは動けなくなる。
「許さない」
たった一言だった。返事をする隙も、悲鳴を上げる隙もなく、エタンは胸を貫かれて動かなくなった。瞬間、ハルキは膝を折り、床に手をついた。その時やっとリュウは動けるようになり、銃を収めてハルキに駆け寄った。首からの出血が激しい。
(こんな状態で動いていたのか…!?)
リュウはハルキに応急処置を施し、辺りを見回した。エタンは死んだと目で見てわかるが、他の倒れている兵やシュウはまだ生きている。
(ハルキが殺すなと言ったな、この男)
シュウのそばにしゃがみ込んで、軽く傷を見る。
「う…」
「生きてるね。君も応急処置をするから、心配するな」
リュウは処方箋の紙袋の一番下に入れて、作戦を立てていった。そして、とうとう
行日がやってきたのである。
いつもの通り、リュウが往診に来る。その時は必ずエタンとシュウが立ち会うのだが、荷物確認は行わない。それを良い事に、リュウはあるものを持ってきていた。いつも通り診察をする振りをして、ハルキにこっそりそれを渡す。
「良くなっているか」
「ええ、なってますね。元々…」
リュウは白衣を翻して立ち上がった。
「病気ではなかったようなので」
その言葉と共に、リュウは銃の引き金を引いた。エタンに向けてだ。しかし、銃弾は銀色の刃に跳ね返された。
「シュウ!」
ハルキは強く叫んだ。そして、金の柄に青い青いサファイアが埋まった剣で、斬撃を下す。シュウは受け止めたが、視界の端に銃先が見えた。
「シュウは殺さないで!」
刹那、ハルキの声に、銃先は下に下り、そして鋭い音を立てた。シュウはがくんと膝を折り、床に倒れこむ。近くに落ちた剣を部屋の隅まで蹴飛ばした。
「シュウ…ごめんね」
ぎゅ、と手を握り、視線をエタンに移そうとする。しかし、もうそこには沢山の兵が集まっていた。
「怖気づくなよ、ハルキ!」
リュウは鋭く声をかけた。ハルキは剣を強く握り締めた。先ほどのシュウへの攻撃は、リュウが援護しなければ出来なかった。数週間は剣術を習ったが、うまく出来るかはわからない。
「ジュンはこんな時のためにって剣術を教えたんだ。あいつの剣の腕はピカイチだから、そいつに教えてもらったお前は自信を持て!」
「…はい!」
リュウの言葉はハルキの士気を高めた。心なしか自信も出てきたようだ。ハルキは脳裏にジュンとの練習を思い出しながら、兵に向かってかけ出した。
「すごいねぇ、ものの五分で全て片付けてしまうなんて」
肩を竦めてエタンは言った。
「まだ片付けは終わっていない!」
ハルキはエタンに向かって斬撃を繰り出す。が、当たらない。そして、リュウの援護の銃撃すら避けられる。
((こいつ…強いっ!!))
それでもハルキは剣を振るった。負けるわけにはいかなかった。だが、その剣をいとも簡単に地面に叩き落とし、後ろから首元に腕を回される。必死でもがくが、離れるわけもなかった。エタンは袖からナイフを出し、
「ちょっと我侭がすぎるぞ」
と言いながら首元に押し当てた。
「…は、なせ…っ」
「嫌だ。おい、そこの医者。撃てるなら撃ってみろ!そうしたらこいつが死ぬぞ!」
リュウは銃を構えていたが、引き金は引けなかった。
「さあ、撃ってみろ!!」
手が動かない。
「ふふふ、撃てないんだろう!こいつは俺のものだ!誰にも渡さない!!」
「……の…のだって……?」
「はぁ?」
「俺が、誰のものだって?」
エタンも、リュウも、体中が冷えていくのを感じた。
「俺は俺のものだ、誰にも渡すものか!お前にもだ…!」
「な、何を!」
エタンはハルキの首を切り裂いた。血がポタポタと床に垂れる。
「お前だけは許さない」
エタンは腕を離してハルキから離れようとする。ハルキは落ちた剣を拾い上げて力を込めた。そして、青黒く光る目でエタンを強く睨みつけた。途端にエタンは動けなくなる。
「許さない」
たった一言だった。返事をする隙も、悲鳴を上げる隙もなく、エタンは胸を貫かれて動かなくなった。瞬間、ハルキは膝を折り、床に手をついた。その時やっとリュウは動けるようになり、銃を収めてハルキに駆け寄った。首からの出血が激しい。
(こんな状態で動いていたのか…!?)
リュウはハルキに応急処置を施し、辺りを見回した。エタンは死んだと目で見てわかるが、他の倒れている兵やシュウはまだ生きている。
(ハルキが殺すなと言ったな、この男)
シュウのそばにしゃがみ込んで、軽く傷を見る。
「う…」
「生きてるね。君も応急処置をするから、心配するな」