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【龍笛の君】


桃仙人にあって少し経ってから、その出会いは訪れた。

なんだか寝付けなくて、少し散歩しようと上衣を羽織り、沓を履きゆっくりと庭に出る。

ちょうどその時に少し硬い、氷の様な蘇芳が聞こえてきた。

(誰が...奏でているんでしょうか...?)

落ち着いているとはいえまだまだ子供。
好奇心に負け音のする方に歩を進める。

少し歩くと廊下に立つ男が1人。

神経質そうな雰囲気、眉間によった皺、銀に近い青みがかった髪。

(桃仙人とは正反対でしゅね。)

なんて失礼なことを思いながらも笛を吹く男に近寄る。

「...なんだ?」

近寄ってくる気配に気付き、振り向く男。

突然振り向かれたことにより一瞬驚く。

『は、初めまして、ーーー でしゅ。』

そう伝えつつ礼をする。

「お前が...。私は葵皇毅だ。
もう夜更けだ、部屋に戻れ。」

そうこちらを冷めたような目で見ながら伝えてくる葵皇毅様。

それを無視して問いかける。

『それは、龍笛でしゅか?』

無視したからだろう。
少し眉間の皺が増した目の前の男が

「そうだ」

とただそれだけ伝えてくる。

すると遠くから コツコツ と聞き馴染みのある音が小さく聞こえてきた。

『なるほど...龍笛の君、また今度聴かせて下しゃい。
今日はこれで失礼致しましゅ。』

そう伝え、サッと背を向けるとそそくさと音のする方へ歩き男の前から姿を消した。

(兄様 が心配していましゅね...後で謝らなくては...
あぁ、龍笛の君の音は硬派で冷たくもありますがとてもいい音色でしたね。)

と、そんなことを思いながら。








「...龍笛の君...?」

名前を教えたのに何故そう呼ぶのか。
男ーー葵皇毅ーーはそんな疑問が頭に浮かぶ。

「この間桃仙人って呼び名をつけられたんだよね〜。」
そうクスクス笑う憎たらしい顔が頭に浮かび、その時は
(なんだそれは...??)
とも思ったが、どこか納得がいった。

「変わった呼び名をつけるのが趣味なのか...?
...まぁ、桃仙人よりはマシか。」

そう思い頭に浮かんだ憎たらしい顔を消し、笛をしまい男も暗闇に消えていった。

いつもならほとんど上がらない口角をほんの少しあげたまま。


(...しかしあの話し方は完全に悠舜のせいだな。)

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