（こちらを見ている秀麗さんの視線の感じからすると、おそらく｢父様ｯｯ!! 姉様ｯｯ!!!｣と叫びたいのを我慢しているんでしょうね。）

そんなことを思いながらぼーっとしていると、霄太師が秀麗さんと下がろうとした静蘭さんの2人を座らせる。

軽く2人の顔色と霄太師の顔色を確認したあと、考える。


今1番霄太師が必要としているもの、

兄様から以前頂いた文の内容、女性、霄太師、紅家...

王の教育係...？
それにもっとも相応しい位は...


そこまで考えた時、霄太師の

｢金、五百両、じゃ！｣

という叫び声と共に秀麗さんが立ち上がり椅子が派手に倒れる音が聞こえた。

少しの空白のあと、

｢やります！！なんっっでもお任せくださいっっ｣

という声が邸に響いた。

｢ならば、静蘭殿には一時的に羽林軍に特進し、主上付きになっていただく。｣

声を上げることも出来ずに口をポカンとあけ目を見開く静蘭さん。
そのまま追い打ちをかけるように霄太師は重々しく言葉を発した。

｢秀麗殿、そなたは後宮に入って、王の妃になってもらいたい。｣

その瞬間、秀麗さんの顔は今まで見た事がないくらいの顔だった。


｢それから 蓮華 殿、そなたにはワシら朝廷三師のお茶係になってもらいたい。｣

『...なにも出来ませんが？』

｢ホッホッ...構いませぬ。難しいことは何も言いませぬ故。｣

そう言いながら長く綺麗に伸びた髭を優しく撫でる霄太師。

（食えぬ狸...妖怪...いや、仙...）

そんなことを考えながら

｢どーかどーかどーか！！主上をまともな王にしてくだされぇええっっ｣

と秀麗さんの手を握りしめガケップチの必死の形相で叫ぶ霄太師を見る。

（きっと私が何者か分かっていて、こういうことをするんでしょうね。仕方ない。）

そう思う、仕方ない。

あの方が好きで、いつの間にか私も好きになってしまった台詞を心の中で呟く。

それからすぐに準備を整え、数日後には3人で仲良く後宮、朝廷へと足を運んでいた。














静蘭視点

ーーーーーー

お嬢様が妃...
そこに関しては礼儀作法や、家柄などを考えると妥当だと思う。

と、同時に 蓮華 さんが朝廷三師のお茶係？

本当に大丈夫なのだろうか？



そんな不安を抱えつつ朝廷へと足を運ぶも、その不安は数日後には無くなっており、また別の悩みを抱えるとは...この時の静蘭は知る由もなかった。