舞い降りたモノ
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「そういやシュラの奴、元気ねぇな」
「やっぱりデスもそう思う?昨日会ったけど酷く小宇宙が不安定だったよ」
双魚宮でアフロディーテの作ったクッキーと共にお茶を飲んでいたデスマスクは、急に思い出したかのように言った。デスマスクの言葉に同意を見せたアフロディーテは、少し考え込んだ様子でカップをソーサーに置いた。
「シルフィ、かな」
「…だろうな」
「ちょっと行ってみようか」
カップに残っていた紅茶を飲み干すとアフロディーテは手土産に、焼いたクッキーを可愛らしい袋に包んで、二人は磨羯宮へと向かった。茶化してやる、と口では言っていたデスマスクも内心心配なのだ。聖闘士としての実力は誰よりも強いが、色恋沙汰の方は誰よりも弱い。変に拗らせるよりは早く手助けしてやった方が傷も浅くて済む筈だ。
色々な想像をしながら二人は足を進めた。
「やっぱ荒れてんな」
磨羯宮の裏で一人鍛練をしているシュラの周りには粉々になった岩の欠片が散らばっている。彼の刃のような拳では粉砕されるのは珍しく、小宇宙が乱れている証拠でもあった。
「おい」
二人は荒れるシュラへと近付くと声をかけた。
「そんなに暴れると宮が壊れるぞ」
茶化して言うデスマスクにシュラは言い返す言葉を飲んだ。自分でも荒れているのは分かっている。その原因も。しかし押さえようのないこの感情を発散する術が見つからないシュラは、ただひたすら壊れても良い相手で鍛練する他なかった。
「シュラ、今晩君の所でお酒でもどうだい」
「…構わないが、料理はないぞ」
シュラの言葉に二人は顔を見合わせた。シュラは二人に背を向け再び岩を相手に拳を奮いながら言葉を続けた。
「あいつなら出ていった」
「出ていった、って…」
「元々拾ったモノだ。元の場所にでも戻ったんだろ」
ぶっきらぼうに言うシュラの言葉が本心でないことくらい、幼馴染みの彼らには丸分かりだった。ただ、解決法のないこの問題は時間が解決してくれるのを待つしかない。これ以上かける言葉が見つからない二人はただシュラの背中を見つめる事しか出来なかった。
「じゃあ、また夜にーー」
立ち去ろうとしたデスマスクの言葉は小宇宙で呼び掛けられるアテナの声によって遮られた。三人ともピタリと動くのを止め、アテナの小宇宙に耳を傾け、その内容に一気に緊張感が張り詰める。
「…緊急招集だなんてただ事じゃねぇな」
「教皇ではなくアテナ直々、ってのが、ね」
体の中を弱い電流が走るような緊張感。普段の任務など比にならない程の出来事が待ち構えているに決まっている。
「じゃあシュラ、教皇の間で」
聖衣を纏いに二人はこの場を後にした。二人の小宇宙がこの場所から遠ざかったのを確認するとシュラは目の前の石を空へと放り投げた。落ちてくるそれを感じながら己の右拳へと小宇宙を高め、光の早さで前へと突き出す。衝撃で砂の様に粉砕された元塊は、風に乗ってパラパラとあちらこちらへと散っていく。
あの時後を追っていれば、やり場の無いこの感情を知ることもなかったのだろうか。考えても仕方がない事だと分かっていても、つい考えてしまう未練がましい自分に腹が立つ。ニ、三度強く頭を振るとシュラは聖衣を纏う為に宮へと入っていった。
「やっぱりデスもそう思う?昨日会ったけど酷く小宇宙が不安定だったよ」
双魚宮でアフロディーテの作ったクッキーと共にお茶を飲んでいたデスマスクは、急に思い出したかのように言った。デスマスクの言葉に同意を見せたアフロディーテは、少し考え込んだ様子でカップをソーサーに置いた。
「シルフィ、かな」
「…だろうな」
「ちょっと行ってみようか」
カップに残っていた紅茶を飲み干すとアフロディーテは手土産に、焼いたクッキーを可愛らしい袋に包んで、二人は磨羯宮へと向かった。茶化してやる、と口では言っていたデスマスクも内心心配なのだ。聖闘士としての実力は誰よりも強いが、色恋沙汰の方は誰よりも弱い。変に拗らせるよりは早く手助けしてやった方が傷も浅くて済む筈だ。
色々な想像をしながら二人は足を進めた。
「やっぱ荒れてんな」
磨羯宮の裏で一人鍛練をしているシュラの周りには粉々になった岩の欠片が散らばっている。彼の刃のような拳では粉砕されるのは珍しく、小宇宙が乱れている証拠でもあった。
「おい」
二人は荒れるシュラへと近付くと声をかけた。
「そんなに暴れると宮が壊れるぞ」
茶化して言うデスマスクにシュラは言い返す言葉を飲んだ。自分でも荒れているのは分かっている。その原因も。しかし押さえようのないこの感情を発散する術が見つからないシュラは、ただひたすら壊れても良い相手で鍛練する他なかった。
「シュラ、今晩君の所でお酒でもどうだい」
「…構わないが、料理はないぞ」
シュラの言葉に二人は顔を見合わせた。シュラは二人に背を向け再び岩を相手に拳を奮いながら言葉を続けた。
「あいつなら出ていった」
「出ていった、って…」
「元々拾ったモノだ。元の場所にでも戻ったんだろ」
ぶっきらぼうに言うシュラの言葉が本心でないことくらい、幼馴染みの彼らには丸分かりだった。ただ、解決法のないこの問題は時間が解決してくれるのを待つしかない。これ以上かける言葉が見つからない二人はただシュラの背中を見つめる事しか出来なかった。
「じゃあ、また夜にーー」
立ち去ろうとしたデスマスクの言葉は小宇宙で呼び掛けられるアテナの声によって遮られた。三人ともピタリと動くのを止め、アテナの小宇宙に耳を傾け、その内容に一気に緊張感が張り詰める。
「…緊急招集だなんてただ事じゃねぇな」
「教皇ではなくアテナ直々、ってのが、ね」
体の中を弱い電流が走るような緊張感。普段の任務など比にならない程の出来事が待ち構えているに決まっている。
「じゃあシュラ、教皇の間で」
聖衣を纏いに二人はこの場を後にした。二人の小宇宙がこの場所から遠ざかったのを確認するとシュラは目の前の石を空へと放り投げた。落ちてくるそれを感じながら己の右拳へと小宇宙を高め、光の早さで前へと突き出す。衝撃で砂の様に粉砕された元塊は、風に乗ってパラパラとあちらこちらへと散っていく。
あの時後を追っていれば、やり場の無いこの感情を知ることもなかったのだろうか。考えても仕方がない事だと分かっていても、つい考えてしまう未練がましい自分に腹が立つ。ニ、三度強く頭を振るとシュラは聖衣を纏う為に宮へと入っていった。