舞い降りたモノ
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「あ、デスさんディーテさん、今晩は」
あれから数ヶ月経ち、シュラの誘いでデスマスクとアフロディーテは良く磨羯宮へ食事をしにきていた。それはシルフィ自身から助けて貰ったお礼に、と提案されたものだったが一度シルフィの料理を口にした二人は口々にシュラを羨んだ。その事もあり、いつしか月に何度か三人で飲み明かしていた日は磨羯宮での食事会に変わっていった。
「これ、いいのが手に入ったから」
「毎度お招きありがとう」
ワインボトルを片手にシルフィへ手渡すデスマスクと両手いっぱいの薔薇を抱えたアフロディーテ。ワインを受け取ったシルフィは視線でシュラに訴えるとシュラはアフロディーテから花束を受け取る。声に出さずとも意志が伝わる仲になったのかとデスマスクはからかおうとしたが、シュラの機嫌を損ねて楽しみに待っていた食事にありつけなくなる可能性があるかもしれない、と口を嗣ぐんだ。
「いつもありがとうございます。こちら、食事の際に飲めるよう冷やしておきますね。旦那様、花瓶をあちらに置いてありますので生けてくださいますか?」
あぁ、と頷いたシュラは両手に薔薇を抱えたシュラはそのまま奥へと消えていった。シュラが花を生けるだなんて想像がつかない二人は、顔を見合わせて吹き出した。
「あいつ、本当に変わったよな」
「そうだね。でも本人は楽しそうだよ」
勝手知ったる他人の宮、とはよく言ったものだ。迷うことなく歩き慣れた廊下を進み、いつものダイニングへと向かう二人。最初は来客用の部屋へと通されたのだが、幼馴染みとも言える彼らは落ち着かないと言って結局いつものダイニングへと移動してしまったのだ。
今では案内すらなく勝手にどうぞ、といった様子で、入り口までシルフィが迎えに来てくれるものの、最後まで案内してくれることは無くなった。
二人がダイニングへつくと、先ほどアフロディーテが持ってきた薔薇がキッチンの隅に飾られており、デスマスクが持ってきたワインは銀のワインクーラーへと入れられている。いつでも食事ができるようにセッティングされたテーブルにはシュラがすでに座っており、その後ろでシルフィが微笑んで立っていた。
「先にお食事になさいますか?それともなにかお酒に合うものでもつくってきましょうか?」
椅子に腰かける二人にシルフィが訪ねる。
「俺は先に飯がいい。昼間の任務が忙しくて朝からなにも食べてねぇ」
「だ、そうだ」
「いつもありがとう、シルフィ」
アフロディーテの言葉ににこりと笑みを返して一礼したシルフィは料理を運ぶために部屋を出ていった。
その後ろ姿を目で追い、力無くテーブルに突っ伏したデスマスクは、シュラの方を見てニヤリと笑った。この顔はろくでもない事を考えている時の顔だ。そう察したシュラはデスマスクから目を反らした。
「お前、シルフィに惚れてるだろ」
予想外の質問にシュラの目が大きく開かれてデスマスクを見た。いきなり何を言い出すのかと思えばとんでもないことを言い出す友人は、腹が空きすぎて頭がおかしくなったのだろうか。
いつ本人が料理をもって戻ってくるかもわからない状況で、その質問をする神経が考えられない。
「いきなり何を言い出すんだ…」
できるだけ平然を装ってシュラは答える。好きか嫌いか、と尋ねられれば勿論自分に害がない人物であるシルフィは好き、の分類に入る。が、惚れているというのは自分自身よくわからないのが本心だった。
「シルフィはただの侍女だぞ」
「そういう割りには仲良さげだな」
「この宮に侍女はあいつだけだからだろう」
「ふぅん。なら俺が貰ってもいいって訳だな?」
突っ伏していた体を起こしてデスマスクは再び口端を上げてにやりと笑った。
「…どういう意味だ?侍女なら教皇にでも言えばすぐに手配されるだろ」
「シュラ、素直に認めたほうがいいよ」
完全にデスマスクのペースに乗せられているシュラを見てくすくすとアフロディーテは笑った。
「でないとシルフィ、本当にデスに取られるよ」
「だから俺のものではないと…」
シュラの言葉は料理を沢山乗せたワゴンを押したシルフィの登場によって飲み込まれた。何の話をしていたのか聞こえていなかったシルフィは笑顔のままテーブルに料理を配膳していく。手慣れた手付きであっという間にテーブルがいっぱいになったかと思うと、シルフィはデスマスクの元へと歩いていき、彼の隣に膝をついて顔を見上げた。
「デスさん、今日は任務でお疲れだと先程おっしゃってましたよね。もしよろしければ私におまじないをさせていただけませんか?」
「おまじない?」
訳がわからないといった様子のデスマスクが首を傾げる。シルフィは笑顔を絶やさないまま言葉を続けた。
「私、おまじないが得意なんです。手を出していただけますか?」
シルフィの言葉に言われた通りにデスマスクは手を差し出した。シルフィは出された手を両手で包み口付けるように顔を近付けると、聞き取ることのできない言葉でなにか呪文を唱え始めた。
聞こえるか聞こえないかの小さな声で唱えられた言葉が終わると包んでいた手がぼうっと光だし、小さな蛍のようにデスマスクの回りを飛び出した。突然の事に言葉が出ないデスマスクだったが、蛍のような光が体に触れる度に疲れが取れ、小宇宙が漲ってくるような気がする。されるがままにしていると、最後の光が上からふわりと落ちてきて、光が消える頃にはぐっすりと寝た後のようなスッキリとしたコンディションになっていた。
「お疲れさまでした。では冷めないうちにお料理をどうぞ」
デスマスクの手を離して立ち上がったシルフィは一礼すると再びキッチンへと戻っていった。
「今の、なんだ?」
呆気に取られるデスマスクとアフロディーテをよそに、シュラはすでに料理を口へと運んでいた。うまいな、と頷きながらもくもくと料理を口へ運ぶシュラはまるでデスマスクの話しを聞いていない。
「おいシュラ、さっきのお前も見ただろ」
「まじないだと本人が言っていたじゃないか」
「ただのおまじないには見えなかったけど…。デス、なにか変わったことは?」
アフロディーテの言葉に両手を開いたり閉じたりして確認したデスマスクだったが、特に疲れが取れて小宇宙が回復した以外、何も悪い所はなかった。おまじない、というよりは、まるで魔法のようだ。理解がおいつかないデスマスクとアフロディーテは料理に手をつけるのを忘れて先ほどの光景を脳内で再生した。
「さっきのは本当に効果あるだろ。俺もよくやってもらってる」
「……」
驚くことをさらっと言ってのけた本人はもぐもぐと口を動かし続けている。シュラが度々あの「まじない」を経験しているのならば、特にまじないが悪い効果を産むというとは心配なさそうだ。得体のしれない経験だったが、実際に疲れは取れて小宇宙も回復しているのだから、特に悪い事ではないだろう。最近シュラの小宇宙が安定して上昇しているのはこれが原因かとデスマスクは納得した。
「なぁ、本当に俺にくれよ」
「断る」
何を、とは言わないシュラだったが、今度はハッキリと意志を伝えた。肩をすくめたデスマスクと微笑んだアフロディーテはようやく料理に手をつけた。
あれから数ヶ月経ち、シュラの誘いでデスマスクとアフロディーテは良く磨羯宮へ食事をしにきていた。それはシルフィ自身から助けて貰ったお礼に、と提案されたものだったが一度シルフィの料理を口にした二人は口々にシュラを羨んだ。その事もあり、いつしか月に何度か三人で飲み明かしていた日は磨羯宮での食事会に変わっていった。
「これ、いいのが手に入ったから」
「毎度お招きありがとう」
ワインボトルを片手にシルフィへ手渡すデスマスクと両手いっぱいの薔薇を抱えたアフロディーテ。ワインを受け取ったシルフィは視線でシュラに訴えるとシュラはアフロディーテから花束を受け取る。声に出さずとも意志が伝わる仲になったのかとデスマスクはからかおうとしたが、シュラの機嫌を損ねて楽しみに待っていた食事にありつけなくなる可能性があるかもしれない、と口を嗣ぐんだ。
「いつもありがとうございます。こちら、食事の際に飲めるよう冷やしておきますね。旦那様、花瓶をあちらに置いてありますので生けてくださいますか?」
あぁ、と頷いたシュラは両手に薔薇を抱えたシュラはそのまま奥へと消えていった。シュラが花を生けるだなんて想像がつかない二人は、顔を見合わせて吹き出した。
「あいつ、本当に変わったよな」
「そうだね。でも本人は楽しそうだよ」
勝手知ったる他人の宮、とはよく言ったものだ。迷うことなく歩き慣れた廊下を進み、いつものダイニングへと向かう二人。最初は来客用の部屋へと通されたのだが、幼馴染みとも言える彼らは落ち着かないと言って結局いつものダイニングへと移動してしまったのだ。
今では案内すらなく勝手にどうぞ、といった様子で、入り口までシルフィが迎えに来てくれるものの、最後まで案内してくれることは無くなった。
二人がダイニングへつくと、先ほどアフロディーテが持ってきた薔薇がキッチンの隅に飾られており、デスマスクが持ってきたワインは銀のワインクーラーへと入れられている。いつでも食事ができるようにセッティングされたテーブルにはシュラがすでに座っており、その後ろでシルフィが微笑んで立っていた。
「先にお食事になさいますか?それともなにかお酒に合うものでもつくってきましょうか?」
椅子に腰かける二人にシルフィが訪ねる。
「俺は先に飯がいい。昼間の任務が忙しくて朝からなにも食べてねぇ」
「だ、そうだ」
「いつもありがとう、シルフィ」
アフロディーテの言葉ににこりと笑みを返して一礼したシルフィは料理を運ぶために部屋を出ていった。
その後ろ姿を目で追い、力無くテーブルに突っ伏したデスマスクは、シュラの方を見てニヤリと笑った。この顔はろくでもない事を考えている時の顔だ。そう察したシュラはデスマスクから目を反らした。
「お前、シルフィに惚れてるだろ」
予想外の質問にシュラの目が大きく開かれてデスマスクを見た。いきなり何を言い出すのかと思えばとんでもないことを言い出す友人は、腹が空きすぎて頭がおかしくなったのだろうか。
いつ本人が料理をもって戻ってくるかもわからない状況で、その質問をする神経が考えられない。
「いきなり何を言い出すんだ…」
できるだけ平然を装ってシュラは答える。好きか嫌いか、と尋ねられれば勿論自分に害がない人物であるシルフィは好き、の分類に入る。が、惚れているというのは自分自身よくわからないのが本心だった。
「シルフィはただの侍女だぞ」
「そういう割りには仲良さげだな」
「この宮に侍女はあいつだけだからだろう」
「ふぅん。なら俺が貰ってもいいって訳だな?」
突っ伏していた体を起こしてデスマスクは再び口端を上げてにやりと笑った。
「…どういう意味だ?侍女なら教皇にでも言えばすぐに手配されるだろ」
「シュラ、素直に認めたほうがいいよ」
完全にデスマスクのペースに乗せられているシュラを見てくすくすとアフロディーテは笑った。
「でないとシルフィ、本当にデスに取られるよ」
「だから俺のものではないと…」
シュラの言葉は料理を沢山乗せたワゴンを押したシルフィの登場によって飲み込まれた。何の話をしていたのか聞こえていなかったシルフィは笑顔のままテーブルに料理を配膳していく。手慣れた手付きであっという間にテーブルがいっぱいになったかと思うと、シルフィはデスマスクの元へと歩いていき、彼の隣に膝をついて顔を見上げた。
「デスさん、今日は任務でお疲れだと先程おっしゃってましたよね。もしよろしければ私におまじないをさせていただけませんか?」
「おまじない?」
訳がわからないといった様子のデスマスクが首を傾げる。シルフィは笑顔を絶やさないまま言葉を続けた。
「私、おまじないが得意なんです。手を出していただけますか?」
シルフィの言葉に言われた通りにデスマスクは手を差し出した。シルフィは出された手を両手で包み口付けるように顔を近付けると、聞き取ることのできない言葉でなにか呪文を唱え始めた。
聞こえるか聞こえないかの小さな声で唱えられた言葉が終わると包んでいた手がぼうっと光だし、小さな蛍のようにデスマスクの回りを飛び出した。突然の事に言葉が出ないデスマスクだったが、蛍のような光が体に触れる度に疲れが取れ、小宇宙が漲ってくるような気がする。されるがままにしていると、最後の光が上からふわりと落ちてきて、光が消える頃にはぐっすりと寝た後のようなスッキリとしたコンディションになっていた。
「お疲れさまでした。では冷めないうちにお料理をどうぞ」
デスマスクの手を離して立ち上がったシルフィは一礼すると再びキッチンへと戻っていった。
「今の、なんだ?」
呆気に取られるデスマスクとアフロディーテをよそに、シュラはすでに料理を口へと運んでいた。うまいな、と頷きながらもくもくと料理を口へ運ぶシュラはまるでデスマスクの話しを聞いていない。
「おいシュラ、さっきのお前も見ただろ」
「まじないだと本人が言っていたじゃないか」
「ただのおまじないには見えなかったけど…。デス、なにか変わったことは?」
アフロディーテの言葉に両手を開いたり閉じたりして確認したデスマスクだったが、特に疲れが取れて小宇宙が回復した以外、何も悪い所はなかった。おまじない、というよりは、まるで魔法のようだ。理解がおいつかないデスマスクとアフロディーテは料理に手をつけるのを忘れて先ほどの光景を脳内で再生した。
「さっきのは本当に効果あるだろ。俺もよくやってもらってる」
「……」
驚くことをさらっと言ってのけた本人はもぐもぐと口を動かし続けている。シュラが度々あの「まじない」を経験しているのならば、特にまじないが悪い効果を産むというとは心配なさそうだ。得体のしれない経験だったが、実際に疲れは取れて小宇宙も回復しているのだから、特に悪い事ではないだろう。最近シュラの小宇宙が安定して上昇しているのはこれが原因かとデスマスクは納得した。
「なぁ、本当に俺にくれよ」
「断る」
何を、とは言わないシュラだったが、今度はハッキリと意志を伝えた。肩をすくめたデスマスクと微笑んだアフロディーテはようやく料理に手をつけた。