舞い降りたモノ
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宮の入り口から入るといつもと変わらぬ様子のシルフィが笑顔で迎えてくれた。先程見た出来事が全て嘘のように思える程、その姿は今朝とは変わらぬ姿。ブロンドの髪は茶色になり、オッドアイは真っ黒の瞳に戻っている。
シュラはシルフィに近付くと小首を傾げる彼女の頭を優しく撫でた。髪が指をすり抜けて落ちていき、撫でられたシルフィは心地良さそうに目を細める。その姿を見てシュラの心臓はドキリと高鳴り、顔に熱が上がってくるのを感じた。
頭を撫でるシュラの手が下がり、彼女の頬を撫でる。陶器のように滑らかな肌は指に吸い付いてくるようだった。
「旦那様の手は温かくて、気持ちのいい手ですね」
撫でられるがままのシルフィは微笑んだままシュラを見つめ、自分の手を彼の手に重ねた。その言葉にシュラは思わず手を引っ込めようとしたが、重ねられているシルフィの手がそれを拒んだ。
「…この殺人の手が、か?」
武器でもあるこの手は何人もの命を奪い、血を吸ってきた。故に小宇宙を放たない時でさえ恐れる者は数多くいたのも事実。
だから幼い頃から一緒だった気の知れた奴ら以外、自分の領域に踏み込む事を許さなかった。
「私はこの手から温かさ以外、何も感じとりませんよ?旦那様は旦那様の信じる者の為に力を奮うだけの事。己の信念を貫くのはそう簡単な事ではありませんよ」
真っ直ぐ見つめる漆黒の瞳は揺るがない。その言葉がおべっかなどではなく本心だということを黒い瞳が伝えていた。
不思議な女だ。この手を恐れずそんなことを言った人間は今まで1人もいなかった。真っ直ぐ見つめる黒い瞳が急に愛おしくなり、手放すのが惜しくなる。今日にも行く場所があるのならば解放してやろうと思っていたのに。
「…そう、か」
解放してやるのが彼女にとって一番幸せだろう。こんな血生臭い自分の世話をするよりも、自由に好きな場所で生活する方が。
「…お前、本当はここから出たいんじゃないのか?」
シュラは頬を撫でる手を下ろし、黒い瞳を覗き込むように言った。これで肯定されればもう二度とシルフィと会うことは無いだろう。
元々居なかったのだ。彼女に会う前の、元の生活に戻るだけ。何故か早くなる鼓動を感じながらシュラは自分に言い聞かせた。
黒い瞳は不安に揺れて、少し潤んだように見えた。瞳を静かに伏せ、シルフィは口を開いた。
「…私に居場所はありません。親も里も何もかも全て私には…」
段々と消え入るような声で言うシルフィを、シュラは気付けば抱き締めていた。嘘をつくのが下手な、天涯孤独の彼女を初めて守りたいと思ったのだ。
聖闘士になる修行で幼い頃から産まれ故郷を離れた自分ですら里を、親を覚えている。それなのに、何一つ彼女は持っていない。この感情は憐れみからか何なのかは分からないが、アテナを守る使命とはまた違った感覚だ。使命、ではなく願望にも似たこの感情は一体何なのか。
「私がここにいると必ず迷惑がかかる時が来ます。それまでにここを出ていくつもりです」
シルフィはシュラの背中に腕を回して続けた。
「あともう少しだけ、ここに居ても良いですか?」
何かにすがるようにシルフィは腕に力を込めた。自らここを出ていく意志はあるようだが、ひどく曖昧な言い方をする事が気になる。しかしもうしばらくは時を同じく過ごせるようだ。
シュラは抱き締めたまま優しく頭を撫でた。
シュラはシルフィに近付くと小首を傾げる彼女の頭を優しく撫でた。髪が指をすり抜けて落ちていき、撫でられたシルフィは心地良さそうに目を細める。その姿を見てシュラの心臓はドキリと高鳴り、顔に熱が上がってくるのを感じた。
頭を撫でるシュラの手が下がり、彼女の頬を撫でる。陶器のように滑らかな肌は指に吸い付いてくるようだった。
「旦那様の手は温かくて、気持ちのいい手ですね」
撫でられるがままのシルフィは微笑んだままシュラを見つめ、自分の手を彼の手に重ねた。その言葉にシュラは思わず手を引っ込めようとしたが、重ねられているシルフィの手がそれを拒んだ。
「…この殺人の手が、か?」
武器でもあるこの手は何人もの命を奪い、血を吸ってきた。故に小宇宙を放たない時でさえ恐れる者は数多くいたのも事実。
だから幼い頃から一緒だった気の知れた奴ら以外、自分の領域に踏み込む事を許さなかった。
「私はこの手から温かさ以外、何も感じとりませんよ?旦那様は旦那様の信じる者の為に力を奮うだけの事。己の信念を貫くのはそう簡単な事ではありませんよ」
真っ直ぐ見つめる漆黒の瞳は揺るがない。その言葉がおべっかなどではなく本心だということを黒い瞳が伝えていた。
不思議な女だ。この手を恐れずそんなことを言った人間は今まで1人もいなかった。真っ直ぐ見つめる黒い瞳が急に愛おしくなり、手放すのが惜しくなる。今日にも行く場所があるのならば解放してやろうと思っていたのに。
「…そう、か」
解放してやるのが彼女にとって一番幸せだろう。こんな血生臭い自分の世話をするよりも、自由に好きな場所で生活する方が。
「…お前、本当はここから出たいんじゃないのか?」
シュラは頬を撫でる手を下ろし、黒い瞳を覗き込むように言った。これで肯定されればもう二度とシルフィと会うことは無いだろう。
元々居なかったのだ。彼女に会う前の、元の生活に戻るだけ。何故か早くなる鼓動を感じながらシュラは自分に言い聞かせた。
黒い瞳は不安に揺れて、少し潤んだように見えた。瞳を静かに伏せ、シルフィは口を開いた。
「…私に居場所はありません。親も里も何もかも全て私には…」
段々と消え入るような声で言うシルフィを、シュラは気付けば抱き締めていた。嘘をつくのが下手な、天涯孤独の彼女を初めて守りたいと思ったのだ。
聖闘士になる修行で幼い頃から産まれ故郷を離れた自分ですら里を、親を覚えている。それなのに、何一つ彼女は持っていない。この感情は憐れみからか何なのかは分からないが、アテナを守る使命とはまた違った感覚だ。使命、ではなく願望にも似たこの感情は一体何なのか。
「私がここにいると必ず迷惑がかかる時が来ます。それまでにここを出ていくつもりです」
シルフィはシュラの背中に腕を回して続けた。
「あともう少しだけ、ここに居ても良いですか?」
何かにすがるようにシルフィは腕に力を込めた。自らここを出ていく意志はあるようだが、ひどく曖昧な言い方をする事が気になる。しかしもうしばらくは時を同じく過ごせるようだ。
シュラは抱き締めたまま優しく頭を撫でた。