舞い降りたモノ
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「そういえばあのシルフィ、だっけか?アレはどうなったんだよ。どっかいっちまったのか?」
巨蟹宮で一緒に酒を飲んでいたデスマスクはグラスに口をつけたシュラに問いかけた。
シルフィを拾ってから1ヶ月が過ぎようとしていた。不可解な出来事が少しは解決したのかと報告を待っていたデスマスクだったが、特に何もシュラからは報告がなく記憶の隅から消えようとしていた所だった。
「そういえば何か分かったのかい?」
「いや」
グラスを一気に空にしたシュラは一息ついた。
「何も聞いていない」
「じゃあもうどっかに行ったって訳か。変な奴だったな」
「奴ならまだいるぞ」
予想外の答えに驚く二人を他所に、シュラは空になったグラスにサングリアを並々と注いだ。二人の視線を感じながら色付いたグラスに再び口をつけ、ぐいと喉へと押し込んだ。
「居るならどうして聞かないんだよ」
「何かどうでも良くなってな。今は侍女として磨羯宮で仕えている」
「…変わった奴」
「拾ったモノには責任を、だ」
二人のやり取りにアフロディーテはくすりと微笑むとグラスに手を伸ばした。昔からの友人と集まって飲む酒は、どんな過酷な任務だろうと癒してくれる。その事を分かっているからこそ、時折三人でこうして時間を共にしていた。
「それに、だ。任務から帰ってきて食事が出来ていて、すぐに風呂に入れるのは思ったよりもいいぞ」
「ふふっ。それじゃあまるで奥さんだね」
「雇用しているだけだ」
アフロディーテの言葉に異議を唱えたシュラだったが、改めて考えてみるとそう見えるのかと少し動揺した。
研修生の訓練終わりや任務帰り、何時になろうとシルフィは起きていて、いつも暖かい食事を準備して待っている。今では少し心を開いたのか時折見せる笑顔は、華が咲いたよう、と表現するそのものだった。
今日は先に寝ていろ、と言ってあるが、もしかして今日も起きて待っているのだろうか。
「悪い、今日は先に帰る」
空になったグラスをテーブルに置くとシュラは立ち上がった。
「嫁が待ってるってか」
「ただの侍女だ」
茶化して笑うデスマスクに改めて言ったシュラは宮の出口へと足を向けた。
夜になると少し肌寒くなるこの季節。吐く息が白くなる、とまではいかないが酒で温まった体にはヒヤリと冷気が肌を刺す。磨羯宮への階段を登りながらシュラは先程アフロディーテに言われたことを頭の中で考えていた。
確かに侍女として仕えるよう提案したのだが、本当は向かう場所、帰る場所があったのではないか。もしそうだとしたら引き留めておく理由はない。もし宮に戻って彼女が起きていたのならば聞いてみる必要がある。どう切り出そうかと考えながらシュラは階段を登り続けた。
磨羯宮が見えようとした時、宮の裏手で感じたことのない小宇宙を感じてシュラは息を潜めて裏手へと回った。気配を殺し、物音ひとつ立てずに宮の影へと潜めてそっと気配がする方へと顔をむけた。
「…シルフィ?」
シュラが見たものは、夜空を仰ぎ見るシルフィの姿。ただそれは今朝見た彼女の姿とは違い、磨羯宮の前に落ちていた時と同じ白に近いブロンドの髪にオッドアイの姿。透き通るような小宇宙を放ち夜空を仰ぎ見るその姿はどこか儚げで、人間とは言い難い存在だった。
見てはいけないものを見てしまったかのような気分になったシュラは、声をかけることが出来ずその姿からも目を離すことが出来ない。どこかへ行ってしまいそうな雰囲気を出すシルフィが夜空に手を伸ばす。伸ばした手からぼんやりと光が漏れたかと思うと、シルフィの姿は今朝見た姿と同じ姿に戻っていた。
一体何なんだ。
全く同じ事を彼女と初めて会った時にも言ったような気がする。宮へと戻るシルフィを目で追いながらシュラは今見たことを頭の中で整理した。
いくら整理しようとも理解が追い付かない。本人に聞くのが一番だとシュラは宮の入り口へと戻った。
巨蟹宮で一緒に酒を飲んでいたデスマスクはグラスに口をつけたシュラに問いかけた。
シルフィを拾ってから1ヶ月が過ぎようとしていた。不可解な出来事が少しは解決したのかと報告を待っていたデスマスクだったが、特に何もシュラからは報告がなく記憶の隅から消えようとしていた所だった。
「そういえば何か分かったのかい?」
「いや」
グラスを一気に空にしたシュラは一息ついた。
「何も聞いていない」
「じゃあもうどっかに行ったって訳か。変な奴だったな」
「奴ならまだいるぞ」
予想外の答えに驚く二人を他所に、シュラは空になったグラスにサングリアを並々と注いだ。二人の視線を感じながら色付いたグラスに再び口をつけ、ぐいと喉へと押し込んだ。
「居るならどうして聞かないんだよ」
「何かどうでも良くなってな。今は侍女として磨羯宮で仕えている」
「…変わった奴」
「拾ったモノには責任を、だ」
二人のやり取りにアフロディーテはくすりと微笑むとグラスに手を伸ばした。昔からの友人と集まって飲む酒は、どんな過酷な任務だろうと癒してくれる。その事を分かっているからこそ、時折三人でこうして時間を共にしていた。
「それに、だ。任務から帰ってきて食事が出来ていて、すぐに風呂に入れるのは思ったよりもいいぞ」
「ふふっ。それじゃあまるで奥さんだね」
「雇用しているだけだ」
アフロディーテの言葉に異議を唱えたシュラだったが、改めて考えてみるとそう見えるのかと少し動揺した。
研修生の訓練終わりや任務帰り、何時になろうとシルフィは起きていて、いつも暖かい食事を準備して待っている。今では少し心を開いたのか時折見せる笑顔は、華が咲いたよう、と表現するそのものだった。
今日は先に寝ていろ、と言ってあるが、もしかして今日も起きて待っているのだろうか。
「悪い、今日は先に帰る」
空になったグラスをテーブルに置くとシュラは立ち上がった。
「嫁が待ってるってか」
「ただの侍女だ」
茶化して笑うデスマスクに改めて言ったシュラは宮の出口へと足を向けた。
夜になると少し肌寒くなるこの季節。吐く息が白くなる、とまではいかないが酒で温まった体にはヒヤリと冷気が肌を刺す。磨羯宮への階段を登りながらシュラは先程アフロディーテに言われたことを頭の中で考えていた。
確かに侍女として仕えるよう提案したのだが、本当は向かう場所、帰る場所があったのではないか。もしそうだとしたら引き留めておく理由はない。もし宮に戻って彼女が起きていたのならば聞いてみる必要がある。どう切り出そうかと考えながらシュラは階段を登り続けた。
磨羯宮が見えようとした時、宮の裏手で感じたことのない小宇宙を感じてシュラは息を潜めて裏手へと回った。気配を殺し、物音ひとつ立てずに宮の影へと潜めてそっと気配がする方へと顔をむけた。
「…シルフィ?」
シュラが見たものは、夜空を仰ぎ見るシルフィの姿。ただそれは今朝見た彼女の姿とは違い、磨羯宮の前に落ちていた時と同じ白に近いブロンドの髪にオッドアイの姿。透き通るような小宇宙を放ち夜空を仰ぎ見るその姿はどこか儚げで、人間とは言い難い存在だった。
見てはいけないものを見てしまったかのような気分になったシュラは、声をかけることが出来ずその姿からも目を離すことが出来ない。どこかへ行ってしまいそうな雰囲気を出すシルフィが夜空に手を伸ばす。伸ばした手からぼんやりと光が漏れたかと思うと、シルフィの姿は今朝見た姿と同じ姿に戻っていた。
一体何なんだ。
全く同じ事を彼女と初めて会った時にも言ったような気がする。宮へと戻るシルフィを目で追いながらシュラは今見たことを頭の中で整理した。
いくら整理しようとも理解が追い付かない。本人に聞くのが一番だとシュラは宮の入り口へと戻った。