舞い降りたモノ
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磨羯宮の前に落ちていた日から数日後、シルフィの怪我は完全とまではいかないが、ある程度動き回る事が出来るまでに回復していた。毎日食事や着替えを女官に準備させ、時間があればシュラ本人も様子を見に来ている。
それはシルフィが一体何者かも解らず、万が一この聖域に楯突くことがあるかもしれないといった事からだったが、それは全くの杞憂だったようだ。食事と入浴以外部屋から出ず、たまに動いたかと思うと窓辺に立ち日光を浴びるだけ。そんな生活を彼女は続けていた。
「あの、本当にありがとうございました」
様子を見に部屋へと入ってきたシュラに、ベッドから立ち上がったシルフィは深々と頭を下げた。腰まである茶色の長髪は地面へ付いてしまうかと思う程なびいて落ちる。
怪我はもう心配ないだろう。次の心配はシルフィをどうするかという事だった。先日街へ出た時に見世物行商へ立ち寄って、責任者に逃亡者の有無を確認したが、誰一人として減っていないという。だとしたら、三人で考えていた可能性は否定された。
否定された事に少しほっとしたシュラだったが、今度は彼女がこの先どうするのかと少し気がかりになった。
「私、そろそろ行きます。この御恩はいつか必ず…」
頭を上げたシルフィは大きな瞳でシュラを見つめた。その瞳は全てを塗り潰してしまうかの様に真っ黒で、やはり普通の人間とは少し違うような気がする。
「行く宛はあるのか?」
「……はい」
シュラから目を反らしたシルフィは少しの沈黙の後、小さく答えた。なんと嘘をつくのが下手なのだろうか。
「宛が無いならここに居ればいい」
自分の口から出た言葉にシュラは驚いた。いつまでも置いておくつもりはなかったが、自分の知らないところでシルフィを哀れに思っていたのだろうか。あまりにも見え透いた嘘にシュラはここに留まる事を勧めてしまっていた。
「いえ、でも…私が居ると必ず迷惑がかかります」
「どういう意味だ?」
「…助けて頂いた貴方に迷惑はかけられないんです」
「だからそれはどういう…」
じっと自分を見つめるシルフィの姿に何か強いものを感じたシュラは思わず口をつぐんだ。黄金聖闘士である自分に圧をかけるなど面白い女だ。少し違った面で興味を持ったシュラは、シルフィを手放す選択肢を放棄した。
「今磨羯宮を世話する者が居なくてな。御恩だと言うのならばここで仕えるがいい」
「………」
有無を言わさぬ黄金聖闘士の言葉にシルフィは目を伏せた。どうしてそこまで悲しい瞳をするのか。シュラはそっとシルフィの頭に手を置くと二、三度撫でた。柔らかく指の間をすり抜けるシルクのような手触りが心地よい。
「心配せずともちゃんと帰る場所があるのならば、そこに送り届けてやる」
「…はい」
こうしてシルフィは磨羯宮で仕える事となった。
色々と聞きたい事はゆっくりと聞けばいい。シュラは目の前にある一つの問題が解決した事に胸を撫で下ろした。
それはシルフィが一体何者かも解らず、万が一この聖域に楯突くことがあるかもしれないといった事からだったが、それは全くの杞憂だったようだ。食事と入浴以外部屋から出ず、たまに動いたかと思うと窓辺に立ち日光を浴びるだけ。そんな生活を彼女は続けていた。
「あの、本当にありがとうございました」
様子を見に部屋へと入ってきたシュラに、ベッドから立ち上がったシルフィは深々と頭を下げた。腰まである茶色の長髪は地面へ付いてしまうかと思う程なびいて落ちる。
怪我はもう心配ないだろう。次の心配はシルフィをどうするかという事だった。先日街へ出た時に見世物行商へ立ち寄って、責任者に逃亡者の有無を確認したが、誰一人として減っていないという。だとしたら、三人で考えていた可能性は否定された。
否定された事に少しほっとしたシュラだったが、今度は彼女がこの先どうするのかと少し気がかりになった。
「私、そろそろ行きます。この御恩はいつか必ず…」
頭を上げたシルフィは大きな瞳でシュラを見つめた。その瞳は全てを塗り潰してしまうかの様に真っ黒で、やはり普通の人間とは少し違うような気がする。
「行く宛はあるのか?」
「……はい」
シュラから目を反らしたシルフィは少しの沈黙の後、小さく答えた。なんと嘘をつくのが下手なのだろうか。
「宛が無いならここに居ればいい」
自分の口から出た言葉にシュラは驚いた。いつまでも置いておくつもりはなかったが、自分の知らないところでシルフィを哀れに思っていたのだろうか。あまりにも見え透いた嘘にシュラはここに留まる事を勧めてしまっていた。
「いえ、でも…私が居ると必ず迷惑がかかります」
「どういう意味だ?」
「…助けて頂いた貴方に迷惑はかけられないんです」
「だからそれはどういう…」
じっと自分を見つめるシルフィの姿に何か強いものを感じたシュラは思わず口をつぐんだ。黄金聖闘士である自分に圧をかけるなど面白い女だ。少し違った面で興味を持ったシュラは、シルフィを手放す選択肢を放棄した。
「今磨羯宮を世話する者が居なくてな。御恩だと言うのならばここで仕えるがいい」
「………」
有無を言わさぬ黄金聖闘士の言葉にシルフィは目を伏せた。どうしてそこまで悲しい瞳をするのか。シュラはそっとシルフィの頭に手を置くと二、三度撫でた。柔らかく指の間をすり抜けるシルクのような手触りが心地よい。
「心配せずともちゃんと帰る場所があるのならば、そこに送り届けてやる」
「…はい」
こうしてシルフィは磨羯宮で仕える事となった。
色々と聞きたい事はゆっくりと聞けばいい。シュラは目の前にある一つの問題が解決した事に胸を撫で下ろした。