「おかえり」

朝の稽古から帰ってくると、セナガキさんがソファーでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。

その新聞の第一面にルフィさんの写真が見えて、僕は思わず近寄って床に座ってまじまじとルフィさんの写真を見る。

「？なんだ？」
「ルフィさんだ…」

セナガキさんは新聞を返して第一面を見る。

「ああ、麦わらのルフィか。インペルダウン襲撃、頂上戦争、16点鐘行為…懸賞金が上がったらしいぜ。最近暴れまくってるな、こいつ」
「見せてください！」

僕は眼鏡をかけてセナガキさんに手渡された新聞を読む。

ああ、ルフィさんだ…！
やっぱりすごいなあ！
感動して涙出てきちゃったよ…。

「…知り合いなのか？」
「ルフィさんは僕の憧れなんです！」
「え？」
「ルフィさんはすごくかっこいいんですよ！僕が海軍に入るきっかけをくれた人なんです！」
「…」
「『海賊王になるために戦って死ぬなら別にいい』って…生き様がかっこいいんですよ！」

ああ、いつみてもかっこいいなあ…！


「…お前、俺に憧れてるんじゃなかったのかよ」
「え？」
「海賊じゃねえかこいつ…取り締まりの対象にうつつ抜かすんじゃねえ」

セナガキさんは僕の手から新聞を引ったくって、続きを読み始めた。

「セナガキさん…もしかして、嫉妬してます？」
「ちげえよ、お前が海賊の思考に染まらねえように注意してるだけだ」

図星だ。
あのセナガキさんが、嫉妬…？！
かわいすぎませんか…？！

「僕が好きなのはセナガキさんだけですよ」

気をよくした僕は、ソファーの後ろから腕を回して軽く抱きしめた。

「…暑苦しいからどけ」
「うわっ」

セナガキさんは僕の腕を払い除けて、後ろにのけぞった僕にはお構いなしに煙草に火をつける。


もう、素直じゃないんだから…。


「麦わらのルフィ、ねえ…」


近い未来、セナガキさんがルフィさんの仲間になるなんて、この時は僕もセナガキさんも全く想像していなかった。

end.