あの恋の続き
主人公の名前
ツバメ・セナガキツバメ(初期設定)
21歳。元海軍中将。
今はいろいろあって麦わらの一味のクルー(戦闘要員)になっているけれど、ローに命を助けてもらったことがあり、ハートのクルー達とも仲がいいので船を行き来することが多い。
セナガキ(初期設定)
ツバメが海兵時代に使っていた偽名。
男性ということになっている。海軍暗部。
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いつから、君のことを好きだったんだろう。
俺の料理を「おいしい!」と言っていっぱい食べてくれる君が好き。
食べ方がきれいで、「いただきます」「ごちそうさま」って、ちゃんと手を合わせて言う君が好き。
宴の時にさりげなく手伝ってくれる君が好き。
ルフィやウソップと釣りをしたり馬鹿みたいに騒いでいる君も好き。
チョッパーや子供に優しい君も好き。
ナミさんロビンちゃんと楽しそうに会話している君も好き。
ピアノを弾く君も好き。
もちろん敵と勇敢に戦う君も好き。
花が咲くみたいに、ふわっと笑う君が好き。
どんな花も美しいが、君という花は俺の中では特別だ。
「今日はローズヒップ?」
君がカップの中のピンク色を眺めながら言った。
「うん、ツバメちゃんの美しさを最大限引き出すブレンドにしたよ」
「綺麗な色。ありがとう」
「君の美しさにはどんな花も敵わないさ」
ツバメちゃんはふふっと天使のようにほほ笑んで、ハーブティーを一口飲む。
飲んだ瞬間から、普段凛々しい君が、ふわっと柔らかい顔になる。
その顔が、好き。
今夜もこうして、君は誰もいなくなったカウンターでハーブティーを飲みながら読書をする。
そして、俺が皿を洗い終えたら、いつものように紅茶を淹れてくれるだろう。
こんな俺にそこまで優しくしてくれるなんて、ツバメちゃんは本当に女神だと思う。
今日は外で雨がしとしとと降っているから、雨音が船内に響いて心地いい。
はじめて君と出会ったあの日も、こんなふうに雨が降っていた。
いつから、君のことを好きだったんだろう。
俺ははっきり覚えている。
君は、覚えているだろうか。
「ツバメちゃん、あのさ」
「なんですか?」
「海上レストラン『バラティエ』って、行ったことあるかい?」
君は本から顔を上げて、俺の方を見た。
「行ったことあるもなにも…サンジ君に会っていますよね?」
「! 覚えてくれてたの!?」
「もちろんですよ」
ツバメちゃんはハーブティーを一口飲む。
ハーブティーのピンク色に、ツバメちゃんの碧い瞳が映って、あじさいみたいな色に見えた。
「一度目は6歳の時に雑用一年頑張ったご褒美と誕生日祝いも兼ねて上司と来て、二度目は中将昇格前にセンゴクさんと来ました」
「そっか…覚えててくれてたなんて、嬉しいなあ」
そう。
俺もまだまだひよっこで、毎日必死に雑用してた俺に、不器用ながらも優しくしてくれた女の子。
(父親だと思ってたけど上司だったのか、あの人。)
初恋だった。
二度目の来店も覚えてる。
俺は副料理長になっていて、君は『美しすぎる海兵』なんて世間で騒がれていた。
久しぶりの再会でたくさん話したことを覚えている。
花を贈ったことも覚えている。
人生初の真剣な告白をしたことも覚えている。
あなたにはもっといい人がいる、と言われて振られたことも、覚えている。
俺の初恋は、そこで終わった。
「三度目はその半年後…」
「え…」
ツバメちゃんが続けて話したことに驚いて、皿を洗う手が止まる。
「長期任務が終わって一段落した後にサンジ君に会いに行ったのですが、サンジ君は店を辞めた後でした」
「…」
「麦わらの一味の船に乗って海賊になったとオーナーから聞かされて…愕然としました。
それから1か月ほどだったでしょうか、サンジ君の手配書が手元に届くようになったのは」
君は懐かしげに過去を語る。
俺の知らない、君の過去。
一度交差してすれ違った、俺と君の過去。
カウンターの端に置いている花瓶が、柔らかい照明の光を浴びてセピア色に光っていた。
「四度目は1年前…サンジ君はいないと分かっていましたが、マリージョアに行く前にバラティエの皆さんに会いに行った…」
君が俺の足跡を辿っていたなんて
俺に会いに来てくれていたなんて、思いもよらなくて、胸がいっぱいになる。
「…紅茶でも淹れましょうか」
ツバメちゃんは立ち上がってカウンターの中に入ってくると、俺の後ろでお湯を沸かしはじめた。
「ツバメちゃん」
俺はツバメちゃんの背中に話しかける。
「なんですか?」
「俺の気持ちは今も変わってないよ」
一瞬、ツバメちゃんの手が止まったけど、すぐに「ありがとう」と背中越しに返ってきた。
君の表情は分からなかったけれど、あの夏の日と同じようで少し違う、幸せな時間が流れていた。
end.