ONEPIECE短編集
主人公の名前
ツバメ・セナガキツバメ(初期設定)
21歳。元海軍中将。
今はいろいろあって麦わらの一味のクルー(戦闘要員)になっているけれど、ローに命を助けてもらったことがあり、ハートのクルー達とも仲がいいので船を行き来することが多い。
セナガキ(初期設定)
ツバメが海兵時代に使っていた偽名。
男性ということになっている。海軍暗部。
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side.ペンギン
屋台の匂い。太鼓の音。提灯の明かり。
蒸し暑い夜のお祭り会場の入り口で、紺の浴衣を着て待っていた。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって!」
少ししてからツバメちゃんが向こうからやってくるのを見つけて、少し気持ちが舞い上がる。
白地に朝顔の模様の浴衣に、紺色と黄色の帯。
紺色の巾着を持って、同じ色の鼻緒の下駄。
いつもより少しおしゃれに編み込まれた亜麻色の髪。
「どうしました?」
「…いや…」
ツバメちゃんの声にはっとして、口元を隠して顔を逸らす。
見惚れてた…。
想像の10倍綺麗だ…。
あー、会ってすぐなのにもうドキドキする…大丈夫かな、俺…。
「…行こっか」
「はい、私りんご飴食べたいです!」
そんな俺のことは全くお構いなしに、ツバメちゃんはりんご飴の屋台に走っていく。
りんご飴って。
チョイス可愛すぎるだろ。
「あと、ベビーカステラ!」
「あ、たこ焼き一緒に食べましょう!」
「かき氷!私レモンがいいです!」
…
そんな感じでツバメちゃんがどんどん屋台をまわって、俺はそれについていって。
口いっぱいに頬張っているのを見ると、いつも通りで安心している自分がいて…。
安心はするけど…なんというか…
男として見られてないなあって、ちょっとがっかりしちゃう自分もいる。
「よく食べるなあ」
ほほえましくて思わず言葉が出ると、ツバメちゃんは恥ずかしそうに食べているものを飲み込んだ。
「ご、ごめんなさい!つい…」
「ううん、いっぱい食べるツバメちゃん見るの、俺結構好きだよ」
ツバメちゃんが手で顔を覆って向こうを向いてしまった。
「あ…えっと、変な意味じゃないよ?可愛いから…その、リスみたいで」
「ああ、あはは…」
あれ…ダメだった?!
だって、リスみたいで可愛いって俺いつも言ってるよな?
実は嫌だったのかな…。
どうしよう…気まずくなっちゃった。
ヒュルルルルル…ドーン!
しばらくして、遠くの方で花火の音が鳴った。
「花火、はじまったね」
「え、ええ…」
ツバメちゃんがこっちを見てくれない。
「大丈夫?具合悪い?」
「いえ…」
「…ごめんね」
俺もいたたまれなくなって、空を見上げる。
「俺、女の子と二人でこんなとこ来たことなくて、ちょっと浮かれてて…そんなつもりなかったけど、変なこと言って傷つけちゃったかな」
「そんなことないです!そうじゃなくて…」
「………?」
「その………えっと………」
ドォンと近くで花火の音が鳴って、空が光る。
「………手、繋ぎたいです…」
キラキラと光って消えていく花火に照らされたツバメちゃんがあまりにも綺麗で、かわいらしくて、すぐに言葉が出なかった。
「あ、ご、ごめんなさい、変なこと言っちゃいました…忘れてください」
「ううん、ちょっと待ってよ…」
俺は左手をふいて差し出した。
「ごめん、手汗すごいけど」
「いえ…」
ツバメちゃんが俺の手に遠慮がちに触れたのを、そっと掴んだ。
手ちっさ…!指細っ…!柔らかっ…!
ドキドキしてきた…。
「…もっと近くに行こっか」
「はい…」
石畳をカランコロンと下駄の音を鳴らしながら歩く。
かすかに吹く風が木の葉を揺らして心地いい。
「ペンさん」
「なに?」
俯きながらツバメちゃんが言う。
「今日、すっごく、楽しみにしてました」
「…俺も」
俺はきゅっと手を握ると、ツバメちゃんも握り返してくれる。
今日の花火は今まで見た中で一番きれいだった。
end.