夜更かしパーティー
主人公の名前
ツバメ・セナガキツバメ(初期設定)
21歳。元海軍中将。
今はいろいろあって麦わらの一味のクルー(戦闘要員)になっているけれど、ローに命を助けてもらったことがあり、ハートのクルー達とも仲がいいので船を行き来することが多い。
セナガキ(初期設定)
ツバメが海兵時代に使っていた偽名。
男性ということになっている。海軍暗部。
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今日はペンギンの誕生日。
ペンギンとシャチとベポの4人で昔みたいに夜更かしすることになった。
それぞれ仕事が終わって風呂から上がり次第、自分の布団を持って船長室に集合。
ホットココアを飲みながらチェスをしたり、最近のことや昔のことを話したり。
4人だけで過ごすなんて久しぶりで、時間を忘れて盛り上がっていた。
たまにはこういうのも悪くねえな、と思いながら、今はペンギンとシャチの大富豪ド貧民合戦を観ている。
俺はもちろん大富豪で上がって、その次にベポが上がって、残るはペンギンとシャチ。
「上がり…!!!」
「あーーーーー!!!」
「よっしゃあぁーーー!!!」
シャチが思いっきり腕を振りかぶってガッツポーズをしている横で、ペンギンが布団に突っ伏す。
「あっぶなかったーーーもう少しで負けるところだった!」
「くっそーーー!」
「じゃあペンギン罰ゲームな!」
『大富豪でド貧民になった奴が恋話』
ペンギンは上陸するごとに女を引っかけようとしているし、そっち方面の話題は豊富そうだ。
当の本人は話すのを嫌がっているが。
「ええー、マジで話さないとダメ?」
「当たり前だろ!そもそも罰ゲーム言い出したのペンギンじゃねーか!」
「あー、言わなきゃよかった…」
「そんなに嫌なのかよ」
「うーん、別にいいけど…うーん…」
「おれはききたいなあ、ペンギンの恋の話!おれ応援するよ!」
ペンギンは歯切れ悪く返すが、ベポのキラキラした目を見て、はあーっと大きなため息をつく。
「ペンギンは、好きな人いるの?」
「………いない」
「お前って嘘つくの下手だよな」
「キャプテンそういうこと言うのやめて!!」
シャチとベポが楽しそうにしている横で、ペンギンが涙目なのが面白い。
「ねえねえ、誰なの?おれらの知ってる人?」
「…うん」
「えー!誰だろ?イッカク?」
「違う」
「手配書とか有名人とかじゃなくて、会ったことある人か?」
「…ある」
「ええー!?誰?誰?教えてよー!」
「もうやだキャプテン助けて!!」
ペンギンが俺に縋りついてくる。
「自分で蒔いた種だろ、早く吐いて楽になっちまえ」
「キャプテンまで…はあーーー…」
ペンギンはまた盛大にため息をつくと、枕を抱きかかえて、小声で言った。
「………ツバメちゃん」
「え…」
俺はその名前を聞いて固まった。
「え!?ええっ!?マジで!?ツバメちゃん!?」
「意外ー!でもいいないいなー!!」
シャチはめちゃめちゃ驚いていて、横でベポがきゃーっと歓声をあげていて、その横でペンギンは抱えている枕に顔を埋めて恥ずかしそうに頷いていて、俺はその横でショックで何も言えなくなっている。
確かにツバメ屋はモテるだろうが…
それでも、ペンギンと被るなんて思わねえじゃねえか。
完全にノーマークだった…。
「なんでまた好きになっちゃったんだよ?元『美しすぎる海兵』だぞ?すげー高嶺の花じゃん?」
「分かってるよ、釣り合ってねえことくらい…」
この顔はマジで惚れてるな…。
「あの新聞の写真見た時から好きだったよ」
「そうだったんだ…」
「一目ぼれか…」
「ああ…けどさ、うちの船に乗ってた時に話したり、一緒にご飯食べたりしてるうちにさ…」
「ツバメちゃん優しいもんねー」
「そう!優しすぎるんだよ!思った以上に!」
ペンギンに熱が入りはじめた。
「もちろん噂通り、強いし勇敢だしかっこいいし、美人だしかわいいけど…心が綺麗すぎるんだよ…一緒に居ると洗われる気がするんだよ…守りたくなる…」
「ヒュ~♪ペンギンかっこい~!」
「やめろよバカ、恥ずいだろ」
「デートは誘ってみないの?」
「…誘った」
「「おおー!」」
俺の気持ちを知らないだろうペンギンの言葉に、シャチとベポのテンションに、頭がくらくらしてきた。
こいつの話を聞きたい気持ちと、もう聞きたくない気持ちが混在して、つらい。
というか、いつの間にそんなに仲良くなったんだよ。
「え、どうだったの?オッケーだったの?」
「…うん」
「きゃー!いつデートするの?」
「…明日、上陸したら…」
「おおーーー!ペンギンやったじゃん!!」
シャチがペンギンの背中をばしばし叩く。
「まだ分かんねえぞ!?オッケーはしてくれたけど、ここからが問題なんだ!キャプテンどうしよう!?」
「なんで俺なんだよ…」
「だってキャプテンモテるし、こういうの得意でしょ!?」
「別に得意じゃねえよ」
「お願いキャプテン!初デートのアドバイスをください!お願いします!!」
応援なんかできるわけねえだろ。バカペンギン。
「…いつも通りでいいんじゃねえの?」
3人がびっくりしている様子を見て、しまったと思った。
思った以上に冷たい態度になっちまったらしい。
「ペンギンは優しいし…ツバメ屋も、お前のそういうとこ知ってるからオッケーしたんじゃねえの。変に飾ると失敗するぞ」
「そうそう!ツバメちゃんはいつものペンギンを見てくれてるもんね!きっと大丈夫だよ!」
「服装気を付けて、コース考えといたらあとは大丈夫じゃね?」
慌ててフォローを入れると、何事もなかったかのように空気が戻った。
危なかった。特に何も悟られてはいないようだ。
「みんな…ありがとう…俺、頑張るよ!」
「…そろそろ寝るか」
ペンギンが嬉しそうに照れ笑いしたのを見て、俺は電気を消そうと立ち上がる。
「えーっ、もう寝ちゃうの?今日は夜更かしパーティーするんでしょ?」
ベポが残念そうに言う。
時計は午前2時を回っていた。
「そうは言っても、明日の朝上陸だろ?せっかくだが、上陸前に準備する時間も欲しいしな」
「そっかー、じゃあペンギン、また進展聞かせてね♪」
「ペンギン…誕生日おめでとう」
「おめでとう!」
「おめでとーな、ペンギン」
「キャプテン、ベポ、シャチ…ありがとうな!今日は楽しかった」
電気を消して、みんなでおやすみを言い合って、ベッドに横になった。
さっきまで騒いでいたのが嘘みたいに、急にあたりが静まり返る。
今夜は曇りだが風は凪いでいるようで、波の音も聞こえない。
…ペンギンがツバメ屋を好きだからって、諦める気はない。
ツバメ屋がなんでオッケーしたのか分からねえが…そうだ、そもそもペンギンは釣り合ってねえって自分で言ってやがった。
そうだそうだ、全然釣り合ってねえよ。
どうせうまくエスコートできずに振られて終わるだろ。
俺が気に病む必要無え。
…
…はあ…今夜はいつもより長く感じるな…。
end.