#11 愛し抜く正義
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side.スバル
密輸ルートの捜査をある程度終えてからドンキホーテファミリーと会食した帰りのルブニール行きの船の中。
ウッドデッキで朝焼けを眺めながら、一人でタバコを吸っていた。
ファミリーの暗殺任務は完了した。
ドフラミンゴも僕のことを気に入っているようだし、このままいけば機密情報を海軍に横流しできる日もそう遠くはないだろう。
問題は月末までのSPADE適正テストだ。
落ちたらクビになる可能性大。左遷や降格で済めばいいけど、それで済んだとしても今までより入ってくる情報は格段に減るし動きも制限されてしまう。
せっかくここまでやってきたがドンキホーテファミリーどころじゃなくなることは確かだ。
期限まであと5日しかないのに全く進んでいない。
ロビンソンの残党の居場所も、ドンキホーテの密輸ルートも掴めていない。
暗殺任務も、ターゲットを5人中3人殺しただけだ。あと2人残っている。
ロビンソン船団のキャプテン・ノワールと、『死の外科医』トラファルガー=ロー。
そう。
ローさんを殺さなければいけない。
タバコの煙を宙に吐く。
…僕は海兵として生きるしか道がないと思っていた。
それ以外の世界を知らなかった。
でもこの街に来て、ローさんに出会って
船に乗れと言われた時はぐらついてしまった。
そうなんだ。
海軍を辞める選択肢だって本当はあるんだ。
本当は暗殺テストなんて受けなくても良い。
真面目にやる必要ない。
干される寸前だし、
干されたら晴れて海賊としてローさんの船に乗れる。
海軍にしがみつく必要なんてないのに
なんで僕、こんなことしてるんだろう…。
「ツバメさん」
振り向くとアンリさんがいた。
「アンリさん…久しぶりですね」
僕はタバコの吸い殻を海に捨て、スバルを装って微笑んだ。
「お久しぶりです、お仕事ですか?」
「ええ、アンリさんは?」
「父の学会を見にいくついでに旅行してきました」
「そうでしたか」
アンリさんは隣に来て、手すりにもたれながら海の方を見た。
「もうお怪我は大丈夫なんですか?」
「ええ、おかげさまで」
「良かったです。全然来られないから心配してたんですよ」
「すみません、少し仕事が立て込んでしまって」
「そうだったんですね…ご苦労様です」
朝日が水平線から登りはじめていた。
「…スバルさん…助けてくださってありがとうございました」
アンリさんが僕を呼んで、深々とお辞儀をした。
「あの日スバルさんが来ていなかったら、私、今頃どうなっていたか分かりません…。ずっとお礼が言いたかったんです。本当にありがとうございました」
「…そんな大したことはしていません」
「謙遜なさらないでください、スバルさんは私の命を助けてくださったんですから!それに…エリスを助けたゲインズみたいですごくかっこよくて…!海兵さんだと知ったときは妙に納得してしまいました!私、あの日のこと、一生忘れません!」
「僕は正義のヒーローじゃありませんよ」
僕がそう言うと、アンリさんははっとして、熱っぽく話すのをやめて、押し黙った。
波の音が心地よく響く。
「………ゲインズだって、正義のヒーローじゃありませんよ」
少しの沈黙の後、アンリさんが口を開いた。
「マフィアの人間ですし、冷酷非情で、最後はエリスを殺してしまうんですもの」
「でも、エリスにとってはたった一人のヒーローだった」
「誰がなんと言おうと、スバルさんは私のヒーローなんです」
「………」
「…あ、ご、ごご、ごめんなさい!私にそんなこと言われても嬉しくないですよね、すみません、でしゃばりすぎました!!」
「…僕、そんなにカッコよかったですか?」
「…はい、とても………」
「そうですか…ふふっ、ありがとうございます」
「…!」