#13 別れ
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あれから5年が経った。
俺はロッキーポート事件で王下七武海に仲間入りしてすぐ、海軍本部に赴いた。
俺は26。ツバメは、20か…。
レイトン街で別れてから、ツバメとは全く会うことはなかった。
そりゃあそうだ。海軍の中でもとびぬけて仕事量が多いと言っていたし、おまけに今は殺し屋だ。どこを飛び回っているのかも分からねえ。
会えるかもと少し期待はしているが、おそらく本部にはいないだろう。
…元気にしているのだろうか。
会議は長い割につまらねえし、七武海で来たのは俺とバーソロミュー=くまだけだったし、海軍の奴らは警戒して嫌な条件ふっかけてきやがるし、なんのために来たのか分からねえ会議だったから、能力使ってバックレてやった。
…平和な海だな…。
白い埋め立てられた足場からマリンフォードの海を眺めていると、上から付き添い役のコビー屋が降ってきた。
「もう、いきなり会議抜け出さないでくださいよ!」
コビー屋はロッキーポート事件で面識があったから今回俺の付き添い役を買って出てくれたらしい。
こいつがいてくれただけ少しはマシだったか、と思い返す。
「あんな俺ばっかり割食うような条件押し付けられるとは思わなかったからな…真面目に聞くのも馬鹿らしいだろ」
「うう、確かにそうかもしれませんけど…」
「他の七武海は来ねえし海軍の奴らは俺を便利屋扱いしすぎだし、せっかく来たのにここまでやる意味のない会議を税金使ってやってると思うとやる気が失せるのも当然だと思わないか」
「そんな、まさか辞めるんですか…!?」
「そのつもりはないが…今回は来る必要なかったな…あいつもいねえし、とんだ無駄足だった」
「あいつ…?」
コビー屋が不思議そうに俺を見た。
「あの…その指輪って…」
「あ?貰いもんだが…これがどうした?」
「誰にもらったんですか…?」
「大事な人のものだ。お前に教える必要はない」
「コビー!!!」
ふと上から聞き覚えのある声がして見上げた。
小さくてほぼ見えないが、最上階の窓からこっちに向かって誰かが叫んでいる。
「やば、ツバメさんだ」
「えっ…!?」
コビー屋のこぼした言葉に思わずコビー屋の方を向く。
ツバメ…!?
あのツバメか…!?
「テメエ会議サボってんなところで何してんだあああ!?」
大声で叫ばれて、隣のコビー屋はかなり委縮して、あわわわわとか言いながらあたふたしだした。
ツバメってそんなに怖いのか…?
そいつは部屋の窓から飛び降りると、こっちまで飛んで移動してきて、俺たちの目の前に着地したのは、間違いなく俺の知っているツバメだった。
「ったく、大佐が会議サボるんじゃ、ねえ、よ………!!!」
ツバメがそう言いながら俺を見て、目を丸くした。
『正義』のコートを肩にかけ、腕まで捲られた海軍将校の紺のシャツに、黒いパンツに黒いロングブーツ。腰には拳銃を二丁さげている。
白い肌も、柔らかい髪も変わらないが、俺の肩あたりだった身長が目線くらいまで伸びているし、顔つきも精悍になったし、精悍ながらさらに綺麗になった。
「ローさん………!?」
「久しぶりだな、ツバメ」
「見ない間に大人になったな」
「どうしてここに…?」
「七武海の招集がかかったから、お前に会うついでに参加してやろうと思ってな」
ツバメは驚きすぎて言葉が出ないようだ。
「お前いねえしつまんねえしふざけたことばっか抜かしやがるからバックレてきた」
「…子供ですかあなたは」
やっとツバメが言葉をひねり出してきて、少しだけ笑った。
「あの、ツバメさん…知り合いでしたか?」
コビー屋がツバメに訊く。
「まあな…昔世話になったんだ」
「世話になったのは俺の方だ」
「僕は何もしていませんよ」
「あの日お前に出会っていなければ、うちの海賊団は解散していたかもしれねえからな」
「僕だって、ローさんが助けてくれなかったらあのまま悪党に売り飛ばされていましたよ」
俺たちはまたお互い見つめ合って笑った。
「七武海・トラファルガー=ロー殿、お勤めご苦労様であります!」
ツバメは嬉しそうに俺にぴしっと敬礼した。
青い宝石のついた指輪を胸に光らせながら。
end.
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